VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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世界が動いた其の先で




インパクト・オブ・ザ・ワールド 〜蛇の乙女と付き添う者〜

ユニークモンスター・冥響(めいきょう)のオルケストラ攻略を告げる、黄金の鐘楼が鳴り響いて世界に偉業を報せたと同じ頃。

 

()()()()()()…………」

 

新大陸のおよそ五分の一を占めるペンヘドラント大樹海地帯の某所かつ、近くにはボンゴロッソ熱帯浜と呼ばれる海岸にパイオニアンバナナというエリクサー能力を宿したバナナが生え、其のバナナを糧にして生きているロアミング・コング達が生息し。

 

そして樹海各所に点在している大樹の根元に在る隙間の穴から進入可能な、平均でバスケットコートサイズの地下空間の中でも、更に拡張して体育館サイズとした中にて『其の者』は気配を感じていた。

 

()()()、どうなされました?」

「私と異なる()()()()が、ざわツいてる」

「なんと………!」

 

襤褸(ボロ)のシャツとズボンを着た其の男『シユー』は、身体を巻き丸めて収まった五台連結した電車と同じサイズの双つの頭を持った大蛇で、其の者によって『アンフィ』と名を与えられ、玉座の如く形を整えたアンフィに座っている者…………『四十二番目のゴルドゥニーネ』からそう言われ、目を丸くする。

 

無尽のゴルドゥニーネは複数()存在していると、五指に入る程のネームバリューを持つ『ペッパー・天津気(アマツキ)』によってシャンフロの情報網に投下されたのだが、ロアミング・コングの生活圏(テリトリー)共同生活(サバイバル)をしていたシユーは、其処にやって来た(お嬢)眷属(アンフィ)に立ち塞がり、紆余曲折を経て『主人と下僕の関係』に収まった。

 

そして同時に彼はお嬢との関係構築の中で、ペッパー・サンラク・ペンシルゴン以外では僅かしか受注出来ていない、ユニークシナリオEX【果て亡き我が闘争】の受注に漕ぎ着けた勇者(プレイヤー)でも在り………今の今迄に進展が無かったゴルドゥニーネのシナリオが動き出さんとしていた事を、此の瞬間に知ったのだ。

 

「此処最近になって動物狂い(SF-ZOO)が近くに拠点を作り出したし、お嬢様………と言うよりはアンフィ様に群がり兼ねない。お嬢様、我々は拠点を変えるべ………「落ち着ケ」おぶふ!?」

 

バジィン!と振るわれた茨を思わせる紫色の鞭が、どうするべきかと考えているシユーの尻を引っ叩き、痛みに悶える下僕を眷属(アンフィ)と共に見下ろながら、(お嬢)は言う。

 

「他のワタシがワタシ以外と潰シ合ってくれるなら、其れは其れデ結構ダけれど………迂闊ナ行動を取ッて『始まりの八』と鉢合わせ、ナんてのは御免被ルわ」

「御褒美、ありがとう………御座いますッッッッ!」

「─────────どうシてこうなったノかしらネぇ」

 

鞭に引っ叩かれてダメージエフェクトを零れさせながら、パイオニアンバナナを食して喜悦なる表情を向ける下僕(シユー)を見て、お嬢は溜息混じりの呆れ顔を向けて。

 

「ごぬふ!?ありがたき、ありがたき表情ッッッッ…………!」

「…………ハぁ」

 

一体どう解釈したら満ち足りた(そんな)顔が出来るのか、お嬢から見ても益々『気持ち悪くなっていく』シユーに、アンフィもまた『物凄く退いた表情』を浮かべたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ『イスナちゃん』、さっきの話ホントなの〜?」

「ホントよ。他のヤツラもザワついてる、そう遠くナイ内に『大きなタタカイ』が起きる」

 

所変わって大樹海地帯の別の場所、二人の女達が樹海の巨樹の根に出来た隙間から行ける地下空間で、冥響のオルケストラの討伐アナウンスを聞き終えて。

 

