Re:大空スバルの異世界生活(執筆停止中)   作:飽和水溶液_pixiv

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第一章 05話 はい、チーズ!

 

 

「……物々交換?」

 

 

スバルの突拍子もない発言に、苦笑いでシオンが聞き返す。

しょうがないでしょ、スバルお金持ってないんだから。

 

 

「そ、そう!物々交換!実はスバル、今ちょっとまとまったお金持ってなくて……それでね、お金じゃなくて、他に価値のあるものと交換できないかなって……どうかな?」

 

 

「まぁ、シオン的には問題ないけど……ただ、交渉相手はあくまでぺこらだからね。ぺこらが納得するものを提示できるなら大丈夫じゃない?」

 

 

なるほど。とりあえず、盗品蔵内のルール的にはありと。ただし、持ち込み主が納得できるものじゃないといけないんだね。

 

 

「ちなみに、物々交換する際にスバルちゃんが提示する物の鑑定はシオンがすると思うけど大丈夫?どっちかに贔屓したりしないし、はっきり値段を言うけど、その代わり正確性にはかなり自信あるよ」

 

 

そういわれ、そのことにも納得するスバル。ここ盗品蔵ではきっと、こういうことが頻繁に行われるんだろう。持ち込んだ盗品の査定をしたり、その査定された品物をまた売りに出す。時には売り手と買い手による直接交渉なんかもして、その際にシオンが公平を期すために立ち会うんだろう。こういう場所は信用第一だろうしね。

 

 

「うん、大丈夫だよ。むしろ、ちゃんと価値を見てくれる人がいてくれた方が心強いし」

 

 

「へー、随分な自信だね。ちなみに、そんなスバルは一体何を提示するつもりなの?」

 

 

そう問われ、スバルは自信満々に立ち上がる。

スバルだって、何も考え無しに物々交換といったわけじゃない。お金も特殊スキルも何も持ってないスバルが唯一、この世界でスバルだけが持ってる特別なものがある。正直、ここで売りに出しちゃうのはもったいない気がするが、背に腹は代えられない。

そしてスバルはここぞとばかりに、この異世界に持ち込めた数少ない私物、『スマホ』を取り出した。

 

 

「じゃじゃーん!ここに取り出したるは、異世界の技術で作られたアーティファクト!『スマホ』しゅば!」

 

 

そういいながら、スバルが普段使っている何の変哲もないスマホを掲げた。

ちなみにスバルが異世界転生したときに持っていたものは、今右手で掲げているスマホ、着ているジャージにがま口のお財布。あとは部活で使う用のホイッスルぐらいだ。

 

 

「……”すまほ”?なんなの、その四角い板」

 

 

スバルがあまりにも堂々としていたせいで、反応が遅れた様子のシオンが聞いてきた。

よくぞ聞いてくれました!

スバルは待ってましたと言わんばかりに、スマホの説明をしだした。

 

 

「こちらの一見ただの板に見える魔法のアイテム、スマートフォンはね……」

 

 

そこまで言って、スバルは言い淀む。

あれ、そういえばこの世界でスマホを持ってるのってスバルだけだよね?だから電話として使えないよね。それに、そもそも電波もネットも繋がらないから、スマホとしての機能ほとんど使えないよね……。

 

 

「魔法の、アイテム?どういうものなの?」

 

 

スバルがどうやって説明しようかと考え込んでいると、シオンが続きを要求してくる。

ま、まずい……スマホってだけで価値があると思ったけど、こっちの世界に無いものなんだからそもそもの価値を説明できない……。

そう思いながらなんとかこの場で、このただの板の価値を生み出せないかとスバルはスマホの画面を滑らせる。な、なにかないかな……。

 

すると、デフォルトで入っているとあるアプリに目が行く。

こ、これだっ!!

 

 

「……スバル?どうしたの?」

 

 

いきなり黙りだしたスバルを訝しんだ目でシオンが見てくる。

そんな様子のシオンに、スバルはスマホを向けた。

 

 

「ちょ、何のつもり……」

 

 

「シオン笑って~!はい、チーズ!」

 

 

 

 

 

 

カシャッ。

 

 

 

 

 

 

お馴染みの掛け声とともに、スマホの基本機能『カメラ』が作動する。フラッシュ焚いちゃってごめんね。

 

うん、最初に見た時から思ってたけど、シオンって結構かわいい顔してるよね。一部残念だけど、洋服も際どいことを除けばすっごい可愛いもんね。

 

 

「ちょっと!いきなり何するのよ!変なことしたら魔法で消し炭にするわよ!」

 

 

「ふふん、まあまあ落ち着いてよ……それよりも、見てよこれ!」

 

 

眩しさや音などの、初めて起こる現象にご立腹な様子のシオン。しかし、それにはお構いなしにスバルは先ほど撮ったシオンの写真を見せる。

 

 

「……?何これ、私?」

 

 

「そーだよ!このスマホはねぇ、空間の時間を切り取って、この板の中に凍結して保存することができるの!」

 

 

咄嗟にそれらしい説明が出てよかった。まあ解釈次第では嘘は言ってないし、この世界に写真がないなら時間を切り取ったって言っても納得するよね。

 

 

「ほ、ホントだ……これ、すごいじゃんスバル!ミーティアなんて久しぶりに見たよ!」

 

 

「ミーティア?」

 

 

なにそれ。また知らない単語が出てきたな。

 

 

「ミーティアって言うのはね、魔法が使えない人でも魔法が使えるようになる器具の総称なの。人族以外にもゲートが開いていない人が一定数いて、そういう人達でもそのミーティアに宿った特定の魔法なら使用できるって代物!」

 

 

なるほど、とスバルは納得する。つまりはミーティアがあればスバルも無条件に魔法が使えるってことか!

