VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラクのロールプレイ




サンラクとヴァッシュ、そしてペッパー

「ペッパーさん、初めましてですわ!アタシはエムルですわ!ギラギラ滾るヴォーパル魂を持っていますわね!」

「初めまして、ペッパーです。アイトゥイルから、貴女の話は聞いてます。よろしくお願いします」

「やぁやぁ、サンラクはん。ワイはアイトゥイルなのさ。夜の帝王から二つも呪い受けるやなんて、アンタも中々のヴォーパル魂を感じるのさ」

「お、おぅ……よろしく」

 

御互いに自分を連れて来たヴォーパルバニーと、挨拶に握手を交わして、エムルの案内でサンラクと一緒にペッパーとアイトゥイルは兎御殿を歩く。

 

(なぁ、ペッパー………さっきからエムルとアイトゥイルが言ってる、ヴォーパル魂ってのは何なのか解るか?あと此のユニークシナリオ、誰かに口外したりしてねぇか?)

 

そんな折、サンラクがペッパーにヒソヒソ話をするように、ヴォーパル魂とユニークシナリオについての質問をしてきた。

 

(俺も詳しい事は解らないけれど……。多分『魂の気高さ』とか『強敵に挑む心意気』の事じゃないかと思う。ユニークシナリオに関しては、誰一人にも口外してない。とんでもなく貴重だからな、コレ)

(そうか。…………って、要するにアレか?自分の言動に対して、状況に応じた『ロールプレイ』を常時要求してくる……みたいな?)

(だとは思う……まだハッキリとしてないけど)

 

ペッパーの思う、ヴォーパル魂に関する解釈に、うむむ…とサンラクが唸る。そう考えると、ロールプレイの下に慈愛の聖女イリステラの親衛隊として、活動・護衛を行うジョゼット率いる聖盾輝士団の本気(ガチ)度合が、生半可な物では無いと改めて考えさせられる。

 

と、エムルの足が嘗て、アイトゥイルの案内で訪れた謁見の間たる、大広間の襖の前で止まった。

 

「サンラクさん!此方にアタシ等のおと…げふん、カシラが居ますわ!カシラー!ヴォーパル魂に溢れる、人間さんを連れて来ましたわー!」

「おぅ、エムル。よぅやった……」

 

内側からヴァイスアッシュの声が聞こえて、サンラクが早速開こうと襖に手を掛けるが、ペッパーが一旦静止を促すように伸ばした手首に、指先を乗せる。

 

(おいペッパー、早く開けたいんだが?)

(サンラク。さっきヴォーパル魂について言ったと思うが、必要なのはロールプレイだ。此の場面、君ならどうやって入る?)

(………もしかして、そういう事?)

 

先程と同じく、ヒソヒソ話をしてコクリとペッパーは頷く。其れを見たサンラクは深呼吸をした後、キリッとした視線で背筋を伸ばし。エムルが襖を開くと共に、彼は「失礼しやす」と述べて部屋へと入る。

 

「おぅ、よく来たなぁ。待ってたぜ……」

 

謁見の間の奥に座り、着物を着た小さな雌兎を付き従え、ヴァイスアッシュが座っている。部屋の外から見ても、ヴォーパルバニーの大頭の気迫は、尋常の物ではない。

 

しかし其の気迫にも負けず、サンラクの瞳はヴァイスアッシュを見つめて。其の目は既に『入っている』かの様にも感じられた。

 

「おめぇさんかい。あのワンコロと殺り合って、ションベン(マーキング)引っ掛けられたってのは。中々ヴォーパル魂が有るじゃねぇか」

 

人参型の年代物の煙管を吹かして、ヴァイスアッシュが左目を開きながら、サンラクに対して言った。

 

「どうだい?おめぇさんが俺等(おいら)に時間を預けるなら、直々に鍛えてやっても良いぜ」

 

ペッパーとアイトゥイルは、サンラクの背中を見ながら、彼がどんな答えを返すのかを見守り。そしてサンラクは脚を広げて、膝を畳に付け、太腿に両手を置きながら、頭を下げてこう言った。

 

「拒む理由も在りやせん、よろしくお願いしやす。兄貴」

 

極道物のゲームである、組長との一場面として完全解答(パーフェクト)に等しい、受け答え(ロールプレイ)をサンラクは成し遂げたのだ。

 

「うはははははは!そうか、そうだよなぁ!教えを請う以上、おめぇさんは舎弟だ!よぉく解ってるじゃねぇか!ははははははは!!!」

 

ヴァイスアッシュも大笑いで立ち上がり、上機嫌な様子でサンラクに近付いて、其の手でバシバシと彼の肩を叩く。やはりあの場面、選択肢は兄貴が正解だったかと、先生と呼んだペッパーは己の選択ミスを少し後悔して。

 

そしてヴァイスアッシュは、サンラクへと言った。

 

「おいらの事は、ヴァッシュって呼びな!気に入った奴にゃあ、そう呼ばせてるんだ」

「………ウッス!兄貴!」

「おぅ、エムル!コイツの世話ァ、お前に任せるぜ」

「は、はいな!アタシ、一生懸命頑張るわ!」

 

此所にまた1つ。プレイヤーとヴォーパルバニーの新しいコンビが誕生した、そんな記念すべき瞬間に立ち会えた事を、ペッパーは心の中で感謝したのだった。

 

と、彼はある事に気付く。そう言えば自分は此の後、致命魂の首輪を強制装備されたんだよな?━━━と。

 

「おっといけねぇ、コイツを忘れる所だった」

「へ?え、何すかコレ!?強制装備!?」

 

