「何だよ、お前達もヒーロー志望か?」
痛々しい、そんな言葉を数回に抑えた僕達はプッシーキャッツ所有の別荘にまでやって来たんだけれど、道中で話に聞いていた洸太君とやらが胡散臭い物を見る目を僕達に向けていたんだけれど、そもそもヒーローの衣装って個性発現以前のコミックのコスプレみたいなものだし、インパクト重視で衣装を決めちゃうのは仕方がないんだよね。
ほら、引っ掛けたりしてもいけないから肌を隠しつつじゃピチピチタイツ(特殊素材)になるのは必然って事で。
「え? どうして僕がヒーローを目指さないといけないのさ。目指す動機を理解はするけれど共感は出来ないよ」
「私なんて保釈中の凶悪犯なのですよ、がおー」
姉さんったら態々目線を合わせた上で八重歯を剥き出しにして軽く掴みかかるみたいなポーズとかノリノリだなあ。
少年院でどんな目に遇っているのか面会だけじゃ分からないし、少し心配だったけれど姉さんは姉さんで良かったよ。
「そ、そうか……」
「そうなのさ。僕や姉さんはぶっちゃけ超絶究極に優秀な個性だし身体能力も運動神経も高いんだけれど、価値観がだいぶ違うからね。普通の子みたいにヒーローに憧れはしないんだ」
「そのせいで両親からは”人間じゃない化け物を産んじゃった”とか言われてましたけれど、私は裏ちゃんとジョンがいてくれたらそれで良いし、他人の価値観で評価やら同情はノーサンキューなのですよ」
「「ねー」」
「……おーい。ドン引きされてるぞ、お前ら。かくいう私も軽く引いてる」
「ふーん。じゃあ、お詫びに少年には世界一可愛い生き物を撫でる権利を与えようじゃないか。ネットで大人気のアルマジロのジョンだ」
「ヌヌ」
バーニンの言葉は今一理解出来ない、だって異形系の個性持ちへの迫害や親族からの虐待なんて個性が広まりきっていない時代から続いている事じゃないか、何なら肌の色や生まれつきのハンデでさえ該当するんだ。
僕と姉さんは互いが味方で理解者で、だから僕みたいに社会に適合しつつ好き勝手に楽しむ方法を模索する程に器用じゃない姉さんだって気にしていない。
受け入れてくれない人は、社会の構造は、自分に芽生えた価値観や衝動は……それら全部揃って
性格ドブカスなハイスペック吸血鬼と吸血フェチのヤンデレサイコな僕達美少女姉妹は現代社会の普通にはなれないけれど、別にそれで良いんだよ。
「ヌヌン」
「え? もうお腹が減ったのかい? まだお昼には早いけれど……」
プッシーキャッツの登場の後、描写はしていないけれど崖から荷物も無しに落とされたヒーロー科の生徒達。
正午までに到着しないと御昼ご飯抜きだけれど絶対無理な課題だし、順調に行っても夕方って所かな?
「今日のランチは餃子だよ。キャンピングカーの冷蔵庫に準備したのを入れているし、後は包んで焼くだけだし……ちょっと退屈かな?」
「折角のキャンプですしねぇ」
定番のバーベキューは明日、熟成肉が良い感じになるからね。
だから景色の良い場所で食事を楽しむのは良いんだ、飯盒は用意しているし。
火は僕の能力でどうとでもなるし、何ならボクに変身した姉さんに手伝って貰っても良いんだけれど、どうせ個性の調査で歩き回るのは無理だし、本当にどうしようか迷う。
姉さんもバーニンや僕の監督下じゃないと自由が制限される以上、今可能なのは飯盒で炊いた米で焼きたての餃子を食べるだけだし、どうせなら……。
「ちょっと皆の様子を見に行こうか。先生、ちょっと森林浴に行って来まーす」
「……余り羽目を外すなよ。ヒーロー科の生徒はあくまで合宿の真っ最中だ」
僕はあくまで要請による参加、夏休みに姉さんと一緒に来ているだけだから相澤先生だって行動制限は強く出来ないけれど、ちょっとだけ疲れた感じだ。
その横でマイフレンドの担任はOrzになってるのは……。
「裏ちゃん、あの人達さっきからじゃんけんで白熱してましたけれど、どうしたんです?」
「僕の個性を調べるにも誰かに使う必要があるでしょ? 訓練に必要だからプッシーキャッツは除外でバーニンも姉さんの監督があるからあの二人のどっちがってなったらしくってさ」
「ああ、あの二人に興味が無かったから話を聞いていませんでした。マイクロビキニやフリフリの魔法少女衣装が嫌なんですかね?」
「大人って大変だよね。僕、将来は在宅で他人と関わらない仕事が良いなあ。株の配当金や不動産所得があるから遊んで暮らせるんだけれど」
まあ、遊んでばかりは退屈だから仕事はするんだけどさ。
人間、遊んでばかりで働いていないと駄目になる、それと同時に働きたくないって気持ちが僕の中にあって、正直言って面倒でしかないんだよな。
「駄目だ。腹減った……」
「お菓子とか荷物に入れっぱなしだから……」
「……ちっ!」
「なあ、何か美味そうな匂いしないか?」
疲労と空腹に耐えながらの強行軍、泥にまみれて土で出来たモンスターの相手をし続けている時に漂う炊き立ての白米と焼きたての餃子の匂い。
最初に気が付いたのは率先というよりも独断先行の爆豪だった。
反射的に腹が鳴り、続いて切島が匂いに反応すれば他の面々も気が付いて鳴り響く腹の音。
昼御飯の時間が迫る中、育ち盛りの少年少女がずっと運動していたのだ、それは仕方無いだろう。
「てな訳で様子を見に来たよ。いやいや、お昼ご飯の時間までに辿り着かないとご飯抜きってのまで課題だし、餃子で白米を掻き込むしか出来ないのは残念でならないね」
「そうか、死ね」
白米の上に刻んだ大葉と明太子を乗せ、念動力で浮かせたソファーに座って宙に浮かせた鉄板を操る炎で熱して餃子を焼く。
それを姉妹とペットで食べる姿に爆豪は静かにキレた。
「えっ、怖い。ヒーローってコンプラ問題重要だよ?」
「つーか、テメェのダチはB組のモブだろうが。そっち行けや」
「いやいや、お腹減ってるであろう親友の前に餃子と炊き立てご飯もって見せつけるって発想が怖い」
「いい加減にしろや、ボケがぁああああああああああああっ!」
「ごめんなさいねぇ。うちの裏ちゃん、保釈中の私が言うのもあれですが根性ひん曲がって……あれ?」
「姉さん!?」
自分も白米の上に餃子とラー油を乗せて食べていた被身子は妹の頭を軽く押さえ付けようとして背凭れに倒れ込む。
裏奴が珍しく狼狽した瞬間、バーニンからの着信音が鳴り響いた。
『変た……ヴィランの襲撃だっ! 悪いがヒーロー科の連中を探して伝えてくれ!』
電話から離れていても聞こえる程の大声が周囲に響いた瞬間、裏奴の右横の茂みから長く営利な歯が伸びて来た。
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