まあ、今持ってるこれはただのスマホなんだけどね。

 

 

「しかも、かなり精巧な魔力で編まれているみたい。この私でも魔力の起動を検知できなかったわ」

 

 

そういわれ、スバルは一瞬ドキッとする。ミーティアとは本来、魔法の起動を媒介する装置のようだ。つまり、ミーティアを使う際にも他の魔法と同じように魔力の起動とやらが起こるんだろう。しかし、このスマホからはそれが感知できなかったと。ってそりゃそうだ、だってこれスマホだもん。

 

だが、それをシオンは自分でも感知できないくらい精巧な作りだったからと勝手に納得してくれたようだ。

 

 

「スバル。それ、本当にすごいものだよ。それだけの代物なら、欲しがる好事家は大勢いるわね。私なら純金貨5枚は下らない価格で捌いてみせるわ」

 

 

純金貨、という単位がスバルにはよくわからないが、シオンの言いようからかなりな高額であることは理解できる。

 

 

「これなら、かなり優位に交渉できるんじゃない?シオンとしても、是非これはうちに卸してほしいな」

 

 

そういいながら、シオンが具体的な交渉方法と提案をしてくれた。

 

まず、ぺこーらが持ち込んでくるらしい徽章と、スバルの持つミーティアスマホを盗品蔵に卸す。そして、その際にぺこーらの方に関しては完全に盗品蔵に売るのではなく、シオンを仲介人とし、自分の商品を売り出すという形をとってもらう。そして、後はぺこーらの言い値でスバルがその徽章を買い、余りをスバルに渡すという事だ。盗品蔵で商品を売り出すという形をとれば、よりその商品を欲しい人に、より高価で売り出すことができるためぺこーらも納得するだろう、という事だ。

 

 

「まあ、ぺこらが持ってくる徽章がどれだけの価値があるものかはわからないけど、スバルから聞いた情報で考えるなら流石にそのミーティアより高価なことはないと思うし、よっぽどぺこらに嫌われない限りは上手くいくと思うよ」

 

 

なるほど、高値で売れるかという事は確かに重要だが、他にも売り手が売りたい人に売るという事も大事なのか。

まあでも、ぺこらならよっぽどのことがない限り大丈夫だよ、とシオンが励ましてくれる。

 

 

「さて、それじゃあもしそれをうちに売ってくれるなら、スバルももうお得意様ってことだね。ぺこらが来るまでそこに座ってお話でもしてようよ、粗茶くらいなら出すよ」

 

 

そうシオンに促され、スバルは素直に応じる。

 

招かれたカウンター席に座ると、シオンが本当の意味での粗茶をくれる。

なにこの色、飲んで大丈夫なのか……?

 

 

「そういえばスバルって、かなり珍しい格好してるよね。旅の人?」

 

 

流石に飲める気のしないお茶を横目に、シオンがスバルのジャージについて聞いてくる。

もうこの反応にも慣れたな。

 

 

「まあ、ある意味では旅人かな。オルタナ王国にも着いたばっかりだし。……この格好、確かにこっちでは珍しいのかもしれないけど、スバルの故郷では結構普通の服なんだよ」

 

 

「へーそうなんだ。どう?オルタナ王国に来た感想は」

 

 

シオンはこの珍しい洋服の方にはあまり価値を見出さなかったようだ。

 

オルタナ王国についての感想かぁ。スバルにとっては初めて見るものばっかりで、すべてが新鮮だったんだよね。繁華街の方もそこに住む人たちはともかく、雰囲気は活気にあふれていて気持ちよかったし、それにスバルはこの貧民街の感じも決して嫌いではない。むしろ、こういうところの方がこの世界に生きる人々の工夫や生き様が見れて、興味深いくらいだ。

 

 

「……うん、いい国だと思うよ。他にいろいろな国を見てきたわけじゃないけど……スバルはこの国、結構好き」

 

 

「そっか……よかったね。」

 

 

シオンは何か言いたげだったが、それでも概ねはスバルの言う事に共感できるといった反応を示す。

まあ、こういう場所に住む現地人にとっては住みにくいところなのかもしれないけど。

 

そう思ったところで、スバルはさっき疑問に思ったことを思い出した。

 

 

「そういえばシオン、さっき純金貨がどうとか言ってけど……この国の通貨ってどうなってるの?」

 

 

