ペッパー、サンラクを手助けするの巻
「ピーツさん、居ますか?」
「おぉ、ペッパーにアイトゥイルねーちゃんやんか。買い物に来たんかいな?」
兎御殿の一角に商品を並べて、露店を構えるピーツと出会ったペッパーは、早速話を切り出す。
「えぇ。最近、リュカオーンと戦ってマーキングを付けられた、サンラクって開拓者を知ってますか?」
「知っとるで。さっき兎御殿にやって来て、オヤジに気に入られた、夜の帝王のオキニとか言う『鳥の人』やろ?」
「鳥の人……ね」とペッパーは、サンラクの格好を思い浮かべる。ハシビロコウの被り物を付けている姿は、確かに
「で、其の鳥の人……サンラクにプレゼントをしたくて来たんです」
「ほほぅ。ペッパー、アンタも鳥の人が気に入ったんかな?で、どんな物が欲しいん?」
「そうですね……例えば『頭から全身をスッポリ隠せる物』って言えば、解りますかね?」
胴体と脚に呪いが在る以上、まともな方法では隠し徹す事は不可能である。必要なのは、呪いの影響を受けずに全身を隠せる物、早い話が巨大な布でも足が動かせれば、移動出来る訳だ。
寧ろ自分が目立てば、其れだけサンラクの方は呪いを隠して動ける。其れが巡り廻っていけば、彼と自分が同じ
面倒事を此の身一つに引き受けるのは、ある種の主人公ムーブにも等しく、ペッパー…もとい梓の好きなシチュエーションでもある。
「ピーツ。そいやアンタ、前にワイ等に言い触らしてた、面白いアイテムが手に入ったって、言うてなかったかさ?」
「……あー。其れなら確かにあるで。ただ値段の割に、全ッ然売れんくてなぁ~。見た目『ただの布』なんよ……値段は『3万マーニ』やけど、そんでも買うか?」
アイトゥイルの指摘で何か心当たりが付いたのか、ピーツが巨大なリュックサックをゴソゴソと漁って、折り畳まれた白い布を出して来た。
「お願いします。一応懐は温かいので」
料金を支払うと、ピーツが「まいどおおきに~」と購入したアイテムを、インベントリに仕舞ってくれた。ペッパーは早速、購入した内容を確認する。
獣人族が祭祀で用いる白頭巾。大いなる白の影の正体を知る獣人族は、既に命を紡ぐ果てへと消えていった。
頭部に装備出来るが、装備中は腕及び手に装備する武器、手に関係するスキルが一切使えなくなる。
いやなんだこのネタ装備は。ピーツから白頭巾を買ったペッパーが、初見で抱いた感想である。脚系統のスキルは使えはするにしても、手に関係したアクションの制限は、単純に痛過ぎる。
何からの理由で戦闘になった場合、脱いで武器を取って戦うの三度手間を挟むので、其の間に逃走経路を塞がれては元も子も無いのだ。
「どうする……こうなったら、サンラクとパーティーを組んで、俺がサードレマまでキャリーするか?」
いざとなったら『此所は俺に任せて、お前達は先に行け』をしても良い、もしPKに絡まれたなら『救済措置』で凌ぐ事も視野に入れ、今自分が持っているアイテムを確認し、四駆八駆の沼荒野のエリアボス・
「おーい、ペッパー。戻ったぞー…って、もしかして兎御殿限定のショップ!?」
と、サンラクが再ログインしたようで、エムルと共に此方に歩いて来て。そして横目でピーツを見て、再び二度見して声を上げた。
「サンラクさん、コイツはアタシの弟のピーツですわ!品物を仕入れては、店を開いてるんですわ!」
「エムルねーちゃんの弟のピーツや、初めましてやな。夜の帝王のオキニの鳥の人」
「鳥の人て…一応コレ被り物なんだよな。ホレこんな風に」
スポンとハシビロコウの被り物を取って素顔を見せるサンラクに、やっぱり楽郎君だなと思うペッパーと、中々の顔立ちだと感心するピーツ&アイトゥイル。
そして此の面々で一際驚いて、頭に乗せていたシルクハットがポーンと飛んだエムルの、十人十色な反応が其処には在った。
「よっしゃあ、早速サードレマに向けて出発だ!」
「ちょい待ち、サンラク。其のままの格好で出歩くつもりか?呪いとエムルを見られる可能性も在るんだぞ?」
意気揚々と街に繰り出そうとする彼を、ペッパーは此所で待ったを掛ける。
「あ、確かに………。でもなぁ~、胴と脚に装備付けらんねぇしなぁ………」
「サードレマに向かうなら、コイツを装備して呪いを隠した方が良い。其のまま街に出るよりか、まだマシになると思う」
先程ピーツから買った白頭巾をギフトとして送り、呪い隠しの装備としてサンラクに渡すペッパー。そしてサンラクが其れを受け取って、頭に装備してみると、ジト目と脛より下の素足以外、全てが白い布でスッポリ覆われた、かの『メジェド神』を彷彿とさせる姿に早変わり。
