スーパードクターU   作:黒い平方四辺形

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書きたくなったので書きました。
ギャグ回なので単発で。


黄金の魂

 

 

 

「ギャアアアア!!!!」

 

 

それはKが手術の執刀を依頼されて出張した帰り道。

どこからか大きな悲鳴が聞こえてきた。

 

「なんだ今の声は…行くぞ一也!」

 

「はい、K先生!」

 

 

Kと一也が悲鳴の聞こえた方向に向かうと、背中を抑えながら悶絶するウマ娘の姿があった。

その姿には見覚えがある。チームスピカのゴールドシップだ。

 

「いてえ~…いてえよぉ~…」

 

「あらまあ…大丈夫ですか?」

「痛そうです~…」

 

痛がっているゴールドシップの背中をさするメジロマックイーンとスペシャルウィーク。

 

「うおお~…いてえ~…」

 

「どうした!何があった!」

 

「あっ、あなたは前にお見かけしたお医者様ですわね。

先ほど重い蹄鉄を付けてウェイトトレーニングをしていたら、

ゴールドシップを踏んづけてしまいまして」

 

Kがメジロマックイーンの傍らに置いてあった靴を掴む。

それは見た目に反してかなりの重量がある、ウマ娘のトレーニング用品だった。

 

「これはウマニウム合金の蹄鉄…片側で40kgはあるぞ!

これで彼女を踏んづけたのか!?」

 

 

【ウマニウム合金】

近年になって天才物理学者が精製した新種の合金。

電子を持たない中性子核を金属内部に織り込むことで、

体積に対して遥かに重い合金を作り出すことができる。

それにより蹄鉄サイズでも数十kgのものが作られており、

ウマ娘のウェイトトレーニングによく利用されることからこの名が付いた。

 

 

 

「えっ…。そ、そうですわ…。」

 

「これは脊髄損傷の可能性がある。一也、救急車を呼べ!」

 

「わかりました!」

 

「えっ…!そ、そんな…!わ、わたくしは…」

 

「お…おー…スカーレットを治してくれた医者じゃねえか…

そこまでしなくても平気だぜ…ゴルシちゃんは丈夫だからよぉ…」

ゴールドシップは息も絶え絶えの表情で言う。

 

「そう言って素人判断をした結果、重篤な結果に陥った例は無数にある!

検査をして問題がなかった後に同じことを言え!」(カッ)

 

ものすごい剣幕で叱るKの迫力にゴールドシップは口をつぐみ、

メジロマックイーンは自身のしたことの重大さに狼狽え瞳を潤わせていた。

数分後救急車が到着し、最寄りの医療機関へと運ばれたゴールドシップ。

Kの立ち合いの下、レントゲンやMRIでの検査が行われた。

 

スペシャルウィークに呼ばれて沖野も駆け付け、

安静を厳命され横たわるゴールドシップと共に検査の終了を待つ。

 

 

「一通りの検査が終わりました」

 

「K先生…!ゴールドシップはどうでしたか!?」

 

「検査結果ですが…とくに問題となるような損傷はなさそうです。

軽い打撲で済んでいるようで、それも今はほぼ収まっています。

彼女の言う通り、なかなか丈夫な体をお持ちのようだ」

 

「よ、よかった…!」

 

「ほら言ったろ、ゴルシちゃんは丈夫なんだってよ」

 

「今回は問題なかったが、そうやって甘く見てはいけない。

もし脊髄損傷が起こっていたとしたら、最悪半身不随にもなりかねないのだ。

トレーニングを手伝うのなら、もっと安全な方法でやることだな」

 

「あー、あれな。一応言っとくけど、アタシがやりたかったわけじゃないからな?」

 

「まあとりあえず無事でよかった。K先生、ありがとうございました。

ゴールドシップとマックイーンにはあとで言って聞かせますんで…」

 

「おいおい、アタシは被害者だぜ!?マックイーンだけにしろよ!」

 

「君も事故を甘く見ていただろう。それは危険な考えだ」

 

「ちえっ、アタシは丈夫だって言ってんのにな~」

 

 

検査の結果、特に問題がなかったゴールドシップ。

しかしマックイーンと共に叱られてしまったのだった。

 

 

 

 

