VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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最終局面




唯一人(ただひとり)へ贈る歌 〜其の二十三〜

超至近距離下(インファイト)での戦いに置いて戦闘者が出来る事は、およそ『三つの選択肢』に分けられている。

 

一つは『防御を捨てた上で敵を確実に殺す一撃を叩き込む事』、次に『相手の攻撃を誘発させた上で決定的なカウンターで仕留める事』、最後に『鍔迫り合いから戦況を五分に戻して早撃ち勝負で先んじる事』の三つであり、同時に此の三要素は『三竦みの関係』に有ると言って良い。

 

防御を捨てた確殺の一撃は、其れを誘発した上でカウンターをされれば無に還り。

カウンターを狙った所を敢えて鍔迫り合いに戻し、早撃ち勝負とすれば反射が勝る者が勝ち。

鍔迫り合いを狙わんとした所に超火力の必殺がブチ噛まされれば、やられた側は当然死ぬ。

 

現在のサンラクと『サンラク』には決定的に優劣の姿勢が有る、今迄なら付け入る隙も無い上位互換の存在だった『サンラク』が、自分(サンラク)と契約した征服人形(コンキスタ・ドール)のエルマ=317(サイナ)をインベントリアに入れて入場し、最終楽章前に出しているからかは定かでは無い物の、完全完璧なトレース思考(AI)に『弱体化か何かが加わっている』のはハッキリと解かる。

 

そして此の状況でサンラクは先手を取り、対する『サンラク』は後手を取ったという、決定的な事実こそが勝利を手繰り寄せる最後の鍵──────!

 

「じゃんけんの必勝法!其れは相手を殴り倒せば不戦勝!」

 

野球ゲームでバグ技でラスボスの最強チーム全員をデッドボールにしてゲームセットにした経験、別ゲーのじゃんけんでオイカッツォ相手に三回やって勝利した経験を動員!

 

煌蠍の尾鞭剣(ギルタ・アドラスカ)の伸縮剣身による盾や拳武器に引っ掛け、蛇腹剣の特性たる撓った状態から武器の上より水晶刃で本体を刺す!

 

仮に相対的立体運動(ソリッド・マニューバー)の半オート回避で凌がれようが、引っ掛けた剣を後ろに引っ張り戻して其の上で蹴り飛ばす!

 

其れすら防がれるなら深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)で首・鳩尾・股間の三点どれかを追撃で蹴り抜く、此方が有利のじゃんけんを叩き付けるッ!

 

「獲ったァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時に『一寸先は闇』という言葉が有る。

 

意味として『少し先の事さえ予測出来ないからこそ、絶対に油断してはならない』というべき教えの言葉であり、同時に『注意不足が大きな失敗を招く事に繋がる』ので、其れを確りと戒める為の言葉である。

 

だが時として、其の言葉でさえも『説明が付かない現象』は往々にして存在し、其れがゲームの中なら当然の如く出現し、対峙した者へと納得とは程遠い理不尽として、無慈悲にも挑戦者へと降り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な………!?」

 

そう、突如として───────劇場に敷かれたレッドカーペットから、『物理的現象を一切果たさずに』展開されて飛び出した()()()()()()が、サンラクの握った黄金の蛇腹大剣の軌道を阻み。

 

剰え撓って背後から刺しに来る事すらも見通したかの如く、ドーム状に展開して『サンラク』の身を守り抜いた瞬間を目の前で見せられては、サンラク自身も『其れ』が何を意味するかを完全に理解出来た。

 

「ふざっ………!ふ、ざけん──────グッ?!」

 

オルケストラが産み出した再現サンラクを守る楽器群の展開、一対一(タイマン)の戦闘中に横から歌姫(オルケストラ)という第三者の介入(横槍)

 

相手のソリティアを凌ぎ切って漸く手にしていた千載一遇の自分ターンを、後から申告されたエクストラターン宣言でスキップされたのと同じ心境を抱いたが、其の恨み節を吐露する間も無く敵にターンは渡された。

 

歌姫の援護により体勢を立て直した『サンラク』が取り出し振るったのは、ヴァイスアッシュ謹製の甦機装(リ·レガシーウェポン):百足式8-0.5(ムカデシキタウゼント)………其の【超過機構(イクシードチャージ)】たる『賦活醒(リベレト)』の起動によって、赤と青のラインは混じって紫に染まっている。

 

