VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其れを見て何を思う、Part2




黒き夜に灯火を照らし 其の五

「確か封雲の撃鉄(タイタントリガー)って言うんだっけ………。良いよなぁ、複数本の腕を当たり前に操って弓矢二刀流も出来るらしいし………」

 

両腕に二本、雲の巨腕にて二本の………正確には二振りの得物を一振りにした事で計五本の武器を持ち、柔然にして当然とばかりに構える後ろ姿を見た聖弓勇者の草餅は、羨望の割合が大多数含んだ視線で聖盾所有者で有り、同時に此の影狼討伐戦の鍵を握る男の背中を見ていた。

 

人体の構造上複数の腕を操り振るう事は脳の思考容量(リソース)を割き、況してや其れを高速移動や空中で行う事は何かのスッ転んだ時にリカバリーを取るのが厳しく、其れが出来る人間(プレイヤー)とは『そうなる事を覚悟した上で割り切った人間』か『其れを行っても問題無い人間』かの二通りだと、草餅本人は考えており。

 

そして赤竜ドゥーレッドハウル及び(むさぼ)大赤依(だいせきい)討伐戦に参加し、様々な魔法を行使したディープスローターやクターニッドのパワードスーツ一式で数多の武具を使ったペッパーを見た彼は、此の二人が並列思考(マルチタスク)処理技術の体得者である事や、やり様によっては在りと汎ゆるポジションで必要な役回りを行えるオールラウンドプレイヤーだと思っている。

 

(切札を切る時はすっごくザックリと言うか、思い切りが良いと言うか………何か家の団長と似てるんだよな、ペッパーって)

 

一度決めた目標に向けて自分磨きを止めない、切るべき手札を切るならば一挙に切る、やると決めたら徹底的にやり切る…………其れがサイガ-100のスタイルであり。

 

ペッパーもまたサイガ-100とは異なるが、都度毎に目標を設定・一番に切るべき手札を確実な場面で切る・一度にやるならば最高を追求する姿勢は、黒狼(ヴォルフシュバルツ)を立ち上げた初期からメンバーとして加わり、黒剣(シュバルツシルト)に分離して以降も幹部の一人として彼女を見ていたからこそ、スタンスが似ていると解る。

 

「またラストアタック持ってって、全員に『草餅め………』と言われかねない………。というか、ペッパーが目立ち過ぎてるせいで此方にリュカオーンが来ないのは、流石にどうかと考えなきゃ駄目だろ………!」

 

草餅は弓の勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)聖弓(せいきゅう)フェイルノートの所有者であり、元々は弓使いをメイン職業(ジョブ)としながらも他の武器を試して戦略を広げんとした矢先、シャンフロ内で『聖弓に関わるユニークシナリオ』を他プレイヤーが発見から、瞬く間に情報が伝播し世界を駆け巡り。

 

天覇のジークヴルムが審判を務め、会場となった山の頂よりバンジージャンプ+流鏑馬を合わせたエクストリームスポーツを前に、多くの弓使い達が最高評価を出せずに玉砕し散っていった中、草餅も駄目元で一度挑んでみようと挑戦した結果、まさかの最高評価を獲得して聖弓所有者となった。

 

尚、此の事をウキウキで黒狼のメンバー達に報告した彼を待っていたのは、祝福の言葉が半分の残りが『草餅め………』という冗談混じりな理不尽な言い分だったが。

 

そうして月日は流れ、ペッパーが握った弩弓剣(アーチブレイド)の登場と、鍛冶師プレイヤーによる研鑽・研究・生産によってプレイヤーメイドの弩弓剣の誕生、其れにより弓使いの近接戦(インファイト)事情は改善され。

 

更にはプレイヤー初の宝石匠(ジュエラー)ラピスが作った水晶蠍の矢(クリアス・アーテアリ)の御陰で、敵に接近されたとしても今までの様に回避行動以外で反撃可能となってから、弓使いの立ち位置は『遠距離物理射撃職』として確かな物となったのだ。

 

しかし草餅は知っている、弓使いの真髄とは何たるかを………シャンフロに置ける銃火器の大体が『魔力』を用いるが故に始源存在相手に遅れを取ったという、リヴァイアサンのアンロックファイルで知った事。

 

即ち始源存在相手には少なからず、物理的に実体を持った物質を高速で射出する攻撃手段が必要不可欠な相手が、五色の脅威達の中には存在しているという事を。

 

「やっぱり弓の射撃は銃みたいに敵の弱点や急所をピンポイント、かつ装甲の上からドンピシャでブチ抜いてこそ、だよね………!」

 

草餅が見つめるインベントリのアイテム一覧には、自分が此迄に貯めた貯金を叩いて手に入れた『切札』が有る。

 

水晶蠍の矢(クリアス・アーテアリ)を作成したラピスが販売していた矢、一本200万マーニという水晶蠍の矢の四倍の値を持ち、其の性能は従来の矢とは明確に、そして圧倒的なまでに隔絶した性能を誇る金晶独蠍(ゴールディ·スコーピオン)の甲殻で作ったという、其の名を『金晶蠍の矢(ゴルドー・アーテアリ)』。

 

(リュカオーンはポルターガイスト的な存在…………、此の矢は着弾から対象の魔力を吸い上げて、()()()させるというテキスト。後はコイツがリュカオーン相手に効くか、だな………)

「此処から作戦を第二段階に移行!草餅はベヒーモス居る黒剣メンバーに天候操作を指示、コードは『強風』!

