あえる ヤれる アイドル『TRK26』全裸生活 作:添牙いろは
コスプレAV愛好家であれば共感してくれると思うのだが……何故脱ぐ!? もちろん、衣装が汚れたら困るとか、そういう事情はわからないこともない。だが、コスプレAVだぞ? そのすべてを脱いでしまったら本末転倒も
だからこそ、あの撮影は……けしからん……っ! そう、メイド☆スター・
あの事件が原因でしとれさんは店を辞めてしまい――彼女の所業については我々『ご主人様』の間でも様々な意見が飛び交っている。入れ込みすぎていた連中は、メイド失格、辞めて当然、と息を巻いていたが……ナニか勘違いしていないか? 確かに、メイドたちにアイドル的な側面はあったが、それでも彼女たちはあくまでメイドであり、俺たちは主人である。そこに恋慕の類の感情は挟むべきではなく……その接し方も、あくまで主従関係によるものであるべきだ。ゆえにむしろ、主人でありながらメイドに対して余計な一歩を踏み込んでしまったあの男こそ責められるべきであり……だからこそ、あの一件で俺のメイド熱が揺らぐことはない。メイド喫茶『Cheese O'clock』――未だに俺は、そこに通い続けている。彼女たちの主人として、残されたメイドたちの成長を見守るために。
だが……正直なところ、しとれさんが抜けた穴はやはり大きい。ミニライブも、何というか……本当にただのカラオケ大会のようになってしまった。それはそれで可愛らしいところもあるのだが、しとれさんの舞台に慣れ親しんでしまった者としてはやはりどこか物足りない。
店側としても同じ想いがあったのだろう。その証拠に――非常勤という形で、しとれさんは時折メイド喫茶のステージに戻ってきてくれていた。しかし、肩書きはメイドではなく――ストリッパー――喫茶を追われたしとれさんは、どういう経緯かストリッパーとして収まっていたのである。ストリップといえば、裸踊りを披露する盛り場だ。メイド喫茶にゲスト出演した際に脱ぐことはなかったけれど、きっと、劇場の方では脱ぐのだろう。最も盛り上がるシーンで、最も美しくも可愛らしいメイド服を。そんなものに、俺は興味が湧かない。主人たちの中には現在の職場に流されてしまった者もいるようだが……そんなものは、ご主人様の面汚しである。俺はメイドを愛する、メイドたるしとれさんのご主人様なのだ。
しとれさんが次に『Cheese O'clock』に来店するのはいつになるか――そろそろかと思っていたのだが、店の方ではなかなか告知が打たれない。そんな中、“別の店”で告知が――新歌舞伎町にあるメイドキャバクラ『メイドインヘブン』――こちらについてはしとれさんの後輩の湊ちゃんも勤めているため、当然チェックしていた。未確認情報として、密かにしとれさんが接客しているとの噂もある。正式なキャストとして登録はされていないところを察すると、ストリップ劇場との兼ね合いで色々あるのだろう。
だが、そのしとれさんが――期間限定で――しかも、スペシャルコスチュームで……ッ!?
これについて、俺には一抹の不安があった。そもそも、メイド服自体がスペシャルなコスチュームなのである。わざわざそこから着替える必要などあるか? いや、ない。スペシャルなメイド服にさらにスペシャルな追加など、まさに蛇足というものだ。
それに、看板こそキャバクラではあるが、その業務内容はお触りOKのセクキャバである。そんな店で……スペシャルコスチューム……となると……。
だが、俺はしとれさんを信じたい。メイド☆スターたるしとれさんが納得する形のスペシャルなコスチュームとは一体……?
それを確かめるため、俺は
ただ、露骨に同じ場所を巡回していると、その筋の人に怪しまれてしまうかもしれない。ここは、コンビニにでも入って買い物しているフリでもするか。ちょうどそこに一軒あるし。ごく普通の全国チェーン店が。もちろん他の客もおり、ちょうど女の人が出てきたところだ。
しかし――
俺の足はそこで止まる。決して、店の中に異変があったわけではない。異変はむしろ店の外に。その、出てきたばかりの女性客に。
凛として伸ばされた背筋。長い後ろ髪は頭の上で束ねてポニーテールに――そのシルエットだけで、わかる者にはわかるだろう。彼女は――
「しっ、しとれさん!?」
俺は思わずそのお尻に向けて呼びかけていた。俺の声は雑踏の中でも彼女の耳に届き、後ろ髪をなびかせながらふわりとこちらに踵を返す。
「もしや……岡島さま……?」
俺の目に狂いはなく、彼女は檜しとれさんだった。かつての職場を辞したいまでも、常連だった俺のことは覚えていてくれたらしい。やはり、彼女はメイドの頂点に立つメイド――メイド☆スターである。メイド喫茶から離れても、コンビニで買い物をしていても、メイド服を脱いでも――いや、メイド服を脱ぐだけならともかく、そこから別の服を着ることなく……というか、全裸でコンビニ……だと……!? しとれさんがストリッパーになっていたのは知っているけれど……いや、ストリッパーであろうとも舞台の外で脱ぎ散らかすはずがない。
ならば、まさかまた変な彼氏に乗せられて変なプレイを強要されて……と嫌な予感がよぎったが、彼女がカメラを気にしている様子もなく、それどころか不自然なまでに自然体である。まるで、狼狽している俺の方がおかしいほどに。だが、俺だけにしとれさんの裸が見えているわけではなく……ふっくらした胸は公証どおりのDカップ。流出動画で見たとおりの綺麗な乳頭――薄暗い店ではなく太陽の明かりに照らされているからか、その桜色はさらに美しく見える。腰はほっそりとくびれており、そこから膨らむお尻の線も柔らかい。彼女は姿勢が良いため、張り出したところがより強調されるようだ。そんなしとれさんに、道行く人誰もが注目している。それは、しとれさんの美しさによるものだけではないだろう。
一応知らぬ仲でもないからか、しとれさんは少し照れながら事情を説明してくれた。
「ご心配なさらずに。この街では……えー……女性が
いや、むしろ日本で一番危険な場所だろうに。だからこそ逆に、一周回って安全になった……? だからといって、そのような姿で出歩くなんて!
