VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其の戦いの果て




インパクト・オブ・ザ・ワールド 〜明けぬ黒き夜を越えて〜

結末を言えばリュカオーンの影は倒れた。

 

渾身の攻撃を叩き付けても尚も動かんとしたリュカオーンに、草餅が水晶蠍の矢(クリアス・アーテアリ)を眉間に打ち込んで、マッシブダイナマイトによる打撃スキルのコンビネーションパイルバンカーが決定打となった事により、漸く決着に到れたのである。

 

「夜襲のリュカオーンの影よ。今回は彼女達の手伝いでお前と戦ったが、必ずお前の本体に会いに行く。お前の権能(チカラ)を宿した、神代の大いなる遺産を探し出して共にお前を討ちに行く」

 

消える瞬間までも此方を見続け、夜闇に浮かんだリュカオーンの視線は何処か『愉しげ』に在った。

 

意識を搭載してドローンの様に遠隔操作で操っている其れを倒した人間(ニンゲン)達を、あの黒狼は何を思っているのかを何れ知りたいと思っていれば、サイガ-100達の前には黄金に輝くシステムウィンドウ…………即ち『夜襲のリュカオーンの影狼討伐報酬画面と、ユニークシナリオEX受注画面』が表示されている。

 

「此れがリュカオーンの………」

「やりましたね団長(リーダー)!此れでやっとこさ、リュカオーンの本体探しに挑めますよ」

「クターニッドにジークヴルム、んでリュカオーンか………ユニークモンスターとは縁無いもんと思っちょったのに、何時の間にか三体と関わってもうたわ」

「楽しみだわぁ〜」

 

クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)の頃より『打倒リュカオーン』を目標に掲げ、前提となる影狼討伐を漸く果たした事で、初期からサイガ-100に付いてきた者や彼女に惹かれてクランに入った者が、やんややんやと歓喜している。

 

果たすまでに掛かった時間からして、彼女が乱数の女神に何れだけ嫌われてたのかや、リベリオス一派が黒狼内で如何に足を引っ張ったか伺うに容易く。協力依頼を無事完遂したので、持ち得る武器達をインベントリアに収納し、貸していた傑剣との憧焉終刃(エスカ=ヴァラッハ)を回収しようとしていれば、本人が現物を持って近付いて来た。

 

「改めて礼を、ペッパー君。君の御陰で私達黒剣(シュバルツシルト)は、漸く本懐を遂げる事が出来た」

「どういたしまして。あくまで俺とペンシルゴンはサポートに回っただけですから」

 

くるりと持ち手を差し出し、傑剣との憧焉終刃を受け取ってインベントリアに収納すれば、恋人の関係なので当たり前と言えば当たり前なのだが、ペッパーの隣に当たり前の如くペンシルゴンが立って、サイガ-100に問い掛けた。

 

「で?此の後どーするの、100(モモ)ちゃん?」

「本名で呼ぶな、全く………。まぁ今回の討伐戦で、かなりの出費をしたからな。魔術媒体やポーション類を集めて準備を整え、新大陸の獣人族(ビーストマン)達が住んでいる里に向かうよ」

 

ペンシルゴンとサイガ-100が会話し、サイガ-100も当たり前の様にペッパーの隣に立った中、当の本人は脳内で巨人族の大使館で無双の双剣(モラ・ベガルタ)のディルナディアが見せた『ヴァイスアッシュの描いた世界地図』と、其の中に在った『リュカオーンに関わる神代の大いなる遺産の位置の情報』が、記憶の本棚より浮かぶ。

 

ペッパーの右手に今も尚刻まれるリュカオーンの愛呪(あいじゅ)は、夜襲のリュカオーンの本体をリュカオーンのパワードスーツを用いて打倒して、初めて解く事が可能になるのだが、呪いというのは往々にして『より深い呪いに変わる可能性』が張り付く代物。

 

シャンフロのユニークシナリオEX含め、プレイヤーのロールプレイの善し悪しや是非に、リュカオーンの討伐時の貢献度合い、リュカオーンの分け身のノワに対する自身の親愛や信頼の高さによっては、愛呪が良い方向にも悪い方向にも傾くのは有り得なくも無い。

 

(一先ずサイガ-100との約束は果たした………此処からまたアスカロンの強化を継続しつつ、並行して新旧二つの大陸の始源存在を捜索して可能ならノーコンクリアを──────)

 

其の時だった。

 

カラーン………!カラーン………!

