外道三人衆、此処に揃う
「お、おい!ちょっと待て!」
「何故半裸なんだ?追い剥ぎにでも逢ったのか君は?」
サードレマ正門。ペッパー達一向が門を通ろうとしたのだが、やはり半裸の不審者に思われたサンラクに、門番達が声を掛けた。
「ですよねー…まぁ此れには色々訳が……」
「ちょっと待ってくださいわ、門番さん!サンラクさんは確かに半裸姿の鳥頭ですが、深い深い事情を抱えてるだけで、決して怪しい者ではありませんわ!」
「プフッ」
「プピヒ」
「ふきゅふ」
「おいエムル、お前今半裸の鳥頭っつったよな?あとテメェ等笑うんじゃねーよ、俺と同じ目に遇いやがれ」
エムルの悪意無き不意打ちに、思わず笑ってしまったペッパーとオイカッツォ、そして旅人のマントの中に隠れているアイトゥイルに向けて、サンラクは青筋を立てながらに言った。
と…━━━━━━━━━
「…………其所の貴方!」
ガシリと、ペッパーの手首を掴むようにして声を掛ける者が一人居た。黄土色のローブで頭と上半身を覆い、くすんだブロンドヘアが覗く女性が。
ローブの下には赤を含んだ黒の服とズボンを着て、両腕両足にはギチリと蔦の様に巻き付く意匠を施したバンデージと、フワフワの毛が付いたシューズを付けている。
見た所、最高レア装備の呪術師プレイヤーの様で、頭上のプレイヤーネームは『Animalia』と掲げられていた。
「其の『黒で統一した衣裳』に『右腕を隠す旅人のマント』…!やっと見付けたわ…『ペッパー』さん!」
どうやらペッパーを捜していたらしき彼女の、自分の手首を握る力が強くなる。絶対に取り逃がさない…そんな決意を顕すように、彼女の視線が此方に向けられている。
「おーおー、随分人気者じゃねーの~ペッパーくぅん?」
「ペッパー、お前の知り合いかなんか?」
「いや、初対面だけど……。あの、俺に何か御用でしょう…か?」
梟の様にキョトンと首を傾げて聞くと、Animaliaは単刀直入に本題を切り出してきたのだ。
「一つだけで良いの……正直に答えて頂戴!どうやって『ヴォーパルバニーをテイムする為のクエストを受注したのかを』、私に教えて!」
「………!」
ペッパーとサンラクが反応し、Animaliaに対する警戒アンテナを鋭くする。双皇樹で出逢い、ジークヴルムの手に乗って空を飛んだ時の場面を、他のプレイヤーがネットに拡散した事が此処まで大事に発展したと、ペッパーは心の中で溜息を溢す。
「えっと…其のクエストなんだけど……」
「やっと見付けたよ━━━『ペッパー』。そして『革命騎士サンラク君』と『革命騎士カッツォタタキ君』?」
刹那に感じた殺気と、直後に迫る刃の一閃。Animaliaの背後から聞こえた声に、ペッパーは己の手首を握る、彼女の手を振り払い、サンラクとオイカッツォ、エムルにAnimaliaは共にジャンプして、サードレマの正門から離れる。
彼等彼女等が見上げた其所には、仮面舞踏会で着ける様な目元隠しのマスクを着ける、アーサー・ペンシルゴンが居て。サンラク&オイカッツォは、ほぼ同時に言葉を発した。
「……此処では『初めまして』で、合ってるかな?『
「出たな…!『
「こらこら、こんな超絶美人のおねーさんを、何処ぞの『モンスター』みたいに呼んでるんじゃないよ、二人共。其れに此処では『アーサー・ペンシルゴン』って名前だよ」
以前にラーメン屋でブシカッツォから聞いた、世紀末略奪ゲーユナイト・ラウンズでのプレイヤーネームで、ペンシルゴンがマスクを外して二人の名前を呼び。
そして其の視線がペッパーの方に向く。
「さて…と、ペッパー。私、君の事を捜してたんだよねぇ……?随分と『情報』を溜め込んでるみたいだし、此処等で吐き出しちゃおうか?」
「おいペッパー、お前ペンシルゴン相手に何やらかしたんだよ」
「ありゃアレだね、絶対ヤベー事したでしょ」
「……心当たりが有り過ぎるんだよなぁ……」
