実の所、僕って一部の相手以外には殆ど興味が無いんだよね。
何か言われて何か感じるのも言葉自体に感じるんだし、だからヒーローになりたくないのかな?
ほら、個性を使う大義名分は欲しいけれど、ヒーローって立場に付きまとう諸々は嫌なのとかさ。
大体、巻き込まれたら非難するのに戦いを前に避難しないで楽しそうに観戦する連中とか、事件解決数が凄いのに態度が悪いからってアンチが多いエンデヴァーを見ていると、なーんでヒーローになりたがるのか訳ワカメ。
「うわっ。痛そう」
個性っていうのは体の一部、だから無茶をすれば反動が来るし、酷使すれば消耗だってする。
「爆発に強いのと全然平気なのは別の話って事だね」
さっきから硬化した彼に何度も爆破を食らわせているからか手のひらにダメージを蓄積させている様子の爆豪君、鈍器で殴られているのと同じダメージを負いながら自分の個性の反動でもダメージを負うなんてよくやるもんだ。
その点、僕の個性は能力の幅が広がっても何一つ問題が見当たらない。
影響らしい影響は能力が増えて行く度に薄れていく他人への関心程度、今の平和な社会だから堪能出来る食事や娯楽が好きだから悪さもしないし、僕にとって個性は私有地で使える程度で充分で、個性を使えなくても楽しい事は沢山有る。
だから全く理解不能だ。
硬化した拳での殴打と爆破の応酬、他人を物理的に傷付けるのも痛い目に遭うのも苦手な僕からすればあんな事をよくやるよってしか思えない。
「あっ、メールだ」
試合にも興味がそれ程無いから携帯の画面に視線を移せば送り主の名前は百合好き。
姉さんの一件が有ってから監視の存在を感じていたんだけれど、森の中で接触して来たからパニックを起こした演技と共に新しい能力を使っちゃった人。
「えっと、試合頑張って。それと本当に俺の事務所に来ない? か。しつこいなあ、この人も。手を出す相手の年齢もはやいってネタにしちゃおうか」
僕も飛行可能で割と万能だから勧誘されているけれど、僕はヒーローとか興味無いんだよ。
寧ろ逆恨みした犯罪者に狙われるの考えたらサイドキックでさえお断りだ。
「試合終了、次の次だし、多分速攻で終わるから行こうか」
次は意思を持つ影の使い手と速度強化、試合は直ぐ終わると控え室に向かったけれど、ほら、もう終わりだ。
控え室に入って直ぐに耳に届く歓声、どんな風にどっちが勝ったのかはどうでも良いし、さっさと試合に向かおうか。
「むむむっ! 絶対に負けないからね!」
第三試合、僕と対峙するのはピンク色の髪をした酸の使い手、分泌液を放って攻撃かぁ、これ以上は考えるの止めようか。
「そうだね。僕も負けてあげる気は無いさ」
『まさかの二連続一位のスーパーガール! 未知数個性の普通科、渡我裏奴!』
おおっ! 結構な評価じゃないか、僕って凄い? 凄いよね。
「行くよっ!」
選手紹介の後にされる試合開始の合図、同時に私の飛行を警戒してか酸液が弓形に放たれるけれど僕は元からこの試合で飛ぶ気は無い、その必要すら無いって方が正しいか。
だって片腕を前に付き出す僕に酸液は届かない、空中で止まっていた。
「ええっ!? 何で何で!?」
「念動力さ、これも私の個性の一つなんだ」
「え!? どれだけの事が出来ちゃうの!?」
「まあ、他にはニンニクやペンギンを操れるとだけ言っておくよ」
強制的にパジャマパーティーを開く奴は疲れるから使いたくないし、寒がりだから使いたくないのも存在する。
あと、僕自身が忘れてるのも有る気がするんだよなぁ。
「何でニンニクとペンギン!?」
「さあ? 僕に聞かれても個性の専門家じゃないから」