そして女………嘗てはPKクランとして存在して悪名を知ら占め、最終的に廃人狩りの手によって滅びた阿修羅会に在籍し、其の第五位に居た『ヒイラギ』は旧大陸と新大陸とを繋ぐ船に潜んで密航から、樹海地帯で隠れ潜んで我欲の儘に『自分が(たの)しく(ラク)するPK』という、他者から見れば『吐き気を催す邪悪の権化』と言えるプレイをし。

 

そんな折、ヒイラギは無尽のゴルドゥニーネと………十九番目のゴルドゥニーネである彼女と出会って、彼女と彼女の眷属であるキングコブラ級の蛇『シウコ』を扱い、狙撃手に近しい戦い方から『芋砂(イスナ)』という名前を与え、ヒイラギは『とある事情』から彼女と共に逃避行を続けている。

 

「いやぁ〜其の時が来たら楽しみだなって、ね。ゴルドゥニーネの本体と他のゴルドゥニーネ達の暴れに紛れて、落とし物を掻っ攫いたいと言うか〜、ね?」

「……………………………」

 

ヒイラギというプレイヤーは元来の性格が『コレ』なのだ。

 

自分に対する大抵の理不尽は『泣き落としすれば何とかなる』と信じ、此の世に産まれ落ちて十数年という時間の中で培われた『真理』であり、彼女という人間の人生哲学は一般的な理性や価値観を持った人間には『到底理解し難き物』に等しい。

 

然して芋砂にとっては『自分以上に目立つ奴』であるならば、己の安全を『確実に勝ち取る事』が出来るのならば、人間として腐りに腐りきったクズだろうが、百千万の人を殺した殺人鬼だろうが手を組む事を厭わないのが芋砂というゴルドゥニーネの生き方。

 

其れ故に何時瓦解してもおかしくない両者の繋がりは、今現在も続けられている。

 

「楽しみだね、イスナちゃん。ゴルドゥニーネの本体は『ジークヴルムと同じレイド疑惑が有る』から、色んな人が参加して大混戦になりそうだよね、ね?」

「アンた…………其処に『ペッパー』が居て、鉢合わせしたらドーするツモり?」

「あー!あー!聞こえなーい、聞こえなーい!あんなヤツが居たら、私の計画が『絶対に失敗する』から聞こえなーい!?」

 

嘗て旧大陸で暗殺を仕掛けて失敗という苦汁を舐めさせられた上、最近シャンフロのスキルに『空間の立体透視化を可能にする視界系スキル』が発覚し、今迄の様にスキルやアクセサリーを用いての初撃限定パーフェクトステルスアタックが看破される可能性が常に貼り付き。

 

よりにもよって『此の世界で金銀財宝を一番抱えている可能性が有るプレイヤー』で有りながら、其の実『自分のビルドに天敵レベルで相性最悪な相手が立体化透視技能(其れと同じ物)を習得している』という、プレイヤーキルの難易度が高過ぎる領域まで昇り詰めて居るのも、ヒイラギからすれば『極めてタチが悪い相手』なのだ。

 

(気二はナる………。何やらリチギで約束は違えナイやら、どうニモ『胡散臭サ』は有るガ………)

 

尤もヒイラギは知らないが、彼女から話を聞いたイスナは『コイツの強力な光に隠れて外敵を排除すれば、自分は安全に生きられるのでは?』と画策している事を知らない………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして此方もまた、新大陸の樹海地帯某所。

 

他の者は知らない所謂『秘密の隠れ家』というべき場所で、前線拠点とティアプレーテンを繋ぐ石畳の舗装道路に近しい位置………其処には筋肉モリモリスキンヘッドでコワモテ顔の二メートルに迫らんばかりの大男『王我星(オーガスタ)』と、百十七番目のゴルドゥニーネである『ニーネ』が人知れず身を潜める場所でも在った。

 

「えっ其れホント!?マジなの!?」

「ホントだしマジよ………。というか何時二無く声がデカいわよアンタ!始まりの八に此方が気付カレたら、ヤバいじゃないノよー!」

 

大男から飛び出したのは『小学女子』に相当する元気と溌剌さを帯びた、未だ子供で大人になるにはまだまだ時間が必要な、そんな年相応の声で興奮気味な様子でニーネに言えば、彼女からは不安が滲んだ反論を返された。

 