「え、スバル純金貨知らないの?旅人としてそれはちょっとやばいんじゃ……いいよ、教えてあげる。小銀貨一枚でね♪」

 

 

お金取るのかよ、がめついな。とはいっても、それがいくらなのかわからないけど。

それに、お金について知らないとスマホを売った後のお金の使い方もわからないしね。

 

 

「わかったよ、それでいいから教えて」

 

 

「……価値分かってないのにいいんだ。まあでも安心して、うちはぼったくりとかだまし商法は絶対に許さないからさ。すべて適正もしくは公平価格。信用と信頼の盗品蔵だよ♪……さて、じゃあまず基本的なことからだけどその前に、スバルは計算できるの?」

 

 

スバルの不安をシオンが否定してくれる。本当にしっかりしてるな。その上で魔法も使えるなら、確かに優秀なことには変わりないのかもしれない。

 

計算についてだが、もちろん問題はない。流石に数列やベクトル計算とか言われたら自信ないけど、所謂買い物ができるようになる算数という事だろう。それならば、小学校を既に卒業しているスバルには造作もないことだ。

 

 

「うん大丈夫だよ。とりあえず、お金の種類と一般的な価値について教えてくれれば」

 

 

「おっけー!じゃあ最初は通貨についてだね。まず、ここオルタナ王国とその周辺国で普及している通貨は、小さい方から銅貨・小銀貨・銀貨・純金貨・大金貨の全部で5種類があるの」

 

 

なるほど、とスバルは脳内のメモ帳にメモを取る。

日本では硬貨と紙幣の両方を合わせて約9種類だが、オルタナ王国ではすべて硬貨の5種類という事だ。

 

 

「次に物の価値についてだけど、わかりやすいのでいけば”リンガ”かな」

 

 

「リンガ?」

 

 

なにやら聞き覚えのあるような単語に、スバルは首をかしげる。

スバルが聞き返すと、シオンが「あ、そっか。リンガってホロミス公国の名産品なんだっけ」と言った。ホロミス公国も当然初耳だが、言葉を遮らないようにする。

 

シオン曰くリンガとは、赤くて丸くて甘い果物のことだそうだ。つまりリンゴってことだよね。

 

 

「この時期なら品質にもよるけど、リンガ一個だいたい銅貨2枚ってところかな」

 

 

そういいながら、シオンが色々な物やサービスの基本料金を教えてくれた。スバルの知らない物も何個かあったが、概ねの硬貨の価値が理解できた。

 

 

シオンが教えてくれたことと、スバルが知る日本円の価値とを比較してみると、

 

銅貨  =    100円

小銀貨 =   1000円

銀貨  =   5000円

純金貨 = 100000円

大金貨 =2000000円

 

おおよそこんな感じだ。

つまり、このシオンの授業料は1000円という事になる。為になったけど、若干高くないですか?

 

 

「……っていう感じかな。大体理解できた?」

 

 

スバルは素直に頷く。お金をもらっているからとはいえ、ちゃんと丁寧に教えてくれてスバルも助かった。

 

 

「じゃあスバルに問題です。……一つ銅貨2枚のリンガを5コと、一つ銅貨3枚のベドウを7房買いました。一番少ない枚数でお釣りの無いように払うとすると、何を何枚払えばいいでしょうか!」

 

 

シオンが少し得意げに問題を出してきた。どうやら、すぐにわかった気になっているスバルをからかってきているようだ。シオンさんや、今さっき仕組みを理解した相手にその問題は少々難易度高いのでは?

 

だが、いくら難易度が高いといっても、あくまで小学生レベルだ。現役高校生であるスバルには当然簡単である。

 

 

「小銀貨3枚と銅貨1枚」

 

 

「……正解」

 

 

スバルがなんともない顔で即答すると、シオンが面食らったような様子で答えが正しかったことを告げる。

直ぐに問題を解かれてしまったことに不満がある、というよりは答えの導き出した速度に驚いているようだ。

 

 

「すごいねスバル。今までの説明だけで計算機も使わずに即答できるなんて……もしかして商人の家系だったりするの?」

 

 

「いや、そういうわけじゃないよ。でも、計算はできるって言ったじゃん」

 

 

「確かに言ってたけど、そんなに早くて正確なのはすごいよ。この国じゃ普通の大人でも一個一個足していくか、計算機を使うのが一般的なのに」

 

 

計算機、ときいてスバルは勝手にそろばんのようなものを想像する。流石に電卓なんてものはないよね。ミーティアで似たようなものならあるかもしれないけど……

 

 

「んー日本では義務教育で習う事だけど、こっちではあんまり教育に力を入れてないのかな」

 

 

まあ確かに、そもそも生きることに必死なこの世界の人たちは勉強なんてしてる余裕ないもんね。それに、魔法や異種族たちはすごいと思うけど、技術力や科学力という意味では流石に地球の方がすごいし。案外路頭に迷っても、商人としてやっていけるかもなぁ。

 

 

その後も、この国についてや貧民街のことについて雑談程度にシオンに話を聞きながら、ぺこーらが到着するのを待っていた。

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