ヴィラン連合の黒幕であるAFOによって教育された配下であるギガントマキア、一度は今生の別れを告げられたにも関わらず再び指令を与えられた彼の心は歓喜に震え、タワーに甚大な被害を出せという命令を達成すべく猛進する。
全ては主のために!
その主からすれば胃への甚大なダメージを与えるストレスを解消する為にオールマイトへの嫌がらせ目的だったのだが、少しだけ予想が外れてしまった事がある。
「止まりなさい! 私はヒーローよ! 止まらないのなら取り押さえるわ!」
「蝿……」
巨大化のみがギガントマキアの個性にあらず、巨体を省エネで動かせる個性や頑強さを上げる個性、土を掘り進める個性など多くを与えられ、例え自分と同等のサイズ、いや、
「じゃまだ」
「あっ、そう。警告はしたからね」
故に鎧袖一触、撥ね飛ばして目標に向かおうとした所でギガントマキアは己が小さくなって行くのを感じ、一瞬動きが鈍る。
「いや、ちがう。これは……」
「クソデカ光線+巨大化。食らいなさい。期間限定超必殺……」
同じく地に足をつけた相手を見上げるのは少年期に親の身長を追い越した頃以来。
今の巨体を得てからは宙に浮くか自分がひれ伏した際にAFOに対してのみで……。
「エベレストスタンプッ!!」
今まで彼が踏みつけて来た蝿当然の相手と同じく、圧倒的な巨体と重量、そしてパワーの前に彼はなす術もなく踏み潰されるだけ。
その名の通りに世界最高峰の山が真上より迫り来るような錯覚さえ与える技。
これは蟻と人の勝負、周囲一帯を激しく揺らす踏みつけには流石のギガントマキアでさえも耐えきれる筈が無い……。
「まだだ、主は一”もうお前を可愛がれないのが残念だ”と言ってわかれた。だがっ! 主はふたたび……」
……かに見えた。
その狂信的な忠誠は、己の肉体の限界を超えたダメージを受けて尚動く。
マウントレディの超巨大な肉体を支える足を徐々に持ち上げ始める程に彼の執念は凄まじいのだ。
「え? 何かペットでも捨てるみたいな言い方だな、それ。どこの有閑マダムなのさ、君の主って」
だが、その背中に小さな手が触れる、それで勝敗は決した。
ギガントマキアをギガントマキア足らしめていた個性は塗り潰され、巨人がいた場所にいるのは頑強さを失い、痛覚の軽減を失い、抵抗も逃亡も全て封じられたマーメイドドレスの巨漢。
因みに色はマリンブルー、ヘソの辺りは穴が空き、ロングスカートには深いスリットが入って逞しい足が覗いていた。
AFOの計算ミスはヒーローに興味が無い彼女がこの場所に来る筈がないと計算にいれなかった事と黒霧が万が一捕まらない様にと即帰らせた事。
ペットに頼まれて来ていたという予想外の出来事に本来は思い当たった筈だったが、胃痛が彼の思考を鈍らせ、更なるストレスへ繋がる事を今の彼は知りもしない。
「うっしゃっ! 大勝利!!」
「地面の陥没とか振動で発生した被害とか彼がダメージ深刻で死んじゃわないかを除いたら大勝利だね」
「多分生きてるし、被害は不可抗力だから問題無いわよ、多分。そ、それにお仕事の最中って事で最先端の技術への被害の責任は事務所って事で……うん」
全身の骨がボッキボキって感じだし、医務室に連れて行きたいけれど……うーん。
ぶっちゃけ彼が死のうが別に良いし、見張りとか医務室に行く手間が省けるけれど、死んだら死んだらで……。
「仕方が無い。僕が死のう」
「え? いや、何を……」
「強制更正催眠だよ。負担が大きいから夜の僕でさえ……ほら」
気を失った元巨人に催眠を掛けると同時に僕の体は灰になって崩れて消えて行く。
ふーん、これが自己の完全消失……死ぬって感覚かあ。
「じゃあ、打ち合わせ通りお願いするよ、マウントレディ」
こうして僕は……。
「あっ、分身が死んだ」
タワーの通気孔の中を霧になった体で進んでいた。
え? 今消えたのは分身だよ?
本来負担が大きい強制更正催眠は分身には使えないんだけれど、暫く分身が出せないってデメリットを支払えば夜だけ使えるんだ。
魔法少女化の操作権は共有しているから露出狂のドMおじさんの個性は封じたままだし……。
消える寸前にマウントレディの”分身だからってアッサリし過ぎでしょ!?”とか事前に伝えて有るのに落ち着きが無いんじゃないのかな?
トゥワイスさんだって似た感じじゃないか、あっちは自分も本物って認識らしいけれど。
「おや、彼等は……」
僕が様子を伺っているのは植物園みたいなエリアだけれど、エレベーターから現れたヴィランらしき二人が隠れている緑谷君達を探している所だった。
あー、はいはい。
成る程納得即理解、オールマイトが人質で動けないから自分達でどうにかしようって事か。
魔法少女の個性を得たとはいえ、飛行以外じゃ殺傷能力が高過ぎて役に立たないメリッサさんを連れているのは警備システムをどうにか出来るって事か。
「居るのは分かってるんだぞ。出てこい、餓鬼共!」
「うん、出て来たよ」
「「なっ!?」」
呼ばれたのは僕じゃないけれど、呼ばれて飛び出て即参上。
背後に姿を見せた僕に二人組は驚いて振り返り、既に僕が両手を二人に向けて伸ばしている。
「どっ、ぐぎゃっ!?」
何処に隠れていた、とか叫ぼうとしたんだろうけれど、叫ぶ前に異形型個性の方は真上からの念動力で押し潰して陥没した床に埋め、もう一人は個性を使おうとする前に指先で顎を掠らせる。
それだけで男は錐揉み回転をして飛んで行き、顔面から床に落ちたんだけれど指先が触れた時点で顎の骨が砕けるのが伝わって来たよ。
「おっと、ごめんごめん。力を入れすぎた。まあ、聞こえちゃいないか」
怪力のブーストは加減が難しく、気を失った男の様子からして完全に粉砕してしまっているらしい。
「もう出て来たら? 事情は彼等の仲間からパジャマパーティの時に聞き出したから知ってるよ」
まあ、別に死んでいないなら別に良いかと隠れている彼等に声を掛ければ少し困った様子で出て来たんだけれど……。
「質問良いだろうか! パジャマパーティで聞き出したとは一体どういう事だ!?」
「って言うか、どうやって此処に来たのさ」
「マウントレディは居ないの?」
「おっぱいのサイズ教えてくれ」
「さっき凄い振動があったけど何か知ってる?」
矢継ぎ早の質問だ、面倒。
「大体僕の能力でやった。さっきの振動はヴィラン連合の仲間らしい奴の愛人らしい全裸の巨人とマウントレディの戦いの影響だよ。因みに勝った」
変な質問は無視するとして……事件の真相を教えるべきかな?