VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サードレマにて三身が来たり、そして戦いは勃発す




三身は沼越え、阿修羅は憚り、そして火力と防御が揃い踏む(其の二)

「全員!!!耳を塞げぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

左手の湖沼の小鎚を振るい、右手に握った投擲玉:炸音をペッパーが叩き潰した瞬間、彼の居る場所に落雷が落ちた様な轟音が鳴り響き、沼地全域を揺るがす音が走る。

 

「うぉあああああああ!?」

「音…爆弾、か……!?」

「おっきな音でしゅわあああああ!?」

「ッ………ペッパーはん!」

「皆…!後の攻撃は頼ん、だぁぁぁぁぁぁ!?」

 

轟音鳴り裂く中、ペッパーの足下が一際揺れ、彼の身体が飛ばされる。されど、巨大な音によってタイミングをずらされた事により、本来なら落下死になる高度へと打ち上げられる所を、沼地に背中での落下による多少のダメージで済んだ。

 

そして沼掘り(マッドディグ)はというと、巨大な音をぶつけられた事によりスタン状態が付与され、其の巨体は伸びて、頭には混乱している様に数個の星が、クルクルと回っている。

 

「えぶっふ…いけぇ…!サンラク、オイカッツォ、エムル…ッ!いけぇえええ!」

 

投擲玉:炸音を間近で使用した事による、自身のスタン状態に苦しみながらも、此のチャンスを逃すな仕留め切れとペッパーは叫び。

 

「オイカッツォ、エムル!決めるぞ!」

「は、はいですわぁ!」

「ぶちかまして、ブッ壊す!」

 

一つは、致命の包丁が螺旋を描きて、沼掘りのエラを穿ち。

 

二つは、魔法の刃が弧を成しながら、沼掘りの首を裂き。

 

三つ、赤・青・黄色のオーラが黒に生まれ変わり、其の拳が下顎を打ち砕く。

 

其の直後、沼掘りを構成するポリゴンは爆発四散を遂げて、サンラクとオイカッツォのレベルアップを告げるSEが鳴り響いた。

 

「しゃあ!鮫鯰攻略完了っ!三人だったりエムルやアイトゥイルの協力もあったからか、けっこー早く終わったぜ!」

「てか、投擲玉便利だな。油といい音といい、攻略の幅がグッと広がるわ」

「はははっ……。此のアイテムはエンハンス商会で売られてるから、訪ねて見ると良いよ」

 

うんしょっと、スタン状態から開放されたペッパーが起き上がり、サンラクとオイカッツォにハイタッチを交わし、エムルとアイトゥイルにも同様のタッチで、健闘を称え合う。

 

が、しかし…………

 

「居たぞ、彼処だ!」

「エリアボスを攻略しやがったぞアイツ等!」

 

セカンディルで炸油のローションで足止めを食らったプレイヤー達が、其れを乗り越えて追い掛けてきている。うかうかと喜んでは居られない。

 

「サンラク、オイカッツォ、逃げるぞ!」

「オイカッツォはん、急ぐのさ!」

「エムル、肩に乗っかれ!」

「は、はいですわぁ!」

「沼地走りづらい…!」

 

追跡者を振り切るように、三人二羽の行軍は沼地沈める峡谷を越え、サードレマへとひたすら走り。そして彼等を追う者達は、リポップした沼掘りによって阻まれる事になったのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サードレマ周辺高地。見下ろせば、シャンフロの大陸で上位を争い、初心者を脱したプレイヤー達が此処を拠点に、三つのエリアへと派生する中から選択し、向かう準備をするサードレマの街並みが一望出来る、良好のロケーションだ。

 

「此処からサードレマを見るのも二回目か」

「へぇ~…アレがサードレマ……」

「其れなりにデカいな……」

「何時見ても、大きな街なのさ…」

「おっきな街ですわぁ」

 

十人十色ならぬ三人二羽五色の反応を示し、ペッパーは此処からどうするべきかと考え始める。アイトゥイルとエムルの二羽を、旅人のマントの中に隠すとなれば嵩張り、見付かる危険性が高まる事は避けられない。

 

しかし彼は此処で、以前ビィラックがエムルやピーツには人へと変化出来ると、そんな事を言っていたのを思い出す。

 

