VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其れは、別の視点の話




そして半裸の鳥頭と話題の胡椒は邂逅す(サンラクside)

サンラクが夜襲のリュカオーンとの戦闘を行い、そして敗北を喫した夜が開けた。戦いの果て、胴と脚に刻まれたリュカオーンの呪い(マーキング)に関する情報を調べる為、そして日にちを跨いだ事で一旦ログアウトしていた楽郎は睡眠を経た後、再びシャンフロのサンラクとしてログインしていた。

 

あのクソ犬(リュカオーン)め……。レベル上げまくって、生け好かない顔面を思いっ切りブン殴ってやる……!」

 

シャンフロwikiを調べた所、クラン:ライブラリと呼ばれる考察班が記載した『リュカオーンの呪い』に関係する記事が在り、此のゲームを遊んでいるプレイヤーが、自分と同じマーキングを受けたらしく、其の特性や積極的に狙いたいモンスターの情報を、ライブラリに提供したという。

 

「とと…焦るな、先ずは落ち着け……『クソゲー三ヶ条』を思い出すんだ。『寛容な心』と『不屈の精神』に『冷静な判断力』。其れを忘れなければ、大抵の『クソゲー』は何とも無くなる。ふぅ~………」

 

深呼吸で荒ぶりそうになる心を落ち着け、サンラクは己のやるべき事を整理していく。

 

「最優先にやる事は、武器の修繕。リュカオーンとの戦いで、湖沼の武器達はボロボロになった…。このまま先に進んでも、耐久値限界で破壊される事になる」

 

新しく作るにしても(マーニ)は掛かる。新造するよりは武器を直した方が、結果的に費用は少なく済む。サンラクは首をコキコキと鳴らした後、其の脚で武器屋へと向かう。

 

「んぉ!?……って兄ちゃんじゃねぇか、ソイツぁ…『夜の帝王の呪い』…か?」

 

入店早々、白髭を生やした鍛冶師の男が驚いた様子で、サンラクに問い掛けてくる。マーキングが内封している効果として、NPCとの会話に補正が掛かると在ったが、成程こういう事かと彼は理解した。

 

「あぁ、コレ?昨日リュカオーンと殺り合ってね、胴と脚にマーキング食らっちまった」

「そうか…随分大変な目に有ったな、兄ちゃんよ」

「まぁね。だけど、アイツをぶん殴るって目標が出来たから、其所だけは感謝してるよ。おっちゃん、武器を直してくんねーか?」

「おぅ、任せな。キッチリ直してやるよ!」

 

400近いクリティカルの中の、大半を占めた湖沼の短剣と湖沼の小鎚をカウンターに乗せ、代金を鍛冶師に支払ったサンラクは、店を出た後にステータス画面を開き、ステータスポイントに注目する。

 

「でだ……リュカオーンとの戦闘時はレベル18で、今現在はレベル28。計算が合ってるならステータスポイントは『50』なんだが、表示されてるのは『70』。やっぱユニークモンスターと戦闘すると、ボーナスポイントが貰えるのか?」

 

自分のアバターの装備スロットを、呪いで二つ潰されている以上、耐久や体力には振る事はレベリングに縛りが付いた今、貴重なポイントをドブに投げ捨てる事と同義。

 

此処でキャラビルドの方向性を決める為、サンラクはスポイントをステータスに振り分け、最終的に此の様になった。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

PN:サンラク

 

 

レベル:28

 

メイン職業(ジョブ):傭兵(二刀流)

サブ職業(ジョブ):無し

 

 

体力 30 魔力 10

スタミナ 55

筋力 20 敏捷 60

器用 25 技量 25

耐久力 6 幸運 65

 

 

残りポイント:0

 

 

装備

 

右:致命の小鎚(ヴォーパルレッジ)

左:致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)

両足:リュカオーンの呪い(マーキング)

 

頭:凝視の鳥面(耐久力+2)

胴:リュカオーンの呪い(マーキング)

腰:隔て刃のベルト(耐久力+4)

足:リュカオーンの呪い(マーキング)

 

 

アクセサリー

 

無し

 

 

 

スキル

 

