VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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新たな乱入者来る




三身は沼越え、阿修羅は憚り、そして火力と防御は揃い踏む(其の四)

「うわぁ……」

 

己が所属する阿修羅会の下っ派(メンバー)達の前に、サンラクが要請した救難信号によって、サイガ-0降臨の瞬間を目撃したペンシルゴンは、廃人狩りとして上位プレイヤーを狙える歓喜と、アレを相手する三流共への憐れみの感情が入り雑じった、変な声を出した。

 

最大火力と最大防御、シャンフロ最強の剣と最強の盾が今此の場に揃い、おまけと言っては悪いが、SF-Zooの園長たるAnimaliaも居るので、混乱に乗じて上手い事全員キル出来ないかと、ジョゼットの打ち合いをしつつ悪巧みをしている。

 

「流石の阿修羅会と廃人狩りと言えども、最大火力のサイガ-0が相手では、有象無象のPKer達も太刀打ち出来まい。大人しく引き下がるなら、此の場は見逃してやるが………どうする?」

 

サイガ-0が動き出し、阿修羅会のメンバーが嵐に吹っ飛ばされる木っ端の如く、次々と漆黒の大剣を前にして仏陀切られて、ポリゴンを爆散させていく。

 

そんな彼等彼女等の姿を見ながら、ペンシルゴンはジョゼットに向けて、こう言った。

 

「そうだねぇ……最大火力の方に行っても良いんだけど、私的にはアイツ等に『このまま全滅して貰った方が』、色々と都合が良いんだよねぇ?」

「何……?」

 

自分のクランメンバーが吹き飛ばされる様を尻目にしながら、黒く悪辣な笑みを崩さない廃人狩りの姿に、ジョゼットの警戒心は更に深まった。

 

「其れに私は阿修羅会のメンバーを、正門にしか置いてない訳じゃ無いんだ。さて、そろそろ………お、噂をすれば」

「うおおお!最大火力をキルして、キルスコア上位入りだぜぇ!」

「俺が次のランキング1位になるんだァッ!」

 

サードレマの正門からぞろぞろと、およそ20~30は居るだろうプレイヤー達が、我先にとサイガ-0目掛けて押し寄せてくる。おそらく街中で、万が一の場合を想定し待機させていたのだろう。

 

そして全員が一人として例外無く、赤黒い髑髏マークをプレイヤーネームに抱える、阿修羅会のメンバー達だ。

 

「援軍か…!」

「ふふっ…流石の最大防御と最大火力でも、大人数相手はキツい所が有るんじゃないかな?」

 

ジョゼットは此方で足止めし、絶対的な強さがあるサイガ-0は数でゴリ押し…とは行かなくても、十数人をぶつけている間に他の連中でペッパー達を襲えば良い。

 

(まぁ………サイガ-0を数で足止めしたとしても、『あの三人』は連れてきた連中達じゃ、ハッキリ言って仕留めるのは『無理』だね)

 

ありとあらゆるクソで、クソなクソゲーをクリアしてきたクソゲーマー・サンラク。自他共に認める日本最強のプロゲーマー・オイカッツォ。そしてオイカッツォを相手にレトロゲーム限定だが、勝率五割以上を譲らない最強のレトロゲーマー・ペッパー。

 

特にペッパーに関しては、彼とのレベリングの中でライブスタイド・デストロブスターを共に狩った事で、ペンシルゴンはよく理解出来た。生物を構成している身体構造への理解力の高さに、戦いの中で起きるであろう些細で僅かな可能性さえも、己の思考の範疇に置く読みの深さ。

 

アレは戦う相手を理解すればする程、エネミーの攻撃モーションを学べば学ぶ程、味方に成れば頼もしく、敵に回した場合の厄介さが、驚異的な勢いでハネ上がっていく。おまけに勘が鋭いせいか、初見殺しにも引っ掛かり難いという、カッツォの発言も在って驚かされた。

 

 

 

「プロミネンス」

 

 

 

が、そんな最中にペンシルゴンが見たのは、阿修羅会の増援達が何者かが放った豪炎の魔法により、纏めて薙ぎ払われながら、爆発で大きく吹き飛ばされていく姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁにこれぇ…」

「うわぁお…すげぇ……」

「こ れ は ひ ど い」

「ぴぃあふぁ…」

「まさに、一騎当千…なのさ」

 

救難信号で救援に駆け付けたサイガ-0が、阿修羅会を相手に漆黒の大剣を振り回し、物を謂わさず駆逐していく無双ゲームも真っ青な虐殺劇に、ペッパー・サンラク・オイカッツォ・エムル、そして旅人のマントに隠れているアイトゥイルは、各々の言葉を溢す。

 

(陽務君が助けを求めてくれたんだ…!私は最大火力としてピンチを救い、サードレマへの道を切り開いてみせるッ!!)

 

想い人が救難信号を出した時、サイガ-0は一体何事かと思った。数多のゲームをクリアしてきた彼が、打破出来ないピンチに陥ったのかと。そして要請に応じて推参してみれば、目の前に居たのは悪名高きPKクランの阿修羅会の軍勢達。

 

自身の姉(サイガ-100)が『見つけ次第一撃で確殺しろ』と言ったアーサー・ペンシルゴンも居たのだが、彼女はどういう訳だか聖盾輝士団の団長で、自分の大技を防いだ最大防御(ジョゼット)と戦闘していた。

 

(此れを期として、陽務君と……!現実でも……御近付きに………!)

