「……困ったな」
ホークスの未成年との婬行狙い疑惑(冤罪)から月日が流れて数日、ヒーロー科は普通の科目以外に演習があるにしても普通科は文字通りに普通のテストだけ、進学校らしく存在する定期テスト開始十分経った頃に僕は他の人には聞こえない程度の声で呟く。
五回は問題を頭から読み直し、一度解いた問題を同じ数だけ解いても出てくる答えは同じだ。
普通科の入試も中間テストも堂々の一位、正答率十割、ハイスペックだと自分で言うのは伊達じゃないのさ。
そうそう、姉さんも小学校の時に僕と点数を競っていたよ、そうすれば両親が優しく接してくれると考えてね。
最後のテスト、答えは合ってたのに名前を書き忘れてたんだよね……。
まさかそんなミスをしていないかと確認、当然していないから残り時間は考え事をするか。
I・エキスポの事前の宣伝で行われるアトラクションとかは分かっているし、ジョンと一緒にどう回るとか、朝のニュースから株の値動きを予想したりとか。
よし、ジョンの可愛さを記憶だけで堪能しよう、時間なんて幾らでも潰せるぞ。
そして放課後、テストの途中に創作していたジョンの可愛さと四季を表現する曲をピアノで演奏した僕は満面の笑みを浮かべていた。
「ふぅ。大作が完成したぜ」
「俺は忙しいのに音楽室まで付き合わせるな、馬鹿。と言うか、先生達も貸すな、この馬鹿に。更に付け加えるなら作曲まで出来るとか、人格以外は本当にハイスペックだな、お前。人格に問題が有りすぎるが」
パチパチと拍手をしてくれるマイフレンド、だけれど言葉が余計だよ?
「この曲は次に撮影する動画で使うよ。ポールダンスとかどうかな?」
「お前はアルマジロに何処までさせる気なんだよ。……じゃあ、俺は特別授業が有るから行くぞ。職場体験も近いんだ、ノンビリしてる暇なんて無い」
「そうか。まあ、編入が決まったんだし、頑張りたまえ」
「……ああ、絶対にこの経験を無駄にはしねぇ。じゃあな」
忙しい忙しいとぶつくさ言いながらも付き合ってくれるんだからマイフレンドは本当にお人好しだ。
B組への編入でクラスが変わっちゃうのは寂しいけれど、僕は君の夢を親友として応援するぜ!
「しかしヒーロー事務所兼出版社だなんて妙な所を選ぶんだな、彼も。オータム書店だっけ? うん? 確か何処かで見たか聞いたかした覚えが……」
そして数日後……。
「ようこそ来ましたね、心操君」
「家まで勧誘に来られたらな。それで、俺に教えてくれるんだろう? 南斗編集戦斧拳の真髄をな。だろう? フクマさん」
「ええ、あの指南書で基礎を身に付けた君になら同門として、先輩ヒーローとして私が教えられる事を教えて差し上げますよ。この一週間で君を立派な……オータム社員にしてみせましょう」
「オータム社員っ!? 何でっ!?」
僕の個性の力である直感が告げていたよ、心操が凄く面白そうな目に遭っているって事を。
まあ、この時の僕は他人事だから笑えるんであって、夏休みに深く関わる事になるだなんて思っても見なかったんだけれどね。
「所で指南書の表紙の人物って……」
「ああ、私の飼い猫のボサツ君です。可愛かったでしょう?」
「いや、じゃあ一緒に居るのはフクマさんって事になるけれど結構古い本だった筈だから……」
「さあさあ、締め切りは近いし時間は有限です。今日締め切りなのにコラムの原稿を完成させていない先生が居ましてね。パトロールついでに原稿を受け取りに行きますよ。そしてボサツ君は凄く凄く可愛いでしょう? 良いですよね、猫って。世界で最も可愛い生き物だと思いませんか?」
「……はい」
そして親友が僕を、僕の愛する世界一可愛いジョンの魅力を裏切った気がするな……魔法少女ボーイにしてやりたい気分。
「……忙しいな」
速すぎる男ウイングヒーロー・ホークス、索敵や運搬に高速飛行に攻撃と大抵の事が可能な翼によってパトロールや事件解決にファンサービスと次々にこなし、サイドキックの役目は後始末が多い彼は多忙だ。
今彼が作っているのは裏で所属している公安に提出する為の書類、以前問題無いと報告した裏奴について。
「体育祭を頑張れとは言ったけれど、俺の目的を何となく察しているのなら自重して欲しいんだけれどね」
少しだけ痛む胃の辺りを押さえつつ作成するのは以前と大して変わらない内容だ。
性格 やや享楽主義な所が見られるが、ルールの中で楽しむ主義なので問題無し。
個性の使用 後ろから急に現れて声をかけて来た成人男性に驚いて目眩ましを使っただけであり(尤もらしい建前)、後はペットのアルマジロに知恵を与えたものの動画やブログは広告収入は得ない設定なので問題無し。また、最初の一回も肉体的被害は無かった(百合に男を挟んで良いと思ってる? 特別意訳:何をしたんだい?)
