VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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響く声達




唯一人(ただひとり)へ贈る歌 〜其の十二〜

「うぐっ、ふぐっ、ゔゔゔゔゔ………っ」

「お"おお"おおゔゔ……ううう…………」

「ゔゔゔゔぁぁぁああ………」

 

サンラクが語った、アラドヴァルの元持ち主で巨人族(ギガント)の英雄ドルダナの最後の戦い。脚色付きの吟遊ロールプレイに置ける要点を理解した話は、巨人族の皆々様を納得させるに十分過ぎる程の成果を挙げた。

 

ある者は武器を掲げて咆哮し、ある者は滝の如く涙を流し、またある者は涙と鼻水で髭をぐしゃぐしゃにし、何より耳栓をしていたアイトゥイル含めたヴォーパルバニー達とウォットホッグが気絶する程の声量で泣いているのだから、カオスにカオスが混じって重なった空間に等しい。

 

無双の双剣(モラ・ベガルタ)のフィオネは巨人族達の中でも一際ボロ泣きの、無双の双剣のディルナディアは表情こそ変えては居ないが頬には確かに涙が伝った跡が在る。

 

「あー………流石に日を改めようか?」

「いや………いや、大丈夫だ。アラドヴァルのサンラクよ………ドルダナの最期を伝えてくれた事、感謝する」

「随分とあっさり信じるんだな?」

「其れは我等オディヌ氏族が『ドルダナと縁深い氏族である事と、其れに(まつ)わる理由が在ったから』だ」

 

脚色有りとは言え、勇敢にして偉大なる祖先の最後の戦いを聞き届け、瞑目したディルナディアは視線をサンラクやペッパーにサイガ-0、そして其の近くで気絶しているエムルやディアレ、アイトゥイルにエクシス達ヴォーパルバニーを見て言った。

 

「ドルダナの物語、血肉異なれど魂で絆を紡ぐ同胞との旅……ドルダナが共に竜を狩った仲間達………。勇敢なる巨人族(ギガント)ドルダナ。一つ、豪放なる鉱人族(ドワーフ)チダン。一つ、聡明なる獣人族(ビーストマン)レリロ。そして………」

 

 

 

旅をするヴォーパルバニー─────ヴァイスアッシュ

 

 

 

「「「!!!!!」」」

 

まさか此処でヴァイスアッシュの名を聞く事になろうとは思わなかった。ドルダナとの知り合いで有る事は朽ち果てたアラドヴァルを入手し見せたサンラクにより、ヴァイスアッシュ本兎から口から説明された事だが、思った以上に彼の歩んだ歴史というのは重厚であるらしい。

 

其れも彼が『不滅』の名を冠する最強種の所以か、はたまた其の理由の一つなのだろうか?

 

「巨人族に伝わりし『旅兎との約束』………白灰の血に連なる兎を引き連れしアラドヴァルのサンラクよ、グランシャリオのペッパー・天津気(アマツキ)よ、太極の剣(パラドクス)のサイガ-0よ。ドルダナが聞き届け、オディヌ氏族が紡いできた三つの約束………今度はお前達が耳を傾けよ」

 

『其れ』はディルナディアの言葉をトリガーとするかの如く現れて。そして此の場に居た三人は関わっているからこそ、三人は『其れ』を正しく理解出来たのだ。

 

 

 

 

『ユニークシナリオEX【致命兎叙事詩(エピック.オブ.ヴォーパルバニー)】が進行しました』

 

 

 

 

(致命兎叙事詩が進行した………!此れどう思うよ、二人共)

(ペンシルゴンにバレたら面倒な気配しかしねぇ、特にカッツォは過剰反応する)

(あまりヒントが、無かったので………読み解く何かを、得られる気がします)

 

耳打ちで話を通じ、取り敢えずディルナディアの話を聞いて判断する事に決め。

 

「其の約束、聞こうじゃないか。まぁ、だが…………」

「うむ………話すには少し湿り気が多過ぎる、か」

 

泣き声で話が掻き消されたり、集中出来なかったりと建前は有れど、彼等彼女等の邪魔をしたくは無いのが本音である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大使館の最奥に在る氏族の長の部屋、即ちディルナディアの執務室に当たる部屋に案内され、巨大な執務用の机の上で三人の開拓者と四羽のヴォーパルバニー、二匹の獣に三機の征服人形(コンキスタ・ドール)達が彼女と対面していた。