そんなことがあってから、しばらくたったある日。

 

「ギャアアアア!!!!」

 

Kが道を歩いていると、また聞き覚えのある悲鳴があった。

 

 

「ゴールドシップか!?何があった!?」

 

「アアアア!目が!目がァァァ!」

 

「あっ、K先生!その、ゴールドシップの目に串が刺さってしまったようで…」

 

「串だと!?どのくらい刺さった!?」

 

「ええと…けっこうしっかり刺さっていましたから数センチくらいでしょうか?」

 

「数センチだと…!それは眼底にまで達している可能性がある!今すぐ病院へ運ぶぞ!」

 

「わ、わかりました!トレーナーが近くにおりますので、車を出してもらいますわ!」

 

「いてえ、いてえよぉ…!」

 

 

 

すぐに眼科へ搬送されたゴールドシップ。

Kの立ち合いの下検査が行われ、結果が出た。

 

「信じられんな。どうなってるんだこれは」

 

「K先生、ゴールドシップの目はどうでしたか!?まさかそんなに酷く!?」

 

「いえ…。検査の結果、全く問題なしですね。傷一つない」

 

「よ、よかった…!あまり刺さらなかったんですかね?」

 

「わ、わたくしが見た限りでは、かなりブスっと大惨事になっていたと思いましたが…」

 

「実に不思議だ…本人があれほど痛がっていたのだから確かに刺さったのだろう。

それに検査を始めたあたりでは確かに傷があったのに今は消えている。

いったいこれは…」

 

「前も言ったじゃねーか、アタシは頑丈なんだよ。

そこらのウマ娘とは鍛え方が違うってな!」

 

「鍛え方の問題ではないと思うのだが…いや待て。

ゴールドシップさん、目の件とは関係ないのですが、採血させてもらってもいいですか?

少々調べたいことがあるのです」

 

「えーっ、採血?何に使うんだ?アタシの遺伝子からクローンを作って、

ゴルシちゃん軍団を結成して世界征服でもしようってのか?

そうはいかねーぞ!アタシがやられても第二第三のゴルシちゃんが…」

 

「いえ、あなたの体質を調べたいだけです」

クローンという言葉でKの眉間が少しピクリとしたが、すぐ平静に戻りそう言った。

 

「なんだ、普通だな。まあ…ちょっとならいいぜ」

 

 

そういうわけで採血中。

ゴールドシップは採血部をずっと見つめていた。

 

「じーっ…。」

 

「ゴルシ、お前よくガン見できるな。俺は血を抜かれてるのを見るの苦手なんだよな…」

 

「わ、わたくしもですわ…」

 

「なんだおめーら、薄情なやつらだな。

アタシの身体とお別れするんだから、見送ってやらなきゃだろ?」

 

「血液に対してそんなこと言ってるやつ初めて見たよ」

 

 

 

採血終了後。

目に関しては結局異常がなかったため、ゴールドシップらは学園に戻ることとなった。

 

「K先生ありがとうございました。

こいつの何を調べるのかわかりませんが、何かわかったら連絡してください」

 

「ええ、そうします」

 

「じゃーな!また会おう明智君!」

 

「ゴールドシップさん。

あなたは確かに頑丈なウマ娘のようですが、気を付けて生活してください。

次も無事とは限らないんですから」

 

「任せとけ。前向きに善処しながら検討して努力するぜ!」

ゴールドシップはこれ以上ない満面の笑顔でサムズアップをした。

 

 

学園に戻り、スピカのメンバーと合流したゴールドシップたち。

 

「おう、戻ったぞ!アタシがいなくてさみしかったろ?」

 

「あっ、ゴールドシップ!アンタ目に串が刺さったって聞いたけど…!

眼帯とかつけてないのね。大丈夫だったの?」

 

ダイワスカーレットは自身の経験があるので、ゴールドシップのことを心配していたようだ。

 

「おう、全然平気だぜ。この通り」

 

「よかった。あんまり深く刺さらなかったのね?」

 

「それがなスカーレット…マックイーンやK先生が言うには刺さってるはずだと。

普通に考えたら絶対怪我してるはずなのに謎だって話なんだ」

沖野が不思議そうな表情でゴールドシップの目を見つめた。

 

「そうなの!?アタシはウッドチップのせいで結構ひどいことになっちゃったのに!

