VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サードレマ正門前での混沌の一戦、閉幕す




三身は沼越え、阿修羅は憚り、そして火力と防御は揃い踏む(其の五)

胡椒争奪戦争とは何ぞ?

 

ディープスローターことディプスロ(サンラク命名)が口走った事で初めて知った単語に、ペッパーは口元を押さえつつも、周りを見ながら己の思考を張り巡らせる。

 

彼女の言葉を信じるなら、オンラインゲームの掲示板でよく見る『捜索スレ』だとして、一個人を対象としたスレが建つのは非常に珍しい。ある意味で珍事であり、そして稀有な事柄だ。

 

ならば何時(・・)、其のスレが建った?ジークヴルムの手に乗って、空へと飛んだあの日か?可能性としては非常に高い。此の一件が済んだなら、其のスレを調べに行こうとペッパーは決意する。

 

実際はセカンディルのレクスとの会話から、全てが始まって居たのだが、其れを今の彼が知る由もない。

 

「で、ディプスロ。お前何が目的だ?『スペクリ』の時の復讐でもしようってか?」

「げぇ……コイツ『スペクリ事件』関係者なのサンラク?」

「いやコイツ事件の『首謀者』。其の時はナッツクラッカーってプレイヤーネーム」

「特大レベルの厄ネタじゃねーか!?」

「エヘヘ…そうでもないのだ」

「「褒めてねーよ!?!」」

 

サンラクが放ったスペクリなるワードで、カッツォが反応して、明かされた事実に彼等のツッコミが入る。どうやら其のスペクリ事件でゲームがサービス終了となり、サンラクは犯人たるディプスロを討伐して、其の後にディプスロはサンラクを探すべくシャンフロをやっていた……。

 

というのが今回、此の一連の流れであると、ペッパーは頭の中で情報を整理する。

 

「ぐっ…まだ、だ!」

「俺は終わってねぇぞ…!」

「ぜってぇキルしてやる…!」

 

が、今は戦いが続いている。ディプスロのプロミネンスで吹っ飛ばされていた、阿修羅会のメンバーが復帰して、ぞろぞろと此方を包囲してきた。

 

「まだ戦うか…阿修羅会……」

「執念深いってか、ゾンビだわな」

「ぴゃああ……」

「どーすんのコレ?PKerキルしてPKの仲間入りなんて、真っ平ゴメンだよ俺?」

「寧ろ我はサンラクくぅんにキルされ…いゃ待って待って!?冗談だから!?」

「ディプスロ。次変な事言ったら、首骨減し折るから覚悟しとけ」

 

三者三様十人十色の反応を示す開拓者達。此の状況で自分はどうするべきか………そう思い始めて。

 

 

 

「【従剣劇(ソーヴァント)独奏(ソロ)」・ 至高の一閃(プライマルスラッシュ)】!」

 

 

 

 

取り囲む阿修羅会のメンバーの一角に、刺突の一閃と暴風が風穴を穿つ。またしても乱入者かと、彼等彼女等が見た其の先に其の人は居た。

 

サイガ-0にとっては、何時も隣や背中を見て。トップクランを率いし、今尚衰える事無く煌々と燃え上がる、打倒リュカオーンを掲げる者。

 

ペッパーにとっては、およそ数週間振りとも言える再会。揺れる赤髪と鋭利な視線、纏う鎧と其の手に握られし聖剣を振るう者。

 

「ふぅ…どうやら間に合ったみたいだね」

「姉さ…ゴホン、クランリーダー…!」

「サイガ-100さん!どうして此処に!?」

 

サードレマ正門前で出逢い、リュカオーンの呪いの解呪に関する情報と、クランへのスカウトをしてきた人物。

 

混沌を催す戦場に、修正前剣聖勇者(・・・・・・・)が━━━━━クラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)の団長たるサイガ-100がペッパー達を探しに来て、現在進行形で阿修羅会に襲われているのを発見し、情報を持つ彼等を守るべく援軍として、サードレマ正門前に到着した。

 

混乱混沌必至の戦いは、此処に総滅戦という名前を以て、佳境へと突き進んでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(うん……アイツ等も此処までかな)

 

誰の目にも理解(わか)る、戦況は既に決したと。魔法系最上位職にして、現状数の少ない『賢者職』まで登り詰めたディープスローターと、対人戦によって現在の『剣聖職』まで到って見せたサイガ-100の乱入で、阿修羅会のメンバーの闘志が、粉微塵に砕かれていく様を、ペンシルゴンは見た。

 

(仕込みは今回の一件で充分。京極ちゃんには既に連絡済み……よし、やるとしようか)