 

「おーい、起きろエムルー。お前関連だぞ」

「きゅー………」

「アイトゥイル、ディアレさん、大丈夫………じゃないですね、うん」

「くううん………」

「きゅうん………」

「エクシスさんも、ダウンしてます………」

「ぴぴぴぴぴ………」

 

力付くで起こしたり、気付けをしようならヤバい雰囲気が在るので、取り敢えずは安静にさせるのが吉だろう。

 

「すまん、話を続けてくれ」とサンラクが言い、「解った」と一拍の呼吸を置いてディルナディアは本題を語る。

 

「………ドルダナは英雄であるが、其の英雄譚は彼一人による偉業(モノ)ではない。かの物語はドルダナを含めた、四人の英雄達による『竜退治の物語』として語り継がれてきた」

「成程。………其の中にヴァッシュ……ヴァイスアッシュの名前が」

「旅兎ヴァイスアッシュ、其れは杖と刃を携え世界を旅する兎……彼はドルダナと別れる間際に三つの約束を交わした。其れは後世へ伝える二つの『言伝』と一つの『座標』なのだ。が…………其の内の言伝一つと座標の事柄は、グランシャリオのペッパー・天津気によって『既に果たされている』」

「え?」

 

サンラクとサイガ-0が視線を向ける。やらかして来た事が多々有る上に、思い当たる節に記憶の事線が引っ掛からないのも厄介と、座標という単語から新大陸の空中写真撮影かと思い、残りの言伝に関しても必死にシャンフロ内の出来事を思い返していれば、ディルナディアは答え合わせをするかの様に言葉を紡いだ。

 

「───一つ。『波濤を越えて来たりし者共よ………()()()()()()()()』。其れについては既に、波濤を越えて来た者達の多くが知っている」

「………成程。其れは()()()()()の所在地の『ヒント』か」

「彼等彼女等が言うベヒーモス………或いは波濤を越えた者達の母………。其れを呼び起こした者がペッパー・天津気(アマツキ)であり、そして君と初めて接触した巨人族こそがヴェイノムスのルギニアスなのだ」

 

おそらくベヒーモスを解放していない場合、此処で所在地に関わるヒントを得られる流れだったのだろう。

 

思い起こせば世界を知り得し旅兎王装(モポルシィーヴ・リフトゥルー)を納めた箱が在る、兎御殿の天守閣にヴァイスアッシュが案内する前の会話イベントで『先にベヒーモスを再稼働(目覚め)させたかぁ』と言った言葉は、巨人族の約束とも関係が有ったのだと解る。

 

「………では次の約束だ。此れは我等にも関係が有るが………『波濤の者、巨人族が認めるに値する勇士現れし時、低き巨塔への道を授け共に征くべし』………と」

「低き巨塔?」

 

どうにも意味深な言伝であり、まるで建物が在って『地上に埋まっている』かの様な言い方で…………。

 

「…………んん?」

「…………んあ?」

「どうした?」

「サンラク、君………?」

「いや、何か脳が疼いただけ」

「実は俺も………」

 

何か『重大なフラグ』に引っ掛かった気分であり、サンラクも『思い当たる節』が有る様だ。そして其の低き巨塔というワードに当て嵌まる箇所がシャンフロ内の場所で『二つ』有り、問題は其の二つの何方なのか、はたまた別の何かなのかという所だろう。

 

「アラドヴァルのサンラクよ、我等オディヌ氏族はお前の力を認めている。故にお前が望むのであれば、私とフィオネが『北の地』に向かう道筋をお前に示そう」

「………解った。時が来たら頼らせて貰う。で、最後の座標ってのは低き巨塔に関係するヤツか?」

「いや違う。其れは『二つ目の約束』に付随する物なのだ」

 

そう言ったディルナディアが持ってきたのは、一見すれば『巨大な樹木を切り倒した丸太』の様な、よく見れば『巻き付けられた年季の入った紙』であり。

 

紙には『左に片方の翼が欠けた巨大な鳥の、右に巨大な亀が向き合った構図』として描かれ、確りと見れば『丸やら矢印に兎のマークが刻まれた』、言ってしまえば絵心を抱きたての子供が描いたと思う、そんな茶目っ気が宿りながらも───────真実は『此の世界の全貌を描いた世界地図』だった。

 

