吸血鬼(に関わったら胃が)すぐ死ぬ   作:ケツアゴ

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近所のゲオからヒロアカのスピンオフ全部消えた レンタルしたかったのに


最速のヒーロー

「南斗編集戦斧拳? 頭大丈夫じゃなかったか」

 

 これは中学生の頃、ゲロを吐きながら鍛えた体が漸く物になって来た俺の悩みは個性以外の決め手、サポートアイテムで変声機でも使えばある程度は戦えても、それ以外に武器が必要だが何をどうすれば良いのか分からない俺に渡我が差し出して来たのはロン毛でメガネの男が表紙に描かれた古い本、取り敢えず胡散臭い。

 何だよ、この脇に抱えられたヤベェ目をした猫は。

 

「そこはせめて、頭大丈夫か? とかじゃないのかい? 親しき仲にも礼儀ありって知らないのかな?」

 

「それを普段のお前に言ってやれ。んで、この怪しい指南書はどうしたよ?」

 

「何か変な露店商が売ってた。こっちに応用出来るからってセットで」

 

「これは……刺又?」

 

 そう、刺又、一昔前に暴漢を取り押さえるのに使われていた武器で、ちょっと古いが軽くて使いやすそうだってのが手にした印象だ。

 

 まあ、バトルアックスなんざ何処で探すんだって話だし、刺又ってのはヒーローの基本である捕縛向けの武器だ、軽く読んでみたが印象と違って悪くはない、のか?

 

 

 

「まあ、有り難く貰っておく」

 

「え? 貰う?」

 

「うん?」

 

 結局二千五百円支払わされた上にヒーロー科の入試には持ち込めなかったが、指南書を参考にそれなりに仕上がった。

 個性社会じゃ衰退しちまって道場も近くに無いし、我流じゃ不安が残るんだがな。

 

 

 

 

「ふっ!」

 

 俺の目の前に飛び出した相澤先生が操る捕縛布、周囲から意思でも持ってるのかって動きで迫る中、石突きで地面を突いた勢いを乗せて後ろに退避する。

 視野は広く、対空時間は短めに、口と手足を押さえ込まれたら即終わりなのが俺だ、あの馬鹿とジョンの組み合わせとの組み手で学んだ立ち回りを活かして戻そうとした腕に刺又を突き入れて動きを邪魔して着地の瞬間を狙って石突きでの一撃を腹に叩き込もうとして直前で掴まれる。

 

 

「動きは悪くないが、狙いが素直過ぎるな」

 

 そのまま引っ張られ、体勢が崩れた所に布が絡み付いてゲームオーバー、終了のブザーが鳴った。

 

 

 

「さて、悪いが今日は今から会議があるんでな、残りの時間はメニューをここに用意したから一人で頑張ってくれ。ちゃんと水分補給と休憩もちゃんとしろよ?」

 

「……うっす」

 

 相手は教師、プロヒーローだ、手加減をされていたのは分かるんだが全く手も足も出なかった訳じゃない。

 ちょっとだけ、ほんの少しだけだが手応えはあった、俺が積み重ねて来たのは無駄じゃなかったんだと拳を握りしめた。

 

 

「ああ、それと会議で正式な決定がされるだろうが職場体験前には編入が決定されるだろう。勿論、足りていない実技の穴埋めとして特別授業は続くだろうが、気合いを入れて行け。気を抜いた姿を見せるなら俺が除籍処分にするからな」

 

「はい!」

 

 まだだ、俺の夢は未だ叶った訳じゃない、だけど立つ事すら出来なかったスタートラインが漸く見えて来た事に流れそうになる涙を堪えて立ち上がる。

 ヒーロー科に入る、そして絶対にヒーローになる、それが俺の夢だが、達成したい目的は他にも有るんだ。

 

 

「見てやがれよ、渡我。ヒーローになる気がないお前よりも絶対に強くなってやるからな!」

 

 プロヒーローを除いて俺が知る中で最強は間違い無くあの馬鹿だ。

 俺の洗脳よりも警戒される様な個性を持っている上に似た性質の個性を持った姉が捕まったって立場なのに気にせずに人生を楽しんでいて、その個性は理解不能意味不明な上に強力、何が何処まで出来るのかさえ分からない、何処まで走り続ければ背中の蜃気楼が見えてくるのかさえ、見える場所まで行けるのかさえ分からない親友、彼奴と肩を並べる存在になる、その目標を改めて胸に刻んだ俺は立ち上がるとランニングを開始した。

 

 

 

 

 

「以上が第一回目の特別授業だが、身体能力と動きも合せれば今の一年ヒーロー科の生徒とも遜色無いだろう。今後も遅れを取り戻す為に課題は与えるが、取り敢えず仮合格という事で良いだろうか?」

 

 生徒が休みだろうと教師陣に休みが与えられる筈もなく、一大イベントである体育祭の翌日も会議が行われていた。

 先ずは心操のヒーロー科編入について。

 障害物競走では十七位、尚、別の世界線では二十七位だった。

 個性の秘匿という作戦もあって騎馬戦では目立った動きは見せなかったが、最終種目では発目のサポートアイテム披露の場でそれなりの動きを見せつつ三位に入賞、そして先程相澤が相手をした組手では入試や体育祭では持ち込めなかった刺又を手足のように使って立体的な動きを見せていた。

 

 

「こりゃ棒術とかの類いか? まあ、武器使うのを前提に鍛えてるんじゃ入試は難しかった訳だよな、ロボ相手じゃ個性も通じないんだしよ。合格で良いんじゃねえの?」

 

「あの入試内容は合理的じゃ無いって前から言っているだろう」

 

 賛同するプレゼントマイク、他に異を唱える教師は居らず、今後の訓練の継続を条件に心操の編入は決定され、どちらの組に入るのかは今後に伸ばされたものの資料は全員に渡される。

