Pinkdama-is-awesome   作:てふてふぼうず

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7話/ナイトメア

 

 

 

ガッ

 

 

 

 分厚い扉がスライドする。

 

 行ってはならないと本能が告げる部屋へ、足を踏み入れる。

 

「『F-09-k21』…作業開始」

 

 俺は管理人の指示通り、アブノーマリティの作業を始めた。

 

 

 

 

 このアブノーマリティは、『F-09-k21(夢の泉)』と呼ばれている、ツール型のアブノーマリティだ。

 大理石で造られた噴水のような見た目をしており、きらきらと輝く水からは神聖さすらも感じる。

 

 

 管理人によれば、この泉が作業成功率低下の原因らしい。

 

 

 

「…綺麗だな」

 

 

 泉をじっくりと見ていると、その繊細な造りに目が向く。

 

 模様の描かれた、白く光沢のある台座。それが二段に重なり、上の段から透き通った水が溢れ、下の段へと注ぐ構造となっている。

 そして、先端に星の刺さった赤と白のマーブル模様の杖が、噴水の頂上に突き立てられていた。

 

 

「本当にこれが原因なのか…?」

 

 

 いや、管理人のことを疑うわけではないが、泉とこの現象がどう関係しているのか想像がつかない。

 …むしろ恩恵を与えてくれそうなものだが。

 

「……とりあえず、作業するか」

 

 グダグダ考えていても、答えは出なさそうだ。一旦今の考えは保留にして、俺は泉へと近づいた。

 

 

「…まずは水を汲んで…」

 

 

 作業方法は既に覚えている。泉の水を汲んで、少し飲むだけ。

 

 

 部屋に置いてあるバケツを手に持ち、泉を見たその時、

 

 

 

 

「ん…?」

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()

 

 

 

 それを疑問に思う前にはもう、俺の体は床を離れていた。

 

 

 

ダンッ

 

「があ…ぁ」

 

 

 

 

 

『中央本部に『ナイトメア』が出現しました。付近のエージェントは、至急鎮圧に向かってください』

 

 

 この放送を最後に、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!…ル…ん…

 

 

 

…エルさん!……

 

 

 

 

ダニエルさん!

 

「…!は、…え?」

 

「…やっと起きた…急いでください!メインルームでアブノーマリティが暴れてるんです!」

 

「お…おう。…そうか、俺は気を失って……助かった、Tela25」

 

「いえいえ、あなた方のサポートが、私たちオフィサーの役目ですので…」

 

「本当にありがとな。……よし…行くか」

 

「お気をつけて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は駆け足で廊下を進み、メインルームへとたどり着く。

 そこでは既に、職員たちとアブノーマリティによる激しい戦闘が行われていた。

 

 彼らがハンマーで殴り、銃を撃ち、槍で突き刺しているのは、星の模様をした青黒い球体──おそらく、こいつが『ナイトメア』だろう。

 

 その球体は宙に浮き、絶えず星形の弾を発射している。

 

「すまない、遅れた!」

「おせーぞダニエル!……っ!…すぐに加勢してくれ!あと少しでやれる!」

 

 ジョシュアたち職員に到着を告げると、俺は大砲を取り出し戦闘に参加する。

 

 改めて見ると、黒い球体の輪郭は既に揺らぎ始めていた。動きも、カクついているように思える。

 

 

もうすぐ鎮圧できる

 

 俺はそう確信した。

 

 

「よし、このまま…

「おい!攻撃くるぞ、避けろ!」

          …!」

 

 球体の動きが止まったかと思うと、次の瞬間。奴から三日月の形をした波動が放たれる。

 その波動は、何人もを巻き込みながら部屋を横切る。

 

「…絶対に最後まで気を抜けないな」

 

 どれだけ疲弊しようとも、相手はアブノーマリティ。一挙一動に注意しなければ、いつ命を落としてもおかしくない。

 

 俺たちは星弾と波動を躱し、球体へと攻撃をし続けた。

 

 

 

 

 

 

 攻撃を続け、奴の揺らぎが一段と大きくなったその時、

 

 

 

バババンッ

 

 

 

 突如球体が爆発したような音を出し、動きを止める。

 そしてフラフラと辺りを彷徨った後、

 

()()()()()()

 

 

「……なっ!」

 

 皆、鎮圧は完了したと思い警戒を解いていたが、この動きに気づくと再び武器を構え出す。

 

 

 球体は膨らみ続ける。

 

 星の模様は消え、球体は形を細長く変形させた。

 

 近づいていく。

 まるで、マントを身に纏った吸血鬼のような姿に。

 

 

 

 

 

 

「「…!」」

 

 突然、マントが開く。

 

 マントの中は、まさしく闇。ブラックホールのように一切の光のない闇が覗いていた。

 

「くるぞ、備えろおおぉ!」

 

 誰かが叫ぶ…と同時に、闇の中から無数の星弾が放たれる。

 

 星弾は壁、天井、床、人。辺りのもの全てに衝突し、破裂した。

 

 

 

 

 

 

「ぐ…ごほっ」

 

 俺は伏せていた顔を上げ、辺りの様子を見る。

 

 散乱した武器や瓦礫、大きくへこんだ壁や床。3階の通路は穴が開き、今にも崩れそうだ。

 

 

「…っ…あいつが…」

 

 上から俺たちを見下ろすのは、黒いサングラスに大きなマントを羽織った男のような姿をした怪物。

 

 奴はこちらを見たかと思うと、口角を吊り上げ…

 

 

 

パチンッ

 

 

 指を鳴らす。

 

 

 

『中央本部に『O-02-98(ポーキュバス)』が出現しました。付近のエージェントは、至急鎮圧に向かって下さい』

『中央本部に『T-02-99(空虚な夢)』が出現しました。付近のエージェントは、至急鎮圧に向かって下さい』

『中央本部に『O-02-k24(デデデ大王)』が出現しました。付近のエージェントは、至急鎮圧に向かって下さい』

『中央本部で『O-01-45(ペスト医師)』のクリフォトカウンターが0になりました。特殊能力に警戒して下さい』

『中央本部で・・・

 

 

 怒涛の勢いで流れる放送と共に、施設にけたたましいアラームが響く。

 

Second trumpet

 

 施設の危険を知らせるアラーム。その二段階目が発動している。

 

 

 

「……そんな…」

 

 

 この時、俺たちは初めて気がついた。『悪夢』との戦いは、まだ始まったばかりなのだと。

 

 

 




ロボトミ解説

オフィサーの名前…ランダムな文字と数字でつけられるらしい。大量に入社して、大量に(この世から)退社するから、気にしたことがある管理人は少ないんじゃない?

オフィサー…施設に大量にいる職員たち。大抵の管理人からの印象は、資源ゴミ以下。山田くんとか脱走したら、邪魔にしかならない。
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