授業は唐突に始まる
「予想以上に楽だぞ、どうしよう………。いやホント、常時フリットフロートとスカイウォーカーにヘルメスブートが出来る
サンラク基準(他の者はそうでは無い)御手軽にブッ壊せて御手軽に修繕出来る、
人は急には止まれないし、空から落ちれば死ぬという常識を、空中を跳ねて飛んで留まって、其の運命に唾を吐けるキメラモンハナシャコの傑作ブーツは、要求ステータスの高さこそネックにはなるが優秀の一言では片付けられない程、自分にとってリュカオーンのせいで半裸を強要された中で、其の特性によって念願の上裸にしてくれた優秀な武器に等しい。
嘗ては死に物狂いで水晶の波濤を越えて皇金の皇帝に挑んだが、今回は前回の比では無いくらいには良く動けており、此のままではサイナの為の授業にならないと、彼は静止している水晶群蠍達の間を歩きながら、やるべき事を為すべく動いた。
「…………よしサイナ。残り二体の中継点個体は二手に分かれて倒すぞ、分担戦略だ」
「確認:
「ある程度距離が離れていてもインベントリアで収納できるのは検証及び実証済みだ。…………いや便利過ぎる気がするんだが、サイレント修正されたら流石にどうしようか………。サイナ、一応同じエリア内ならお前をインベントリアに収納可能だよな?」
「肯定:可能です」
「なら良しだ。お前の様子はこっちでも確認出来る、もしヤバくなったら回収してやる」
「………了解:」
鶴嘴を取り出し、ウキウキしながら獲物を見定めるサンラクの背を見たサイナは、彼という契約者の人柄や事柄を思考する。
基本的に
思い立ったが吉日で其れ以外は全て凶日、善は急げ、最速で最短で突き進む、尽きないリソースの残量を気にしている
だからこそサンラクの指示に、サイナは『疑問』を覚えた。
数ヶ月の付き合いながらも、開拓者としての彼の傾向や趣向から見ても、先程の言動は此迄のどれにも当て嵌まらない、解り易く言えば『
「戦力推定:勝率0%………。しかしながら『特定個体の特定部位のみを破壊する』のみに
盾は受け流しと剣による攻撃を両立し、迅速に儀杖個体のアンテナを担う水晶を破壊する。水晶群蠍達の大軍を前にしても彼女は其の脚を出して進むが、蠍達の動きに少なからず『違和感』を抱く。
(直線挙動、しかしながら戦力の投入に偏りを感知。理由は…………)
「うぉあああ!?」
「攻め込む場所間違えたか!?」
「ぐぼえ!?」
「ウッソだろ、水晶蠍プレスぶっ!?」
「確認:アレは………」
サイナが機巧の両眼が見た物は、戦術機を使って水晶巣崖に突入して来た
仮に此れをサンラクが目視したならば、圧殺されるプレイヤー達を其のまま見守り、仮に存在を気付かれたとて『御愁傷様』と合唱はしたとしても、決して彼等を助ける事はしない。
其れはエムルも同様に、ヴォーパルバニーというモンスターカテゴリに属する存在で野生のシビアさを備えている彼女は、自分自身の生存を優先する為に此の状況を見れば『此れも自然の摂理ですわー』と、ドライな台詞と共に見送っていただろう。
だがサイナはサンラクという契約者が、ウィンプを助けてノワルリンドを庇い、聖女や多くのプレイヤー達と交流を交わし、バハムートに挑んでジークヴルムを踏み越えた背を見た事で、彼が『何だかんだ言っても他人の窮地を見逃せない人物』と判断し。
次の瞬間には『残された生存者を逃がす為の行動』を、誰かに言われたでも命令された訳でも無く、
「推奨:迅速な退避行動」
「えっ、征服人形!?」
「何方様!?」
「水晶群蠍の対処は請け負います。死亡による離脱を望まないのであるならば………っ、迅速な、退避を──────くっ?!」
「あ、ありがとう………!」
「すいません!!」
ヘイトを単身請け負い、二人が谷底に降りて行ったのを見た後、先頭の蠍による大質量のタックルを盾で衝撃共々流すが、一秒すれば更なる追撃が上空からのスコーピオンフライングプレスとして襲い掛かった。
「行動に支障っ!?」
着地で起こされた衝撃によって足元を崩され、一匹の蠍による尻尾のスイングがサイナを吹き飛ばす。
「損傷:小破────────くぅっ!?」
ブースターで体勢を立て直さんとした所に水晶柱の砲弾が飛来して、左腕に衝撃が走って錐揉み落下した所に鋏によるビンタ………まるで『テニスボールをラケットでラリーするが如く』。
蠍達からすればソフトで有りながらも、他の生命体からすれば大打撃のバウンド連打で右往左往させられ、終いには水晶柱の一本に背中から叩き付けられる。
「損傷:大破…………」
体力が三割を下回った、次に何かしらの攻撃を食らえば自分は確実に
「あっ…………!」
無機質な水晶の目の奥に内封した殺意を抱き、全身にダメージを負ったサイナにトドメを刺さんと水晶群蠍が迫る。
彼等彼女等にとって偉大なる煌帝の座す地に入り込んだ存在は、人間だろうと人形だろうとも『全てが
皇の威光を穢す敵が居るならば其の身を以て戦い、己が身が砕け散ろうとも怨敵を踏み潰し、皇が食える物であるならば我が身と捧ぐ覚悟で献上する──────其れが皇金世代に率いられた民草たる己に出来る事だと、此の地に住まう水晶群蠍達は既に『覚悟』を決めているのだ。
「待っ…………!」
エルマ=
仮に
「い、嫌………ッ、………
だが次の瞬間、ズタボロになった
此処で自分という存在が水晶の蠍達によって終わるという『
次の瞬間、振り上げられた水晶の大鋏が機巧の人形を踏みつぶさんとし。
「はいストップ」
刹那に聞こえた声一つと、迸った雷と吹き抜けた風に星光の一閃と共に、サンラクがサイナの前に立っており。
周りに居た水晶群蠍達は儀杖個体の水晶を壊された時と同じ、不自然な静止状態になった光景が彼女の視界に広がっていたのだ。
そしてサンラクはサイナの方へと振り返り…………
「おうおうサイナ、良い
まるで『何もかも計算尽くだった』と言わんばかりの視線で、サンラクはサイナに言ったのだった。
マスターは遅れてやって来る
※1100話記念、設定開示コーナー
其れはモンスターのゴブリンでありながら、知性を持つ
其れは彼との友好を築いた者が、特定の職に就いている場合に転職の機会を得られる所謂『ユニークジョブ』であり、同時に『隠し職業』の側面を持つ物でもある。
星化職業は共通して『自分自身を世界の中心及び軸とし、マナ粒子を用いて己の持つルールを今居る世界に示す者達』であり、星化職業に就職して習得可能なスキルや魔法は、全てポポンガの持つ数多在る御業達の極一部であり、そして其れを扱う事を許された者の証に等しい。
星化剣士最上位職『
星化弓使い及び星化魔弓使い最上位職『
星化銃士最上位職『
星化バックパッカー最上位職『
星化