VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

1101 / 1141


サイナの行動を聞く




敢然にして完全たる、そして絶対的な事実

サンラクはまさか『サイナが人助けをするとは思わなかった』上、水晶群蠍達が敵対者を『テニスボールの如くパス回しでラリーする悪辣さ』を見せた辺りで、彼自身も胆を冷やされた。

 

其れでも分担直後、即座に封雷の撃鉄(レビントリガー)封星の撃鉄(エイセイトリガー)を起動してアンテナ役に僅か二秒で肉薄からの速攻で破壊。

 

そして状況を鑑みて、空中挙動スキルの宙域超速(スペース・ランウェイ)空律歩爽(ニア・クルージング)で一気呵成に動き、兇嵐帝痕(イデア=ガトレオ)(スペリオル)起動からの任意の一歩を超高速移動とする畢竟雲耀(ひっきょううんよう)の進化スキル『雷閃超越(いなびかりこゆる)』でカムバック。

 

サイナが担当していたアンテナ役を破壊に急行した訳なのだが、彼処からよく間に合った事を自画自賛してやりたいとサンラクは思いつつも、此迄の様にアンテナ役の無力化で周りの水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)達が動かない事を祈りつつ、サイナと視線を合わせる。

 

「マスター………」

「涙の一つでも流せりゃ、完璧だったんだが。………いやそもそも征服人形に『泣く機能って有るのか』?やっぱペッパーが言ってた『Nパッチ』やらを、インストールしなきゃ泣かないのか?」

「……………要求:説明を。契約者は意図的に当機の回収を行わなかった」

「まぁ否定はしない。だが其の御蔭で、お前も身に沁みて『自覚出来た』んじゃねぇか?」

「…………」

 

此処までやってもサイナはまだ解っていないのか、其れとも自分が答えを言わなければ解らないのか、ならばとサンラクは宣言とも宣告とも取れる言葉を以て、()()()()表情をしているサイナへ突き付けた。

 

「偉大なる世界(別ゲー)()人曰く!『道具とは死を恐れず、生に安堵しない』!!」

 

死=損失と考え、回避しようとする『道具』はあるかもしれないが、自己の保全を認識して『安堵する』道具は存在しない。

 

特に日本人は此の手に関して反応は顕著で、造形がメカだとしても其れが美少女ならば、彼等彼女等は『単なる道具だと思えなくなる体内構造をした生き物』なのだ。

 

「お前は『死を恐れた』。エルマ型が今何機存在してるのかは知らねぇが、お前で打ち止めじゃあないだろう。あの母上(象牙)からすりゃ、征服人形は幾つでも替えが利くとか考えてんだろうが………。だがお前は、自分が砕け散る事を『明確に拒み』、そして『嫌だとハッキリ述べた』。何より其の顔を見れば理解(わか)る──────今お前は『自分が生きている事に安堵している』ってなァ!!」

「其れ、は………」

「生への欲望、死を恐れる本能………獣畜生から人間まで其れを考える知性(インテリジェンス)と、其れを支える自我(アイデンティティ)を持つ在りと汎ゆる生命が『当たり前に備える要素(モノ)』。お前の心に響く様に言うなら、其れを持っているならば其奴は『知的生命体』であり、使い潰す為の『道具』じゃ断じてない」

「……………」

 

死にたくない、まだ生きていたいと叫ぶ声には、()()()()()()全ての感情や想いに願いやらが、纏めて其の中に詰まっている。

 

其れを口から声に、言霊に乗せて叫べるならば、其の存在を構築・構成している物質が鉄であれ水であれ、半固形だろうが幽霊だろうが関係無い。

 

魔力だけで構築された水の精霊(ネレイス)がル・アラバの剣のオプションパーツ扱いでも生きていたり、黄金龍王の角から造られた覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)が意思を持って思考している時点で、サイナの悩みは『些細な問題』なのだから。

 

「そうだな………じゃあこんな豆知識を。水晶群蠍は『物を無視する特性が有る』って知ってたか?」

「…………其れは、初めて認識する情報です」

「奴等は『敵』を撃滅するが、百の同胞を斬った剣が刺さっていようが、百の同胞を砕いた鶴嘴が転がっていたとしても無視する。其奴は敵じゃないからな」

 

「だが」と、そう言ったサンラクは静止状態の蠍達を指差し、そしてサイナに言った。

 

「さっきの蠍共は間違い無く、お前を『叩き潰すべく動いていた』。其れは地面に放置される『道具』だからではなく、お前が自分で考えて動いた事で、奴等から確りと『自分達を害するに値する敵として認められたから』に他ならない」

「敵、として………」

「何より俺が驚いたのは、お前があのプレイヤー達………もとい開拓者達を助けた事だけどな。アレはどう考えてもお前自身の自己判断と行動だろ?」

「其れは、契約者(マスター)なら『そうするかと』……」

「えっ……?………いや、確実に見捨てるけど。うん」

「………修正:契約者の性格情報」

 

正式なパーティーを組んでるならまだしも、野良で見ず知らずのプレイヤーとパーティーを組み、其の面倒を全部見るなんて事はサンラク本人はしないし、自分じゃない奴が戦犯行為をしたとして殿を買って出る義理は無い。

 

「………いや俺がどうするかはどうでも良い。大事なのは奴等を助けたのは、お前自身が考え、決めて、そして行動した『其の判断』って事だろう」

「…………一理は、有ります」

「其れにしちゃあ、お前自身がまだ『納得していない』様子だがな」

「………肯定、します。当機(ワタシ)はまだ、当機(ワタシ)という存在のアイデンティティに、確信を持てないのです」

 

