「え? ジャージじゃ入れないのかい?」
「いや、そりゃそうでしょうよ。学生服は礼服扱いになるけれど、学校指定のジャージは礼服扱いにならないに決まっているじゃない」
いやー、堪能したよ、クエスト・オブ・ソウルゲート2。
二人プレイが可能なんだけれど、二人プレイじゃないとステージ1から一人じゃ積むってクソゲーっぷり。
スイッチを2個同時に踏まないとゲームオーバーになるのに上のボタンは微妙に見え辛いとか、一秒でもずれるとアウトとか。
まあ、でも全ステージ10の内、7まではちゃんと作られていたのは評価してあげようじゃないか。
支離滅裂で三個目の台詞の時点で矛盾しているような五流のストーリー展開もだし、ステージ八だってボスの体力を半分まで削った時に入る小学生が三秒で考えたみたいな内容のテキストが途中までは入ったしさ。
「じゃあ、マウントレディだけでパーティーに出たら? 僕はルームサービスを頼むからさ」
「私も堅苦しい場は面倒なのよね。でも、お偉いさんに顔見せする機会だし……」
「ぶっちゃけご飯の前のスピーチとか凄く面倒」
「分かる」
部屋に持ち込んだ据え置き型ゲーム機で散々クソゲーを楽しんだ頃、パーティーの開始時刻が迫って来たから学校指定のジャージに着替えたんだけれど、ヒーロースーツに着替えたマウントレディに駄目出しされたんだけれど、もうパーティーとか出なくても良くない?
ジャージってのは着心地も動きやすさも他の服よりもずっと上で、普段着にもパジャマにもなる優れものだ。
其れを着ているからと参加できないなら参加しなくて良いやとメニュー表を開けば、マウントレディも冷蔵庫で冷やしていた缶ビールを開けていた。
「よく考えればオールマイトが居る時点でデビュー一年目のサイドキックなんて印象に残らないだろうし、堅苦しい場で食事するよりもジョン君眺めながらする食事の方が良いわよね。取り敢えずビールの追加と枝豆や唐揚げっぽいの注文しといて」
「僕は血の滴る感じの料理が……うん?」
どうせならこの機会にと持ってきた映画『シン・ヨコハマンvsシン・ヨコハマシャーク2』のDVDを詳しい内容をマウントレディに教えずに再生しようとした時だった。
ゲボという概念を映像化したとされた一作目より更に悪い意味でパワーアップしたこの作品、なんと何かの間違いで三枚だけDVDになったんだけれど、タイトルが出た瞬間に緊急事態を示すアラートが鳴り響いた。
「え? この映画の糞っぷりに反応した?」
「そんな訳無いでしょ。てか、そんな映画を再生するんじゃないっての!」
この人も打てば響く感じで面白い、俗物なのが特に良い。
欲望を包み隠さない明け透けな所が良いんだ。
「にしても緊急事態じゃルームサービスとか無理よね? お菓子とかは少し残ってるけれど晩御飯には足りないし、パーティー会場行っちゃう? 他のヒーローが居る場所の方が安心だって口実はあるわけだし、ジョン君連れて行きましょうか」
いえー! ジョンを堂々と会場に連れ込めるし、デイビット博士みたいに個性を研究させて欲しいって言ってきても事態に不安な演技をすれば楽々スルー可能だね。
「何かあっても責任とってくれる生けに……立派なヒーローが近くにいるし」
「絶対生け贄って言おうとしたでしょ、アンタ……」
ぶっちゃけホークスも彼女に隠れて責任を全部押し付けて良いって言っていたんだよ。
戦闘で建物を破壊して、ホークスやトゥワイスさん達の胃を破壊しているそうだから……。
そんな会話をしている僕達の前で停まったエレベーター、出て来たのは顔を隠して武器を持った二人組だ。
装備からして警備員って訳でもないし、マウントレディも同じ意見みたいだけれど、彼女の個性は巨大化だから室内じゃ使えない。
「ちっ! こんな所に未だ居やがったぜ」
「二人と一匹纏めて縛って適当な部屋に転がしておくか」
だから二人の発言で警報の原因だと確認した時、彼女は軽く頷いた。
さーて、今は夜だし、どれを使うかは決まっているよね。
武器を構え、僕達を脅そうとする彼等は……。
「えー? とんだ糞上司じゃないか、ウォルフラムって奴」
「まあ、俺達も人柄に惹かれて手下やってる訳じゃないからな。強いから甘い蜜を吸いたくて従ってるんだ」
「それで博士と助手を利用して個性増幅装置を奪う気なのね。でも、ヘリに全員乗れるの? 船で逃げるって難しいだろうし」
「そうだよなぁ。俺達だけで船に乗せて囮にする気じゃねぇのか?」
並べたお菓子に飲み物、そして全員パジャマ姿。
僕達は今、パジャマパーティーの真っ最中なのさ。
これこそ僕の能力の一つで夜にしか使えない割に出力も低い洗脳系の『強制パジャマパーティ』
意思が強い人には寝る時の姿にするしか出来ないし、ぶっちゃけ本当に要らないけれど、今回は役に立ってくれたよ。
曾お祖母ちゃんも同じ能力が出たらしいけれど、ぶっちぎりで要らないって言ってたし。
あの人と僕は個性が同じでも能力は被ったり被らなかったりだし、何か条件でも有るのかな?
ユルユルでフワッフワな空気の中、武装していた二人組や僕達はパジャマパーティの名の通りに寝る時の服装で、マウントレディは何故か出勤時に着ているスーツ姿。
「社会人には色々有るのよ。詳しくは聞かないでちょうだい」
多分夜遅くに帰って寝落ちしたんだろうって気が付いたけれど、僕は頼まれた通りに何も聞かない事にした。
「それにしても島全体の警備システムを掌握しようなんて凄い事態になっているなあ……」
もう良いかな? この二人組は組織の中じゃ下の方みたいだし、何人かの個性を聞き出したから用は無い。
ジョンなんてお菓子をバクバク食べてお腹が満たされたのか夜景を窓から眺めているし、カロリー過多だから明日以降の食事をダイエットメニューにしなくちゃね。
「解じ……」
「ヌォーーーーー!?」
解除して叩きのめそうとした時、突然ジョンの叫び声が響き渡る。
どうしたのかと僕達が窓に視線を向ければ僕達の居る建物から少し離れた場所に黒い霧が局所的に発生して、中から全裸の巨人が這い出して来た。
「マウントレディの親戚?」
「いや、多分個性が被ってるだけね。アンタ達の仲間?」
二人に視線を向ければ呆然とした様子で首を左右に激しく振っていて、これは本当に知らないっぽいね。
巨人はセントラルタワーに向かって一直線に向かい、間に有る建物やオブジェを薙ぎ倒して警備ロボットの攻撃を意にも介さず地面さえも破壊しながら突き進んでいるし、ヒーローって訳でもないのか。
「攻撃を弾いている訳じゃないのかな?」
そもそも黒い霧って例の危険思想の過激派変態集団ヴィラン連合の仲間っぽいしさ。
「薬でハイになってるとかかしら? ……はぁ。取り敢えず私が行くしかないわね」
味方じゃないと判断した瞬間には二人組を叩きのめして能力を解除して気絶させた所でマウントレディは嫌そうな顔をしながら窓を開いて飛び出そうとする。
「ちょっと待って。戦いになれば被害が凄まじいけれど、僕に被害を減らす案がある」