「裏ちゃん、その服装は駄目だって言ったじゃないですか」
体育祭の翌日、休みになったので姉さんの面会に来てみれば開口一番にこの言い様、解せぬ。
「そんなに変かい? 動くのにこれが一番動きやすいんだし、前みたいに変にブランド物のジャージじゃないんだぜ?」
私服を選ぶのは面倒だし、昔は母さんが買ってきたのを適当に選んで着ていた僕だけれど、姉さんの事件があって以来は外出を嫌うから動きやすいジャージで過ごすんだけれど姉さんには不評だ。
因みに今は学校のジャージ、ヒーロー科の授業に対応可能だから動きやすいし通気性とか本当に良いんだよ。
「友達も何も言わないけれど?」
「もう少しかーいい服を選んだ方が良いと思うんですよ、お姉ちゃんは。そうそう、体育祭はテレビで観れましたよ。滅多に観れないのにあれだけは特別でした」
「へー。観ていてくれて良かったよ。ジョンも観ていてくれたって。個性沢山使えて楽しかったな」
「裏ちゃんの個性を受けた子達、モザイクやらピー音を付けられてましたよぉ。あんまり意地悪したら、めっ! ですからね」
「はいはい」
「はい、は一回だけ」
もー、殺人未遂犯でスプラッタ趣味のヤンデレサイコの癖に僕に対してはお姉ちゃんとして振る舞うんだから困ったもんだ。
「まあ、体育祭は終わったし、僕の優勝だなんて姉さんも予想していただろうから今回のメインは……ジョンが僕の手作りの障害物を突破する画像だ!」
昨日学校から帰った後で家に有るものと個性の応用で再現した障害物競走のステージを軽々と突破、動画を投稿したらコメントがヌーで埋め尽くされる程だった。
「うちに来た時は手のひらに乗るサイズの弱々しい子だったのにね」
元々はペットでも飼えばマトモになるだろうと考えていた両親が、近所で増えすぎたからと貰って来た小さなアルマジロ、それがジョンだ。
賢い子だったしスクスク大きくなった頃、僕の能力で更に賢く丈夫になれるからと血を分け与えて使い魔的な存在にしたのは正しい判断だったよ。
人間レベルの知能に大型の猛獣程度なら不意を撃てば一撃で倒せる身体能力、銃弾すら弾く事の有る頑丈な体は大砲で打ち出されても平気な程になった。
あと、血を与える時に能力も移せるみたいだから割りと要らないのもついでにあげている。
「ただ、これはこれでかぁいいですが太ってますよね? 丸くなった時にお肉がはみ出してますし、お菓子の食べ過ぎじゃないですか?」
ちょっとだけ責める目付きでの追求にさっと目を逸らす、そうだ、それこそが至高の可愛さを持つからこその欠点。
人間の食べ物も平気になったからって美味しいものを与えすぎちゃうんだよなあ。
「暫くオヤツはおからクッキーとかにしないと。あと、運動もさせるよ」
僕自体は甘いものが苦手なんだけれど、ジョンが甘いものが大好きだからついついお菓子作りの腕を磨いちゃうんだ。
食べるのは嫌さ、それでも作るのは楽しい。
料理って良いよね、凄く良い。
鼻が利くから甘い匂いがキツいけれど、匂いってよりは臭い。
でもなあ、美味しそうに食べるジョンの姿が可愛いんだ。
「そうすべきですね。それにしても相手を魔法少女にするとか変なのに目覚めましたよね、裏ちゃん」
「まあ、面白いんだけれどね。凄く面白いんだけれど、テレビで放送されるのに使うのは失敗だったよ。ここに来る時も異形型個性の人に何度か話し掛けられてさ。異形型じゃない場合の自分の顔を見たいんだってさ」
あの能力は僕と姉さんが幼い頃に親戚の家に遊びに行った時に目覚めた物だったし、ちょっと懐かしい思い出だ。
当時大好きだった魔法少女っぽいヒーローのショーをテレビで観た後で、姉さんに使ったら大変な事に事になったんだよね。
「まさか姉さんが使った魔法に驚いてバイクを止めた人が今はヒーローだなんてね。いや、サイドキックだっけ? 最近会った時に驚かれて思い出した」
「私と裏ちゃんを見て、何時の間に増やしちゃったんだ!? とか驚いた人ですね。それにしても異形型の個性が嫌なんですか。裏ちゃんは肌の色と耳だけですけど、他の人と大きく変わってる人は多いですから仕方無いんですかね?」
正直言って面倒だし、法律とかを理由に適当に誤魔化して逃げて来たけれど、思い出すだけで疲れたと机にグデーっとなる。
「本来悪い事を楽しむのなら大義名分を盾にするのが一番、そうでないなら楽しさが半減、でしたっけ? 裏ちゃんが何度も言ってました」
過剰な暴力が喝采されるヒーローとかネットでの悪人叩きとか、免罪符って悪い事をする娯楽にとって最高のスパイスだ。
「個性を使うのは楽しいけれど、それでペナルティがあるんだったら別に良いや、楽しい事は沢山有る。アクションRPGは遊べなくてもRPGやアクションゲームは遊べるみたいなもんさ」
だから個性を自由に使えても、使って人を助ける義務が生まれる上に何かあった時に非難が組織じゃなく個人に降り掛かるヒーローなんかには興味無いんだよ。
「ゲームばかりしちゃ駄目ですよ。あっ、そろそろ面会時間が終わりますね。じゃあ、あの手紙を彼に渡して下さい」
「うん、適当な時に渡して来るよ」
「所で裏ちゃんの方はどうですか? 好きな子とかいます? 確かお友達だと言っていた三位とか……」
姉さんったら相変わらず恋バナが好きなんだから、それが発展して今の立場なのにさ。
「マイフレンドはマイフレンドでしかないさ。まあ、今後は放課後に忙しくなるから遊ぶ機会が減るのは寂しいかな? 今日も学校に行っているよ。……ヒーロー科に編入する為の訓練とかでさ」
ぶっちゃけ、入試とか最終競技じゃマイフレンドは本気の半分も出せない、素手だと今の彼でも入試突破は半々程度だけれど、全力さえ出せるんなら中間の上程度は個性抜きで行けるんじゃないのかな?
「それはそうと今日投稿する予定の動画を先に見せてあげるよ。なんとDJをやっているジョンさ。ブログに載せている写真も好評でね。コメントする人には興味が無いんだけれど、ジョンを褒め称える言葉は嬉しい物だ」
「裏ちゃんは本当に人生楽しそうにしてますね。私は今の世の中が生き辛いので少し羨ましいです」
「僕は好きなものと楽しい事以外には全く興味が無いだけだからね」
尚、僕と姉さんは互いの血を飲んだ感想は……吐く程に不味い、地獄かよ、だ。
明日前回までの感想返します