プロとクソとレトロのゲーマーが、沼掘りに挑む
「えっほ、えっほ!」
「ま、待ってくれよ…!けっこーキツイ…!」
「ドンケツのカッツォ君、遅すぎ~!」
「お前等が、速いんだよ…!」
「カッツォ、スタミナ減ったら簡易食糧やるから、弱音吐かずに走って!」
セカンディルの門を抜けて、他の開拓者達から逃れたペッパー・サンラク・オイカッツォの三人は、其の脚で四駆八駆の沼荒野のエリアボス・
「ペッパ~簡易食糧~!もうちょいでスタミナ切れる~!」
「あいよ!簡単にスタミナ回復出来るから、結構オススメだぞ!」
「あ~助かったぁ~スタミナ回復してくぅ~」
「止まったら死ぬってか?カッツォ。いや此の場合は……マッグロ?」
「お?喧嘩売ってる?売ってるよねサンラク?」
「はいはいはいはい!そろそろ鮫鯰の居る沼地峡谷に着くよ!」
三人の視界の先に、道を沈める沼地が広がり、両側には峡谷の岩肌が堂々と鎮座している。
「彼処か、エリアボスの沼掘りが居るのって」
「はいな。此処のボスは沼からズドーン!してくるので、注意ですわ!サンラクさん!」
「沼からズドーン……アレか。………ん?今誰か喋った?」
「俺は一応、此処のエリアボスはアイトゥイルと経験したもんな……」
「そうさね…アレは中々の強敵だったのさ…」
「もしもーし?何かまた声が聞こえたんだけど~?」
初めて訪れた者、再び訪れた者。各々が声を出す中で、オイカッツォは二人の違和感に気付いて質問してきた。
「アイトゥイル、戦闘準備だ」
「解ったのさ」
「よっしゃ、やるぞエムル!」
「はいな!サンラクさん!」
「えええっ!?何そのヴォーパルバニー!?ってか二人共、其のタトゥーみたいなの何?!」
アイトゥイルを頭に乗せながら、ペッパーはインベントリから太刀武器の黒鉄丸を取り出し、腰に指した後に抜刀しながら構えて。
サンラクは白頭巾を凝視の鳥面に変更し、リュカオーンとの戦闘で比較的耐久値が減っていない、
そして其の様子を見て、オイカッツォは驚愕の声を上げていると、沼地が揺れ動きながら盛り上がって、空気の許容量を超えた風船が、大きな音を以て破裂する様に泥が弾け飛び。
エリアボス・沼掘りが其の姿を現した。
「コイツか、エリアボスは!」
「あぁ、気を抜かずにな!」
「おっしゃ、ブッ飛ばしてやろうじゃん!」
各々が己の武器を手に取り、鮫鯰が沼地に潜行を皮切りとしてペッパーがスキル:挑発を起動して、敵の
「サンラク!オイカッツォ!攻撃準備!」
「エムル、気張るのさ!」
鮫鯰の沼からの飛び掛かりに対し、ペッパーは『パウリングプロテクト』でパリィを行いつつ、手を用いた格闘攻撃にダメージ補正を追加する『ハンズ・グローリー』と、超至近距離での格闘攻撃にダメージ補正を加える『インファイト』、筋力を参照としたノックバックを敵に与える『ストレングス・スマッシャー』で、下顎目掛けて右拳を振るって殴り付け。
「アイトゥイル!」
「はいさ!」
「ペッパーナイス、ヘイト誘導良いぞ!」
「ほれ御二人さん、ぶん殴れ!」
「チャンス到来!エムル、デカいの一発ぶちかます準備しとけ!」
「頑張るのさ、エムル!」
「アイトゥイルおねーちゃんが見てるなら、アタシも負けてられませんわー!」
ペッパーが後ろに下がったのをスイッチとし、サンラクがスキル:アクセルで沼地を走りつつ、両手に握る包丁を回転させながら突き出す、スクーピアスの進化スキルの『スパイラルエッジ』を放ってダメージを与え。
エムルが魔導書を用い、次に繰り出す魔法攻撃の威力上昇を行う『
「サンラク!思いっ切り揺らすぞ、落ちんなよ!」
「あいよぉー!」
鼻先に乗っかり、噛み付き攻撃をホップステップジャンプしながら、曲芸者の様に軽やかに躱わすサンラク。
「うわスゲェ…不安定と限られた足場で、バランス取ってるよサンラク……」
「中々の身体捌き…素晴らしいのさ…」