・スピンスラッシュ→ラッシュスラッシュ

・スクーピアス→スパイラルエッジ

・ナックルラッシュ

・スライドステップ→スライドムーブ

・ジャストパリィ→レペルカウンター

・ループスラッシュ レベル1→レベル4

・エッジクライム

・アクセル レベル1→レベル4

・ラッシュスタンプ

・デュアルストラス

・クラッシュセンス

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

「攻撃に当たったら即死だわな…コリャ」

 

ステータスを見ながら、サンラクは頭を抱えた。幸運は『食いしばり』に大きく関係しているようで、あの時のリュカオーンの噛み付きを耐えられたのも、幸運が高かったからだと推測出来る。

 

だが幸運であるからといっても、自分はマーキングを食らった挙句、リュカオーン討伐or聖女の祈りで浄化するまで半裸強制という始末、良い事が一つも起きていない。

 

「こういう時、何か『救済措置的なイベント』の一つや二つ、起きてもおかしく無いんだが……」

 

大衆から文句無しの神ゲーとして、太鼓判を押されるシャングリラ・フロンティア。ユニークモンスターと戦い、呪いを受けたプレイヤーに何も与えぬまま、フィールドに放逐する鬼畜な真似等、運営は決してしない筈。

 

数分後、鍛冶師がサンラクを呼んで修復した武器を渡し、アイテムインベントリに仕舞った彼は一人、裏路地へと入った其の直後、己の頭上をボフンと柔らかい衝撃が襲う。

 

「ふべっ!?な、何……だ………!?」

 

闇討ちか天誅かと視線を向けたサンラクの思考が、シャットダウンを経由して再起動する。

 

彼が目撃したのは童話『不思議の国のアリス』で主人公の女の子を導く兎よろしく、高級感の有る洋服にシルクハット、金時計に片眼鏡を付けた『白毛のヴォーパルバニー』で、此方を見ながらヒョイヒョイっと手招きして、裏路地へと入って行くのを目撃したからだ。

 

「ヴォーパルバニー…!?街中にもポップしたか?いや、今はそんな事言ってる場合じゃねぇ!」

 

重大で重要なイベントのフラグだと、長年のクソゲーを含んだゲームで培われたゲーマーの『勘』が告げている。走って壁を蹴るヴォーパルバニーを、サンラクは強化した敏捷で追い掛けて。

 

軈て行き止まりに辿り着いた所で、ヴォーパルバニーは壁に手を当てるや、一つの扉を作り出す。

 

「!?扉だと…?」

 

ガチャリと開き、ヴォーパルバニーはサンラクを見て、扉を閉める。そして扉にはこう記される。

 

 

 

 

『ユニークシナリオ』

 

『兎の国からの招待』

 

 

 

 

━━━━━━━━━━と。

 

 

 

「ユニークシナリオ…!?」

 

事前のネットサーフィンで調べたが、シャンフロのユニークシナリオは発生条件が何れもハッキリとしておらず、自らの手で開拓して見つけ出さなくてはならないように、複雑怪奇に構成されている。

 

「……ククク!まさか、こんな序盤で出会えるとは!幸運にポイントを振った甲斐が有ったって訳だ!此のチャンス、ぜってぇ逃がさねぇぞ!」

 

扉を開き、サンラクは中に飛び込んだ。しかし閉じられた扉には、後付けとなるように『推奨レベル80以上』の文字が刻まれたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開いた先でサンラクが見た景色は、大樹の上に出来た木の階段と、壮大な造りで成された大御殿が鎮座。

 

下には見渡す限り、兎を模した建物が並び、ヴォーパルバニー達がのびのびと暮らす、楽園の様な世界が広がっている。

 

「な、何だコリャ…!?ヴォーパルバニーの巣穴…?まさか、敵の本陣に乗り込んじまったのか…!?」

「ようこそですわ、サンラクさん!御会いしたかったですわ!」

 

其の背後で声が聞こえて、サンラクが振り返ると、其所には先程追い掛けていた、白毛のヴォーパルバニーが居た。

 

「だっ!はいぃっ!?おはようございますぅ!?」

 

思わず後退りするが、其のヴォーパルバニーは目を輝かせながら言ってくる。

 

「いやぁ!今ラビッツは、サンラクさんの噂で持ちきりなんですわ!かの夜の帝王を相手に、たった一人で果敢に挑んだ勇気!被弾する事も無く、致命の一撃を幾百にも渡って叩き付ける確かな技量!まさに『ヴォーパル魂』の体現者ですわ!憧れますわ!」

