VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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果たすべきを果たす




唯一人(ただひとり)へ贈る歌 〜其の十五〜

「……………えぇ……………」

「此れは、何というか………」

「酷い有様なのさ」

「同意:流石に目も当てられん」

『グルン』

 

ミダス28世からシグモニア前線渓谷(フロントライン)に居るアーミュレット・ガルガンチュラのゼリーマテリアルの納品依頼というユニークシナリオを受注。

 

同地点に居る水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)の亜種個体・帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)の素材確保とプレジデント:ノンウィズリーから其の地域の地下に駐屯地を作っているプレイヤー達に彼から渡された補給物資を届ける、所謂『ユーザークエスト』を受けてやって来たペッパーとヴォーパルバニーのアイトゥイルにディアレ、リュカオーンの分け身のノワと征服人形のカルネ=ヒトミ(103)が見た光景は、一言で言い表すならば『目も当てられない地獄絵図』という物で。

 

「ノワの影潜りで潜って透視スキルで遠くから渓谷内を観たけど、フォルトレス・ガルガンチュラ・エンプレスとトレイノル・センチピード・ドーラ、其処にフォルトレス・ガルガンチュラとトレイノル・センチピード・グスタフが出て争ってるって、何したらそうなるの………?」

「女王個体を両方倒したペッパーはんが言うと、重みが段違いなのさ」

「本当にあの時の君は凄まじい勢いだったからね」

「同感:あの中で成果を上げたのは、契約者(マスター)とクターニッドの鎧が在ればこそだった」

 

谷底で動く無数のアーミュレットと数人の人影、取り憑かれて爆発する前に列車砲百足の轢き潰しと、足払いでバランスを崩した要塞蜘蛛の重量圧殺で諸共巻き込まれ、下層の有象組に上層暮らしの蠍達がブチ切れビームをフルバースト。

 

此の惨状を起こした面々が消えて百足と蜘蛛が争い、蠍がビームを降らせる状況に戻り、ペッパーは透視スキルが残っている間に周辺を見渡せば、プレジデント:ノンウィズリーが言っていた『地下駐屯地』を発見。

 

見た目は蟻の巣の様に左右に一段ずつ部屋を作り、ベッドルーム・キッチン・休憩所・倉庫とエリア毎に区分けし、最下層は谷底ギリギリに岩を積み上げてカモフラージュしている出入口が有り、内部に数十人のプレイヤーの姿が在る事からして先ず間違い無くリスポーンしたと判る。

 

「………よし。ノワはアイトゥイルとディアレを影潜りで抱えたまま、駐屯地に潜入。俺は駐屯地のプレイヤーにわざと見付かる様に動いて、自然な形で駐屯地入りをする。ヒトミさんはインベントリアへ」

『ワウン!』

「了解した、武運を祈る」

 

ノワ達の移動と同時に迅速にセーブテントを構築、帝晶双蠍が繰り出すビーム攻撃の射程距離はシグモニア前線渓谷の外縁部も軽々と越え、水晶群蠍に見られる『弱った相手にフルボッコにする追撃を叩き込む思考(AI)』を搭載しているので、隙を見せたら詰まされるのは確定だ。

 

無論此方も簡単に蜂の巣にはなってやらんと、アーテクレイブレイカーを片手に両脚には深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)を付けて【収着せよ(Sorptionting-up)】。

 

駄目押しに封熱の撃鉄(ニッショウトリガー)を指パッチンで打ち鳴らして炎熱を放ち、ドーラとエンプレスにグスタフとガルガンチュラが蠢き殺し合い、帝晶双蠍達がビームを降らせる空間へ紅蓮夜光の空を走って飛び込み。

 

上層から飛び交うビームを回避、空飛ぶアーミュレット砲弾の上を次々と飛び移り、渓谷内を直走るドーラの抱えた列車砲に着地から、ビームや毒砲弾の迎撃を潜り抜けて取り付いたアーミュレットを叩き潰しつつ、最低限のゼリーマテリアルを回収。

 

着弾から爆発する嵐の道を駆け抜けて、ドーラの頭を目指して走りながらに封雲の撃鉄(タイタントリガー)を鳩尾に叩き付けて雲すらも纏い、聖盾イーディスと冥王の鏡盾(ディス・パテル)の盾二刀流から鏡の鏡面を傾け、帝晶双蠍のビームを跳ね返してアーミュレット砲弾を撃ち落とす。

