VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

1098 / 1101


答えを探す旅は続く




鳥は巨鯨を飛び越え巨象を見る、そして鳥は決意する

結果から言えば、サンラクのリヴァイアサン内情報精査は『其れなりに成果を得られたが、本命に当たる情報には行き当たる事が出来なかったと言える』物になった。

 

今回サンラクが検索した三つの情報、一つ目の音楽プレーヤーは勇魚(イサナ)曰く『此の星における神代の歴史の更に前、宇宙を旅していた頃よりも更に更に前の、遥か昔に人類が地球から逃げ出す前に作られた超に超と超が付く骨董品』であり、勇魚でさえ『よくこんな物品(もの)が現存してますね』とまで言った程。

 

二つ目のヴァイスアッシュから一時的に託された木棺封印大太刀は、既にアンロックされていた大陸滅殺級災害記録と、今回の新規アンロックファイルの中から勇魚が選び見せてくれた事で、詳細を詳しく知る事が出来た。

 

其の昔………もっと昔の『古代黎明期に旧大陸全土を滅ぼせる程に肥大化した大陸級超規格台風』が存在しており、持ち主(ヴァイスアッシュ)によって調伏された存在()()()

 

嘗て存在し、世界を滅ぼしかけた災害であり、殲嵐の台風が兎の手により獣に貶められ、調伏され。されども刀に宿る霊として()()()()存在となった『災浄大業物(さいじょうおおわざもの)』─────────国喰らいの(まが)らう嵐の名にして、此の大太刀の銘である『覇国兇嵐(アガトレオ)』なのだと。

 

そして三つ目、エリーゼ・ジッタードールの事については思った通りで、勇魚からは『詳しく知りたければベヒーモスに在るアンドリュー・ジッタードールの研究室を当たれ』と言われ、更に『音楽プレーヤーの情報もベヒーモスのデータベースを検索すれば、歴代所持者達も含めて詳しく知る事が出来ます』と回答された。

 

「まぁリヴァイアサンに寄り道しただけの価値は有ったな………。大太刀(コイツ)真名(なまえ)を知れただけでも、俺からすりゃあ充分な成果だ」

 

来たるオルケストラのリベンジ戦、此の大太刀の封印を解いて晴天流「凪風(なぎかぜ)」で再現『サンラク』を仏陀斬ってやると決意を新たに、エムルのファストトラベルでシャンフロ第一の街であり、ペッパーによってベヒーモスが発見されてからは銃火器とロボットを手にする街との認識に改められた、ファステイアに向かう………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一の街・ファステイア。

 

銃火器やロボットの解禁によって盛り上がり、一部の有名プレイヤーの悪目立ちによって鳥面やら馬面やらで覆面した半裸プレイヤーに、帽子とコートで王子様系女子なアバターで往来するプレイヤー。

 

更にはベヒーモスで御目当ての銃火器やロボットを手にした事でウッキウキで森へ向かうプレイヤー等々、無職時代の傭兵だった頃に聖女ちゃん(イリステラ)からの依頼でギルド就職に訪れた時や、ベヒーモスの発見と再稼働イベントが起きた時よりも『更にカオスな光景』が広がっていた。

 

「何か俺の名前を捩ったり、ペッパーの名前を捩ったりしてる奴が大量に居る…………」

「サンラクさんは有名人ですわ、そうなれば当然だっておとーちゃんも言ってたですわ」

 

サンルクやらサリラコ、ヘッターやらヘリターと、ちゃんと見なければプレイヤーを見間違える名前が多々有り、ゲーム内での目立ちっぷりが段々と怖くなってくる今日此の頃。

 

「よし、やるぞお前等!」

「多くの同志は新大陸に行ったが、俺達は俺達でルティアさん達に会うぞ!」

「お前はスク水か………良い趣味してるぜ」

「そう言う主は縦セタではないか、(そち)も良き性癖(キバ)じゃの〜」

 

そんな折、ファステイアの一角でワイワイガヤガヤと人集り。聞き覚えが有るNPCの名前と貧相な装備や武器ながら、其の出で立ちは両者共に歴戦の戦人に等しく。

 

片や戦爪と思わしき手甲の、片や刃の役割を搭載した鉄扇という、何方も超至近距離下での戦闘を十八番としている武器達を手に、両雄………『ティーアスちゃんを着せ替え隊』やサバイバアルの情報で最近部門分けされたという『ルティアさんをどうにかして脱がし隊』のメンバーが相対する。