「お、おぅ……そりゃどうも。滅茶苦茶強かったし、全ッ然歯が立たなかったけどな」

 

ヴォーパル魂とは何ぞや?と聞いては見たかったが、リュカオーンに完敗に等しい敗北を喫したのは事実だ。

 

「当然ですわ!夜の帝王はゴーレムを道端の小石を蹴飛ばすように扱い、ドラゴンに至ってはおやつ感覚で喰い殺す最強種!サンラクさんの様に『神代の加護』を持っている開拓者さん達でなくては、此の瞬間さえも、アタシと喋る事すら出来ないのですわ!」

 

此の白毛のヴォーパルバニーが言う、神代の加護とやらが何かは解らないが、ゴーレムを小石・ドラゴンをおやつ扱いにするリュカオーンに、鳥面の奥に在るサンラクの顔は引き吊った物になる。

 

七つの最強種の一角・夜襲のリュカオーンに対する認識を、此の場で改めなくてはならない。

 

「えっと……君が俺を案内した理由って、ヴォーパルバニーを100匹近く狩ったから、其のケジメ……とか?」

 

致命の包丁と致命の小鎚を各々二本ずつ揃える為に、ヴォーパルバニーを狩った事に対する報復かと身構えるも、返ってきたのは意外な答えだった。

 

「オカシラはそんな『小さな』事で報復はしませんわ。そしてアタシは『エムル』って言いますわ。サンラクさん、よろしくお願いしますわ。其れとサンラクさんが呼ばれたのは、アタシ達のオカシラがサンラクさんに逢いたいって言ったからなのですわ」

「……直々の御指名、ねぇ」

 

報復を小さい事とする国のトップから、名指しで召集される事ともなれば、大きな恩恵を得られるに違いない。そんな風に思うサンラクへ、エムルはこう言ったのである。

 

「アタシ達、ヴォーパルバニーの国・ラビッツを訪れる開拓者さん達は沢山居ますが、此の兎御殿を訪れたのはサンラクさんで『二人目』なのですわ」

「………ん?二人目?もう既に誰か来てるのか……エムル、ソイツの名前って解るか?」

 

二人目という事は既に誰かが、自分と同じように此のユニークシナリオを受注しているという事。一体、誰なのだろうか?

 

「はいな。確か………あ」

 

エムルが何かに気付いて、サンラクは其の視線の先で『一人と一羽』の姿を目撃する。

 

一人は黒を含んだ青と赤の色合いを持つ、ギャングスターを彷彿とさせる黒服、右目は碧で左目は朱のオッドアイが光る、身長185cmの長身男性。そして其の右腕を隠すようにして、マントを身に付けていた。

 

一羽は其の男の肩に乗る、頭には唐笠を被り、薙刀の柄に荷物と桃燈をぶら下げる、風来坊を想わせる細目で黒毛のヴォーパルバニーが居る。

 

サンラクは其の男のプレイヤーネーム『ペッパー』と、彼の顔立ちを見て『正体』に気付いた。

 

 

 

 

 

何せ━━━━━━━━『便秘とシャンフロのアバターの顔が殆ど一緒だった故に』。

 

 

 

 

 

 

「えっ!?『ブラックペッパー』!?なんだその真っ黒コーデ?現役中二病か?あと一番乗りお前だったんかい!」

 

其の声を聞いたペッパーも目を丸くし、此方の正体に気付いて声を上げた。

 

「やっぱり『サンラク』か!便秘の時は世話になったな!………というか、鳥頭半裸HENTAIスタイル好き好んでやってるの?もしかして露出癖でも有るのかい?」

「好きでこうなった訳じゃねぇんだよなぁ……。あとサラッとHENTAI言うな、あの(いぬ)っころとかのせいでこーなったんだよ。てか、誰が露出狂じゃゴラァ!」

 

ベルセルク・オンライン・パッション、通称『便秘』。新規プレイヤーとして参戦し、初心者ながらも脚を用いたゴムパッチンで、己のパイルバンカーをパリィし。

 

ゴムパッチンによる新しいバグ技を発見した、ブラックペッパーとサンラクは、こうして兎御殿で出逢ったのだった………。

 

 

 

 






こうして胡椒と鳥頭は出逢う


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