吸血衝動 接触の理由であるが、姉が一種の愛情表現に対して対象にとって嗜好品の類いであり、人間の血液である必要は無いのでレアステーキ等で代用可能。衝動の強さも空腹時にカレー屋の前を通った時程度の事。
個性使用の規制への意見 姉のように鬱憤が爆発する者も居れば自由に使えない事で抑制されている犯罪も存在すると認識。必要なのは事故や事件の防止や事後の処理等の制度をどうするかだと話していた。逆に今の平穏で楽しい社会が壊れるなら現状維持
経済状態 親は失業中だが彼女はアメリカの宝くじに当選、それを株に当てて儲けている。
「まあ、要約すれば少し悪戯好きだが真面目な少女って事で……うん?」
彼の目指す社会はヒーローが暇になる程に平和な社会、その為に忙しく動き回っているのだ。
公安が裏奴について調べさせる理由を個性から来る衝動を危険視しているだけでなく、自分と同じ立場にしたがっているのだと見抜いているホークスにとって裏奴は守るべき市民の一人、だから庇おうと工作をしているのだが、その書類を一通り終えた所で窓の外を見れば笑顔で事務所に近付いて来るバトルアックスを担いだ長髪の男。
ホークスの顔から血の気が引いた……。
「あば、あばばばばばばっ!? コラムの締め切り忘れてた。最近は書類仕事が忙しくって未だ一行も書けて無い……」
全身がガタガタと震え、目線も泳ぎ回って完全なるパニック状態、とてもビルドチャートにランクインするプロヒーローには見えない。
そして現実は残酷で携帯の着信音が鳴り響き、表示されたのはフクマの名前。
A:この時のホークスの絶望の度合いを答えよ A→Q
Q:メリーさんから家の前に着いたと連絡があったと同時に怪人アンサーから絶対に解けない問題を出された上に、口裂け女から自分が綺麗かと質問された瞬間に進級がかかったテストの裏にびっしりと問題があったのに気が付いたのはテスト終了五分前 Q→A
「そうだ! トゥワイスが有給で奥さんと旅行に行く前に作ってくれた俺が居るんだった!」
「着信音が鳴った瞬間にパトロールに行きました」
窓から吹き込む風、遠くには一目散に飛び去った自分の姿、サイドキックの女性はちょっと冷たい。
「俺が俺を裏切ったっ!? こ、このままじゃレディホークとかホークンとかの名前が似合ってしまう。ホークスのホークスがちょんぎられる! そうだ、俺と君のスーツを入れ換えれば誤魔化せる。さっきコンビニで買ったハムカツかミンチカツの好きな方をあげるから! 何ならソースを二つともあげるから!」
「落ち着いてください、女性用のパツパツスーツを着たらランキングが落ちますよ」
「このままじゃ俺の俺が切り落とされるんだよ!?」
「俺の息子が切り落とされても戻せる? うわぁ、明らかなセクハラメールが来たよ。一応返信、可能だけれど短時間な上に疲れるから嫌だ。それと……ちょうど良いや。相澤先生、知り合いのヒーローからセクハラメールが届いたんだけれど」
「そうか。取り敢えず見せてくれ。後は厳選に対処する」
この日、ホークス三徹目であった。
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