VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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海中を越えて




インパクト・オブ・ザ・ワールド 〜ハイビート&ハイレゾナンス&ハイボルテージ〜

海の中と言うのは静かであると同時に暗い物である。

 

夜の時間帯の海は月やらが出ていないと真っ暗であり、其の暗さや不気味具合はホラーゲームや現実世界(リアル)の森の中に匹敵する、光源が無いと恐怖で精神面が苛まれ続けるのが()()なのだ。

 

「まぁ俺の場合、リュカオーン関係マシマシのスキル達が有るから、色々と優位を取れてる訳だけど」

 

狼皇の鼓動(ルプリス・ヴァースリズム)黒狼の鋭眼(アーテオル・ガウス)闘心狼魂(ウルフェス・アーハン)剛狼重肢(エナハ・ガウシル)

 

ジークヴルムとの決戦に向けたシグモニア前線渓谷(フロントライン)水晶巣崖(すいしょうそうがい)に深海中下でのレベリング、取得経験値半減状態でレベルアップによるスキル育成を繰り返し、漸く昇華(スタンバイ)状態へに至った夜襲のリュカオーンに(まつ)わるスキルは、夜の海の環境との相性が最高の一言に尽きる。

 

(『夜という概念存在』がリュカオーンなのかなぁ………。エムルさんのマナ・シェイカーなる魔法でダメージ受けてたし、サンラクはリベンジ戦でリュカオーンの影狼を幽霊やポルターガイスト的な存在って言ったし)

 

何時だったかサンラクとペンシルゴン、秋津茜(アキツアカネ)にサイガ-0とレーザーカジキを含めて、夜襲のリュカオーンに付いて話し合って考察し、旅狼(ヴォルフガング)としての仮説にしたのは『夜襲のリュカオーンは夜という概念的な存在其の物』という物。

 

スキルの通りが悪く、魔術の通りは良かった事。マナ粒子で闇を固める事で実体を持つが、実際は『非物質からなるポルターガイスト的な存在』だと言う事だ。

 

夜闇を駆け渡り、夜闇に融け潜り、夜闇より顕わる…………夜()襲うからでは無く、夜()襲うからこその『夜襲』である彼女(リュカオーン)にとって、夜とは『自分其の物』とも言える要素だろう。

 

そんな事を思いつつも、魚人族(マーマーン)のNPC達を守り深層を抜けて漸深層、漸深層から中層へと着々と昇って行き、中層の領域まで浮上して来た事で本当に微細だが月の光が海中に射し込み始め、プレイヤー達がワアッと歓喜に湧き立つや否や、我先にと水面を目指して突撃して行くのを横目にペッパーはやるべき事をやるべく、深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)で海中を蹴り泳いでルストモルドの青春コンビに近付き言う。

 

「ルスト、モルド。一応海から上がったら、天将王装と海王を返して欲しいんだけど良い?」

「………………何故?」

「ちょっ、ルスト!?」

 

此方の問いに対するルストのド直球極まる返答を前にモルドが声を上げるが、リヴァイアサンの第四殻層(VIP)エリア『工廠(コウショウ)』で特殊戦術機の設計図面を見せた時から、ロボキチな彼女を相手に如何なる交渉をするかは決めている。

 

此れは自分だけで無く、今回使ったルストやモルドを含めた旅狼のメンバーが以降に使う場合、やるか否かで『使用感が大きく変わるレベル』になるからだ。

 

「今回ルストが海中で天将王装と海王を使った経験値(データ)を元に、リヴァイアサンで海王を『チューニング』するんだ。どうも勇魚(イサナ)さん曰く、試作型戦術機の三王機の改修は『俺じゃなきゃ出来ない』そうなんだよ」

 

ペッパーの述べた言葉は事実であり、笑顔という仮面を被って開拓者から通貨(スコア)を毟り取る、ラスボス系女子に拍車が掛かっている勇魚は自信有りと言える声色で宣ったが、対価に対する働きが迅速なのは知っているので信用して良い。

 

因みに其時の勇魚が彼に言った言葉というのがコレである。

 

 

 

『嘗てウェザエモン・天津気(アマツキ)将軍が使った試作型戦術機の改修は、天津気の名を襲名したペッパー・天津気(アマツキ)様に()()行えません。其れからペッパー様が持っている球状型記憶装置(きゅうじょうがたきおくそうち):極天(ぎょくてん)という物ですが、ペッパー様が『生産ライン許可ライセンス』を用いて解放すれば、スコアの支払いで量産可能になりますし、リヴァイアサンの第四殻層で『商品として販売可能』になりますよ。因みに御値段は大特価で『二億スコア』の予定で〜す♪』