開いていた手のひらを閉じれば酸液は地面に落ちてコンクリートを少し溶かす、液体の勢いは水鉄砲程度だけれど酸の濃度はそれなりか。
彼女の動きは障害物競争と騎馬戦で確認済み、結構身軽で流石はヒーロー志望って所だね。
「芦戸さんが重量級のパワータイプでなくて良かったよ。この力、僕自身の素の力と大差ないからさ」
例えるなら自分と同じ腕力の巨大で透明な手を作り出して操る感じ、転売ヤーに目当てのゲームを買い占められてイライラしていた時は強くなったから精神状態が関わっていそうだけれど、僕が怒るって滅多に無いからね。
「わわっ!?」
芦戸さんは突然浮いた事に驚いて手足を動かしたり酸を飛ばすけれど効果は無いまま線の外側に放り出される。
『芦戸さん場外! 勝者渡我さん!』
さーて、心操の試合までのんびりさせて貰おうかな。
「あの子、姉さんが試合を見たら絶対に気に入っちゃうタイプだね。他は……まあ、別にどうでも良いか。マイフレンドの試合は繋ぎの為の物だったし」
姉さんは好きな相手の血を吸って、その相手の姿になって、更には相手になり変わり相手と一つになりたいとか、ちょーっとだけ困った恋愛観とか性癖の持ち主だし、Y談を話させたら血塗れでボロボロの相手が好みとかちょっと笑っちゃった。
……それが暴走して事件を起こしちゃったんだから本当に弾き出された不器用者には辛い世の中だよ。
僕みたいに人生の楽しみ方が有ったら良かったのにさ。
Bブロックの一回戦の感想はこんな感じ、緑谷って子が随分と姉さん好みの姿になったり、心操はサポート科の子の作品アピールに協力して感想を言ったりするとか編入した後の事を考えての行動なだけで、発明品に振り回される姿が笑える程度だったね。
第二試合? まあ、腕から伸びるテープを切る前に電気を流されたらそうなるよねって内容でしかない。
『Aブロック二回戦第二試合。常闇君vs渡我さん!』
さてさて、さっき見た掲示板じゃ僕が流石に負けるだろうって意見が大半だったけれど、まあ、彼はA組でも上位だろうね。
自分の意思を持つ影を操る個性で、さっきの試合でもギリギリ速度上昇タイプの個性の最高速度に対応して勝ったらしい。
念動力で場外にしようとしても鋭い爪で地面に掴まったり、物理的な力にも強いみたいだし……そもそも僕には負けて欲しいってのが本当の意見みたいだけれど。
「
更には僕って搦め手みたいなのばかりでマトモな戦闘向きなのは念動力以外じゃ飛行とバリアだし、何かする前に倒すってのは悪く無い手だ。
僕に向かって高速で襲い掛かる影、鋭い爪が僕に向かって襲い掛かり、そして煌々と燃え盛る炎によって止まった。
「よもや炎まで……」
僕の右腕から出た炎は蛇が獲物に巻き付くみたいに影を囲み、光が弱点だと判断した通りに明るく照らされた事で動きを鈍らせた。
「そう、僕は炎まで使えるのさ。左手からタピオカが出るのが欠点だけれどさ。僕って甘ったるいの嫌いだからタピオカミルクティーも苦手だし、本当に困った困った」
右手から出した炎と左手のタピオカ、半熱半タピオカ、意味不明だ。
でも、自宅じゃ炎を出したって庭での焼き芋やバーベキューにしか使えないという普段は使えない物だ、本来は使っちゃ駄目な個性を好き勝手に使えるのは楽しいな。
ザ・解放感って感じでさ。
「それでどうするんだい? 頼れる個性は目が死んでいるけれど降参する?」
「っ! 未だだ!」
個性が駄目なら自力でと言わんばかりに常闇君は僕に向かって来る、此処で念動力でポイっと出すのは楽なんだけれど、それはさっきしたばかりだ。
それじゃあ勿体無いよね?