 

「ちょっと、やってみたい事が出来た………!」

 

集律視標着目(ワーナリー・スポットヘイト)を機動、此の場に居る全ての敵対存在の視線を発動者の目の在る場所へ掻き集める三桁スキルであり、普段は俯瞰の視点で広範囲を見下ろす天空の神眼(ラトゥルスカ・ゴッドアイズ)と組み合わせ、広範囲作用のウツロウミカガミとして大多数を守るor軍勢の一時的な足止めに使っているコンボスキルの片割れ。

 

今思えば集律視標着目は『敵を挑発してヘイトを買い、仲間を敵の攻撃対象から引き剥がす行動』が前提となり、三桁の領域に踏み込んだ事で此のスキル習得に繋がったのではと思う様になったし、敵の視点を強制的に上へと向かせるコンボスキルとして運用し続けて来たからこそ見えた、今し方至った『新しい組み合わせ』を此の戦況下で試す絶好の機会と捉えられた。

 

「よっしゃ来いっ!今考え付いた新しい戦略の実験台になって貰おうか!!」

 

飛来するビームにアーミュレット砲弾と毒砲弾、深海の王の頭蓋骨より作りし盾と不屈なる勇者の盾を雲の巨腕に抱え、片足で軽く跳躍しての変流式回転防衛(ブレイヴ・コークスクリュー)を使う。

 

此の変流式回転防衛、使用者の身体の一部が地面或いはモンスターの身体に接触するまでの間、回転を用いてのパリィが確定成功とパリィ時の反動ダメージ完全無効を両立したスキルであり、全方位から複数の敵による波状攻撃も盾の耐久値が0になって砕け散る等の事が無い限りは、大抵の攻撃を此れ一つで何とかなってしまうという凶悪さを含む。

 

そして極論にはなるが、此れを『盾二刀流やらで回転中に身体が敵や地面に接触し無い様に押し出(バッシュ)したりすれば、スキル効果は途切れずに継続する事も解っており』、そんな状態でツァーベリル帝宝晶によって大火力の魔法属性のビームを引き寄せ、魔力属性の悉くを弾く冥王の鏡盾と【収着せよ(Sorptionting-up)】を使った深厳戟響脚による、()()()()()()()()()()

 

では、そんな状態で振り注いだ魔力のビームを確定パリィが約束されている、魔力の悉くを跳ね返す鏡面が受けたならばどうなるか?

 

──────正解は傍から見れば『ミラーボール』、他者から見れば『近寄る者の悉くを薙ぎ払う光を弾き返している者』という、此の場に居る全ての命からすれば『ヤバいヤツ認定』されても仕方無い行動で。

 

然して結果はペッパーが変流式回転防衛の後隙を埋める跳躍着転即行動(リボル・イン・ドライブ)による安全な着地までの間、帝晶双蠍のビームを跳ね返しまくった事でアーミュレットの素材を始めとして、跳ね返った光がガルガンチュラやトレイノルを無差別に巻き込み、触覚や甲殻に足や体毛等の様々な部位が削ぎ落とされ、或いは巨体に無数の風穴が空いた事で怯んだりと広範囲に大災害を齎す事になった。

 

「目、目が回る、けど………!こんな状態になる程だからこそ、やった価値は有るってもんd『バカやろぉぉぉおおおおおおおおおお!?!?!早く此方に来いィィイイイイ!!?!?』………ぜ?」

 

武器をインベントリアに撃鉄を解除した直後、戦場の爆音轟音に紛れた人の声。何処から伴無く現れた複数の人影が渓谷内に溢れたアーミュレット・ガルガンチュラのゼリーマテリアルやトレイノル・センチピードにフォルトレス・ガルガンチュラの素材を最低限回収し、其のまま一直線に突撃してペッパーの身体を抱え上げた。

 

『急げ急げ急げ急げ、退散退散退散ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

「ちょ、待っ───────!?」

 

有無を言わさず半ば強引に連れ去られ、其のまま外縁側の壁に在る穴までペッパーは運び込まれ。そうして直ぐ様出入口は閉ざされて、百足と蜘蛛の大乱戦とブチ切れの蜘蛛による戦争は熱を帯びて、更なる苛烈の坩堝に堕ちていったのである…………。

 

 

 






駐屯地に運ばれて


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