VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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最終楽章の其の前に




唯一人(ただひとり)へ贈る歌 〜其の二十二〜

最終楽章の突入、其の為にマネキンの楽団員達が次々とステージから退場する中、苦しい様子とも悲しい様子とも異なり、或いは其れ等全てを混ぜ合わせた様な表情(かお)をしたサイナに、撃鉄達を解除したサンラクが正面より立ち会う。

 

「おいサイナ、せめてインテリジェンスに話せ。お前が何時も言っている『其れ』は形だけの物か?違うだろ?」

「い、インテリジェンス………」

「そうだ、インテリジェンス。インテリジェンスな奴は口籠らないし、情報を共有出来るし、自力で奇病難病すらも克服出来る」

 

ネフホロリストのルストがずっと前に言っていた格言らしい其れを、サイナに当て嵌めて言ってみたが…………対する彼女はどう答えるのか?

 

「………存在意義、自意識だけではどうしようもない承認欲求、オルケストラによる裁定は、やはり………」

「曖昧だなオイ」

 

サイナの台詞の御陰で、足りない物が見えている。そして自分自身が何を見落としていたのかも、彼女の御陰でハッキリと解り掛けた。ならば彼女に贈るべき言葉は一つのみ………!

 

「曖昧な答えだが、俺から一つだけお前に言える事が有る」

「其れ、は………」

「俺やお前が求める『答え』は、()()()()()()()

「………!」

 

此処には無い………文字通り結論は『其れ』に行き着く。

 

征服人形(コンキスタ・ドール)、音楽プレイヤー、エリーゼ・ジッタードール、アンドリュー・ジッタードール、リヴァイアサン、そしてベヒーモス………答えに辿り着く為に未だ散らばったキーワード達が、オルケストラの仮称:独奏ルート攻略に繋がる為の『正しき道』になる。

 

そんな中で歌姫がたった一人残ったヴァイオリニストに仮面を渡し、三度目となる『サンラク』が独奏のエールを受けて立ち上がる。

 

「やれやれ、もう出て来やがったか。────サイナ、一つ良い事を教えてやる………『懊悩(おうのう)は暗闇が如く、されど長き夜が永き試しなし』………だ!!」

「一体、どういう……」

「挫折し悩む英雄の背を押し、瓦礫と土砂に消えたある男の有り難い言葉だ!ただし其の人生、語るとメチャメチャ長いので割愛するッ!!」

 

「君の為なら僕は世界中の人間を殺してみせる」とゲーム内で発言し、そして文字通り有言実行したクソゲーのキャッチコピーであり、クソゲーマー界隈で『ミナゴロシ大戦記』と呼ばれている其れは、正式名称を『ミナココロ大戦記』という。

 

主人公が「君の為なら僕は世界中の人間を殺してみせる」と発言し、宣言した相手が苦楽を共にした可愛いヒロイン達ではなく、何とヒロイン達では無く『ラスボス』な上にキャラデザが『流し目をするゴリラ』である事が大問題。

 

オマケにメインストーリー中で病気のヒロインを治す為に必須となるアイテムが有り、乱数で手に入る『桃』を手に入れる事が条件なのと、其れを乗り越えた後に待ち構えている顛末が『無害無辜な民相手に無双ゲーをした挙句、今まで関わってきたヒロインやNPC達をプレイヤー直々に一人一人斬り捨ての暴挙』を噛まし、其れが『ハッピーエンド』でした…………というのだから救い様が無い。

 

───────だが、だからこそ。クソゲーは面白いし、クソゲーは辞められないし、クソゲーは最高なのだ。

 

「行くぞ似非野郎!」

 

初手両者が起動するは『ストラトゥム・バスター』、クリティカル・レイズから進化して二刀流限定時スキルだった前身より、両腕に武器を装備している事で使える様になった其れは、例えば片手に剣を片手に銃を持った状態でも使用可能な点と、クリティカル・レイズ時代の五十倍で下がっていた時よりも改善、其の数値は『百倍以降になってから』露骨に下がる物に変更された。

 