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

ペッパー達が立つ無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)の上空に、突如現れた黄金の鐘楼が荘厳なる鐘の音を世界へ高らかに響かせる。

 

「アレは………」

「ゲーム内アナウンスだね」

「…………物凄く嫌な予感がする」

 

其れはシャングリラ・フロンティアというゲームに関わる全ての者達にとって、運営からの大事な通達として響く『ゲームアナウンス』であると同時に、其れが鳴る時は必ず『ある出来事』が起きる事に他ならない。

 

『シャングリラ・フロンティアをプレイされている全てのプレイヤーの皆様に御知らせ致します。現時刻を持ちまして、ユニークモンスター………『冥響(めいきょう)のオルケストラ』の撃破を確認しました』

 

「冥響のオルケストラ!?」

「嘘でしょ!?」

「リュカオーンじゃなかった………いや其れでもユニークモンスター!?」

 

一先ずリュカオーンが討伐された訳では無かったので安心はしたが、完全に安心し切った訳では無く………ユニークモンスター・冥響のオルケストラが倒されたという報せは、リュカオーンの影を倒して歓喜に沸いていた黒剣の面々を揺さぶるに、充分な破壊力を秘めている。

 

そして映え有るユニークモンスターの討伐プレイヤーとして世界に名を刻んだ者は、ペッパー自身も『最近知り合った』プレイヤーだった。

 

『討伐者プレイヤー名は『ミレィ』一名です。更にユニークモンスターの討伐に伴い………ワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】が進行しました』

 

「えっ、一人!?」

「ユニークモンスター単騎討伐!?」

「マジか………」

「ミレィ、ミレィ………あ、確かライブラリの検証班メンバー!」

 

ペッパーがつい最近倒した(むさぼ)大赤依(だいせきい)、其の時の討伐プレイヤーの中に居た彼女がオルケストラを倒した。

 

おそらくだが彼女は、オルケストラの第一から第四楽章(ボスラッシュ)で出される題材の変化か、或いは開拓者としての自身の質を上げる為に恐竜キメラと戦い、其の過程ドラクルス・ディノコアトル"三面六臂(アスラフィーム)"と接敵から、貪る大赤依と鉢合わせたという流れだろう。

 

(おー、凄いな………)

 

他面々が慌ただしくなる中で、数ヶ月前にオルケストラの情報をライブラリに齎した男は、攻略を先んじられた事による悔しさよりも先に、攻略おめでとうという感情からなる言葉が心に浮かんだのである。

 

「ねぇねぇ、あーくんや。随分と落ち着いた様子だけど、オルケストラ先んじられた悔しくは無いのかね?」

「まぁ、ほんのちょっぴりって所かな。多分だけど『オルケストラってプレイヤー毎に攻略するまで再戦可能』な、深淵のクターニッドさんみたいなタイプだと思うんだよね」

「相変わらず君は、まるで私達が全部知っている事を前提に話をしているな…………」

「シャンフロじゃ何時もの事なんだよねぇ………。まぁ其れは其れとして、さっき言ってたオルケストラの性質について私達と『オハナシ』しましょうか〜?」

「寝たいんでログアウト良いですか?」

「さってやってパッて終わるだけだから安心して良いよ」

「絶対数分で済ます気無いよね???」

「……………ソンナコトナイヨ?」

「諸ダウトですね、うん。まぁ良いけど」

 

尚、黒剣とペンシルゴンのオハナシは一時間続き、序でに二人からは耳元で『君はスポーツの日は休みらしいから、私達とデートしましょ?』と言われた事で、ペッパーは修羅場になりそうだと己自身の身を案じたのだった………。

 

 






世界に奔った激震




※以下、サイガ-100がペッパーの隣に立った時の黒剣面々の反応集

草餅(つまり『そういう事』か………)
ムラクモ(つまり『そういう関係』っちゅうこっちゃな………)
ブライト&アレフト((つまり『そういう事』なのかなぁ………))
マッシブダイナマイト(あらあら、まぁまぁ………うふふふ)
他メンバー達(((((『そういう事』かぁ…………)))))








愛呪で察知したリュカオーンの本体『お?戦争するか?彼はワタシのモノなんだが?ん??』



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