VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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オハナシの後にやる事は




結び目を解いて一本の線として繋ぐ時程の緊張感は常日頃から持って置くと、いざ困難が襲ったとしても大抵は冷静で居られると太古の教えでは存在した

新大陸の前線拠点に建つNPCが運営する蛇の林檎、其の新大陸支店で食事をしていた所に左方始源眷属の赤色(レイドモンスター)たる(むさぼ)大赤依(だいせきい)の再出現の凶報が舞い込み、プレイヤー達が警戒と混乱に慌てる中でペッパーは覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)と共に現場に急行。

 

紆余曲折有れど、其の戦いで宝鍠趙弩剣(シャガル=ニュア)の持つ切札・皇金剣(アンティアレス)との合体能力:極撃形態(アルティマモード)を解放した事により、貪る大赤依に決定的な致命傷をペッパーは与え、最後は既に戦いに参加していたドラゴメン持ちとソードメン持ちの連携斬首が決め手となって、再び左方始源獣エレボスの血たる赤い飛蝗の大群は鎮められ塵となって───────消えた。

 

システムアナウンスとシステムウィンドウの確認で、彼が受注しているユニーククエスト【インパクト・オブ・ザ・ワールド】の第七段階かつ、ユニークモンスターが二体倒されてワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】が第六段階終了する前までに、二つの大陸に蔓延る始源存在を三種以上発見・討伐するという【我が身は人と共に、色災を破る】で最低討伐規定ラインまで残り一体となった。

 

戦闘後ペッパーはライブラリのミレィ含む多くのプレイヤー達と『オハナシ』し、森人族(エルフ)の里・ティアプレーテンに到達後、貪る大赤依戦で共闘した者達やティアプレーテン内に至った者からも『オハナシ』され、答えられる事は答えて秘匿する箇所は秘匿を徹底した後、彼等彼女等と別れてティアプレーテンより樹海地帯を低空疾走で駆け抜け、十数分後には前線拠点まで帰還を完了。

 

蛇の林檎に急ぎ戻れば、店を利用していたプレイヤーにNPCの視線が一挙に向き、ノワを抱えて両肩にディアレとアイトゥイルを乗せたカルネ=103(ヒトミ)が真っ先に歩み寄る。

 

「おかえりだ、契約者(マスター)。其の様子からして貪る大赤依の討伐は出来た様だな」

「まぁ一ヶ月経つと再出現するけどね………」

 

始源存在達を根本から駆逐する術は無い物なのかと記憶を捻り、天覇のジークヴルムのユニークシナリオ【来たれ英傑、我が宿命は幾星霜を越えて】、其の決戦フェーズにて最終試練発動前のジークヴルムが述べた『始源を組み伏せ使役する』というワードを思い出し。

 

続いて彷徨(さまよ)大疫青(だいえきせい)討伐戦時にライブラリが調べた情報で、始源存在達は『生物や人体の()()()()』の役割を担い、アルトランティア出立前にリヴァイアサン第五殻層『叡智(エイチ)』でアンロックした『眷属名「彷徨う大疫青」戦術的考察』や『眷属名「貪る大赤依」戦術的考察』によると、大疫青は『免疫機関』・大赤依は『赤血球』との記載から、始源達はエレボスとアイテールの目覚めを()()する為に動いているのは『ほぼ確定』した事も、記憶内に置いた本棚からペッパーは引き出した。

 

(ただ貪る大赤依自体は『オートファジー誘発させた後に、大赤依を隔離拘束すれば確実に自滅する』って戦略的考察のファイルに書かれてたから、方法によっては『簡単に倒せる気配が有る』んだよな…………。尤も其れ自体が『簡単じゃないからこそ』大問題な訳で)

 

思えばサイガ-0が持つ双理の鎧と太極の剣(パラドクス)は、彼女が何時だったか述べた言葉では『始源存在の根幹』に関わるユニークウェポン達であり、白と黒の色合いからしても黒い鳥(エレボス)白い亀(アイテール)の『間の子』疑惑が浮かぶ。

 

白と黒・光と影・表と裏………本来交わる事が無かった要素が一つの形と成って、シャングリラ・フロンティアという世界(ゲーム)に存在し、其の根幹に触れ得るサイガ-0が其の鎧と剣を以って『一体どうなるのか』はペッパー本人にも解らない。

 

「あのー、ペッパーさん。どうしました…………?」

「始源存在の事で色々考えてて。思えば新大陸の始源存在は赤色以外の情報が出て無いから、広範囲探索必須かなと」

 

プレイヤーの一人から質問され、此方が答えたのを機と見た他の者からの質問連打を浴びせられたペッパーは、答えられる事柄に関してはキッチリと答え、秘匿する部分はペンシルゴンへ連絡をといった回答を徹底。

 

一先ず蛇の林檎を出ても付いて来るプレイヤー達の質問の連鎖に次ぐ連鎖を捌いた後、宝鍠趙弩剣や皇金剣を始めとした大赤依戦で耐久値を減らした武器達を回復させるべく、海上ギルドの鍛冶師組合『鐵打ち達の集い』に在籍し、ペッパーが育成に関わる魚人族鍛冶師(マーマーンスミス)で古匠とガンスミスライセンスを取った、ル・ジニシィに依頼せんとして───────