「此れは巨人族の長が代々書き上げる『座標図』、波濤を越えた者達の間で広まり根付いた『地図』なる物…………。此の大陸を高き空より写した者こそがグランシャリオのペッパー・天津気であると、波濤を越えた者達にヴェイノムスのルギニアスが言っていた」

「…………何かすいません」

「謝る事は無いだろう。君は君自身の意思で此の地を写した、そして此の座標図『全体』まで写せてはいない様だからな」

 

逆に半分を写せるレベルまで飛べる時点で、此の男はだいぶ『イカれた』側の人間(プレイヤー)であると、サンラクやサイガ-0からの視線を受けながらも、三人は改めて巨人族に受け継がれた座標図改め世界地図を見る。

 

ヴァイスアッシュとの約束からして、矢印や丸といった物や地図全体もヴァイスアッシュ自身が描いた可能性が非常に高く、トットリ・ザ・シマーネが在籍して居るクラン:N.M.Mや日本の国土を自らの脚で歩いて日本地図を測定した偉人伊能(いのう)忠敬(ただたか)宜しく、彼が新と旧の二大陸のエリアの比率や特色を、自らの脚で歩いて記録したのだろう。

 

「ラビッツから海を通って前線拠点を通る矢印に、旧大陸側と新大陸にも丸印………」

「此れだけで、此の世界の大部分が明らかに………なってますね………」

 

世界地図が好きな連中ならば此れだけで時間を潰し、御飯がモリモリと進む程の力を感じる。其れにしても世界地図の『丸が在る場所』には何故か見覚えが在るというか、何かの『位置』に関係しているかの様な。

 

「……………んんん?」

 

何かが頭の片隅でカチリとぶつかる。何か重大な………『とんでもない事』に気付き掛けているというか。

 

「んんん……………???」

 

頭を落ち着かせ、呼吸を整え、瞑目して脳内に在るシャンフロ内で得た情報を納めた、記憶の区画に置いた本達を引き出して巨人族の座標図と照らし合わせ、何か思い当たる事柄を捜して行く。

 

(丸の位置、旧大陸、ベヒーモスの位置…………小さな三つの丸、丸の位置、エレボスとアイテールの間に丸、海、此れは位置的に()()()()()─────────!??)

 

ガチャンと、ペッパーの脳内で答えに至る為の歯車が、此の瞬間に『全て』噛み合った。

 

「マジかッッッッッッ!?!!?!?!?」

「どうしたペッパー?!」

「あ、あの、大丈夫………ですか?」

「何だいきなり、どうしたんだ!?」

「いやマジか、マジかよ!?嗚呼、なんてこった!?」

 

誰もが混乱する中でペッパーは気付いた。旧大陸の小さな三つの丸、其処から近くに在る丸、そしてベヒーモスが在る位置に在る丸、其れ等は全て『七つの最強種に関わるパワードスーツ達が在った場所と同じ』だった事に。

 

ルルイアスの在る大体の位置に丸が有り、新大陸側の丸の位置は南の島国であるラビッツと、エレボスの尾羽の先端付近に在る事からも、現在に至るまでに聞いた事と探し出した神代の大いなる遺産達の位置と『完全一致していた事』が、最後の決め手になったのである。

 

「……………丸で描かれた箇所。其処には俺が神代の大いなる遺産を手にした場所と()()してる。此れ見方によっちゃ『宝の地図其の物』なんだよ…………!」

「……………あ!?うわッ、ホントだマジだ!?ルルイアスにサードレマ、ボスドゥニーネがゲロった位置じゃねーか………!!」

「た、確かに…………鳥の尾羽の先端に、丸が有ります………!」

 

本命を探す道程の途中で立ち寄ったサブイベントで、とんでもない副産物を見付けた様な。或いは攻略本が売られていない中で、一切解らなかったトゥルーエンドルート突入の為の条件を自力かつノーヒントで見付けた気分だ。

 

事の重大さに気付いた二人も興奮気味に声を荒げる中、ペッパーは一つの丸を…………『新大陸の樹海地帯の中に在る一つ丸』を、N.M.Mや有志のプレイヤー達によって其の辺りには『獣人族の里』が在る場所を見詰める。

 

(其処に在るのか?…………『リュカオーンに関わる神代の大いなる遺産』が)

 

未だに所在を掴めず、ノーヒント状態だったリュカオーンのパワードスーツ。其の入手に至る為の鍵は、意外な形で彼の元へと舞い込んで来たのだった。

 






其れはペッパーにとっても重要な物


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