なんでアンタは平気なの!?」

 

「そりゃースカーレット、オメーの目が弱いんじゃね?」

 

「アンタが異常なのよ!!」

 

「たぶんスカーレットさんの言う通りですわ…」

 

何はともあれ無傷だったということで、

ゴールドシップは翌日からまた元気にトレーニングをしていた。

 

 

 

数週間後、スピカの部室を訪ねる人物。

Kがゴールドシップの検査結果を持ってやってきたのだ。

 

「どうもK先生。何かわかったんですか?」

 

「ええ、ゴールドシップさんはなかなかすごいですよ」

 

「すごいというのは…?」

 

「これからご説明しましょう。ゴールドシップさんも呼んでいただけますか?」

 

 

「よう、久しぶりだな!またゴルシちゃんの焼きそばを食べに来たのか?

悪いな、今日は焼きビーフンの日なんだわ」

 

「私は前の検査結果を持ってきただけだ」

 

「なんだ、冷やかしなら帰ってくれ!

ここは最低一品は注文してくれないと席取らせねえぜ?」

 

「……」

Kは『なんだこいつは?』という困惑の表情を浮かべた。

 

「すいませんK先生、こいつこういうやつなんで話し始めちゃっていいですよ。

ほらゴルシ、先生の分は俺が払っとくから座れ」

沖野はゴールドシップに1000円を渡し、焼きビーフンを2つ受け取った。

 

「あいよ、毎度あり!んで、話って?」

 

「では…。ゴールドシップさんの血液検査を行ったところ、特異な体質が確認できたのです」

 

「それはどんな…?」

 

「まず、人間には『因子』というものがあるのはご存じですね?

親や仲間との交流によって受け継がれるといわれる因子…

最近ではアグネスタキオンさんが因子を強化する研究を発表してましたね」

 

「ありましたね、うちもあれが結構役立ちました。

しかしゴルシの因子か…こいつはなんか凄そうですね」

 

「そうなのです。ゴールドシップさんが持っている因子…

Great Adventurer Gene(偉大な冒険家の因子)』、通称『ギャグ因子』と呼ばれる因子です」

 

「ギャグ因子…ですか?」

 

「そうです。この因子の効果は簡単に言うと…

『怪我したり問題を起こしたりしてもいつの間にか問題のないレベルまで戻れる』

というものです。彼女が背中を強く踏みつけられても、

目に串が刺さっても問題なかったのはこの効果によるものでしょう。

他の例では、とんでもない量の食事を摂っても体調や体重に大きな影響がない、

普通の人間がウマ娘に蹴りとばされてもほぼ無傷で済んだ、などがあります」

 

「あっ、それ俺も経験あります!」

 

沖野は、スペシャルウィークが誇る恐るべき食事量、

ウマ娘の脚を突然撫でまわして思い切り顔面を蹴り飛ばされたが軽い鼻血で済んだこと、

レースに勝利したゴールドシップに飛び蹴りをくらわされても怪我がなかったことを思い出した。

 

「このギャグ因子がゴールドシップさんには異常なほどの量が検出されました。

この因子が多ければ多いほど、重大な状況でも後遺症もなく元に戻れるのです」

 

「そんな因子があったんですか…」

 

「この因子はすべての人間が持っているものですが、個人差がかなりあるのです。

一般的に、真面目に生きている者は少なくなる傾向にあるようですね。

先のダイワスカーレットさんは目に角膜炎を起こしましたが、

ゴールドシップさんはこの因子が多いおかげで怪我を回避できたのでしょう」

 

「なるほど…ゴルシは四六時中ふざけてて、肝心な時にしか役に立たない女だからな…

確かに真面目からは世界一程遠い…」

 

「おいトレーナー、なんかひでーこと言ってねーか?」

 

「まあ、というわけなのでゴールドシップさんは本当に頑丈な体をお持ちですね。

とはいえギャグ因子がどこまでの状況に通用するのかは未知なので、

できれば因子に頼らず落ち着いた生活を心がけて頂いた方がいいかと思います」

 

「そりゃあ難しい相談だな。

このゴールドシップ様はアタシが大人しくしてても世界がほっといてくれないからよ」

 