静止した水晶群蠍達は観客達で、サイナとサンラクの話を聴いている様な状態の中、サイナは己の気持ちを吐露する。

 

「エルマ型とは即ち、嘗ての『エルマ・サキシマの人格再現』に過ぎず………」

「俺なんて生まれてまだ一年未満の赤ちゃんみてぇな(モン)だぞ。赤ん坊の人格嘗めとんのか」

「征服人形とは所詮再征服計画のための駒に過ぎない!」

「どーも、二号計画の再利用可能な捨て駒でーす」

「此処で当機が機能を停止した所で、また新しいエルマ型が稼働するだけではないですか!!」

「しゃらくせぇっ!」

「!」

「今後何万体のエルマ型がロールアウトしようが!『エルマ=サイナは此の世にただ一つしか存在しないだろうが』ッッッッ!!!」

「…………!」

 

サイナの葛藤に対する解は、サンラクの答えを以て完結する。

 

例え自分の事を替えが利く量産品やらと言い訳を重ねども、其の全ては『エルマ=317(サイナ)は此の世界にたった一()しか存在しない』という、嘗てベヒーモスの地でペッパーが象牙(ゾウゲ)とカルネ=103(ヒトミ)へ言った様に、たった一つの純然たる事実を以て『全て論破出来る』のだから。

 

例え此の先、如何にアップデートが施されたエルマ型達が生産され、世界にロールアウトしていこうとも『ウィンプを捕獲(保護)してドゥーレッドハウルに撃墜され、シグモニア前線渓谷(フロントライン)の穴蔵の中に居たエルマ型は唯の一人』、そして『ペッパーに発見されて自分とペンシルゴンを含めて遭遇からサンラクと契約したエルマ型』は、後にも先にも317号機ただ一人なのだから。

 

「此の際だからハッキリと断言してやる。良いかポンコツ、聴覚センサーをフル稼働してよぉ〜く聴け」

 

嘗て無尽のゴルドゥニーネの本体に食らわせた時と同じ、デコピンを一発入れた後にサンラクは一呼吸置いてサイナに言う。

 

「お前はただ『生みの親に酷い事を言われるのが怖い』だけだ」

「………怖い、だけ………?」

「どうせアンドリューのラボの中で、再現された其奴から『所詮征服人形は道具にすぎまセーン』とか言われると思ってるんだろ?そーゆーの、俺等の間じゃ『被害妄想』って言うんだぜ」

 

アンドリューと話をして、ラボ内の状況を詳しく話したペッパーを信じるならばそうなのだろう。実際に見てみなくては判断するのは厳しいが、今迄にクリアしたゲームにも此の流れを汲んでいる物は少なからず在ったので、其処は一応信頼出来る。

 

「そして何よりも、お前に足りないのは『勇気』だ」

「勇気:」

「そうとも。何も事実を馬鹿正直に真に受けて、真正面から全部受け止める必要は無い。だがな………『死人の言葉なんぞ』に、今を生きる俺達が何故振り回されないといけないんだ?」

 

エルマ=サイナは、己を創り出した創造主(アンドリュー・ジッタードール)が『征服人形を道具としか思ってないかもしれない』と過剰に怖がっている様だが、サンラクからすれば『其れが何だ』といった所だろう。

 

例え創造主に何を言われようが、彼からすれば『数千年前の常識で止まってる奴の尺度で現在(いま)を生きてる征服人形を語るな』という話でしか無い。

 

「疑問:ではどうしろと?」

()()()()()、以上」

「……………は?」

「エゴ、アイデンティティ、インテリジェンス………呼び方は何だって良い。そういうのは他人に評価されて決まる物じゃねぇんだ。例え誰にどれだけ貶されようが、結局の所其れは他人事(ヒトゴト)でしかねぇんだよ。そんな風に言われたら『うるせーお前の評価なんて知るかボケ』で片付け(一蹴し)とけ」

 

映画やゲームのレビューもそうだが、実際に買って観てプレイした上で其の評価を付けているならまだ良いが、其れをしないで宣っている奴も少なからず居る。

 

サンラクはクソゲーマーとしてクソゲーをしたいからクソゲーを買うのであり、買ったクソゲーを評価するのは己であって他者に委ねる物では無い。

 

『生殺与奪の権利を他者に与えるな』と『お前が消えて喜ぶ者にお前のオールを任せるな』──────前者は有名な漫画の一コマに在った台詞で他の台詞をブチ込んでミームになり、後者は有名な歌詞の一フレーズで自分という存在が持つ価値観を、他者に委ねず渡さない事を歌った物だ。

 

「"皇金世代(ゴールデンエイジ)"がなんだ。蠍の王様くらいブッ飛ばせなきゃ、反抗期なんて夢のまた夢だ。だからこそ…………此れはお前にとって卒業試験であり、俺にとって敗北の過去との決別でもある」

 

親と世の中の流れと運命に逆らうのは、大きなリスクは伴うが楽しい物だ。

 

『人生楽しく生きて、笑って死んだ奴が勝ち』………そんな格言を放った其の住人は、何時だって『自分が死ぬ事に覚悟が出来て、そして其の覚悟を支えるだけの勇気を持っていた旅人』であり。

 

そんな嘗てのゲームを遊んだ楽郎(サンラク)にとって『勇気』とは、振り返った時に後悔しない為に全力で振り回す頑丈なる旅の御伴の杖………という一つの答えを得た物だったのだ。

 

 

 






必要な物は勇気


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。