そして更に両者が使うは、互いに愚者(フール)によって再使用時間(リキャストタイム)を終えた二連結同調『双天唯流(ふたつそらいちのことわり)』と、装備するはコツコツ強化を続けて来た惨毒蜂双針(ヴェノ・スティンガー)海の冬将軍(コーラルホエール)の素材を用いた名匠及び古匠鍛冶師のビィラックにより真化が行われ、其の姿と名を改めた『白紫病霊針(コル・ド・ヴァラント)』。

 

惨毒蜂双針時代のダメージ判定一回毎に毒・麻痺・壊毒の状態異常付与を持ち、帝蜂双剣(エンパイア・ビーツイン)時代よりも耐久面と凶悪性が増したのだが、相手の耐久によってはそもそも効果付与をする前に武器耐久値が削られて、取り替え警告のシステムアナウンス画面が表示される事も有った双剣。

 

しかしコーラルホエールの素材で真化を行った事によって、蜂と海洋生物に水晶の蠍の針を使った双刃のレイピアは新たに霊気属性という、アンデッド系にも有効打を持ちながら敵の状態異常耐性諸々を下げるという属性を獲得し、此迄の三種の状態異常付与に凍傷・脱力・硬直の判定が加わった『デバフ超特化武器』になり、耐久値も惨毒蜂双針の頃の二倍に跳ね上がった超凶悪武器となったのだ。

 

「コイツに当たったらヤバいのは、()()()同じだろう!?」

 

『サンラク』は自分自身(サンラク)の上位互換、力も技量も器用さも、何もかもが自分より上手な相手だが、其れは同時にサンラクというキャラが抱えている()()を、相手(『サンラク』)もまた抱えているという事実に他ならない。

 

サンラクは最速で、スキルやアクセサリーを含めても圧倒的な機動力を誇り、其の気になれば空を超高速で走り抜け、やりようによっては旧大陸と新大陸を隔てる大海すらも越えられてしまう様な、そんな『機動力特化』と言って良いステータスをしている。

 

特化ステータスという物は古今東西、極めに究めた奴は其の部類で唯一抜きん出て並ぶ者は無いとされる一方、其のステータスには必ず『削られている箇所』が存在し、サンラクというキャラの場合は圧倒的な速度を得た代償に耐久面は武器と装備に頼らねばならず、其の装備でさえリュカオーンが残した刻傷(こくしょう)で短時間しか着れない。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

『……………………!!!』

 

真化した二振りのレイピアがぶつかり合い、当たれば確実にアバター操作に影響を与え残すと確信する程の、激しい火花を散らした激突が起きる。

 

互いに互角、ストラトゥム・バスターで重ねた総計六十四倍分のクリティカルダメージの蓄積(貯金)が、サンラクと『サンラク』に乗った状態となった其処から、両者武器を取り替えたのは『ほぼ同時』。

 

 

 

 

 

されど此処で両者の行動は『変化』した。

 

 

 

 

「ん!?」

 

サンラクが豪強靭包拳(スキュエルグローブ)、対する『サンラク』は煌蠍の尾鞭剣(ギルタ・アドラスカ)………仮に自分が奴の立場なら、其処で出すのは女帝城の顕壁盾(ヴォーバン・ガルガンチュラ)が最有力候補の筈では?───────そんな考えが一瞬脳裏を過ぎるも、其の思考は一旦置かねばならない。

 

「対レイドボスさん技術!錆光殺しってなァ!!」

 

水晶の蛇腹大剣をボクシンググローブの甲部で滑らせ、直撃軌道を逸らしたと同時に、横っ腹を百秀の神腕(サウィルダーナハ)を起動して銀のエフェクトを纏った右裏拳で弾き飛ばし、相手はストラトゥム・バスターが残っているのを警戒したのか追撃せず、取ったのは『最速で追撃に対するガードを取る』という物で。

 

「オイオイ、其れは『悪手』じゃねーのか?」

 

時間にして僅か一秒、然して一秒()有るならば、畢竟雲耀(ひっきょううんよう) レベルMAX・多重的円周運動(オービット・ムーブメント)摩天縮地(まてんしゅくち)の雷速移動が間に合う。

