VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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進め、進め、進め




唯一人(ただひとり)へ贈る歌 〜其の三〜

「おっしゃああああ!」

 

結果から述べれば、サンラクは再現クターニッドの討伐に成功した。

 

彼の予想通り、最後にエリーゼの歌詞によって要求された課題(タスク)は『盟主は地より、天を見上げ………、夜天より勇者と共に落ち、月明かりは………深き宝珠を叩き割る………』で。

 

要求通り再現ペッパーと共に、上空からの二振りの勇魚(イサナ)兎月(トゲツ)による合体状態:閠永月(ぎょくようげつ)の一閃で叩き割った事により、歌がエリーゼより紡がれて第一楽章攻略完遂となったのだ。

 

同時に起きるはサンラク自身の変化、青の聖杯による性別反転効果が『死んでいない』にも関わらずリセットされ、其れに伴い女性状態限定の黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト・イン・パーケ)も解除され、元の半裸の男姿に戻った。

 

「聖杯の効果は楽章攻略で解除、だが別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ)の軽量化効果は解除されてねぇ。ボスラッシュでのスローター行為で、武器に入る効果は残る………要するに『耐久値減少と回復効果は起きるし、武器に蓄積された効果は持ち越し出来る』なコリャ」

 

R.I.P.使用の為に外した正眼の鳥面を被り、マクティス・エレガと深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)を装備し直して次の楽章に備えていれば、トランペットの音色が響き渡るやコーラスが続く中、エリーゼの歌声が次なる楽章で対峙する存在を挑戦者へと告げる。

 

『サンラクの紡いだ物語。第二楽章………【墓守への鎮魂歌(レクイエム)】』

「………誰の事か、今のでハッキリ解ったぜ!」

 

忘れもしない、忘れられる理由が何処にも無い。

 

日本の由緒正しき戦甲冑、膝から下をバネとした脚、二メートル半の巨体に大太刀を持つ、反転せし夜空と桜の巨木を背に現れるは、今尚も記憶に深く根付いた七つの最強種(ユニークモンスター)・墓守のウェザエモン────!!!

 

断風(タチカゼ)

「おっとぉ!!」

 

幾数の月日を経て蘇る、リヴァイアサンで相対した全盛期(ナーフ前)では無く、反転の花園で対峙したウェザエモン。其の初撃にして首狙いの最速居合斬りがサンラクに襲い掛かる。

 

名を晴天流(せいてんりゅう)【風】系統・第一奥義『断風(たちかぜ)』………最速で抜刀・最速で斬り捨て・最速で納刀の、其の全てのモーションを『最速』とすれば『最強』であると、脳筋(ゴリ押し)ながら理に適った其の一刀。

 

されど取り出された傑剣への憧刃(デュクスラム)&傑鉄への鐵鎚(タウスレッジ)が阻み、高らかな金属音を出しながらもクリティカルでパリィした事で、彼の体力とクリティカル成功による耐久値減少無効により、ノーダメージで此の初手を切り抜けてステータスをチェックし…………確信した。

 

「ステータスに異常無し!『レベル50固定にするレベルダウン能力』忘れてっぞ、パチエモン!!!」

 

此れでハッキリと理解出来た─────オルケストラの再現するモンスター達は、()()()()では無いのだと。

 

当時ウェザエモンに挑んだ時の自分はレベル52で、レベル50時点からステータスポイントを一切振り込んでいなかった事が、再現ウェザエモンによるレベル150差の圧倒的ステータスの格差による再びの蹂躙(理不尽)を負わなかった理由なのかも知れない。

 

仮にレベル99から50まで下げられた状態でウェザエモンに挑んでいたペンシルゴンや京極(キョウアルティメット)なら、現在三桁レベルから一気に50まで引き下げられた時の身体(アバター)に掛かる『違和感』は、間違い無く凄まじい物になっていただろう。

 

そして何より運が良いのは──────

 

「全盛期のお前にゃあ、俺含めてギッタギタのボッコボコに鍛えられたからなァ…………!」

 

リヴァイアサンの特殊殻層『(ヤシロ)』にて、電脳再現された全盛期のウェザエモンの実力を『幾度も体感している事』、其れが何よりもサンラクにとって大きい上に、楽章という観点からすれば『ウェザエモンは当たりの部類』に入る。

 

入道雲(ニュウドウグモ)