「そりゃアイツは『クソゲーマー』だからね。『あれくらいなら』、アイツにゃ朝飯前にもならない…よっ!」
オイカッツォが沼地に脚を取られながらも、前へと進み出て、己の両手を拳に変え、火打石をぶつける様にして合わせれば、左拳には『赤いオーラ』を、右拳には『黒いオーラ』を纏っていく。
彼が初期職業として選んだ
キャラビルドを体力と耐久中心にしたのには『多少のダメージを是としながらも、敵にやられる前に此方が相手をやる』という、プロゲーマーの信条が在ったのである。
「拳気の『赤』と『黒』!合わせて『
『ギシャアア!!?』
手を合わせて赤黒に燃えるオーラを放ち、超至近距離下で振るわれる正拳突きが、沼掘りの鳩尾にクリティカルヒットして、其の巨体がグラリと揺れる。
「よっとぉ!良い火力じゃねーか、カッツォ!」
「サンラクさん!来ますわ!」
鼻先から跳躍したサンラクは、一瞬ペッパーを見て。しかし直ぐ様己へと迫り来る、沼掘りの剣山の如き牙に視線を向き直す。
「パリィスキルを持ってるのは、ペッパーだけじゃねぇんだよなぁ?」
パウリングプロテクトの前身スキル、レペルカウンターが起動して、沼掘りの攻撃を弾き。サンラクは直後に己の身を回転させつつ、本来ならば隙が大きいスピンスラッシュを『カウンター直後』に組み込む事により、本来攻撃時の後隙が大きいデメリットを、擬似的に掻き消したのである。
『ギジャア!?』
「よし、いけエムル!」
「は、はいなぁ!!」
回転斬撃の中、サンラクの声でエムルがブーストを掛け終え、威力を増大させた『
『ギジャアアアアアアア!!!?』
「ごへっ」
「エムル!」
「アイトゥイルおねーちゃん!」
沼掘り・サンラクが共に背中から沼地に落下して、エムルは走り込んだアイトゥイルが、スライディングキャッチし、落下ダメージを軽減する。
「サンラク、大丈夫か!?」
「落下ダメージは…そんなに無いか」
「鳥頭なのに空飛べてねぇ(笑)」
「あ"?沼の中泳げない魚類が何か言ってら」
「は~?泳げますがァ?そっちは泳げるんですくわぁ~?」
サンラクとオイカッツォがまたしても煽り煽られをし始めて、泥んこプロレスをおっぱじめんかとした中。ペッパーとアイトゥイル、そしてエムルが沼掘りの姿が見えなくなった事に気付く。
「サンラク!オイカッツォ!プロレスは後で好きなだけやれば良い!沼掘りの『アレ』が来るぞ!アイトゥイルは俺に、エムルはサンラクに乗っかって!」
「沼掘りの『アレ』……?エムルが言った『ズドーン!』ってヤツ!?」
「!そうか沼掘りの『特殊行動』━━━━!」
サンラクがエムルの発言で、ペッパーとオイカッツォが知る、エリアボスの『特殊行動』に気付いた直後。沼地全域をズズン!と、一際大きな揺れが発生して。三人と二羽の足裏が、磁石で引っ付いた様に動かなくなってしまう。
「うおっ、何だコレ!?吸い付いたみたいに動かねぇ…!」
「事前に調べてたけど、実際食らうと印象が変わるッ…!」
「あわわ…サンラクさん!」
「くっ…やっぱり、そう上手くはいかないようなのさ…!」
各々が反応を示す中、ペッパーは一人落ち着きながらも、左手の黒鉄丸を湖沼の小鎚へ変更し、アイテムインベントリから投擲玉:炸音を右手に持って叫ぶ。
「全員!!!耳を塞げぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
握撃を以て投擲玉を握り締め、ヴァーティカルセンスの補助を乗せた、ボルベルグストライクの一撃を叩き付ける。
嘗て此の地で成された覇音の一計が、今再び渓谷へと轟き、響き渡った。
「掲示板の情報だと、ペッパーさんは必ずサードレマに来るはず……フフフ!必ず見付けるわ…!SF-Zooの名に掛けても!」
そしてサードレマではペッパーを狙う者が、サンラクを捜す者が続々と集まり、水面下にて緊張状態が展開されている事に、三人は気付く事は無かったのである……。
後衛の仕事、バックパッカーとしての仕事