展開した刃による縦一線の初撃を相対的立体運動で躱せど、星外套(せいがいとう)に刻まれた瞬間転移(アポート)で背面に回り込んで鉤が脇腹を抉り取ると同時に、百足式8-0.5の元になった大百足の要塞蜘蛛(ガルガンチュラ)殺しを成すべく研鑽した砲劇毒が、サンラクの身体に無慈悲にも流れ込む。

 

「ぐ、おォ………!………ッ、来たァ!!!」

 

だが『サンラク』と対峙し、武器にスキルを完全模倣して襲い掛かると理解した時から、相手が白紫病霊針(コル・ド・ヴァラント)や百足式8-0.5の毒や状態異常を誘発させる武器を用いた攻撃を仕掛けて来ると、サンラクは読んでいた。

 

だからこそ用意した四同調連結『逆境よりの逆転(リバーサル・リヴァース)』は、外部から受けたり自傷により体内へ注入された毒や呪いの質や量に応じ、ランダムな属性スキル()()の出力と使用者のステータスを強化する。

 

そして今回対象に選ばれたのは…………投擲系スキル!

 

「よくも、やりやがったな!!!」

 

解った事は唯一つ、此のままでは『オルケストラには勝てない』事。ウェザエモンの時の力付くで張り倒して眠らせる単純明快な方法と、オルケストラは訳が違う事であり。

 

毒によるスリップダメージで体力が削られる中、投げた対象を高速で射出する晴天流(せいてんりゅう)波乱(はらん)」と、投擲した物に吸引効果を乗せるスロー・オブ・タービュランスで蛇腹大剣をぶん投げ、槍焔剣(そうえんけん)アラドヴァルで『サンラク』を斬りに行く。

 

体力は残り僅か、此処からやるのは悪足掻きという名の八つ当たり。さっきの楽器群出現で歌姫を守れば『サンラク』はガラ空きになり、逆に『サンラク』を守れば歌姫側がガラ空きとなる。

 

「死ん…………」

 

─────────だが無情にも、歌姫の前には先程と同じく『サンラク』を守った楽器群が発生し、吸引効果を纏った蛇腹大剣の刃を阻んで、威力を殺してしまい。

 

そしてアラドヴァルの切り込みを深厳戟響脚の爪先でブレイクダンスの如く弾い(パリィし)た『サンラク』が、非常に見覚えの有る接地状態での『対空ハイキック』でサンラクの顎を蹴り抜いた瞬間、一定ラインを超過した幸運値が齎した食い縛りが発動する。

 

が、其の食い縛りを無に返す、後詰めの砲撃毒によるスリップダメージがサンラクの体力を削り尽くして。

 

「あ………─────────」

 

意識が途切れる刹那、サンラクが最後に見たのは『今にも泣き出しそうな表情をしているサイナの姿』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンラクの意識が戻った時、自分の近くにはサイナと投擲した煌蠍の尾鞭剣、周りにはキョージュを始めとしたライブラリのメンバー達にサイガ-0、パートナーのヴォーパルバニーのエムルに妹のエクシス、エクシスがテイムしたウォットホッグの姿が在り。

 

「おやサンラク君。随分と健闘した様子………何か有ったのかね?」

「………………………」

「あ、あの………サンラク、君………?」

「………………………」

「サンラクさん…………?わひゃ………!」

「と、鳥の人………?」

「ブビィ………?」

 

サイナと武器をインベントリアに回収し、つかつかと無言でエムルを頭に乗せて歩くサンラクの姿に、キョージュにサイガ-0含めて誰も彼もが呼び止める事が出来ないで居る。

 

何せ彼の表情は表面上では静か過ぎる状態ながら、もし一度でも開けば施錠しない限り爆炎が噴き出しかねない、そんな余りにも不吉で不気味なまでの静けさを纏っていて。

 

化学仕掛けの事務所(ドールフロント)を進み、征服人形達の拠点のある大樹海、即ち外に出たサンラクは無言でストレッチから身体を解し、そうして思いっ切り息を吸い込み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソゲーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶびょぴぃぉ!?!?!?」

「ぼぴみゃうっ!?!?!?」

「ブビィ!?!?!?」

「サンラク君!?!?ま、待って下さいッ………!」

 

大樹海の無数に根付いた枝葉と、樹木の全てを震わせんばりの荒振り猛る、魂の大絶叫に近しい声を挙げた事で二羽のヴォーパルバニーと一匹のウリ坊の鼓膜に大ダメージを与え。

 

そして樹海の中へと全速力で消える開拓者最速の背中を、肉塊を纏った騎士が兎とウリ坊を抱え、全速力で追い掛けて行ったのである…………。

 

 

 






其れは発狂に近い絶叫


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