「まあ…私としてはおすすめは今言った通りですが。

おそらくこのような方だからこの因子を大量に所持しているのでしょうね」

 

「トレーナーとしても不安ですが…まあ…本当に頑丈なら少し安心しました」

 

「とにかく健康面では全く問題はないようです。

引き続き競技者として頑張ってくださいね」

 

「おう、任せときな!」

 

 

結局、ゴールドシップの体には全く問題はなかったのだった。

行動自体は問題大ありではあるが。

 

 

 

 

 

Kの診療所では、メンバーが今回の件を話していた。

 

「へえ、ゴールドシップって破天荒だとは思ってましたけど、

ギャグ因子の大量保有者だったんですか。言われてみれば納得ですね」

前にスピカの練習を見学した時、

ゴールドシップだけがわけのわからないことをしていたことを思い出す富永。

 

「彼女は奇行で有名ですもんね。K先生と富永先生が会った時、

なぜか焼きそばを押し売りされたって言ってましたっけ。

今回は焼きビーフンですか。…あら、これとても美味しい…!」

お土産のゴールドシップ特製焼きビーフンを頬張る麻上。

 

「因子についてはまだ研究の途上ですからな。

先日はアグネスタキオンさんが因子強化の研究をしておりましたが。

ギャグ因子は便利ですが、我々医療従事者では通常は少量しか持ち合わせておりません。

なので相手の体質にかかわらず適応できる『医学』を学ぶことが重要なのですな」

村井は先日の一件以来、アグネスタキオンとちょくちょく情報交換をするようになっていた。

最近の彼女のトレンドは因子研究であり、村井もそれを少し手伝っている。

 

「そうっスね、僕たちは患者の体質に甘えるわけにはいきませんからね。

でもギャグ因子、あったらあったで便利でしょうけど」

 

「まあ便利かもしれんが、弊害もあるぞ」

そう言ってKは眉をひそめた。

 

「弊害…どんなものですか?」

 

「ギャグ因子の大量保有者は、ちょっとやそっとの問題をなかったことに出来る。

それは助かることだが、しかし問題があっても無事で済むという体質ゆえなのか…

『問題が起こりやすい』という運命的な何かがあるのだ―――」

 

 

 

 

 

 

とある公園でトレーニングの準備を行うウマ娘。

それはメジロマックイーンとゴールドシップだ。

 

「さて、ウェイトトレーニングを開始します!

今回は前回の1.5倍の重量の蹄鉄を用意いたしましたわ!」

 

ウマニウム合金製の蹄鉄を装着した重装靴を履くメジロマックイーンのそばには、

しゃがまされて動くなと命じられているゴールドシップ。

 

「おいちょっと待て!!!前回も言ったろ、これアタシ必要なのかよ!?」

 

「さて行きますわ! 1! 2! 3!」

 

「こいつ聞いてねえ!ヒエエエエ!!」

 

ゴールドシップの体をハードルのように扱い、

ドスンドスンと重い音を響かせながら跳び越える往復運動を行うメジロマックイーン。

 

「29! 30! 31!」

 

「た、頼むぜ…無事終わってくれよぉ…」

 

順調に回数を重ねていく中、そこに現れたウマ娘。

一緒に来ていたが、1人で近くを走り回っていたスペシャルウィークだった。

 

「マックイーンさん!ゴールドシップさん!

少し休憩しませんか?たい焼きを買って来たんです!」

 

「バッ…!!来るなスペ!!!やめろおおおお!!!」

 

「45! 46! 47…たい焼きですのっ!?」

 

たい焼き。

甘いものが大好物のメジロマックイーンはその言葉に気を取られ、

跳躍が弱くなってしまい…ゴールドシップの背中に鈍い音を立てて着地した。

 

「ウギャアアアア!!!!」

 

「あらっ、ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

痛みに悶絶するゴールドシップの横を通りかかったギャルウマ娘が、

『ウケる、ゴールドシップざまあ!』と言って走り抜ける。

それを聞いた途端ゴールドシップが起き上がり、そのウマ娘を元気に追いかけて行った。

 

「ここで会ったが100秒目!待ちやがれオラアアアアア!!!!!!」

 

「ギャーッ!こっち来んなし!!」

 

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