VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勇気とは偉大なる讃歌

聖剣を破壊した事による皇金世代(ゴールデンエイジ)の発狂モード突入から数十分。

 

水晶の玉座にて産まれてから老成個体や同族に偏食個体と鉱物を喰らいに喰らい、幾月の夜に輝く月光の魔力を体内に溜めていた皇金世代の構築したレーザーソード達の出力が衰え、消え掛けの蝋燭の火の如く今にも消えそうな状態になっていた。

 

様々な金の色で作った大きな水晶の巨体は、対峙した時の頃とは見る影も無い程にくすんで曇り、身体中に出来た傷口から漏れ出ていた光剣達は鳴りを潜め、皇金世代の命の輝きも残り数分だと理解出来る。

 

そして此の場に居るのはサンラクと皇金世代、観客は兵威逸体(エピタフ)で産まれた分霊サンラクとサイナ、そして未だ動かず円陣というコロシアムと観客席を作る水晶群蠍達のみであり、しかし時間と共に流れる静寂とは裏腹に不気味さは時間経過に追従して更に際立っているのだ。

 

「…………ヤベェ」

 

巨大な身体を小さくする様に内側に丸め、両腕の鋏に尻尾の聖剣が在った場所を力無く垂らしている皇金世代は、サンラク視点では『死に体』であるとも見れたし、逆に『奥の手を繰り出す準備』をしているとも見れ、まるでデュエル・ガンナーの決闘モードに似た緊張感に緊迫かつ切迫した空気が此の場を満たす。

 

一瞬の判断を要求し、一瞬のミスが文字通り名声や所持金に武器含め、全てを失う事に繋がる『デュエル・ガンナーの決闘モード』には、プレイヤー達の間で『早撃ちによる結果こそが絶対にして純然たる事実』と浸透しているからこそ、そんな銃による早撃ち勝負で零になるか百を得るかの戦いに飢えた、ニッチな癖を持つ者達のオアシスとなっている。

 

「………来いよ、皇帝陛下…………!」

 

自分に出来る事は神秘:愚者によって再使用時間(リキャストタイム)を終えた真界観測眼(クォンタムゲイズ)とサキガケルミゴコロにフューチャー・ヴィジョンの三つのスキルを何時でも使える状態にし、どんな状況が来たとしても再使用可能なスキルを使って逃げる事無く、そしてサイナに『勇気を持った行動』を見せ付けた上で皇金世代にトドメを刺す事。

 

静寂に静寂と静寂が重なって、過ぎ去る僅かな時間が何十倍にも引き伸ばされた様な感覚の中、銃士(ガンナー)同士の早撃ち勝負の如く剣を手放し、真界観測眼とフューチャー・ヴィジョンを使ったサンラクの脳裏に浮かんだ、己の死に関係する映像(ヴィジョン)には─────────

 

 

『三秒後に皇金世代の左剣鋏が在った場所から放たれた、超々々々高速かつ超々々々射程の圧縮された一閃に胴体を灼き断たれて上半身が宙に舞って死亡する』

 

 

─────────一瞬ながらも、そんな食らったら即死の運命が確定した光景が映っており…………だが、其の光景が起きるよりも尚速く動いた、皇金世代の右腕による()()()()が、水晶の戦場を横薙ぎで斬り裂く。

 

「うおぉおお!?!」

「な…………」

 

思考加速を用いたにも関わらず、直感と反射で其の場をジャンプで避けた一秒足らずで足元を細く、金の細い針糸の様に有りっ丈の体内魔力を圧縮と凝縮して放った、皇金世代の最後の攻撃で三発在る内の一発目が地を薙いだ。

 

サイナの声が聞こえたが、どうなっているかまでは解らない上に確かめる時間は残っていない。何せ一秒足らずで直ぐに来る二発目は、フューチャー・ヴィジョンで見た己の死ぬ確率が最も高い攻撃。

 

右腕が無い今、封雷の撃鉄(レビントリガー)によるモーション強化も出来ない、寧ろ其れをしたら逆に詰むと確信する超速の抜刀一閃、全盛期(ナーフ前)のウェザエモンの断風(たちかぜ)に迫る程の速さを持ちながら、持続時間は其の断風よりも尚長い閃光、其の第二打が飛来─────!