「御了解ッ!」

 

事前に打ち合わせた作戦を次段階に移行する指示が、団長より伝えれた事によって各員が一気に動く。そして最後に出し惜しみ無しとの一言が、勿体無い症候群ともエリクサー症候群とも揶揄される一種の『心残り』に似たストッパーを、草餅から排除した。

 

「ベヒーモス組に通達、天候操作ライセンスで強風を無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)へ送り込め!!」

『了解ッッッッ!!!』

 

ベヒーモスで手にした無線型デバイスで連絡を取り、草餅もまた切札を切る覚悟を決める。

 

「三本。一本当たれば………、何てそんな生温い事はしない。全部当ててこそ、弓の勇者として箔が出るって物でしょう………!」

 

腐ってもシャンフロ初期勢の一人で、勇者武器の一振りを担う者としての矜持に掛け、彼は黄金に煌めきて鏃に刺さりし存在を有機無機関わらず、結晶に変えて固める()を宿した矢を持ち、聖弓と共に其の刹那へと備えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、一回彼に頼んで使わせて貰えんやろかなぁ………宝鍠趙弩剣(シャガル=ニュア)皇金剣(アンティアレス)………」

 

片や合体分離変形によって、一つの武器で十以上は下らない別武器種に姿を変える弩弓剣、片や食わせた鉱石や宝石系のアイテムの性質を反映した刃を作り、其の性質からキメラ超合金を食わせたならば途轍も無い刃を産み出す疑惑を持つ片手剣。

 

シャンフロ屈指の強敵・水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)の偏食個体にして戦闘特化個体の金晶独蠍、其の個体が水晶の地の玉座に君臨し民草を導く煌びやかな皇帝となった、剣聖プレイヤー達のモーションと水晶巣崖内でのサバイバル適性が高いプレイヤーの思考を反映した"皇金世代(ゴールデンエイジ)"の打倒で得た素材と、他の蠍達の素材をも加えて作られた武器を合わせ、黄金に輝く大剣に変わるのを見たムラクモは小さくそう呟く。

 

ユニークモンスターの様な一度きりでは無い不世出(エクゾーディナリー)個体、出現スパンの把握が出来たならば理論上『量産可能』な代物である業物ながら、要求素材の獲得難易度が激ムズと言える高さと、新旧二つの大陸を股に掛けた冒険が必須という壁により、プレイヤーと鍛冶師達を誰一人の例外も無く混乱か発狂させた其れ等は、戦士系最上位職:戦王に就職しているムラクモ視点からしても、武器の総数とインベントリ容量の問題を解決や固有スキル:武威解放(ウェポンドライブ)との高い相乗効果(シナジー)を発揮出来る代物と認識している。

 

そして数日前に明かされた、宝鍠趙弩剣と皇金剣の組み合わせで到れる特殊形態:極撃形態(アルティマモード)によって、またしても数多くのプレイヤーと鍛冶師達に衝撃を与え、ムラクモ本人もそんな者達と同じ感想を………興奮と発狂抱く結果となった。

 

尤もムラクモ自身は、戦王就職者が此迄散々悩まされていた『武器類でインベントリ圧迫問題』をリヴァイアサンにてチェストリアを獲得した事で解決した物の、状況に合わせた変形合体分離を行って別武器に変える宝鍠趙弩剣は、やはり欲しいと思ってしまう程に『ロマン』が溢れる武器であり。

 

そうして其の日の半分をハイテンションで過ごした後、風呂にゆっくり浸かって頭と髪と身体を洗い、もう一回風呂で確り入って落ち着いた事で状況を整理し直した事で、彼女は『宝鍠趙弩剣とはシャンフロの武器種に在る対刃剣の例が有り、双剣の片割れ同士でくっ付けて大剣やら鋏になるのと同じながら、素材の性質故に宝鍠趙弩剣は特殊(ユニーク)過ぎる代物(ブツ)になった』という、ある意味『正しい結論』へ至れたのだ。

 

(サイガはんも時偶、宝鍠趙弩剣やら皇金剣やら呟いとったし、多分そう遠く無い内に皇金世代狩りに赴くんやろうか………。けど皇金世代に付き従う水晶群蠍の儀仗(レーダー)個体が居るらしいし、其れ潰す前に此方が逆に潰されるんとちゃうん?まぁ何か対策が有るならええけども…………)

 