 

「ペッパーとの特訓の成果!ワンインチボクシング!」

 

『サンラク』を初撃に反応させる為の神律燼風(しんりつじんふう)による首筋狙いのフックを掛ければ、相手もやはり神律燼風で行動補強から回避と共に紅蓮海の拳帯(レガレクス・セスタス)装着。

 

両腕にギチギチに巻き付きながら、両手の撃鉄の琥珀が隙間から覗き、隙見て過剰伝達(オーバーフロー)に入ろうとか考えているのか………だが『其の隙を先んじて取る為』に此方は神律燼風で加速してまで『先手』を取った。

 

超至近距離下(インファイト)の戦いは筋力以上に回転率が物を言う、どんなに強大なスイングを放てる圧倒的知名度持ちのホームラン王でも、腰の捻りと筋肉の連動が無ければボールをバックスクリーンまで運べないのが『常識』、そして人体である以上は覆らない『真理』。

 

どんなに上位互換が相手だとしても敵が起こす行動の『始まり』か、或いは其の行動の『終わり』を完全に押さえられたならば、当然ながら取れる選択肢は必然的に『狭まる』。其の狭まった瞬間にこそ、『サンラク』に突け入る隙と倒す為の道筋が有る……………!

 

『────────!』

 

自分に出来る事は、当然相手にも出来る事。雷速初歩移動コンボ、円周軌道をなぞって刻んだ超速挙動、阿修羅の覇眼(アスラズ・ロックオン)でメタを張った自分に対し、『サンラク』なら其処から瑠璃天(ラピステラ)星外套(せいがいとう)に記憶した【瞬間転移(アポート)】に繋いで来───────

 

「…………は?」

 

『サンラク』よ、お前は何故其処で左手の撃鉄を額に叩き付けんとしている?…………いや確かに、其れをやらんとする理由は自分には解かる。

 

星明かりを纏って迅雷刹華(じんらいせっか)で即接近、からのワンインチでの上位互換ステータスの押し付けと、自分(サンラク)ならやり切るという確かな自信は有るし、其れをやったら絶対に面倒臭いと確信するくらいには解かる。

 

だが其れはあくまでも……………

 

 

 

 

『敵が自分を見失っている事が大前提』であり、そして暗殺者の経験持ちから『空隙作りは絶対にやってはならない行動』だろう?

 

 

 

 

「そりゃ駄目だろ、『俺』よ」

 

星外套がはためいて、瞬間転移からの迅雷刹華と共に距離を詰め切り、グローブを外した掌底で『サンラク』の肩に触れ、流れるままに裏拳を軽く当てた──────次の瞬間。

 

『サンラク』の前身に強大な振動による()()と、軽さの割に合わない絶大極まった衝撃による()()()()()()の発生。

 

掌による接触が齎す振動で『最大三秒の硬直』を与える二連結同調『震無極(しんむきょく)』と、拳の振り抜きによって威力と衝撃の出力が変動する『不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)戦砕誇示(ウォールフェン)』。

 

対『サンラク』用に作った初見殺しが決まり、『サンラク』の身は劇場の宙を錐揉み回転しながら、物凄い勢いで吹き飛んで行く。

 

「見えたァッ!!」

 

か細く、細々と見えていた勝利への道筋が、今此の瞬間『モーゼの海割り』の如く拓けたのをサンラクは見た。

 

逸騎過勢(いっきかせい)風火二輪(フレアテンペスト)旅終わるまで(ネヴァーエンド)の起動から二種の撃鉄を叩き付け、ノールックでインベントリアを操作して武器を………『サンラク』を倒す為に煌蠍の尾鞭剣を取るや、一挙に接近。

 

対する『サンラク』も硬直解け直後に、重律踏覇(エクシードグラビティ)星海飛脚(アステ・ランナー)で体勢を立て直したが、此方の方が先手を取った上に地の利と攻撃範囲を持っている!

 

 

(此処が正念場………、此処で奴を倒す………!)

 

 

 






勝利に繋がる光の道


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