チャキ…と片手剣の鋒を構えるペンシルゴンに、サンラクとオイカッツォも既に各々の武器を構え、臨戦態勢に入っている。だが、ペンシルゴンのレベルは十中八九カンスト、装備の質も違う上に此方は三人の合計レベルで漸く抜かせる程度。
だからこそ━━━━━『コレ』が役に立つ。
画面を開き、ペッパーが何かのボタンを押した瞬間、ペンシルゴンと自分達の間に『特殊な魔方陣』が現れ、何者かが『召喚』される。
「………ペッパー。まさか君が『彼女』とフレンド登録をしていたなんてねぇ……?」
「知らなかった?此方も『万が一に備えて』、ちゃんと準備するタイプなんだよ?」
【救難信号】と呼ばれる、PK対策のシステムがシャンフロには存在する。フレンド登録を結んだ者がPKerに遭遇・襲撃を受けた際、フレンドに救助要請を出せるシステムだ。
其のフレンドの中に、特殊な魔法【
そしてペッパーがフレンド登録をしたユーザーの中で、盟友救助を習得している者は、たった
クラン:聖盾輝士団、慈愛の聖女イリステラを護りし、白金の盾を掲げるロールプレイガチ勢のクランオーナー・ジョゼット。
『シャンフロ瞬間最高火力』を叩き出した者へ贈られる、称号【
「ペッパー殿、助太刀に参った」
「ありがとうございます、ジョゼットさん」
ペコリと一礼したペッパーを見たジョゼットは、状況を確認していく。
「SF-ZooのAnimalia、更には阿修羅会のNo,2たる
騎士甲冑の内側にある、彼女の表情は読み取れずとも、声色から『決して最後まで油断するなよ』と言っている事が伝わる。
「解りました。サンラク、オイカッツォ、行くよ」
「良いのかよ、相手は
「あの白金の騎士、最高レアの装備を付けてるみたいな感じはするけど……大丈夫か?」
「大丈夫」と言い切るペッパー。チラリ…とAnimaliaの方を見れば、彼女はペンシルゴンとジョゼットの対峙に視線が行っており、アイテムインベントリからマナポーションを取り出しつつ、振る形で人化エムルをサンラクに引き寄せ、そろりそろりと移動していく。
「クラン:聖盾輝士団のリーダー、最大防御のジョゼット……フフフ。聖女ちゃん親衛隊と戦えるなんて、滅多に無い機会だし、思いっきり楽しんじゃおうかしら?」
「ぬかせ、廃人狩り。私は私の…成すべき事を成すのみだ」
片や片手剣を、牙突の構えで鋒を向け。片や白金の剣と盾を、聖騎士の如く掲げ。上位プレイヤー同士が、サードレマの正門前で激突を皮切りとして、ペッパー達一向はサードレマ正門を目指して駆け出した。
「な!?」
「うおっと!!」
「む…!」
「あわわ…!」
が、彼等の企みは目の前に立ち塞がった、頭上のネームに赤黒い髑髏印を刻む、プレイヤーキラー『十数人』によって邪魔される。数は多く見積もって、10…いや15人以上は居るだろうか。
「家のクランリーダーが、ペッパーに対して『結構なお怒り』でねぇ……。口酸っぱくキルしてこいって言ってきたから、私含めて阿修羅会のメンバーで、数ぶつけに来た訳なんだよ。感謝して咽び泣いても良いんだぞぉ?」
片手剣を振るい、ジョゼットと打ち合いながらも余裕そうな表情のペンシルゴンが、そう言って宣ってくる。
「……ペッパーお前ホントマジで何したんだよ」
「俺とサンラク、完全に巻き込み事故じゃん。何にも悪い事してないんだけど」
「いやいや…此処まで大事になるとはねぇ…。サンラク、フレンドで救難信号に答えてくれる人居ないか?」
此の状況を打開する為、ペッパーはアイテムインベントリから
「え…!?嘘、だろ…!?」
「な、マジか…!?」
阿修羅会の面々も、目の前に現れた存在に、驚愕と絶望の声色を呈した。当然だ、其のプレイヤーを彼等彼女等は知っている。
何故ならば、
「いやぁ…まさか直ぐに応じてくれるとは……」
「約束しましたから。何処に居ても、必ず駆け付ける……と」
プレイヤーネーム、サイガ-0。
トップクラン『
そして此の時、此の瞬間。先んじて『転移魔法』によって現地入りをしていた『あるプレイヤー』が、サードレマ内部より正門に向け、移動を開始し始めたのであった………
戦場は混沌を窮める