 

力が漲り、心は滾る。サイガ-0を支える、純白のユニーク装備・双貌(そうぼう)(よろい)、共にある漆黒の刃・神魔の大剣(アンチノミー)

 

黒の一閃が走る度に、此方へ押し寄せてくる阿修羅会のプレイヤー達を薙ぎ払い、PKer達は度重なるアップデートによって、所持する武器や防具を全て其の場にドロップする。

 

(此のまま彼が見ている状態で、襲い掛かる阿修羅会を壊滅させられれば、きっと………!)

 

そんなサイガ-0の願いに応えるかのように、阿修羅会のPKerの増援が突撃してきて。神魔の大剣を構え直し、其の軍勢に向き合った其の時だった。

 

 

 

 

「プロミネンス」

 

 

 

 

突如吹き荒れる爆炎の砲撃によって、阿修羅会のPKer達の増援が弾け飛んだ。サイガ-0は余波たる熱波を耐えたが、ペッパー達は爆風によって転ばされる。次から次へとやって来る、未曾有のハプニングの連続にペッパーは頭を抱えながらも、先程の攻撃を行った存在を黙視する。

 

炎が踊る中を歩く様にして、彼女は其所に居た。黒のドレスと胸に白いナプキンを着け、所謂『ゴスロリ』と呼ばれる姿。紅蓮に燃える朱い外側と青紫色の内側の、腰までウェーブ掛かった髪を揺らし、陽の光でキラリと光る蒼眼は『サンラク』を見つめていた。

 

「━━━━━━━逢いたかった」

「ッッッッッッ!?!」

 

サンラクが彼女の台詞で震え上がって立ち上がり、オイカッツォは続く形で立つや新しい乱入者かと警戒、ペッパーは周りを警戒しつつも、アイテムインベントリからマナポーションを取り出し、エムルに手渡ししながら彼女を庇うように立ち回る。

 

「……………逢いたかった。ずぅっっっっと、ずぅっっっっと………君の事を探してたんだよぉ?」

 

嘗めかしい声を放ちながら、一歩一歩サンラクに歩み寄る女性プレイヤー。サイガ-0が其の女性プレイヤーを見る中、サンラクは一人、苦虫を噛み潰した様な嫌な事を思い出したかのような表情と共に、彼女に向けて言葉を言い放つ。

 

「お前とはもう二度と、今世で逢いたくなかったよ『ナッツクラッカー(・・・・・・・・)』………!」

「んふふふ……此処では『ディープスローター(・・・・・・・・・)』なのだよ、サ・ン・ラ・ク・く・ん?喩え今世紀で巡り逢えなくても、来世でまた私達は運命の様に出逢うのぜよ?」

 

語尾や口調が全く安定しない、ディープスローターなるプレイヤー。サンラクが露骨なまでに嫌そうな顔をしているのを見たオイカッツォは、自分の知らないクソゲーフレンズかと目を光らせ。

 

「━━━━━━━━━━━━━━━━━━━」

「「「!!!!!」」」

 

そして、サンラクとディープスローターの会話の中、其れを見ていたサイガ-0が、一際巨大な殺気を纏ってディープスローターを無言で見つめ。ペッパーとオイカッツォ、エムルがビビり散らかす中で、サンラクに詰め寄るように質問したのだ。

 

「サンラクサン………そちらの、ディープスローターさん、とは…………『如何なる関係』、デスカ?」

 

ゴゴゴゴゴゴ……と背後で、SEが鳴り響いているかのように、サンラクに迫るサイガ-0。純白の鎧と漆黒の大剣が白装束の死神の様で、直後にサンラクはディープスローターとの関係をこう述べた。

 

「あ~……サイガ-0さん。此処に居るナッツクラッカー……今はディプスロだけど、前にプレイしてたゲームを『閉鎖に追いやった張本人』で、サ終直前でコイツの最終決戦の御誘いに乗って、激闘の果てにブチ倒したんだよ。俺自身も結構好きなゲームだったんだが、其れを終わらせやがったコイツを、最後の最後まで勝ち逃げさせたくなかった訳さ。二度と顔を見たくなかったし、二度と逢いたくなかった奴だ。其れだけの関係」

 

ゲームには始まりも在れば、必ず終わりも在る。サービス終了の理由は様々だ。課金しなくては人権すら与えられない。運営会社が潰れた。バグだらけでチュートリアルから先に一切話が進まない等々……。

 

そんなゲームの中でも、一部の者にとって思い出深かったり、青春の全てを捧げたり、かけがえのない仲間と出会えたといった理由で、終わった事を嘆く者も居る。

 

つまりサンラクにとっての『其のゲーム』は、色褪せる事の無い思い出で。其れを終わらせたディープスローターを打ち倒す事で、サンラクの復讐は果たされた訳だが、彼女は其の時の事を覚えていて、リベンジするためにシャンフロで待っていたのだろうか?

 

「そ、ソウナン…ですか……!因縁……ラスボス……ほっ………」

「うふふふふふふふ………サンラク君とまた出逢えたのは、ある意味『胡椒争奪戦争』のスレのお陰だしゥィ~?其れを踏まえるなら、俺ぁペッパー殿にも感謝してるんだぜぃ?」

 

サンラクから聞けた答えに、安心してぽわぽわした雰囲気になるサイガ-0を横目に、今すっごい重要なワードを出したか!?とペッパーは目を見開いて、変幻自在のボイスを口喋るディープスローターを見る。

 

此の時の彼女の台詞によってペッパーは後日、己の捜索スレが掲示板に建っている事に気付くのであった……。

 

 

 

 

 






混沌は混沌を呼び起こし、怒濤の如く侵食する


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