サイナの行動を聞く
サンラクはまさか『サイナが人助けをするとは思わなかった』上、水晶群蠍達が敵対者を『テニスボールの如くパス回しでラリーする悪辣さ』を見せた辺りで、彼自身も胆を冷やされた。
其れでも分担直後、即座に
そして状況を鑑みて、空中挙動スキルの
サイナが担当していたアンテナ役を破壊に急行した訳なのだが、彼処からよく間に合った事を自画自賛してやりたいとサンラクは思いつつも、此迄の様にアンテナ役の無力化で周りの
「マスター………」
「涙の一つでも流せりゃ、完璧だったんだが。………いやそもそも征服人形に『泣く機能って有るのか』?やっぱペッパーが言ってた『Nパッチ』やらを、インストールしなきゃ泣かないのか?」
「……………要求:説明を。契約者は意図的に当機の回収を行わなかった」
「まぁ否定はしない。だが其の御蔭で、お前も身に沁みて『自覚出来た』んじゃねぇか?」
「…………」
此処までやってもサイナはまだ解っていないのか、其れとも自分が答えを言わなければ解らないのか、ならばとサンラクは宣言とも宣告とも取れる言葉を以て、
「偉大なる
死=損失と考え、回避しようとする『道具』はあるかもしれないが、自己の保全を認識して『安堵する』道具は存在しない。
特に日本人は此の手に関して反応は顕著で、造形がメカだとしても其れが美少女ならば、彼等彼女等は『単なる道具だと思えなくなる体内構造をした生き物』なのだ。
「お前は『死を恐れた』。エルマ型が今何機存在してるのかは知らねぇが、お前で打ち止めじゃあないだろう。あの
「其れ、は………」
「生への欲望、死を恐れる本能………獣畜生から人間まで其れを考える
「……………」
死にたくない、まだ生きていたいと叫ぶ声には、
其れを口から声に、言霊に乗せて叫べるならば、其の存在を構築・構成している物質が鉄であれ水であれ、半固形だろうが幽霊だろうが関係無い。
魔力だけで構築された
「そうだな………じゃあこんな豆知識を。水晶群蠍は『物を無視する特性が有る』って知ってたか?」
「…………其れは、初めて認識する情報です」
「奴等は『敵』を撃滅するが、百の同胞を斬った剣が刺さっていようが、百の同胞を砕いた鶴嘴が転がっていたとしても無視する。其奴は敵じゃないからな」
「だが」と、そう言ったサンラクは静止状態の蠍達を指差し、そしてサイナに言った。
「さっきの蠍共は間違い無く、お前を『叩き潰すべく動いていた』。其れは地面に放置される『道具』だからではなく、お前が自分で考えて動いた事で、奴等から確りと『自分達を害するに値する敵として認められたから』に他ならない」
「敵、として………」
「何より俺が驚いたのは、お前があのプレイヤー達………もとい開拓者達を助けた事だけどな。アレはどう考えてもお前自身の自己判断と行動だろ?」
「其れは、
「えっ……?………いや、確実に見捨てるけど。うん」
「………修正:契約者の性格情報」
正式なパーティーを組んでるならまだしも、野良で見ず知らずのプレイヤーとパーティーを組み、其の面倒を全部見るなんて事はサンラク本人はしないし、自分じゃない奴が戦犯行為をしたとして殿を買って出る義理は無い。
「………いや俺がどうするかはどうでも良い。大事なのは奴等を助けたのは、お前自身が考え、決めて、そして行動した『其の判断』って事だろう」
「…………一理は、有ります」
「其れにしちゃあ、お前自身がまだ『納得していない』様子だがな」
「………肯定、します。
静止した水晶群蠍達は観客達で、サイナとサンラクの話を聴いている様な状態の中、サイナは己の気持ちを吐露する。
「エルマ型とは即ち、嘗ての『エルマ・サキシマの人格再現』に過ぎず………」
「俺なんて生まれてまだ一年未満の赤ちゃんみてぇな
「征服人形とは所詮再征服計画のための駒に過ぎない!」
「どーも、二号計画の再利用可能な捨て駒でーす」
「此処で当機が機能を停止した所で、また新しいエルマ型が稼働するだけではないですか!!」
「しゃらくせぇっ!」
「!」
「今後何万体のエルマ型がロールアウトしようが!『エルマ=サイナは此の世にただ一つしか存在しないだろうが』ッッッッ!!!」
「…………!」
サイナの葛藤に対する解は、サンラクの答えを以て完結する。
例え自分の事を替えが利く量産品やらと言い訳を重ねども、其の全ては『エルマ=
例え此の先、如何にアップデートが施されたエルマ型達が生産され、世界にロールアウトしていこうとも『ウィンプを
「此の際だからハッキリと断言してやる。良いかポンコツ、聴覚センサーをフル稼働してよぉ〜く聴け」
嘗て無尽のゴルドゥニーネの本体に食らわせた時と同じ、デコピンを一発入れた後にサンラクは一呼吸置いてサイナに言う。
「お前はただ『生みの親に酷い事を言われるのが怖い』だけだ」
「………怖い、だけ………?」
「どうせアンドリューのラボの中で、再現された其奴から『所詮征服人形は道具にすぎまセーン』とか言われると思ってるんだろ?そーゆーの、俺等の間じゃ『被害妄想』って言うんだぜ」
アンドリューと話をして、ラボ内の状況を詳しく話したペッパーを信じるならばそうなのだろう。実際に見てみなくては判断するのは厳しいが、今迄にクリアしたゲームにも此の流れを汲んでいる物は少なからず在ったので、其処は一応信頼出来る。
「そして何よりも、お前に足りないのは『勇気』だ」
「勇気:」
「そうとも。何も事実を馬鹿正直に真に受けて、真正面から全部受け止める必要は無い。だがな………『死人の言葉なんぞ』に、今を生きる俺達が何故振り回されないといけないんだ?」
エルマ=サイナは、
例え創造主に何を言われようが、彼からすれば『数千年前の常識で止まってる奴の尺度で
「疑問:ではどうしろと?」
「
「……………は?」
「エゴ、アイデンティティ、インテリジェンス………呼び方は何だって良い。そういうのは他人に評価されて決まる物じゃねぇんだ。例え誰にどれだけ貶されようが、結局の所其れは
映画やゲームのレビューもそうだが、実際に買って観てプレイした上で其の評価を付けているならまだ良いが、其れをしないで宣っている奴も少なからず居る。
サンラクはクソゲーマーとしてクソゲーをしたいからクソゲーを買うのであり、買ったクソゲーを評価するのは己であって他者に委ねる物では無い。
『生殺与奪の権利を他者に与えるな』と『お前が消えて喜ぶ者にお前のオールを任せるな』──────前者は有名な漫画の一コマに在った台詞で他の台詞をブチ込んでミームになり、後者は有名な歌詞の一フレーズで自分という存在が持つ価値観を、他者に委ねず渡さない事を歌った物だ。
「"
親と世の中の流れと運命に逆らうのは、大きなリスクは伴うが楽しい物だ。
『人生楽しく生きて、笑って死んだ奴が勝ち』………そんな格言を放った其の住人は、何時だって『自分が死ぬ事に覚悟が出来て、そして其の覚悟を支えるだけの勇気を持っていた旅人』であり。
そんな嘗てのゲームを遊んだ
必要な物は勇気