其の予想は的中し、サンラクの首にヴァッシュが投げた、致命魂の首輪がギチッと巻き付く。

 

「はぁあ!?所得経験値半分!?また縛り追加ァ!?」

「弱者が強さを得るには、尋常じゃない苦難が必要だぁ。其の身に宿ったヴォーパル魂、忘れるべからず!だ!」

「お似合いですわ、サンラクさん!」

 

リュカオーンの呪いと致命魂の首輪による二重の縛りに増えた事で、サンラクが先程のキリッとした表情は、一気にグロッキーな物へと変わったのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「経験値半分……レベル以下逃走……被弾したら死ぬ……」

 

ヴァッシュとの邂逅を経たサンラクは、兎御殿をフラフラ歩きながら、ブツブツと呟く。胴と脚の二ヶ所に呪いが付いている以上、防具による耐久値上昇は見込めず、回避特化にするしか道は無くなり、苦労していると考えたペッパーは、非常に申し訳無い気持ちになった。

 

「サンラクさん!そんな時は兎御殿やラビッツを見て回ると、少しは気分が変わりますわ!」

「エムルの言う通りさね。役に立つ施設も沢山あるし、悲観してても何も始まらないのさ」

「ソーダナー……」

 

エムル&アイトゥイルがエールを送る中、此方も何か出来ないかと考え、彼は言う。

 

「サンラク。首輪は俺も付けているが、ステータスポイントもそうだけど、何よりスキルの熟達や開眼に関して、とんでもない効率を誇る『ブッ壊れアクセサリー』なんだぞ其れ」

「…………そうなの?」

 

「あぁ」とペッパーは答えて、首輪がもたらす恩恵に対する説明を、ユニークシナリオの先達者として、サンラクにレクチャーした。

 

「シャンフロは所謂『スキルゲー』で、覚えるスキルや魔法は、戦闘やそうじゃない場合で使用しても、熟練度は『上がっていくんだ』。同時にスキルや魔法を習得出来るか否かは、レベルアップの時点に於いての『理解と経験』に比例してる。

 

では問題。今サンラクや俺が付けてる、此の致命魂の首輪。此れを装備した状態で、スキルや魔法を二倍の戦闘回数の中で使い重ねて、様々な戦法を用いた果てにレベルアップした場合━━━━」

 

 

 

 

スキルの成長及び習得率(・・・・・・・・・・・)は一体どうなると思う?

 

 

 

 

ニンマリと笑うペッパーに、サンラクは其の答えを考えて。そして答えに辿り着いてか、目を大きく見開いて丸くする。

 

「イヤイヤイヤイヤ……えっ、マジで?」

 

致命魂の首輪が装備者に与えるメリット。戦闘経験の倍増によるデメリットは、同時に己が持つスキルの理解に直結し、レベルアップによる進化と変化に、大きく関わっている。

 

「フッフッフ……俺はレベル26の時に装備して、41までレベルを上げたんだが、秘伝書で覚えた物を除くと、50近いスキルを持ってる。

 

右手に呪いが在ってコレなんだ、両手が使えるサンラクなら大剣に大槍、ハルバートやらの大型武器も使えるから、もっと色んなスキルを覚えられると思うぞ?」

 

防具が装備出来ないのは、何も悪い事ばかりではない。見方によっては防御以外のステータス数値を伸ばせる事であり。

 

両手が使える事は、双剣と小鎚に片手剣2本を初めとした二刀流、破壊力抜群のロマン火力を誇る両手武器の使用、剣と盾に槍と大盾といった様々な組み合わせによる、攻撃バリエーションの模索が出来るのだ。

 

メイン職業(ジョブ)によっては、習得しやすいスキルに傾向は有るものの、理論上は『全て』のスキルや魔法を覚える事は出来るらしく、習得を補う為にサブ職業(ジョブ)に対応する物をセットし、プレイする者も居るのだとか。

 

「そうか…!デメリットばっかりに目が行ってたけど、確かにスキルゲーと考えれば、戦闘回数増加は寧ろメリットになるのか…!」

「まぁ其の分、武器の耐久値消耗も激しいから、マーニも食う事にはなるが……多分誤差だと思う」

 

首輪の持つ力に直ぐ気付けた辺り、サンラクはペンシルゴン程では無いにしても、頭が相当切れている。

 

「フフフフフ…!フハハハハハ…!そうと決まれば、やる事が色々出て来たぜ!取り敢えず休憩してから、サードレマに向かうぞ!エムル、準備しとけ!」

「は、はいな!でしたら、兎御殿の休憩室にベッドが在るので、其処でも休めますわサンラクさん!」

「お、じゃあ案内頼むわ!シャア!やぁーってやろうじゃねーか!」

 

沈んでいたテンションがハイに戻ったようで良かったと、休憩室に走り出した彼の背中にペッパーは微笑み。しかし、直ぐに冷静になって思考し始める。もし、此のままサンラクが外に出た場合、エムルも一緒に連れて行くとなると、他のプレイヤーに見付かる危険が非常に高い。

 

キョージュからの伝書鳥によって、おそらくアイトゥイルの存在も知られている以上、サンラクとの繋がりが公になれば、自分だけでなく彼にも影響が出るだろう。

 

「アイトゥイル、ピーツさんって今居るかな?」

「居るさね。でもどうするのさ?」

「彼は『商人』だ。なら……『良い物』を取り揃えてるかも知れないだろう?」

 

バックパッカーとして、ペッパーが動く。

 

 

 






先達者として、道を照らせ


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