 

「来……いぃいい〜〜〜〜〜〜!!!」

 

取れる行動は一回、差し迫る死のビジョンに抗う為にサンラクが取った行動は、空中に踏み留まりながらも超高速移動を可能とする宙域超速(スペース・ランウェイ)に、真界観測眼によって攻撃を何とか『認識した』事で条件を満たした相対的立体運動(ソリッド・マニューバー)の合わせ技。

 

「ぅううぐぬぅうう………!!!」

 

空中をワンステップかつ超スピードで移動し、フューチャー・ヴィジョンが齎した死の運命を捻じ曲げ、心の内で乱数の女神に唾を吐き捨てながら、サキガケルミゴコロを点火して皇金世代の最後の攻撃へ。

 

即ち残った最後の一撃、尻尾の閃斬に対する己の最後の回答をぶつける。

 

「ッ─────────!」

 

思考加速が施したスローモーションの視界に、夜天の星空と月明かり照らす中を貫く流星が如き、金色の閃光が地上へと落ちようとしている中、サキガケルミゴコロが示した死に至る光景は『空中で閃光一閃で唐竹割りにされて開きと化して死ぬ』という、余りにもシンプルな物。

 

そして此方にある手札、最後の最後に使ったスキルは一時の間スタミナが尽きぬ様になる、疾走に心血を注いだペリカン駝鳥(ブルックスランバー)の不世出個体がサンラクに遺し刻んだ窮速走破(トップガン)

 

「此れが!王手だ!!」

 

スタミナ減少が無効化され、動かした指先がインベントリより物品を出す。

 

其れは左手と左腕で支えられるだけの質量を持ち、神代の神秘を()った古匠鍛冶師イムロンが作り上げ、再現性を証明してみせた(彼女)謹製の『冥王の鏡盾(ディス・パテル)』であり。

 

まるで花弁の内に包まれた神秘を開き示す様に、曝け出された魔の悉くを跳ね返す鏡面が、夜空を貫き伸びた閃光と皇金世代を照らしたのである……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして三度の光と輝きの後、戦場には沈黙が訪れ…………戦火の痕に燻る黒煙が昇っていた。

 

「……………あ、っぶねぇぇ…………」

 

花開きて鏡面を晒した冥王の鏡盾から、焦げ付いた臭いを含んだ黒煙が漂い、バチバチと嫌な音とスパークを立てている。

 

サンラクが翳し開いた鏡の盾は耐久値を大きく減らし、仮に皇金世代の閃光抜刀を後数発受けていたならば、破損した冥王の鏡盾の状態になって、海中でアトランティクス・レプノルカを狩って冥王鯱の照鏡骨が出るのを御祈りしなければならなかった。

 

其れでもイムロンが心血を注いで作り上げ、形にして見せた其の鏡盾は。皇金世代の命を懸けた閃斬を見事に弾き返し、サキガケルミゴコロで見た光景を其のまま、皇金世代に御返しして『真っ二つの開き』に変えたのだ。

 

「……………は、ははは…………っは───────」

 

クソゲーハンター・サンラク、ゲーマー史上トップを争う程の殺意を乗せた敵からの攻撃より生き延びて見せた事により、此処まで張り詰めた緊張が解れ、口から吐き出された乾いた笑いと空気であり。

 

彼の前で皇金世代を構築していたポリゴンが崩壊し、激闘を讃え祝福するが如く溢れ出る、蠍達の皇帝の絢爛豪華なる大量の素材の数々と共に、彼の目の前にはリザルト画面が表示されたのである。

 

 

 

 

 

『モンスター不世出(エクゾーディナリー)……解明(クリア)!』

『討伐対象:金晶独蠍(ゴールディー·スコーピオン)"皇金世代(ゴールデンエイジ)"』

『討伐者プレイヤー名:サンラク』

『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』

『称号【黄金革命(おうごんかくめい)】を獲得しました』

『称号【金色(こんじき)(かがや)不夜(ふや)(そら)】を獲得しました』

『討伐者プレイヤー:サンラクが、不世出の奥義(エクゾーディナリー·スキル)皇金時代(ゴールデンエイジ)】を習得しました』

 

 

 






因・縁・終・着


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