「五人分身包囲くらいしてこいやぁ!!」

 

大太刀を持った手首から生まれる雲の腕、扇状に薙ぎ払う広範囲攻撃はレベルダウンの影響を受けていない状態で有っても、当たれば文字通り即死させられ兼ねない攻撃だが、サンラクはあの頃よりレベルアップを経て強くなり、スキルや武具も強化され、プレイヤー中最速に至った機動力が有る。

 

「【収着せよ(Sorptionting-up)】!【弾けよ(Poping-up)】!【収着せよ(Sorptionting-up)】に【弾けよ(Poping-up)】!!」

 

深厳戟響脚に搭載されている能力を言霊と共に解き放ち、足裏に集まったマナ粒子達をジャンプ台としてカッ飛び、雲の巨腕による薙ぎ払いを軽々と回避、其のまま同じく言霊を述べてウェザエモンの頭上を通り背後に着地から、片手剣と片手鎚を槍焔剣(そうえんけん)アラドヴァルに変更。

 

右手持ちでの斬り上げで背中を斬った次いで、左手を空けた状態で抜き手の体勢を取り、攻撃に雷属性と裂傷属性を乗せた晴天流「裂雷(れつらい)」で追撃を加える。

 

「あん頃の俺とは違うぜ、パチエモン。今の俺が培った晴天流やら含めて、御見舞いしてやんよ………!」

大時化(オオシケ)

「其れはボーナス行動だぜぇ!!」

 

見様見真似で幾度も再現して来た大時化、動作の始動から行動のタイミングまで全盛期相手に練習を重ねたカウンターを実行する時!

 

手によるパリィかつ掴み技の複合たる螺旋的確保挙動(スクリューハンド・キャッチ)と晴天流「防波(さきなみ)」によるパリィ&勢いを利用した背負い投げで地面に叩き付け一本ッッッ!!

 

「ッシャア!」

雷鍾(ライショウ)

「今の俺は、雷光()()()味方に付いてる───────!」

 

起き上がり様に刃の鋒が天を向き、帯電された高出力の雷が振り注ぐも、其処には既にサンラクは居なかった。そうして次の瞬間に再現ウェザエモンの背中は、無数の斬撃に斬り刻まれる。

 

畢竟雲耀(ひっきょううんよう) レベルMAX・多重的円周運動(オービット・ムーブメント)摩天縮地(まてんしゅくち)、高機動軽戦士ビルドのサンラクが持つ数有る機動系スキル群の中で此のコンボは、正しく『初見殺し』とも言えるムーブだ。

 

多重的円周運動は『行きたい場所』…………即ち到着地点を終点とする『半オートで円周軌道で回避するスキル』と同時に、回避アクションの初動はステップを入れる事によって、第三者視点では『物凄い距離を円形カーブするステップスキル』の複合によって成立する。

 

其処に加える畢竟雲耀は『最初の一歩のみを超高速』に変える上、レベル5以降から先の出力は封雷の撃鉄(レビントリガー)過剰伝達(オーバーフロー)を凌駕、レベルMAXの現在は此れ単体で封星の撃鉄(エイセイトリガー)の倍近い移動距離を稼ぎ、摩天縮地は十秒の間だけ使用者が『足を用いての移動をする際』に、発動者のスタミナ減少と移動によって発生する音の『其の一切を起こさない』。

 

其れを加味した再現ウェザエモン視点からすれば、先程まで狙っていた上裸の鳥頭が『目の前から一瞬で消え去った上、次の瞬間には此方の背中をズタズタに斬り裂きまくっていた』のだから、生身ならば此の時点で大ダメージは不可避だっただろう。

 

「やるべき事は『第三形態の晴天大征(セイテンタイセイ)でペッパーの天晴(てんせい)受け止めに此方はパリィを合わる』、晴天流の感覚を確かめながら耐久とタスク終わらせて、次の楽章だ」

 

非クリティカルを重ねて焔と熱を高めた槍焔剣アラドヴァルが震える、天晴の出力を内封した大太刀の横っ面を吹っ飛ばすなら、焔爆(ニトロ)で焔を蓄積・焔研(トルク)で焔の色を判断・最終的に【刃点火(イグニッション)】で叩いて吹き飛ばす。

 

再現された京極の位置に注意とエリーゼの歌詞に合わせたロールプレイと洒落込もう。

 






在りし日の敵に今を示す


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