オルケストラの攻略を報せるアナウンスが流れ終わり、取り敢えず時間も時間なのでログアウトしようかなと思った矢先、パーティーを組んでユニークシナリオEX【果て亡き我が闘争】を受注した王我星は、『もしや自分達と同じニーネちゃん以外のゴルドゥニーネと契約したプレイヤー達が、今回の察知によって集まる可能性が有るのでは!?』なる、淡く有りながらも強い期待を抱いている。

 

何より前線拠点内にはニーネ曰く『始まりの八』………即ち原初の蛇より分かれて今でも存在(生存)している『一桁個体』が居り、厳重警戒をし続けて入る事を踏まえても此れは、自分達が前線拠点に入る為の『大義名分』となるやも知れないと。

 

「ねぇねぇ、ニーネちゃん!もしペッパーさんやサンラクさんに会ったらサイン貰えるかな!?ニーネちゃんと一緒にスクショ撮って貰えたりする!?」

「いヤ、其処で始まりの八とブツかったらドウするの!?会話出来たとして襲イ掛からナイ保証無いジャない!!」

 

ギャイギャイワイワイ騒ぎつつも、何れは前線拠点に入らなければならないのだと、一人と一匹は理解している。

 

が、理解出来ていても直ぐに行動出来ないのが、人間という生き物の本質の一つであり、王我星とニーネが動くのはもう少し後の話…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────嗚呼、感じル。感じるワ………。何処かで()()()達が集まっていル………、本当に、本当二『最悪ノ感覚』が満ちている………」

 

 

此処は新大陸最西端、或いは『コラデルソル巨界道』と呼ばれ、此の大陸に生息する生物達は『西に行けば行く程に巨大で巨体になる』という特色から、世界最大規模の生態系が広がる場所として亜人種達には知られている。

 

巨大(おおい)なる獣達が静かに、だが苛烈なる力を秘めて息衝く此の地には、数多の巨獣が束になろうとも勝てない、相対すれば己の死か運命の気紛れによって見逃されるかの二択以外に無い、恐れ慄く『最果ての悪夢』と呼ばれる存在が根城とする場所でも在るのだから。

 

「不愉快、不愉快、不愉快ばかり………。目を閉じてモ、目を開いてモ………嗚呼、ワタシは何時マデ不愉快の中に居レば良いノかしら?」

 

憂いを帯び、溜息を付いた少女………荒振る蛇神とも、七つの最強種・無尽のゴルドゥニーネと呼ばれる彼女が、己が子と呼ぶ龍蛇(ナーガ)の一柱『グラトイスト』に腰掛けている。

 

彼女の視線の先には、グラトイストを始めとしてヴォレノース・サウベルシア・ウェスナトスの四匹に蹂躙され、見るも無惨な死体に変えられた超巨大な牛型のモンスターであり………地に伏した死体を四匹の龍蛇達は食い尽くし、血肉に角や骨の一欠片さえも遺さず、余す事も無く全てを無に還す。

 

人知れず龍蛇達は、無尽のゴルドゥニーネは力を蓄える。其れは時が近付いている事を知っているからであり、其の時が来た時に蓄え備えてきた力の全てを賭してでも、己にとって『絶対に殺さねばならない存在(モノ)』が居るのだから。

 

「ワタシの可愛い子供達、もっともっと力を付けてネ。………戦いの時は近イ、何もかもをぐちゃぐちゃにして、殺してしまいましょウ?」

 

其の赤い蛇目に浮かぶ感情は燃え尽きた炎とも、溶けない氷とも、或いは吹き続ける風の様でも有り………然して遙かな過去に定められた意志は、幾千の日と月が巡り巡ろうとも決して風化する事は無く、そして今も尚も昏く強く輝いている─────────。

 

 

 

 






蛇達よ、備えたれや




※ウィンプ side


「なんか、ものすごい『おかん』をかんじる………」
「ウィンプたん、取り敢えず服が出来たので着ていただきたく………」
「ヒェッ」
「ウィンプたんをビビらせた!万死に値するぞ貴様ァ!!」
「サバさんがキレたぁ!?!」
「ぎゃああああああ!?!」
「…………にんげんこわい」

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