 

 

「さて、次の議題なんだけれど……ちょっと難しい問題なんだよね」

 

 次に出された資料に乗った人物の名前は渡我裏奴、その資料が回された瞬間に教師一同、特にヒーロー科の科目担当の教師が難しい顔になった。

 

「何かね、体育祭が終わった途端に彼女を直ぐにヒーロー科に編入させるべきだとか、個性の全容が知りたいとかヒーローや協会から色々とね」

 

 少しだけ気苦労で窶れた様子の根津校長、毛並みも少し乱れている

 

「なんっつーか、圧倒的だったよな。全競技一位、しかも最終種目でさえ怪我とかも特にしていないしな」

 

「本当に凄い個性だった上に随分使いこなしていたものね。……ちょっと思い出したくないけれど」

 

「早速ネット上じゃ教育の質の低下だの生徒が弱過ぎるだのと言われていたからな。特に俺が受け持つB組は本選にすら出場していないから」

 

「下らん。ネットの反応に一々過敏になってどうする。本人がヒーロー科への編入を希望していない以上は無視すれば良いだろうが。だが……」

 

 相澤は他の教師達の言葉をバサリと切り捨てつつ、最後に言葉を濁して一枚の資料を取り出す。

 

 

 それは体育祭時の会場上空にのみ発生した異常気象のデータ。

 夏休みも近いというのに雪を通り越して吹雪の兆候さえ確認されていた。

 

 

「どうせ五月蝿い連中は渡我を利用したいか、強力な個性なのにヒーローになる気がないというだけでヴィラン堕ちを疑っているだけだ。それをさせないのは俺達教師の役目だが、それでも強力な個性には変わらない。詳細を把握しておきたいが……」

 

「自分はヒーロー科じゃないし必要ないんじゃ? とか言われたら強制出来ないからな」

 

 競技の最中の言動は相手の冷静さを奪う為という大義名分を持っての物だが、普段の彼女は個性を使う等の違反行為も無く、寧ろ成績優秀な優等生でしかない。

 それでも教師一同にとって頭痛の種になりつつある裏奴だが、彼女は今……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー。まさか偶然こんな所で会うだなんて奇遇だったね。体育祭観たよ。凄かったね、色々な意味で」

 

「性癖が男を挟まない百合な成人男性が道端で女子高生に声掛け……事案?」

 

「ぼんぎゃらそばがらっ!?」

 

 姉の面会帰りに寄った街で知り合いのヒーローの奇声を聞いている所だった。

 

 

 

 

 

 

 

「……あー、思わず奇声上げちゃった。本当に、本っ当に俺の性癖について口にするのは勘弁してくれないかな? 周囲に人が居ないから良かったけれどさ」

 

 十代でヒーロービルドチャートのTOP十以内に入った通称速すぎる男ことホークス、僕のY談波を初めて食らった男は胃の辺りを押さえながらため息を吐き出すんだけれど失礼な話じゃないか。

 

「わざわざ周囲に人が居ない時に言ったんだ。僕が人の性癖を人前で話す非常識な奴だと思ったのかい? 体育祭で使ったのは試合の為だ、使っても問題無いだけだ」

 

「でも、楽しんでやったよね?」

 

「人をおちょくるの楽しいからね!」

 

 文句を言われても論破する材料があるのが良いんだよ、罰を受けたり文句を言われても反論できないなんて後味が悪いし、折角の楽しい気分が台無しになるなら最初からしない。

 だからこそ正当化する材料がある時に全力で楽しむのさ。

 

 

 

「まあ、良いや。それでヒーローエキスポには行くの?」

 

「ヒーローエキスポ……ああ、あれか」

 

 最先端のサポートアイテムとかの技術の祭典ヒーローエキスポ、体育祭の優勝賞品に招待券があったけれど、正直言ってなあ……。

 

 

「ペットを連れて行けないから興味が無いや。マイフレンドに譲ろうと思ったけれど訓練に当てたいって話だったしさ」

 

 ジョンは賑やかな場所が好きだから連れて行きたかったんだけれど、ペットが駄目なら仕方がない。

 楽しむのならルールの中で、ルールの中ならどれだけ人を弄くっても構わないってのが僕のルールだ。

 

 

 

「そのジョンは連れて行けないって話だけれど、個性を使った対象だって事を前に出せば連れて行けない事も無いよ? その場合、監督役のヒーローが必要になるけれど、俺が何とかしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 女子高生に宿泊のお誘い?うわ、うわぁ、防犯ブザー何処だっけ?」

 

「おぃいいいいいいいいいっ!? それっぽく聞こえただろうけれど違うって分かってて言っているよな!? 人気商売なんだから本当に勘弁してっ!? 女性! 女性ヒーローだから!」

 

「え? ホークスが女性ヒーローって、何時の間に性転換手術をしたの? これはビッグニュースだ!」

 

「してないよ!?」

 

 うーん、この打てば響く姿が楽しいし、ホークスには偶然勘違いした振りが一番だね。

 それにしてもヒーローの同伴か、適当に相手をして、僕はジョンと楽しませて貰おうか。

 

 

 

「それで俺の事務所にサイドキックとして就職した人なんだけれど、ジョンの写真載せたブログに俺と写ってるのがあったのが切っ掛けらしくって、自分で事務所持つより俺の所に来てジョンと生で会いたかったんだってさ」

 

「流石はジョンだ。能力なんて使わなくても素の可愛さだけで人の人生を変えるだなんて」

 

「君って本当にペットが絡むと人が変わるよね」

 

 え? ジョンが絡むんだから全人類共通の事じゃないの?

 

 

 

 

 

 




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基本心操とホークスはツッコミや真面目ポジ
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