答えを探す旅は続く
結果から言えば、サンラクのリヴァイアサン内情報精査は『其れなりに成果を得られたが、本命に当たる情報には行き当たる事が出来なかったと言える』物になった。
今回サンラクが検索した三つの情報、一つ目の音楽プレーヤーは
二つ目のヴァイスアッシュから一時的に託された木棺封印大太刀は、既にアンロックされていた大陸滅殺級災害記録と、今回の新規アンロックファイルの中から勇魚が選び見せてくれた事で、詳細を詳しく知る事が出来た。
其の昔………もっと昔の『古代黎明期に旧大陸全土を滅ぼせる程に肥大化した大陸級超規格台風』が存在しており、
嘗て存在し、世界を滅ぼしかけた災害であり、殲嵐の台風が兎の手により獣に貶められ、調伏され。されども刀に宿る霊として
そして三つ目、エリーゼ・ジッタードールの事については思った通りで、勇魚からは『詳しく知りたければベヒーモスに在るアンドリュー・ジッタードールの研究室を当たれ』と言われ、更に『音楽プレーヤーの情報もベヒーモスのデータベースを検索すれば、歴代所持者達も含めて詳しく知る事が出来ます』と回答された。
「まぁリヴァイアサンに寄り道しただけの価値は有ったな………。
来たるオルケストラのリベンジ戦、此の大太刀の封印を解いて晴天流「
第一の街・ファステイア。
銃火器やロボットの解禁によって盛り上がり、一部の有名プレイヤーの悪目立ちによって鳥面やら馬面やらで覆面した半裸プレイヤーに、帽子とコートで王子様系女子なアバターで往来するプレイヤー。
更にはベヒーモスで御目当ての銃火器やロボットを手にした事でウッキウキで森へ向かうプレイヤー等々、無職時代の傭兵だった頃に
「何か俺の名前を捩ったり、ペッパーの名前を捩ったりしてる奴が大量に居る…………」
「サンラクさんは有名人ですわ、そうなれば当然だっておとーちゃんも言ってたですわ」
サンルクやらサリラコ、ヘッターやらヘリターと、ちゃんと見なければプレイヤーを見間違える名前が多々有り、ゲーム内での目立ちっぷりが段々と怖くなってくる今日此の頃。
「よし、やるぞお前等!」
「多くの同志は新大陸に行ったが、俺達は俺達でルティアさん達に会うぞ!」
「お前はスク水か………良い趣味してるぜ」
「そう言う主は縦セタではないか、
そんな折、ファステイアの一角でワイワイガヤガヤと人集り。聞き覚えが有るNPCの名前と貧相な装備や武器ながら、其の出で立ちは両者共に歴戦の戦人に等しく。
片や戦爪と思わしき手甲の、片や刃の役割を搭載した鉄扇という、何方も超至近距離下での戦闘を十八番としている武器達を手に、両雄………『ティーアスちゃんを着せ替え隊』やサバイバアルの情報で最近部門分けされたという『ルティアさんをどうにかして脱がし隊』のメンバーが相対する。
「さぁ張った張った!」
「どっちに賭けますー?」
「鉄扇に二百!」
「手甲に五百で!」
「相打ちに千!」
そして此のやり取りが開拓者の間では『何時もの事』と認知されてるのか、はたまた賭け事として成立するまで有名になったのかは知らずとも、プレイヤー主催の対人戦イベントとして認知されている様だ。
『いざ、尋常に………勝負っ!』
戦闘開幕の合図と共に推しに遇う為ならば
「………………」
以前ベヒーモスにてペッパーがインベントリアからカルネ=
そして考えた…………自分とサイナは此のままアンドリューに、アンサーコード・トーカー Type アンドリュー・ジッタードールに会いに行って、音楽プレイヤーとエリーゼ・ジッタードールの聞き出し、Nパッチのインストールイベントを起こして良い物なのか………?と。
彼とエムルが来たのは第十階層、ベヒーモスのデータベースが置かれ、アクセスすれば音楽プレーヤーの歴代所持者達の情報やらを調べ尽くせるだろうが、其の前にやるべき事が…………オルケストラの最終楽章に立ち会って以降、インテリジェンスと装いながらも其の実『曇り顔』をしているサイナが抱えた問題を、先に解決しなくてはいけない。
「おぅサイナ、ちょっと良いか」
「何でしょうか、
「まぁな。俺は何回か入ってるが、お前にとっちゃ故郷みたいなもんだろ?で、だ………象牙よ、居るか?」
『おや、サンラク。そして………エルマ317号機ですか』
「!」
思い返せばオルケストラは『サンラク』という存在は完全再現したが、サイナに関しては再現してこなかった。まるでオルケストラから『拒絶』されたとでも言うべきか、其れとも『
そしてサイナはと言えば、ロボ系物のゲームやアニメやらでも良くある『御約束』を。ゲーマーであるサンラクからしても、別の
「疑問:
『許可します』
「……………質問:征服人形は人類種足り得ないのですか?