 

「さぁ張った張った!」

「どっちに賭けますー?」

「鉄扇に二百!」

「手甲に五百で!」

「相打ちに千!」

 

そして此のやり取りが開拓者の間では『何時もの事』と認知されてるのか、はたまた賭け事として成立するまで有名になったのかは知らずとも、プレイヤー主催の対人戦イベントとして認知されている様だ。

 

『いざ、尋常に………勝負っ!』

 

戦闘開幕の合図と共に推しに遇う為ならば人殺し(PKer)赤髑髏(らくいん)を押される事も、敗れて全てを失う結果になる事さえも厭わぬ猛者達の戦いを横目に、サンラク達はベヒーモスへと入場した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

以前ベヒーモスにてペッパーがインベントリアからカルネ=103(ヒトミ)を呼び出し、ベヒーモス統括AIの『象牙(ゾウゲ)』が征服人形の生産に関わっていたという話をして、象牙とヒトミ相手に『ロボ系キャラクターの完全解答(パーフェクトアンサー)ロールプレイ』をしたのをサンラクは思い出した。

 

そして考えた…………自分とサイナは此のままアンドリューに、アンサーコード・トーカー Type アンドリュー・ジッタードールに会いに行って、音楽プレイヤーとエリーゼ・ジッタードールの聞き出し、Nパッチのインストールイベントを起こして良い物なのか………?と。

 

彼とエムルが来たのは第十階層、ベヒーモスのデータベースが置かれ、アクセスすれば音楽プレーヤーの歴代所持者達の情報やらを調べ尽くせるだろうが、其の前にやるべき事が…………オルケストラの最終楽章に立ち会って以降、インテリジェンスと装いながらも其の実『曇り顔』をしているサイナが抱えた問題を、先に解決しなくてはいけない。

 

「おぅサイナ、ちょっと良いか」

「何でしょうか、契約者(マスター)…………此処は、もしやバハムート三番艦・ベヒーモスの艦内ですか?」

「まぁな。俺は何回か入ってるが、お前にとっちゃ故郷みたいなもんだろ?で、だ………象牙よ、居るか?」

『おや、サンラク。そして………エルマ317号機ですか』

「!」

 

思い返せばオルケストラは『サンラク』という存在は完全再現したが、サイナに関しては再現してこなかった。まるでオルケストラから『拒絶』されたとでも言うべきか、其れとも『知性を持つ存在(インテリジェンス・アンドロイド)』だからこそオルケストラからコピーされなかったのか。

 

そしてサイナはと言えば、ロボ系物のゲームやアニメやらでも良くある『御約束』を。ゲーマーであるサンラクからしても、別の世界(ゲーム)で飽きる程に救って、飽きる程に壊して来た彼をしても、あまりにも『見慣れた展開』が行われた。

 

「疑問:当機(ワタシ)はベヒーモスAIの象牙に対し、質疑応答を要請します」

『許可します』

「……………質問:征服人形は人類種足り得ないのですか? 当機(ワタシ)のパーソナリティは………過去の人物(エルマ・サキシマ)としての範疇でしかないのですか?」

 

(きかい)か、(ひと)か。ロボットが魂を持つか否かという問いと、人形でありながらも不安と懐疑を織り交ぜた表情に載せ、象牙へと問い掛けたサイナに対してエムルは疑問を、サンラクは既に『面倒な気配』が漂っていると察知した。

 

「………サイナさんは一体何を言ってるですわ?」

「まぁ見てろエムル、象牙の返答によっちゃ此方が今後取る行動が『だいぶ決まる事』になる」

 

サイナの疑問に暫しの沈黙が訪れ、そして象牙は『溜息を一つ零した』後、サイナを見て。

 

『アンドリュー…………貴方という人は。………エルマ=317、単刀直入に言いましょう。貴女の其の感情は()()です』

「…………バグ」

『再征服計画はあくまで、人類種に寄り添う()()としての計画。大部分にアンドリュー・ジッタードールの『趣味』が盛り込まれていますが、其の見た目や人格は次世代原始人類との交流において、有利な方向性を得る為の『機能』に過ぎない』

 

ヒトミ相手に言っていた事を、オルケストラとの戦闘経験後に言われるだけでもガツンと来る物が有る上に、象牙の言葉は征服人形(コンキスタ・ドール)達の『存在意義(アイデンティティ)を否定する事』に他ならず、ペッパーは契約したヒトミを『此の世界でカルネ=ヒトミは唯一人の存在という敢然たる事実を象牙に叩き付ける事』で、彼女を励まし背中を押し、勇気を与えて真っ直ぐに立たせた。