水晶巣崖の上空から侵入してレーダーを潰して皇帝へと謁見しに行くのか、はたまた超長距離狙撃でレーダーをピンポイントで潰すのか、サイガ-100が如何なる戦略を立てるのかは彼女が剣聖習得の為、PVPで仕合った時代の付き合いであるムラクモ本人にも解らない。

 

しかし今はリュカオーンの影を討滅するのが目標と、(彼女)に思い出させるサイガ-100の指示が戦場にて轟く。

 

「ムラクモはペッパー君達の援護を行いつつ、リュカオーンのヘイト分散に動け!彼一人に負荷を掛けさせるな!」

「えぇで!任せな、サイガはん!」

 

宝鍠趙弩剣の性質上、弓や弩弓剣として扱えば草餅・剣系統として使えばサイガ-100・其れ以外は自分が扱えば十分な強さを発揮出来、クラン共有資産として保有して均等に使い回せば争いは起こらない。

 

最も厄介なのは宝鍠趙弩剣のネームバリューと価値が、シャンフロプレイヤーやNPCに広く知れ渡っており、万が一にも『黒剣メンバーの誰かが使用中にPKerに襲撃されて強奪されようなら』、其れこそ大打撃不可避の一件になるので慎重に行わねばならないだろう。

 

「まぁ変形合体分離の心躍る武器は何時か手に入れるとして、此方もちいとばかし見せるとしよか………!」

 

ジークヴルムとの戦いを終え、ベヒーモスにて環境生物を相手に自身の鍛錬を兼ねて戦い、数多の敗北と数多の勝利を重ねたムラクモはある日、統括AIの象牙(ゾウゲ)が産み出した『とある環境生物』と…………名付けられた其の名を『ライト7-8』に出逢い。

 

ムラクモをしてシャンフロプレイ史上『最強の強敵』であり、およそ『五時間強の討伐時間』を要して何とか単独(ソロ)での討伐に至った際、其れを観ていた象牙は戦慄しドン引きしながらも(彼女)を高く評価し、其のドロップアイテムを使って作成してくれた『二振りの得物』。

 

ムラクモによりチェストリアから取り出された其れ等は、片方は手斧(ホーク)サイズの厚刃で軽い順手持ちでないと飛んで行ってしまいそうな片手斧に、もう片方は雑種剣(バスタードソード)サイズの厚刃な逆手でないと重い大剣。

 

然しながら手斧側は物凄く重く、逆に雑種剣側は物凄勢い軽いという、見た目に反して重量が違い過ぎる『チグハグさ』を前に、ムラクモ本人も最初は『象牙が設計ミスでもやらかしたか?』と思わざるを得なかったが、実際に運用した事で『其れは無い』と確信した、確かなる代物で業物。

 

「象牙はんの再利装(リサイクルメイド)、名前が『遺機装(レガシーウェポン)挑戦ノ双翼(フライトウイング) Ⅶ-Ⅷ(セブン·エイト)』………。いや何ちゅうか色々『やっこしい』な…………。まぁそんなネームのコイツで、奴さん相手に何処までやれるか──────ちょっくら確かめてまひょ」

 

正式名称を『遺機装:ベヒーモス・特注(カスタム)再利装(リサイクルメイド)挑戦ノ双翼(フライトウイング) Ⅶ-Ⅷ(セブン·エイト)』。

 

世界初の有人動力飛行に成功せし、偉大なる兄弟技術者の名を冠した二振りの形状異なる『対刃剣』を持ち、サイガ-100よりのオーダーを実行するべくムラクモは駆け出したのである………。

 

 

 






草餅の感想、ムラクモの感想




ライト7-8

ベヒーモス第三階層の生態系が産み落としたモンスターで、象牙の六度に渡る生態シミュレーションを上位で勝ち残り、七度目のシュミレーションでベスト8に入った、蝶と蛾とプテラノドンの特色を混ぜたバイコーンペガサス。

自身が繰り出す軽い攻撃には重い・重い攻撃には軽いという、特殊な裁定を全身に搭載した『身体から常時戦砕琥示(ウォールフェン)を纏い放った状態の環境生物』であり、其のカラクリとして翼や身体を動かした時に舞う微粒子レベルの汗が、対象の周りや皮膚表面に付着。

自身の双角から溢れる電気信号と反応して『汎ゆる()()()()其の物へ干渉する』事により、衝撃の浸透度合いを思うが儘に操る他、其の電気信号は『筋肉に悟られない』特色を持つ為に、霊体系以外は『ほぼ貫通攻撃』が襲い掛かる。

オマケに此の現象は雷属性に付随した効果では無いので、雷属性耐性防具や麻痺無効系アクセサリーでも無効にされず、真に弾く事が出来るのはユニークモンスターの呪いの上位の物か、ジークヴルムの撃破報酬に在る残影シリーズくらいしか無い。

そして其の素材を使って作られた遺機装は、得物の重量が重い程に軽くなり、逆に軽い程に重くなる特性を宿す。


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