 

自分の役割は二つある。一つは阿修羅会のクランリーダー・オルスロットを焚き付けて、ペッパー達を襲撃させて、少しでも戦力を削ぎ落とす事。胡椒争奪戦争での出来事がオルスロットの耳に入ったのは僥倖で、愚弟は大局感が欠如しているが故に簡単に嵌まった訳だが。

 

問題は二つ目。程好く戦いながら、ペッパー達を此の場から逃がす事だったのだが、残念ながらペッパー達が救難信号を使って召喚したのが、サイガ-0とジョゼットというシャンフロ最強クラスのプレイヤー。今後のウェザエモン攻略に向けた話し合いを、彼等を含む五人でする以上は、此処で足止めを食らう訳にはいかない。

 

(あーもう、本当に………。あーくんは私の予想を、軽々と越えるなぁ……)

 

ジョゼットと剣劇を重ねながらも、ペンシルゴンはペッパーを見る。ジョゼットを盟友救助で召喚出来たという事は、此の時点で彼はシャンフロのアイドル『慈愛の聖女イリステラ』に会っており、少なくとも現時点で到達出来る最後の街で、彼女が拠点としている『フィフティシア』まで到達している可能性が在る。実際はペッパーがイリステラに逢ったのは『王都ニーネスヒル』なのだが、彼女は其れを知らない。

 

(さぁて、お姉さんもいっちょ頑張りましょうか!)

 

ペンシルゴンがアイテムインベントリから取り出すは、ペッパーが特殊クエストクリアにより解放した投擲玉。名前を炸光と炸煙と炸音……別のゲームで閃光玉と煙玉に音爆弾たる其れを用いて握り潰し、ジョゼット及びサイガ-100が居る方向へ投げた。

 

炸裂した音が鳴り響き、煙と閃光が放出しながら、サードレマ正門前一帯を包み込む。

 

「ッ…!廃人狩り!」

「じゃあね、ジョゼットちゃん?また何時か会いましょ」

 

響く音の中で届くかは解らずとも、ペンシルゴンはジョゼットにそう言い、煙に紛れて投擲玉達を阿修羅会の包囲目掛けて投げ込みまくる。

 

「アーサー・ペンシルゴン!」

「コレは…投擲玉!」

「およよ~コレは目眩ましだねぇ…?」

「ほれほれ、阿修羅会の皆ー!キルするなら今だぞー!」

 

煙に音に光。此れだけの要素が有れば、擬似的な『混戦状態』を創り出せる。光と煙による目潰し、音による聴覚の封殺。そして阿修羅会のメンバーの背中を蹴り飛ばし、戦闘を『誘発』させる。

 

そうすれば━━━━━━━━

 

(サンラク、オイカッツォ、エムル!今しかない、俺の後に続いて!行くよ!)

 

ペッパー(あーくん)ならば。此の瞬間を決して逃さずに、脱出するべく行動するだろうと。そしてペンシルゴンの予想通り、彼は三人の手を引き、刃がぶつかり鍔競る音が鳴り合う中、煙と光と音の中を走る。

 

オーバートップビートより進化し、効果時間が180秒から90秒になったものの、敏捷・筋力・スタミナを2倍にし、終了後のデメリットが解消された『アンブレイカブルソウル』。

 

全身の感覚をレベル数に応じ、より鋭利にしていく『ブランシュ・クロッサー』。全力疾走時にスタミナ消費を押さえる『ライオット・スート』を起動し、彼等彼女等の眼となって、混戦へと激変した戦場を脱出する。

 

「くっ…此のッ!」

「クランリーダー…!」

「ちょっと…!しつ、こい…!」

「おいおい、血気盛んなのは良いけどさぁ~?君達粘着し過ぎじゃないかぁ?」

 

作り出した舞台(ステージ)で、シャンフロ廃人達が己のけしかけた阿修羅会のメンバーと戯れる姿を、ペンシルゴンはほくそ笑みながら、サードレマへと悠々とウイニングランをして。

 

此の日サードレマ正門前にて勃発した、阿修羅会による胡椒殺戮作戦は、ジョゼットやサイガ-0の盟友救助での加勢に加え、乱入してきたディープスローターやサイガ-100により、未曾有の被害と共に失敗に終わった。

 

同時にサンラク&オイカッツォは、ペッパーと一緒に行動していた事で、胡椒争奪戦争にて名前が拡がり、此れが先々にて影響を与える事になるのだが、其れはまだ遠い話である……。

 

 

 

 

 






響き渡るは胡椒と鳥頭と追い鰹の名前


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