VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其々のリアル

※少し短いです




唯一人(ただひとり)へ贈る歌 〜其の十七〜

「お、おひゃようございます…………!」

「おはよう、斎賀さん」

 

世界に誇る神ゲー(シャングリラ・フロンティア)で幾ら名が知られたサンラクとサイガ-0というプレイヤーでも、リアルに戻れば学業に励む一高校生が、陽務(ひづとめ) 楽郎(らくろう)斎賀(さいが) (れい)だ。

 

学生の本分を疎かにしては趣味を楽しむ事は出来ない、成績を落とせば当然後々にやらかした分のツケは回る、故にこそゲーム同様に現実でも手を抜かずに生きる事こそが大事なのである。

 

「其の………昨日構築した、新しいスキルの、感覚は………?」

「蠍相手に試したけど、一本一本の出力も高い代わりに取り回しがムズい、一種の雑種剣(バスタードソード)なのは変わらないなぁ………。其れを加味しても『奴』に勝てるかどうか………」

「相手が、相手………ですからね………」

 

秋の空気が満ちる通学路を二人並んで歩き、学校に着くまでに想いを馳せるは七つの最強種(ユニークモンスター)の一柱、冥響のオルケストラ。

 

挑戦者が此迄に挑んだ強敵難敵を無作為に抜粋から、挑んだ時の環境すらも再現し、四度に渡るボスラッシュの後には挑戦者の上位互換と言えるステータスを持った、仮面付きのマネキンを用いて襲い掛かり。

 

オマケとばかりに挑戦者のトレースAIを搭載してスキル・魔法は勿論、アクセサリーに武器防具さえ完全模倣(パーフェクトコピー)する、正に最強種に相応しい力を持った理不尽を叩き付ける、征服人形(コンキスタ・ドール)達でも正体が解らなかった『オカルト』である。

 

「戦略は出来てる、後は俺自身の頑張り次第………」

「あ、あの………!」

「ん?」

 

ブツブツと独り言を呟く楽郎に、玲は声を掛ける。ほんのりと赤みを帯びた頬とうなじが覗く中、彼女はこんな質問を彼氏たる男にする。

 

「陽務君は、其の……進学とかで、大学は何処とか、決めてたりは………」

「進路?来鷹(らいおう)の経済学部、斎賀さんは?」

「…………私も、来鷹なんです」

「へぇ〜…………」

 

受験で別々の大学に行く事になって別れる、そんな恋愛ゲームのシチュエーションを岩巻(いわまき) 真奈(まな)なら『美味しいビターエンドシチュエーションッッッッ!!!』とか何とか言いそうなだと、楽郎が偏見を抱いていた時。

 

「えっと、受験シーズンに………なったら、一緒に勉強、しませんか………?」

「良いよ、斎賀さん。あ、其れから今年の期末テストなんかも一緒に勉強出来ると良いな」

 

唐突に玲から申し出た受験勉強の御誘いに対して楽郎は、至極あっさりと了承し片手を差し出して。完熟した林檎の様に水蒸気爆発を起こした玲は、恐る恐る其の手を取って二人は並んで学校へと歩いて行く。

 

其の様子を見ていた通りすがりの通勤途中のサラリーマンは、コンビニで買ったブラックホットコーヒーを一目、グビッと一気飲みした後に秋の朝空を見上げて呟く。

 

「──────コーヒー甘ぇ…………」

 

 

 

 

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「まだ先だけど、今の内に卒業論文のテーマを決めて置こう………」

 

所変わって現役バリバリの大学生として文学に励んでいる五条(ごじょう) (あずさ)は、大学一年生と言える身で有りながらも先々の事を考え、講義の合間の休み時間を利用して、大学卒業に必要な卒業論文で取り上げる題材決めに勤しんでいた。

 

そもそも大学という物は入学した人が成績に箔を付ける為だったり、自分が向かうべき道の先を明確にする為に行く物であり、梓自身も先々での就職に際した時に『自分はこうなりたい』という未来のビジョンを定める物。

 

卒業論文とは其のビジョンを語源化し、目標として設定する所謂『儀式』の様な存在と、梓本人は考えている。

 

「サークルとかに入ったりするのも有りだろうけど、収入や先々を考えると『アレ』が第一候補な訳で………。ただ此れを選ぶとなれば、親父や御袋に相談しなきゃいけないからなぁ………」

 

梓が言う『アレ』とは、ゲーム仲間で日本最高峰のプロゲーマー・K………もとい魚臣(うおみ) (けい)からの『プロゲーミングチームへのスカウトを受けてプロゲーマー入り』を指し、其の理由が自分の彼女で世界に名を轟かせるカリスマモデルの天音(あまね) 永遠(とわ)と其の友人の斎賀(さいが) (もも)の存在が大きい。

 

年が離れた昔の腐れ縁的知り合いから紆余曲折を経て恋人となり、そして一線を越えた先のデートのやり取りが大多数に見られた事と、其の状況がSNSを通じて拡散された事によって彼は一気に有名人となった。

 

未だ知る者は少ないが、GGCにてダイナスカルの猛禽(アメリア・サリヴァン)を倒したレトロゲーマー・A-Zの正体とは五条 梓『其の人』であり、仮に此の敢然たる事実が広まれば芋蔓式に自分周りの情報が錯綜し、今でさえ永遠の彼氏として認知されている状況は、更なる混沌具合に成る可能性が非常に高いのである。

 

其の身バレも既に時間の問題だろうが。

 

「人間が自分で集中状態に意図的に入る方法とか、並列思考処理に至る為の方法は………流石に頭弄った方が早くない?って言われそうだし。………うん、パスだな………」

 

まだ数年先の未来である物の、意識しなければ時間はあっという間に過ぎ去って、立ち向かわなければならない時が訪れてしまう。

 

故にこそ彼は『備える』事を選択し、其の時が訪れたとしても堂々と掴み取れる準備をするのが、彼の生き方であるのだから………。

 

 

 






未来を見据えて


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