戦闘開始からおよそ二時間に迫り、一時間経過時点で覇刀:龍神楽がリュカオーンの影の性質に適応、斬った箇所の『魔力伝導率を下げた事』でリュカオーンにスキルによるダメージが通りやすくなり。
此処までの時点で黒剣後衛職メンバーによるバフを受けたマッシブダイナマイトによる、鉄鞭系のハーキュリー・ブラスターと拳撃系のハーキュリー・ストライク、メイス系のハーキュリー・インパクトを各種一回ずつと、草餅の放った金晶蠍の矢の全弾命中。
【アトラスバインド】の使い捨て魔術媒体多重投入で拘束し、アーサー・ペンシルゴンとムラクモが其々の高火力攻撃スキルを直撃させ、サイガ-100が繰り出す【従剣劇・八重奏:八岐の大河】を三発。
ペッパーが宝鍠趙弩剣:極撃大剣形態と極撃長銃形態の刃糧煌剣を二発、そして龍神楽にグランシャリオを始めとする斬撃を此れでもかと叩き込んだ事で、リュカオーンの影は確実に追い込まれていた。
『ガルルルガァ!!!』
「マジでタフやな、リュカオーンめ………!」
「本体は此れよりもずっと強いだろう、そうでなくては私が困るッ!」
「魔法弓として繰り出してるのに、もっと火力が要るって認識なのかなぁ………」
追い込んでいる…………そう確信出来る筈であるにも関わらず、リュカオーンは未だ健在だった。
闇を固めて黒い毛並みを構築し、四肢と巨躯を作った夜の概念存在じみ其れは、此の程度では終らないと───────闇を固め続けるリソースを削られて、ズタボロの身体になりながらも、まるで『自分達に本気を出させん』としている様で。
「そうだ、嗚呼そうだとも!遊びもゲームも、本気でやってこそ価値が有る!影狼が求める最高の決着…………、其の為にも此方も!覚悟を決めさせて貰うッッッ!!!」
何度目とも解らぬ、封熱の撃鉄を指パッチンで打ち鳴らし炎熱を纏い、不世出の奥義の窮速走破を使って一定時間スタミナ減少を無効化から、大きく大きく息を吸い込み始めて肺の底に空気を溜めて。
そしてペッパーは己が至った『答え』を此処に魅せる。
「晴天流【雷】…………奥義ッ!」
神代の頃より精神面に関わる古武術として連綿と継承され、シャンフロという世界にて流派スキルの源流となった晴天流は、風・雷・波・空・雲・熱・灰の七つの系統に三つの派閥が有り、晴天流の習熟を経たレベルアップによって次なるスキルが開放されていく。
其の度合いはスキル育成と同じく、晴天流への理解と鍛錬を経る事で一挙に次段階及び別派閥が目覚め、最終的に三派閥毎に三つずつのスキルが解禁・一系統につき九つのスキルが使用可能となり。
そして奥義習得の段階に到達し、三つ在る其の内の一つを選んだ瞬間、残り二つの派閥は所持スキル一覧から綺麗さっぱり『消滅』、ある意味では『忘却』した上で、スキル一覧には『選ばれた奥義と其の道筋のスキル達』が刻まれるのだ。
『多彩は確かに善い。しかしながら一意専心の修練こそが、晴天流皆伝の道と知れ』…………リヴァイアサンの第五殻層『叡智』にて開放したアンロックファイルの一つ、晴天流の歴史を記した物の中に有ったウェザエモン・天津気が晴天流の免許皆伝時に師より賜った『格言』。
苛烈を窮める始源存在を相手に神代人類達を守り抜くべく、自身が習得した晴天流七系統二十一の奥義を一系統一つの奥義に絞り込み、思考のタイムラグを極限まで削ぎ落とす事で四聖獣の戦術機達と共に天下無双の将軍となった…………そんな背景ストーリーが、ペッパーの脳裏に浮かんだのである。
二度目のリュカオーンの影と戦い、星皇剣グランシャリオの力で断風を発現し、疾風を習得後も修練と理解に習熟を重ねた果てに、灰と熱以外の五つの系統を開放から奥義習得段階に到達し。
星帝剣グランシャリオで幾度も発現させ、幾度となく扱い続け、そうして己の意思を以て選び取った『雷』系統の其の奥義は、ペッパー本人が其処まで優れてはいない反射神経を、己の体力を残り一割まで削る事で『超絶なまでに強化』。
有り余るエネルギーは身体の表面に流出し、接触すれば感電では済まない威力と、筋肉や神経系を活性化によって様々なモーション感度・神経伝達速度の向上を齎す、嘗てウェザエモンが雷鐘を選んだ事で消えた『奥義』。
其の名を───────
「成神ッッッ!!!」
空気を揺らし迸る蒼雷を纏ったペッパーが一歩踏み込めば、一瞬にしてリュカオーンとの距離を超近接領域まで持ち込み。
(ドラグマ!)
(問題は、無い!此の雷と痺れは、オマエの命の煌めき其の物に等しき力───!有りっ丈を持って振るえぃ!)
(応ッ!!)
アイコンタクトによる思考の交錯、星帝剣グランシャリオと覇皇獅将の両刃長剣、覇刀:龍神楽に鞘をかなぐり捨てて抜刀せし風神刀【碧千風】の四振りの武器。
刹那に繰り出した覇神剣顛極・瞬魔光塵咲に、成神に隠した『とっておき』の覇雷轟封を纏って生まれし八度の連刃が炸裂し、リュカオーンの右前脚と右後ろ脚を一挙に斬りて、龍神楽が手にした魔力伝導率の抑制と成雷に碧千風の刃が齎した痺れが、遂にリュカオーンの動きに『決定的な隙』を産み出した。
「今だ!此処で決める!」
「「「「「「【アトラスバインド】!!!!」」」」」」
用意し続け、此処が勝負所だと使い捨て魔術媒体に封じた拘束魔法が、此のタイミングで一斉に火を吹いた。
飛び立つ三角形の拘束具がバランスを崩し、其の身を起こして立ち上がろうとも全身の魔力の流動を、遠き日の因縁深き歴戦の獅子王が遺した雷に縛られた夜の帝王は、拘束魔法から逃れられず。
「「神腕魔擲!!!」」
「【八岐の大河】ッッッ!」
「晴天流【空】、中天!…………ヒュッオ─────────!」
「「「「「「食らえぇぇええええええええええええええええええええええええええ!!!」」」」」」
神の名を宿した投擲スキル達と、八本の業物達より生まれし色閃に、貫通力の極限に至らんとする赫炎蒼雷を纏った細い息、そして数多に輝く魔力現象による光の数々が。
リュカオーンの視界を多様なる彩りを以て塗り潰した。