VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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相手は強い程燃える物




ゲームをやる理由に老若男女は関係無い、其れは人の意志と心意気が途切れなければ潰えぬ物也

王認勇士(キングス·パラディン)のアルブレヒト?」

「アルブレヒト…………あの、アルブレヒトか?」

 

天音 永遠が述べた先王派と新王派による大規模PVPイベント、其の新王派の切札として立ち塞がる可能性が濃厚なシャンフロ最強のNPCの名を言えば、其の名を知る者と知らぬ者で反応が分かれた。

 

「解らない人に簡単に言うと、シャンフロ最強のNPCで見た目はザ・王子様な金髪碧眼の爽やかイケメンで、剣術だけでも滅茶苦茶強いトンデモ騎士。そして『龍宮院(りゅうぐういん) 富嶽(ふがく)さんのモーションが搭載されてる』─────────そう言えば解り易いかな」

「何だと?」

「本当、ですか?」

「は?マジで?」

「えぇ、本当です」

 

補足する様に梓がアルブレヒトの特徴を簡潔に述べれば、龍宮院 富嶽と遠縁に当たる斎賀(さいが) (もも)斎賀(さいが) (れい)の姉妹、そして剣術教室(別ゲー)で写し身を越えた陽務(ひづとめ) 楽郎(らくろう)もまた、当然と言えば当然の如く反応した。

 

三者三様の視線に対し、彼もまた揺らぐ事無く視線を向けた事により、其の言葉が真実だと理解出来て。

 

「というか何で其処のレトロゲーマーさんは、其のシャンフロ最強のNPCの戦闘スタイル知ってるんですかねぇ?」

「まぁ王城に高級海鮮肉を納めて、騎士団の鍛錬見学してたら騎士団員から木剣での組手を申し込まれ、無双してたら最終的にアルブレヒトさんが出向いて来たと言いますか…………」

「サラッと無双したって言ったわ、此の人………」

「うーん、やっぱり普通じゃない………」

「まぁ其のアルブレヒトさんと木剣組手で土ペロしたし、相手には膝を付かせたんだけどね。スキルや魔法の補助無しの純粋な剣術対決で」

「イカれてらぁ………」

「マジかよオマエ………」

 

アルブレヒトが出向いて来る程の強さ、(ペッパー)という人間(プレイヤー)の真髄を知っている者達は納得を、そうでない者達は驚愕をと、解り易く両極に分かれた。

 

「そういう訳で、対アルブレヒトを見据えた手札は有るんだけど………ぶっちゃけ皆の衆は『どっち陣営に付く』?亜人種達を奴隷化する新王派か、亜人種と交流する先王派か………とは言っても、此れは私が無理強いする立場じゃないね」

「まぁ其処は個々人の判断に任せよう。おそらく両陣営ロボットやら銃火器やらも用いた、屋外屋内関係無しの大乱戦になりそうな感じも有るし」

 

何れ運営からも大々的に告知されそうなので、時が来てから考えるとしよう。

 

そんな折、話を聞いて一段落付いたのを見計らったアメリアがポケットからスマフォを取り出し、片方の耳にイヤホンを嵌めて音楽を聴き始めたのを見た梓は、オルケストラの事を楽郎に聞いてみた。

 

「そう言えば楽郎君や。傷心に障る様なら控えるが、オルケストラに関して聞きたい事が有るのだけど…………」

「…………オルケストラ、ねぇ…………」

 

楽郎の周りだけ空気が重くなる、流石に不味かったかと思っていた中で彼が口を開く。

 

「───────いやまぁ、色々見えているんだけど解き明かす鍵が無いってのがな………」

「鍵が無い、と………」

「冥響のオルケストラは音楽プレーヤーってのは解ってるんだ、其処から先が解らねぇ」

 

攻略一番乗りに漕ぎ着けた、考察クラン:ライブラリからシャンフロの伝書鳥(メールバード)を通じて知ったペッパーも、其の観点についての考察文章をシャンフロWikiで目を通していた。

 

サンラクが劇場内(コンサートホール)で見た音楽プレーヤーは、中世時代のオペラ座に似つかわしく無い一昔前の音楽を聴く為の携帯形状(タイプ)かつ、イヤホンを通じて耳で聴く様な(モノ)であったと、ラビッツでの訓練中に聞いている。

 

シャングリラ・フロンティアに置ける七つの最強種(ユニークモンスター)達が関わるユニークシナリオは、共通して『遥か昔に滅びた神代由来の力で現代に問い掛ける存在』であると同時に、『彼等彼女等の背景(バックボーン)出自(ルーツ)を明らかにする事によって』、初めて攻略へと漕ぎ着ける事が出来る様になっていた。

 

墓守のウェザエモンことウェザエモン・天津気(アマツキ)は彼の妻たる天津気(アマツキ) 刹那(セツナ)の残滓である『遠き日のセツナから願いを聞き届け、ウェザエモンを止め(眠らせ)る事』。

 

深淵のクターニッドは嘗て存在した国(ルールイア)の女王が遺した日記を読み、(くるえ)大群青(だいぐんじょう)を封し続けているクターニッドへと、『神代から現在へと紡がれた、新人類の力と研鑽を証明する事』。 

 

天覇のジークヴルムは当事者たる本()の叫びを聞き、守護者にして門番の彼を打倒して『始源存在の脅威を退けられる人の輝きと強さを示す事』であり、自分達は其れを成し遂げて来た事で、シャングリラ・フロンティアというゲームの深みと真実に近付いている。

 

ならば冥響のオルケストラとは、前提として音楽プレーヤーであり、曲を録音・再生する為の物だ。

 

即ち─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「冥響のオルケストラが音楽プレーヤーであり、其の中に曲が在って再生出来るのならば、当然『其の音楽プレーヤーを使っていた者が居る』………違うかい?」

「─────────あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽プレーヤーが何にせよ、物品として存在しているならば『其れを使った者が居た』というのが何よりの証拠だ。

 

朽ち果てていたアラドヴァルやアスカロンを含めた英傑武器(グレイトフル)が、嘗ては別の持ち主の手に在って使われていたのと同じ、遥か昔に存在していた武器や物には元々の担い手や持ち主が居た事。

 

ユニークモンスターの攻略には其の出自を辿り、根底に在る物を知る事こそが攻略に繋がるので有れば、音楽プレイヤー(オルケストラ)の身元………『元々の持ち主を調べ尽くす事』にこそ、冥響のオルケストラの真なる攻略へ繋がるのだと梓は読んだ。

 

そして彼の考察は、楽郎の思考を阻み続けていた開かずの扉を開ける鍵となり、深い曇天の空に強き陽光を射し込ませ、開かれた扉の先に在る答えに到達する為の道を切り拓く。

 

「…………其の様子なら何か掴めた様だね」

「…………あぁ、見えた。漸く先に進む鍵を掴めたぜ」

「御役に立てたなら何よりだ」

 

楽郎の瞳の奥で炎が燃えている。

 

幾度もオルケストラによってボコボコされた挙句、忖度ガードによって阻まれて凹まされ、灰色に(くす)んでいたモチベーションの炎が灰より蘇った不死鳥の如く、再び着火して猛々しく燃え上がったのだと、梓と玲に慧と永遠は確信したのだった。

 

 

 






道は見えた、後は行動有るのみ


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