VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其の時の、ある場所で




唯一人(ただひとり)へ贈る歌 〜其の五〜

────メインサーバー『リヴァイアサン』へアクセス、プレイヤー名:サンラクのログデータを参照

 

────隠しパラメーター『歴戦値』を計測、基準値を満たすモンスターデータをロード

 

───此迄の戦闘リザルトを計測

 

───平均値を上回るスコアを算出

 

───WM(ワールドマスター)権限による『正典(カノン)』プログラムの使用に問題無しと判断

 

───MS1申請………認可

 

───MS2申請………認可

 

───MS3申請………認可

 

───SS1.2.3.4.5.7………決議申請

 

───否、可、可、否、可、可

 

───結論。プレイヤー名:サンラクに対し、『正典』プログラムを実行する

 

 

 

 

 

其れは此の世界の神が封印を解いた事で生まれた、オルケストラの持つ精査の果てに在りし新たな基準。

 

其れは此の世界で挑戦者が成し遂げた事柄を見つめ、そして満たした者へと贈る歌の為の最終審判。

 

そして其れは今此処に、一つの道を決定した。

 

英傑(プレイヤー)へ課す試練を、第四楽章を乗り越えた者へと捧げる、真なる最終楽章を──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ふぅ。複数回倒した相手は逆に何時の相手なのか、歌詞やら記憶で判断出来なきゃキツいぜコリャ………」

 

連接状態:覇濤棍(はどうこん)とした象牙(ゾウゲ)兎月(トツキ)艷碧(あであお)】の打撃で再現金晶独蠍(ゴールディ·スコーピオン)の針と鋏と頭を粉砕し、漸く倒しきったサンラクが呼吸を調える。

 

第一楽章は深淵のクターニッド、第二楽章は墓守のウェザエモン、第三楽章では黒死の天霊(トゥルー・クワイエット)と来てからの第四楽章、このまま第五やら第六やらに続きそうな予感も有りそうな()を抱き、集中モードに入り直す。

 

────────が、サンラクが戦った再現金晶独蠍の消滅と同時に、劇場を喧騒の如く響かせていた楽器達の音色と歌姫の旋律が消えて、まるで時其の物が停止したかの様な静寂が満たし。

 

そうして歌姫がスッと一歩、前へと出て…………述べた。

 

『サンラクの紡いだ物語。………最終楽章』

「第一から第四、そして最終楽章………ホントか?本当に最終楽章か?」

 

クターニッドの想像態に第二形態が在った事も踏まえ、シャンフロの運営が『オルケストラの最終楽章で更に追加楽章有ります!』と、やらかさないとは一概に言い切れない。

 

そんな疑念を抱いていた時である。

 

『ラ───ララ、ラ───』

「…………ん!?」

 

歌姫………エリーゼ・ジッタードールが美しいソプラノボイスで歌い始めれば、先程まで演奏をしていたマネキン楽団員達が次々と『消えている』のだ。

 

フルート持ちが、クラリネット持ちが、シンバル持ちが。コーラス・ホルン・トランペット・ヴィオラ………楽器を持っているマネキン達が消えて消えて、其の人数が五人よりも下回った…………其の時。

 

『───私は観測者』

「む」

 

五人が四人になり、四人が三人となる中、歌姫の旋律が響き渡り、そして其の歌声はまるで『サンラク一人の為に語り掛けている』、そんな感覚を抱く様に。

 

『───私は歌う、歌う。私は問う、問う。紡ぐ旋律は命の螺旋、叫ぶ歌声は大いなる問いかけ、語る言葉は英傑となる』

 

そして同時に歌姫の後ろに一人、一番最初に演奏に現れたヴァイオリニストが最後に残っていて、まるで何かを待っているかの様である事にサンラクは気付き。

 

『─────私達(コレ)は、貴方を見ている』

 

ゾワリ、と。まるで()()()()、其れも()()()()()()()()()感覚に襲われ、周りを見渡せども観客席には『何も無い』。

 

だと言うのに、何故こんなにも『誰かの視線を感じる』のか?答えてくれる者は居ない、そして歌姫の動きも止まらない。

 

『─────問いは、比較を経て結論に至る。だから、だから………!』

 

右手を前に差し出すエリーゼ、其の掌へと周りのスポットライトが一点を照らし、固まって『何かが』生まれる。

 

「何だ、ありゃ………?」

 

攻撃の予備動作では無ければ、況してや武器の捻出でも無い………光が集まり、形を作りて現れた『其れ』は、鳥の嘴の形状からして中世パンク系のゲームで見られる頭装備の『ペストマスク』に近く。

 

然して其れは、金色の装飾に赤く燃える炎を獅子の鬣の如く揺らして、一瞬だけ炎の中に『目』が在った事が判れども、サンラクは止める事は出来ない。

 

明らかに止めねばならぬ雰囲気は有れど、其れを此の劇場其の物が許さないと、そんな雰囲気を醸し出して満たしており。

 

『─────遠く、遠く、根無しの旅人。数多の世界を見つめる数多の眼。ならば貴方は『渡り鳥(ミグラント)』………』

 

出来上がった仮称:金飾火炎の鳥面(ゴルファイヤーバード・ペストマスク)、同時に歌姫の後ろに居たヴァイオリニストが持っていたヴァイオリンを消滅させ、歌姫の前へと歩き………静かに片膝立ちの体勢になって頭を垂れた。

 

『─────さぁ立ち上がって、私の英傑。そして、歌う事しか出来ない私に代わって─────()()()()()

 

其れは正に騎士が神より神なる剣を授かるが如く、或いは現王が先王に権力の象徴たる王冠を授かるが如く、歌姫から仮面を託されたヴァイオリニストは立ち上がり………同時に其の身体には『変化』が起きた。

 

「……………マジかよ」

 

同じ場所に、同じ舞台に立っているからこそ、サンラクは仮面を被る存在が何なのか解った、いや…………解ってしまった。

 

マネキンという服を着飾るが故に無個性である身体が『変質』し、細身ながらも筋肉が付いた人間味の有る姿に変わり、其の手に二振りの得物たる『黄金の剣と黄金の鐵鎚』を。

 

形状からして『傑剣との憧焉終刃(エスカ=ヴァラッハ)傑鎚との憧焉終鎚(エリサ・ドゥタール)』を構え、片手剣の鋒を差し向けつつの、逆手に持った片手鐵鎚の鏡面を向けた事と、両脚には『深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)を纏っている』事。

 

そしてペストマスクの様に見える仮面、燃え盛る炎の中で浮かんでいる二つ以上の『目』達が、多彩なる虹彩達が自分一人を凝視し、睨み付けている視線と出で立ちから、彼は仮面の存在を看板したのだ。

 

 

『………………』

「最後に越えるべきは、()()()………ってか!?」

 

 

 

『サンラクの紡いだ物語。最終楽章───────【正典(カノン)あなたに捧ぐ旋律(ユア・オーケストラ)】』

 

 

 

今此処に、最後の歌は奏でられる。

 

 






ライバルは自分自身


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