納得していない俺に対して、しとれさんは話してくれた。白昼堂々、新歌舞伎町で全裸買い物していた理由を。
「実は――」
ストリップ劇場の企画で――!?
「そんな……バカな……!?」
一ヶ月間全裸で生活――しかも、できるだけ普段どおりに……!
もはや、どこからツッコんでいいのかわからない。なので、常識的なところはさておき……俺は、最も個人的な意見を彼女にぶつける。
「だからといって……メイド服を脱いでしまったのですか……ッ!?」
ストリップ劇場で……メイドのすべてを捨ててしまったのですか……ッ!?
そんな俺の訴えに、しとれさんが怯むことはない。ただ、静かに右手を頭にかざす。
「メイドの魂は、ここに宿っておりますので」
――それで――その一言で、俺はしとれさんが言いたいことのすべてを理解した。
確かに、メイド服には亜流が多い。メイド服と称した水着や下着など、もはやただの肌の露出だ。
しかし、そんな中でもひとつだけ変わらないものがある。それが、しとれさんの指し示す――フリル付きカチューシャ――ヘッドドレスだ。どんな変わり種でも、これを外している事例は聞かない。いや、外してしまった時点で、世間からはメイド服として認識されないだろう。
だが逆に、そのただひとつさえ掲げていれば――たとえ裸であっても、それが裸の“メイド”であると何となく感じられる。他のコスチュームで、ヘッドドレスを着けていることはない。つまり、しとれさんはメイドの魂を失っていない――ストリップ劇場で全裸になっているとしても……!
しとれさんの言い分は理解できるし、説得力もある。だが……俺は……俺の心は、納得できん……っ!
「でも、俺は……俺は……メイド服が好きですッ!!」
もちろん、いわゆる亜流に心惹かれることもないこともない。だが、それでも……やはり魂の中心にあるのは、白いエプロンを下げた濃紺のメイド服なのだ……ッ!
「はい、私も大好きです」
しとれさんはあっさり同意した上で――
「けれども、ご主人さまの
意地悪そうに顔を近づけ――死角になった柔らかな胸の陰で――逃げられなかった。俺のソコが、しっかりと握りしめられているのに。
「ご主人さまが求める“ご奉仕”はナニでございましょう?」
しとれさんの両手がもごもごと動いている。俺はそれに……されるがままだ。何しろここは、新歌舞伎町――全裸の女子が歩いていても許される街――ならば――……
***
――気づけば俺は――コンビニの前にへたり込んでいた。しとれさんは、オープンの準備がある、と言って先に発ってしまった……ような気がする。うろ覚えだけど。
俺は……俺は……一体、ナニをして……いや、ナニをされていた……? シャツも乱れ、ズボンも半開きで……それを、正す気力さえ湧かない。もし、俺を動かす気力が残されているとすれば、メイドだけだ。メイドのためならば、彼女たちの主人として立たなくてはならないだろう。
そう……今日は、メイドキャバクラに……だが……スペシャル……コスチューム……? 一ヶ月、全裸で過ごさなければいけないしとれさんが、メイドキャバクラで……スペシャル――
具体的に、ナニを想像したということはない。だが俺は、夕暮れの空に吸い寄せられるかのように立ち上がっていた。
いまでも、全裸の――メイド服を脱ぎ捨てたしとれさんをメイドとして認めて良いものか――俺の中の迷いは消えない。だが――メイドか否かはさておき――彼女は美しかった。そして、俺はこうして立ち上がっている。ゆえに、俺のカラダは――いや、
だが、頭では納得できていない。だから、向かう必要がある。陽もすでに落ち、店も開いているはずだ。いまこそ、その真偽を見極めよう。自らの魂に偽ることなく。