「……………なにこれ」
「実際戦闘向きじゃ無いが、此れで呪いは隠せるだろう?しかも似合ってるぜ?」
「いや両手使えなくなってる時点で、完全にネタ装備まっしぐらじゃねーか!?」
「大丈夫、大丈夫。俺がデコイになるから、サンラクは真っ直ぐに、サードレマを目指して進んでくれ」
サンラクはまだ目立っていない、要はミスディレクションなのだ。強い光が煌々と輝けば、其れに比例するように影は黒く深くなる。自分という光を利用して、サンラクを影に隠す。我ながら良いアイデアを思い付いた物だ。
そんな風に思っていた時期がペッパーにも有った。
「ペッパー見付けたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「しかも何か変な白装束被った奴も居るぞ!」
「引っ捕らえて情報吐かせろ!」
アイトゥイルのゲートを使って、兎御殿からセカンディルの裏路地へ繋ぎ、サンラクは白頭巾にエムルを、ペッパーは旅人のマントの中にアイトゥイルを隠して、裏路地に出た。
しかし出た直後、運悪く他のプレイヤーと鉢合わせ、ペッパーは消費アイテム『投擲玉:炸煙』を使って、サンラクと共に逃げたは良いが、派手に炸裂させた煙が別プレイヤーを引き寄せる結果となってしまう。
「何やってんだよペッパー!ワラワラと他の連中来てるじゃねーか!?」
「本当にゴメン!こりゃマジでやっちまった!」
シャンフロで話題を巻き起こしている、そんなプレイヤーと一緒に居る時点で、サンラクもターゲティングされてしまった訳だが。
と、サンラクが疾走する中で誰かに気付いて。布を被った状態ながらも大きく息を吸い込むや、大声量で声を放ったのだ。
「おおおおおおおおおおぅうぃぃぃぃぃぃぃぃい!オイカッツォきゅぅうううううううううん!!!」
突然のサンラクの発声、彼の視線の先には金髪ツインテ少女のプレイヤー、其の頭上のプレイヤーネームにはオイカッツォの文字。アイツはどのゲームでも、必ずネームにカッツォを加える事から、ペッパーはオイカッツォ=ブシカッツォが同一人物と気付き。
やりやがった。サンラクお前マジか、やりやがったよ。此のタイミングで、カッツォを犠牲にするためにヘイトを入れ替えさせやがったと、心の中で叫ぶ。
「アイツ、知り合いか!」
「よし、取っ捕まえるぞ!」
確かにサンラクのやり方は悪い訳ではない。全員敵のサバイバルでは強敵に対しては、プレイヤー達が一時徒党を組んで対処する何てのはよく有る事。
そしてオイカッツォはと言うと、そんな事をさせてたまるかとばかりに、此方へ猛ダッシュで突っ込んで来た訳で。
「ちょ此方来んな、カッツォテメェ?!」
「人巻き込んどいて、自分等だけ逃げようとか、許す訳無いんだよねぇ!!一緒に捕まろうぜ、ペッパー&サンラクぅ!!」
「総受けはオメェ一人で事足りてるわ!バーカ!」
「其れは禁句だろーがコノヤロウ!」
「ああもう!カッツォとサンラクは喧嘩するな!兎に角サードレマに向かわんと話にならねぇ!」
「はいこれ持って!」と二人に、ペッパーがギフトとして手渡したのは、消費アイテムの投擲玉:炸油が無数。可燃性の油を着弾部分に付与するが、何も此れは燃やすだけが全てでは無いのだ。
「街の入口出たら、其れ強く握ってアイツ等の進行方向、足元目掛けて投げる!OK!?」
「コレナニ?マッドフロッグの皮玉?」
「玉無しが何か言ってる(笑)」
「あ"?お前の
「はいはいシャラップ御二人さん!!!握って投擲すると、可燃性の油が出る!ローションの代わり!」
ペッパーの説明に、サンラク&オイカッツォはニヤァアアと悪い笑顔を浮かべて。セカンディルの門と四駆八駆の沼荒野の境界線に、三人は投擲玉:炸油をぶん投げまくり、オイルローションの床を形成。
他のプレイヤー達が突撃するも、ローションと化した地面に滑ってスッ転んで、人が積み重なっていく。
「お~スゲェ便利じゃんコレ」
「投擲玉って言ってね。煙玉や閃光玉、音爆弾にさっきの油とか、ラインナップが充実してる」
「投擲玉かぁ、アイテム投げる練習にもなるかな?」
「兎に角、今の内にエリアボスの所まで走るよ。彼処は仕様上、挑戦中のプレイヤーが死ぬかクリアするまでは、他のメンバーは入れない様になってる。此のまま三人……いや、三人と二羽で攻略してサードレマに向かおう」
三人は解るが、二羽とは何ぞや?と疑問を浮かべるオイカッツォと、成程そう言う意味かと納得したサンラク。各々の事情を抱え、巻き込み巻き込まれながら走る三人は、エリアボス・沼掘りが待つ沼地の渓谷を目指して行く………。
事は何時も、簡単には運ばず