 

 

 

天将乃兜(テンショウノカブト)碧羅之天(ヘキラノテン)越しのルストのジト目な視線が向けられ、漂う雰囲気から不満気だと言うのも重々承知しているが、彼女は海王含めた試作型戦術機を修繕・改修・調整、ソードメン・オクトメン・ドラゴメン含めた特殊戦術機を解放出来るのも、自分の目の前に居るペッパーだけである事。

 

此処で仕損じて彼がシャンフロにログインしなくなれば、未だ見ぬ特殊戦術機達が解放されなくなる未来や、自分と同じくロボリスト達のモチベーションを失わせる事に繋がると、其れだけは絶対に避けねばならぬと脳内回路で約一秒の演算で弾き出したルストは、彼に対する『条件』を提示する様にこう言った。

 

「複腕か複脚のネフィリムを作って、ネフホロで私()と対戦を。其れが天将王装と海王を返す条件」

「ルスト………」

「モルド、ペッパーを相手する時は全力サポート御願い」

「解ったよ、ルスト」

「了解した。とびっきりのネフィリムを作って、ネフホロチャンピオンコンビに挑戦させて貰う」

 

海底都市アルトランティアでルストが蛸極王装を見て、そう言っていたのが此の条件に当て嵌まっていると答えに辿り着き、交渉は早々と成立からの握手を交わし。

 

エルドランザが祭り上げられている社で天将王装の受け渡しを行う事となり、遅れる形にはなったがペッパー達も水面へ到達し、新大陸の前線拠点から溢れる灯りを頼りにして海岸線まで泳いで行ったのであった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ、()()あーくん。海中から御帰りなさ〜い♪取り敢えず私達と『オハナシ』しましょうか〜???」

『グルルルルルルル……………!』

 

知ってた、何時もの、様式美、実家の様な安心感、其の他含めてetc.と、ニッコリ笑顔のペンシルゴンと身体を擦り付けて尻尾を足首に巻き付けたノワによる、独占欲全力全開の睨み合いと火花散る光景から、そんな言霊が頭を過ったのは偶然では無い。

 

おそらくはサンラクかSOHO-ZONE、或いはヒュクノティムか別の誰かにペンシルゴンが『ペッパー達が海底から帰って来るタイミングを報せて』と、先んじて依頼を出していたのだろう…………で無ければ、ペンシルゴンやリュカオーンの分け身のノワに、大多数のプレイヤー達が此処に集まっている事に説明が付かないのだから。

 

「で、オハナシってのは?」

「ん〜、実は『私達から』って訳じゃないのよね」

「…………どういう事?」

『俺から、と言った方が早いか』

 

背筋と鼓膜が振るえる感覚、ペンシルゴン達が左右に分かれて道を作れば、羽搏き近付き着地する人間大サイズの黄金の龍王─────────決戦に置いて一度は死して、リスポーンによって蘇った現在、修行中の身である『天覇のジークヴルム』其の龍が居たのだ。

 

「ジークヴルムさん、御久し振りです」

『ウム。して、ペッパー・天津気(アマツキ)よ。開拓者達が噂し、俺の角の一つを使って作られたと言う覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)、其れを見てみたいのだが良いか?』

 

ジークヴルムがジークヴルムの刀剣との対面を望んでいる。ジークヴルムの角と黄金のマグマを使い、此の世界に生まれた龍神楽はジークヴルムと同じ声をしながらも、ジークヴルムとは異なる存在である。

 

ドッペルゲンガーの様に同じ存在が対面したら片方が消滅する…………とは思いたくは無いが、果たして如何なる結果が訪れるかはペッパー本人にも解らない。

 

「ジークヴルムさん。今其の龍神楽は寝ている状態では有りますが、大丈夫でしょうか?」

『構わない』

 

インベントリアを操作して覇刀:龍神楽を取り出した其の時、龍神楽がパチリと寝惚けた様子で目を開いた瞬間に、ジークヴルムと目が合った。

 

 

 

『オマエは…………』

『…………フム、良い声だな』

 

 

 

世界に生まれし龍刃と、世界に再誕せし龍王。

 

出遭いし双龍、果たして何が起きるか。

 

 

 






黄金の邂逅


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