「うーん……さっきの白頭巾被って移動しても、万が一戦闘になると邪魔だし、そうなるとエムルを隠すしかないんだが……。となると、ペッパーの着けてるマントの中しか無いんだよなぁ……」

「俺は良いが、アイトゥイルを隠してる以上面積は嵩張るし、此方が狙われた場合に両方を守り切るのは難しいぞ」

「まぁ、ヴォーパルバニー連れてる時点で普通じゃ無いしな、ペッパーとサンラクは」

「お?そりゃどーゆー意味だカッツォ?」

「其の鳥頭で考えてみろよサンラクぅ?」

 

またしても取っ組み合いが始まりそうになったので、ペッパーはオイカッツォに向けて、彼が置かれている状況を言ってやった。

 

「カッツォの言う通りだサンラク。だがな、カッツォ。お前は俺達といる時点で、もう既に追われる身の仲間入りをしているんだよな。御愁傷様です」

「あぁ、チクショウ!そうだった!」

 

明かされた事実に頭を抱えるカッツォ、対してプギャーwwwwと笑うサンラク。と、そんなやり取りを尻目に、アイトゥイルがエムルに言った。

 

「あ………エムル、久し振りに『アレ』をやったらどうなのさ?」

「確かに『アレ』なら、何とか成りそうな気がしますわ!サンラクさん、ペッパーさん、オイカッツォさん!此処で見た事は、他言無用でお願いしますわ!」

 

そう言って、エムルが取り出したのは黒と金の腕輪。三人と一羽の前で其れを右手首に付けて、念じた瞬間に彼女を白い煙が包み込む。

 

煙が晴れた先には、白桃色のショートヘアの着ていた服を人間大サイズとし、両足はオーバーニーソックスと可愛らしい靴を履く、身長170cm程の女の子に変化したエムルが其所に居た。

 

「ふふふ、此れぞヴォーパルバニーの秘法ですわ!でも此れを使っている間は、MPを物凄い消耗してしまって、アタシでも5分が限界ですわ……」

「おぉ…!こりゃ凄い……取り敢えずハイ、マナポーション。ある程度は有るけども、大事に飲んでね」

「わぁ、ありがとうですわ!」

 

5分の制限時間は有るものの、人に変化出来る。一先ずエムルを隠す方法が見付かったので、サードレマには入れそうだ。アイテムインベントリからマナポーションを手渡したペッパーが、ふとサンラク達を見ると、エムルの姿に唖然と言った表情をしている。

 

「お、おーい?サンラクー?オイカッツォー?」

「御二人共、大丈夫ですわー?」

「おやおや…二人共、エムルに見惚れたのさね?」

 

そんな一人と二羽の問い掛けに、二人は漸く戻ったように声を出す。

 

「おかしいなカッツォ…俺達は確か大衆が認める神ゲー『シャンフロ』をやってるはずだ。決してケモナーの女の子と、キャッキャウフフする『ギャルゲー』をしてる訳じゃない……よな?」

「そうだなサンラク…俺達はギャルゲーをしてるんじゃない、神ゲーをしているハズ………うん、きっとそう。そうに違いない………」

 

俺達がプレイしているゲームはシャンフロだぞ?とツッコミを入れるべきか否か、無言で試されてるように感じたのは気のせいか。

 

「コホン………カッツォ、サンラク。俺が今現在持ってるマナポーションは合計8本、内一本はエムルに渡したから、残り7本で最大変化可能時間は35分。其の間にサードレマに突入後、裏路地を使って各々解散するって感じになるけど良いか?」

 

あくまでも理論上の時間であり、戦闘が発生した場合は変動が起きる可能性も加味し、二人に今後の事を話していく。

 

「解った。でも先ずは、サードレマの正門まで無事に辿り着く事から………だよな?サンラク、ペッパー」

「そこだよなぁ……俺はあのクソ犬の呪いを、衆人環視に晒しながら通らないと行けねぇし……あの野郎絶対許さねぇ…!」

「何十回何百回負けようが、最後に一回勝てたらサンラクの勝ちさ。じゃあ、行こう……サードレマに」

 

開拓者一向は、目的地たるサードレマに足を踏み入れんとし、周辺高地を下って行く。

 

其処で待ち構える、数多のプレイヤーが居る事に気付かないまま…………

 

 






いざ突入、サードレマ


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