「………サイナさんは一体何を言ってるですわ?」
「まぁ見てろエムル、象牙の返答によっちゃ此方が今後取る行動が『だいぶ決まる事』になる」
サイナの疑問に暫しの沈黙が訪れ、そして象牙は『溜息を一つ零した』後、サイナを見て。
『アンドリュー…………貴方という人は。………エルマ=317、単刀直入に言いましょう。貴女の其の感情は
「…………バグ」
『再征服計画はあくまで、人類種に寄り添う
ヒトミ相手に言っていた事を、オルケストラとの戦闘経験後に言われるだけでもガツンと来る物が有る上に、象牙の言葉は
そして今、自分はサイナの分岐イベントに立ち会っている。
シャンフロに置けるイベントは大抵が其の場での相手への
そしてサイナ含めて征服人形にとってアンドリュー・ジッタードールは親であり、サイナは其の親から真実を…………『征服人形は替えの利く無用のアンドロイドだ』等と言われるのを、他ならぬ本人が『極端に恐れている』節が有る。
尤もアンドリューの
「機能、成「おぅ、サイナ。ちょっとストップな」………え?」
『おや、サンラク。どうしました?』
「質問を変えるが、象牙。ベヒーモスに居た神人類が用いた、主要な言語ってのは何だった?」
『……? 質問の意図が理解出来ませんが……そうですね。最終的には英語が大多数を占めましたが、建造した時点から計測した場合は『ロシア語』が一番でしょうか』
「成程、ロシア語ね。要するに母国語みたいな物だな?じゃあ言葉を合わせてやる、コミュニケーションを円滑に進める為には大事な事だからな………。取り敢えず
一拍、そして一言。
「…………
『─────────』
世界規模のグローバルオンラインゲームでは罵倒系の言葉が飛び交い、耳から覚えて自然と上手くなるのだから善し悪し両極の面を持つ。
昨今のゲームではチャットでも外国語が自動翻訳されて、ニュアンスからしか解らなかったコミュニケーションも伝わりやすくなり、更にはギャラクシアヒーローズ:カオスにて先行実装された『
サンラクの放ったロシア語は正しく象牙に伝わったからか、ホログラフィックで出来た彼女の表情は固まり、彼は未だに答えを見出せていないサイナに対面する。
「全く……。おぅサイナ、お前はそんなに真実を見るのが『怖い』のか」
「其れ、は………いいえ、肯定します。
此の瞬間、サイナの言葉によってサンラクが取るべき指針は決まった。
サイナが自分という存在が揺らいでいるならば、他でもない自分自身を認識出来る様にする、其の為には『百の言葉以上に百の敵意で己という存在を確固たる物にする』しか無い。
そして其れを可能にし、サンラクというプレイヤーにとっても因縁深く、何よりも敗北し続けて来た過去との決別をする為の相手には─────────『奴』以外で適任者は居ない。
「サイナ、エムル!外に行くぞ!」
「!?」
「疑問:何方へ………?」
「決まってらぁ………!」
過去に二度の敗北を喫し、未だに片側の崖にて君臨する蠍達の
シャンフロ掲示板の一つ『シャンフロ・スコーピオンスレ』で未だ熱く、未だ冷め止まぬ議論が続けられているという、嘗て己が手で片目の光を奪い取った『隻眼の
奴との完全決着こそが、サンラクにとって先へ進む為に絶対に乗り越えねばならない強敵であり、サイナに勇気を与えて理不尽を跳ね除ける為の力を得る為の試練と、彼が見定めたからだ。
其れは自分とサイナの卒業試験