コンサート、開幕
深淵のクターニッドにルルイアスへと引き込まれ、ユニークシナリオEX開幕と同時に意識が暗転した時と同じ感覚から目覚め、サンラクが辺りを見回す。
「強制ソロ戦………影法師の試練も確か
入口の扉に弾かれたエムルにサイナ、サイガ-0とエクシス&ウォットホッグにイクサと
フィールドは薄暗く静かな、目が全体の暗さに慣れた事で輪郭等が見え、装飾に重きを置いた壁や柱に観客席、劇場上部には所謂VIPエリアらしきカーテンが付いた迫り出し席と、此処の見た目は『中世の劇場であり舞台であり、同時にコロシアムでもある』という事をハッキリと知覚出来た。
「トリガーは何だ?シンボルエンカウントか?」
辺りを観察しても何も始まる気配が無い、此処から出る為には己が死ぬか、オルケストラを倒してクリアするかの二択であるのは明白。
兎にも角にもコンサートを始める為のフラグを探さなくては…………そう思っていた矢先、彼は此のフィールドに於いて『あまりに似合わない物』を発見した。
「あん?何だありゃ?」
壁の模様と同化して、確り観なくては見付けられなかった『其れ』は、壁の中に埋まって一体化していた。
「……………『音楽プレーヤー』?」
今の御時世では携帯端末で動画撮影や録音に辞書代わりと、一台で何でも出来る様になった便利な時代だが、十数年前は音楽を聴くには専用の機械が必要な時期が在り、其の最たる例がサンラクが発見、目の前まで接近した事でハッキリと『音楽プレーヤー』だと解った。
「………いや何でこんな所に音楽プレーヤーが在るんだ………」
中世劇場に昔の音楽プレーヤー、明らかに場違いであるのに此れ以外に調べる物は何も無い。つまりは此の音楽プレイヤーが冥響のオルケストラに挑む為のトリガーなのは違い無いが、其れを踏まえても何故音楽プレーヤーなのかは解らない。
「バハムートが地球で生まれて宇宙を旅して、此の惑星に来たって設定からして、コイツも地球生まれなんかなぁ。………まぁ良い、電源電源っと………」
電源を入れれば画面に現れるプレイリスト、在るのは『エリーゼ・ジッタードール』という名前とリスト内には『Your Orchestra』の曲名のみ。
「エリーゼ・ジッタードール………?何か聞いた覚えが………あ、思い出した。確か………『アンドリュー・ジッタードール』だ、其の関係者っぽい?」
ペッパー及び
そして
「うーん………。もしかして『順序か何か間違えてるか、俺が何か見落とした臭い』…………」
クソゲーマーのサンラクの胸がざわつくのは、共通して彼がゲーム攻略中に『何かしらのフラグを建て忘れている時』だ。
原因は主に『ピザ留学』こと時計の秒針と戦うクソゲー『ラブ・クロック』が顕著で、アレはサンラク本人でも『二度とやらない』と太鼓判を押した程のトンデモゲームであり、恋人が出来た今でも未だに脳の片隅に突き刺さっているゲーム、故にこそゲーマーとしての直感は時に神憑りとも言えるレベルで刺さる。
「…………取り敢えず一回挑んで、オルケストラの情報を引っ張り出させてやる…………!再生…………っおわ!?」
再生と同時にバン!と一つのスポットライトがサンラクを照らし、続けてババババン!!と四方八方からの光が半裸の鳥頭を、薄暗闇に包まれていた劇場内で白日の下に晒すが如く一点に注がれ、何時の間にか其処に在った筈の音楽プレーヤーは消えていた。
そして時を同じくして劇場に変化が起き、舞台の中心にて遠き日のセツナの様な幽霊、或いは勇魚に象牙と同じホログラフィック……………そんな一人の女性がドレスやアクセサリーで着飾った姿でフワリと現れる。
だが其の女性は───────数多のクソゲーを攻略して来たサンラク本人から見ても、あまりにも『パッとしない』のだ。
悪く言えば『顔の造形含めてモブとしか言いようが無い女性』で、RPGなら最初の村に居る若い女の村人・ゾンビサバイバルゲーなら大々序盤のパニックで死ぬ市民・他にも道中の古民家を営む一般的な女店主といった、『着ている物は相応なのに控え目に言ってもモブな見た目』という、ユニークモンスターのシナリオに関わる存在にしては肩透かしを食らった気分で。
然してそんな彼の思考は、此処から一気に引き戻される事になった。
エリーゼ、否………其の出で立ちは何処か『歌姫』の如く高らかに、だが其れは綺麗に『再現された様な』ソプラノボイスが響き出した直後、ヴァイオリンを持った奏者が弓で弦を弾いて音を鳴らし、劇場に旋律が奏でられ始めたと思えば、次から次に『別の楽器を持ったマネキン達』が現れて、旋律に各々の楽器のメロディーを重ね合わせ、一つの音楽を作り出す。
ある者はトロンボーン、ある者はコントラバス、ある者はチェロ、ある者はフルートと続き、何時しかコーラス・ホルン・トランペット・ヴィオラ・クラリネット・シンバルと、正に巨大楽団の一大演奏会と呼べる状態となって。
最後に『其れ』は此のコロシアムの中に現れた。
「………………は?」
サンラクは
サンラクは
サンラクは
サンラクは
サンラクは
そして答え合わせをする様に、歌姫は高らかに題名を述べたのだ。
『サンラクの紡いだ物語。第一章………【深淵に座する大盟主】』
「ッ、クターニッド………だと!?」
音楽プレイヤーのYour Orchestra、歌姫が紡いだ言葉、サンラクの紡いだ物語、第一楽章。サンラクの脳内をキーワードが駆け巡り、高速演算の果てに一つの───────物凄く『嫌な予感』となって襲い掛かり。
「
次の瞬間には、クターニッドの第二形態・幻想態より飛んで来たホーミング触手の嵐が、サンラクの思考を一挙に吹き飛ばしたのであった。
其れはお前という存在の、歩みを示すボスラッシュ