「因みに……怪力も持ってる」
炎を解除し、手首の力だけで軽ーく押せば常闇君はフィールドの中央辺りから一気に場外に向かって行った。
咄嗟に影を使って地面に掴まろうとするけれど無理だ。
それは何故かって? 簡単な話さ。
「君はもう魔法少女ボーイになっている」
「これは第一種目の……」
僕が触れた瞬間、彼の個性は変化して、僕も初めて知ったけれど異形型個性の顔だったのが普通の中性的よりもやや女の子っぽい顔、例えるなら彼の影がロリになったのが成長した感じに……いや、意味不明だ。
常闇君は鳥の頭から変化した顔をペタペタ触りながら不思議そうにしている。
因みに黒のゴスロリドレスで。
「あー、異形型の個性相手に使ったのは初めてだったから驚いたよ。魔法少女に変えたから姿も変わって当然か」
「今まで知らなかったのか」
「いや、個性の使用って基本的に私有地だけだし、僕を非常識な奴だとでも思ったのかい? 僕は両親から受け継ぎつつも突然変異混じってるから異形寄りなだけだし、女の子の友達は異形型は居ないんだ。さてと、先生。彼、出ているよ?」
何でヨダレ垂らしそうな顔で常闇君を見ているんだろう?
『常闇君場外! 勝者渡我さん!』
「……くっ」
悔しそうな常闇君を尻目に僕は勝利のVサイン、観客はどうでも良いんだけれど、マイフレンドと見ているかどうか分からない姉さんへのアピールだ。
「とんでもない学生だな。何であれでヒーロー科に入っていないんだ?」
「ヒーロー志望なら是非来て貰いたいんだが……」
うーん、注目する人は興味ないけれど、注目される僕って状況は悪くない。
『Bブロック二回戦第二試合は心操君VS八百万さん! 試合開始!』
「なあ、蜂に刺された事はあるか? 二回目だと危険だって聞くからな」
「い、いえ、私は別に……」
騎馬戦で仕込んだブラフは心操の個性が虫を操る事って誤解、もし普通科の誰かが洗脳って名前だけを漏らしたとして、虫を操ったと誤解するだけだ。
個性は普通は使っちゃ駄目だってルールが有るからこその罠、マイフレンドの個性なら今のやり取りだけで終わるんだけれど……。
「そうか。所で覚えているか? 俺が騎馬戦で靴を脱いだ事を。……来い!」
「『!』」
彼女の勝ち筋は反応せずに速攻で武器でも作って速攻で決める事だった。
それを律儀に反応して、心操が靴を飛ばした瞬間に叫んだ事でゴキブリを思い出したんだろう、先生と一緒に宙を舞う靴に視線を向けて、心操の接近に反応するのが遅れた。
「悪いな。これで俺の勝ちだ。楽勝だったぜ」
「何を言っていますの。私は未だ……」
そして肩への軽いタッチ、そして挑発への反応。
それだけで彼女の動きは止まり、表情が顔から消える。
「残念だったな。俺の個性は洗脳だ。ほら、さっさと場外に行ってくれよ」
はい、終わり。
命令の通りに八百万さんは場外まで歩いて出て行き、心操が自分で自分の肩を叩くように命じて洗脳を解除する。
何が起きたのか意味不明だという顔で立ち尽くす彼女の顔は……ゾクゾクしちゃった。
「ふーん。触ってから勝利宣言か。マイフレンドもズル賢くなったものだよ」
さてと、次は僕の試合だ。
「どの力を使おうかな? アレかな? コレかな? ドレにしようか」
僕は真面目な良い子だから個性の使用は私有地のみ、無闇に怪我をさせるのも使えない。
だから大義名分をもって人に個性を使える行事は最高だと思うんだ。
「あっ! 僕は宣戦布告の時に居なかったし、次の試合の前にちょっとだけ挑発しちゃおうかな?」
勿論常識的な範囲内で事実のみを述べるだけに留めるけれどね。
次こそ爆豪をマイクロビキニに!