 

『ワンッ!』

「む、其の声はノワか?………いや誰だ君は?!?」

 

ノワの一鳴きと視線の先、大きな巨体でヴァイキング衣装で身形を整えた、年季と箔が付いた鞭を襷掛けの如く巻く、巨人族(ギガント)の女NPC・ヴェイノムスのルギニアスと再会した。

 

「えっと、ペッパー・天津気(アマツキ)ですよ?」

「…………んん?ペッパー・天津気だと………?」

 

ルギニアス本人が自分(ペッパー)を見抜けていない。

 

果たしてどういう理由かと考えれば、彼女と出逢った時はマクティスシリーズを纏った状態で女の状態だったのを思い出し、ルギニアスがどんな反応をするのか興味半分、周りのプレイヤー達がペパ子ちゃん降臨によるハッスル不可避の頭痛半分の中、青の聖杯で性別反転をすれば其れを目視したプレイヤー達が、刹那に黄色い声を上げた。

 

「御久し振りです、ヴェイノムスのルギニアスさん」

「おぉ!グランシャリオのペッパー・天津気じゃないか!元気にしている様だな!」

 

此れを見て確信したのは、巨人族の者達の反応は秋津茜(アキツアカネ)に通じる素直さが有り、巨人族に改宗(コンバージョン)済のプレイヤーや巨人スキーの連中からジト目で見られ、ヒトミ達共々ルギニアスの掌の上に乗っかり、視線を合わせられる。

 

「して、グランシャリオのペッパー・天津気よ。君は『アラドヴァルのサンラク』の知り合いであり、彼を連れて来れる数少ない者だと波濤を越えて来た者達が噂しているが、其れは本当なのか?」

「はい。アラドヴァルのサンラクに何か御用が有るのでしょうか?」

「あぁ。実は我々巨人族の長である『無双の双剣(モラ・ベガルタ)のディルナディア』が、アラドヴァルのサンラクを大使館に連れて来てくれと巨人族全体に命令をしてな。竜災大戦の時、君と彼女は白竜ブライレイニェゴを相手に大立ち回りをしただろう?彼女は白竜の息の根を止めた君にも、一目会いたいと言っているんだ」

 

称号【白き竜を落とす者】とアイテムの『白の菌丸核』は白竜ブライレイニェゴのラストアタッカーを証明し、ジークヴルムのユニークシナリオ攻略報酬として配られた『白竜の魔菌』は白竜ブライレイニェゴ討滅の証として機能し、魔菌と関係がある亜人種NPCに対する好感度やイベントに関わる気配を感じる。

 

他の巨人族のNPC達も羨望を中心とした視線で此方を見ている事からして、身体から出す雰囲気(フレーバー)な物を押し出している()を抱きつつ、ペッパーは「解りました」と述べて、ヴェイノムスのルギニアスからの言伝をサンラクに伝える事を約束した。

 

そんな一幕を経た後、ペッパーは仲間達を連れて鍛冶師組合『鐵打ち達の集い』へ向かい、丁度別のプレイヤーの武器修繕を終えたル・ジニシィを発見、他の鍛冶師NPCや鍛冶師プレイヤーがペパ子ちゃんの到来に視線を向け、ザワザワとガヤり始めた中で彼女も気付いた様子で声を掛ける。

 

「おぉ、ペッパーか…………って、何で女の姿になってんだい?」

「まぁ色々有りまして…………武器の修繕を依頼したいのですが、良いでしょうか?」

「見せてみな」

 

小さく頷いて、彼女()は貪る大赤依との戦いで用いた武器達を取り出して。

 

一つ、また一つとカウンターに乗せられる業物の数々に、周り目は丸くなり、向けられる視線は強まり、そして此の世界で現在最もホットな武器として知られる、宝鍠趙弩剣と皇金剣が取り出されれば、必然的に鍛冶師や利用客の視線が一挙に集まる。

 

「こりゃまた…………、どれもこれも随分な逸品じゃないか」

「何れアスカロンを元在る姿へ神化させる為にも、色んな武器を直してどんな特色を持っているのか、ル・ジニシィさんには知って貰いたいですから」

「…………色んな奴が作った物を見て学べって事かい?」

「はい。色々な武具を直したり触れれば、アイディアも浮かぶ………鍛冶師ってそんな生き物だと思いますから」

「…………解った。アンタの武器、鍛冶師としてキッチリ直させて貰うよ」

 

武器を預けて彼女にマーニを支払えば、やはりというか利用客や他の鍛冶師から質問連打をペッパーは受ける事になり、更には『ペパ子ちゃん用に作った衣服を着て欲しい』と出て来た者まで現れ、数十秒後に鐵打ち達の集いを統括しているNPCが出張った挙句に、『店内は御静かに』とドスの効いた一喝で静かにさせられ。

 

其の隙にペッパー達一行は組合を後にし、前線拠点内に在る宿屋に移動から一番良い個室部屋を取って、ペッパーはセーブ&ログアウトをして此の日のシャンフロを終えたのだった…………。

 

 

 






存在価値は単純なだけじゃ測れない


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