 

そして今、自分はサイナの分岐イベントに立ち会っている。

 

シャンフロに置けるイベントは大抵が其の場での相手への応対(ロールプレイ)だったり、QTE(クイックタイムイベント)時のプレイヤーの行動で、アクションの成否が分かれてリザルトの上昇降下に直結する事が多々有り、自分がするべき事は『サイナに自信を付けて、不都合な真実が明らかになったとしても其れを自力で乗り越えるだけの精神力(メンタリティ)を持たせる事』であり、仮に此等を()()()やるとするなら其の手段は『ほぼ荒療治くらいしか無い』。

 

そしてサイナ含めて征服人形にとってアンドリュー・ジッタードールは親であり、サイナは其の親から真実を…………『征服人形は替えの利く無用のアンドロイドだ』等と言われるのを、他ならぬ本人が『極端に恐れている』節が有る。

 

尤もアンドリューの人格搭載AI(アンサーコード・トーカー)に会ったペッパーの話では、アンドリューの研究室に所狭しと在ったアイドルグッズの数々から、彼は征服人形達を替えの利く存在だとは微塵も思っていないと確信しており、少なくとも彼が嘘を付いている気配は感じなかったので其処は信用して良い。

 

「機能、成「おぅ、サイナ。ちょっとストップな」………え?」

『おや、サンラク。どうしました?』

「質問を変えるが、象牙。ベヒーモスに居た神人類が用いた、主要な言語ってのは何だった?」

『……? 質問の意図が理解出来ませんが……そうですね。最終的には英語が大多数を占めましたが、建造した時点から計測した場合は『ロシア語』が一番でしょうか』

「成程、ロシア語ね。要するに母国語みたいな物だな?じゃあ言葉を合わせてやる、コミュニケーションを円滑に進める為には大事な事だからな………。取り敢えず象牙(母上)、アンタは一にも二にも先ずは『空気を読む事』を学習(ラーニング)しろ。『生きてる内は勉強』って言葉も在るからな」

 

一拍、そして一言。

 

「…………заткнись(ちょっと黙ってろ)

『─────────』

 

世界規模のグローバルオンラインゲームでは罵倒系の言葉が飛び交い、耳から覚えて自然と上手くなるのだから善し悪し両極の面を持つ。

 

昨今のゲームではチャットでも外国語が自動翻訳されて、ニュアンスからしか解らなかったコミュニケーションも伝わりやすくなり、更にはギャラクシアヒーローズ:カオスにて先行実装された『Babel(バベル)』によって言語理解が容易になった。

 

サンラクの放ったロシア語は正しく象牙に伝わったからか、ホログラフィックで出来た彼女の表情は固まり、彼は未だに答えを見出せていないサイナに対面する。

 

「全く……。おぅサイナ、お前はそんなに真実を見るのが『怖い』のか」

「其れ、は………いいえ、肯定します。当機(ワタシ)は………私は今、契約者(マスター)の言う通り『恐怖している』、と………自己判断出来ます」

 

此の瞬間、サイナの言葉によってサンラクが取るべき指針は決まった。

 

サイナが自分という存在が揺らいでいるならば、他でもない自分自身を認識出来る様にする、其の為には『百の言葉以上に百の敵意で己という存在を確固たる物にする』しか無い。

 

そして其れを可能にし、サンラクというプレイヤーにとっても因縁深く、何よりも敗北し続けて来た過去との決別をする為の相手には─────────『奴』以外で適任者は居ない。

 

「サイナ、エムル!外に行くぞ!」

「!?」

「疑問:何方へ………?」

「決まってらぁ………!」

 

過去に二度の敗北を喫し、未だに片側の崖にて君臨する蠍達の()帝陛下。

 

シャンフロ掲示板の一つ『シャンフロ・スコーピオンスレ』で未だ熱く、未だ冷め止まぬ議論が続けられているという、嘗て己が手で片目の光を奪い取った『隻眼の金晶独蠍(ゴールディ·スコーピオン)"皇金世代(ゴールデンエイジ)"』。

 

奴との完全決着こそが、サンラクにとって先へ進む為に絶対に乗り越えねばならない強敵であり、サイナに勇気を与えて理不尽を跳ね除ける為の力を得る為の試練と、彼が見定めたからだ。

 

 

 






其れは自分とサイナの卒業試験


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。