VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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何をしてくる形態か




不規則で見えない即死攻撃程、悪辣極まる要素は無い

嵩増(かさま)大黒繊(だいこくせん)始源(Primal)解帰(Revolve)、筋肉が膨張して巨大に膨れ上がった肉風船の様な姿と変わり、其の内側から脈を打ち鳴らす『不可思議なる黒一色の繭の様な姿』。

 

現時点では第三形態、しかしシステムウィンドウによって嵩増す大黒繊が左方始源獣エレボスの『筋肉』であり、僅かな文脈ながら『心臓に成り得る存在』であるという事が、ペッパーの脳内演算は弾き出した。

 

(第三形態、いやあの繭みたいな肉達磨は奴の『最終形態』への布石と見て良い。心の臓が躍動する………要するにあの中で『何かを行なって』、最終形態に移行するという事であり、そしてアレが外的要因か内的要因で破った瞬間に姿を見せる、そんな気がするな………)

 

繭系統のモンスターやボスは其の中身を外へ無理矢理引き出すか、敵の成長が完遂した状態で内側に出張って来るかの二通りが有り、調べようと触れた瞬間にアウト&画面暗転によるGAME OVER画面が表示される事が、一昔前のレトロゲームには搭載されている事例は良く有る。

 

敵が何をしてくるか一切解らない状態、念には念を入れてサキガケルミゴコロを何時でも使用可能にしておき、嵩増す大黒繊が打ち鳴らし続ける鼓動を聞く聴覚と、音響によって揺れる空気の流れを感じる全身の触覚の、二つのセンサーを今宵一際強く張り巡らせ身構えて。

 

(鼓動、ポンピングパンチ、空気圧縮、空圧排出、戦術機の白虎…………『不可視の見えない攻撃』!?)

 

思考とシナプスを撫でるゾワリとした感覚からサキガケルミゴコロの発動、脳内にて起きる死に直結する映像(ビジョン)発現によって見えた未来では──────

 

 

 

 

 

『圧縮された見えない空気の波がペッパーの胴体を圧し潰し、余りにも強過ぎる圧力が胸部と腰部を泣き別れさせる』

 

 

 

 

 

───────という、文字通りの『即死ステルスアタック』だった。

 

「うおわぁっ!!?」

 

一際大きく黒繭の鼓動が跳ね、ペッパーが其の身を屈んで砂原にくっ付けた瞬間、頭上を凄まじい突風が吹き荒んで通り過ぎ、彼が次なる攻撃に備えて立ち上がれば、再び黒繭が鼓動と共に跳ねて不可視の衝撃波が飛来する。

 

「っ、ステルスアタックなら此方にも手は有る…………は?」

 

対ステルスアタックモンスター並びにPKerへの解答策、清明界玉到観(クリスタル・アドバンテージ)界域を見定む眼(ターゲ・ザ・ワールド)の立体透視化コンボで、第三形態の嵩増す大黒繊が放つ不可視の空圧放出に抗わんとするペッパーだが、二つのスキルを起動したにも関わらず、空圧放出で形作られた攻撃を『知覚出来なかったのだ』。

 

「も、もしかして『普通の方法じゃ認識出来ない』って奴ですかぁああああ?!?!!」

 

魔天飛躍(まてんひやく)星天昇向跳躍(アーシェン・エトワール)で跳躍した数瞬、己の足元を吹き抜けた風圧が地上よりも不安定な空中に立つ彼の体勢を崩す。

 

そうこうしている内にまた黒繭が躍動、四の五の言ってる場合では無いと真界観測眼(クォンタムゲイズ)を使えば、不可視だった攻撃が波という形で彼の視界に示されて、空戦再帰(ウェイキング・アップ)とファウラム・チャージングで体勢を整えて再度の回避に成功した。

 

(真界観測眼を使()()()()()!サキガケルミゴコロは再使用時間(リキャストタイム)中で使えない、効果時間切れになったら回避がキツくなる………!問題はどうやって奴の不可視の攻撃を『見れる様にするか』、其れが解らなきゃヤバい!)

 

地獄巡りの周回でファウラム・チャージング込みで何度も使った真界観測眼と神律燼風(しんりつじんふう)の再使用時間は、再使用時間含めて何分のインターバルが入るのかを知っている。

 

敵が放つ攻撃に確実なパリィを決める為の攻撃の波の検知と、タイミングを合わせる為に素早く動ける様にする思考加速、次の攻撃を報せる波発生と到達前に己が取れる選択肢は、時間経過で着実に狭まっていく。

 

(見えない、ならば…………!其の常識を()()させる!)

 

敵の攻撃を報せる波の検知、神律燼風の起動でスタミナを削り擲つと共にインベントリアの操作、ペッパーの賭けで在れど確信と言える解答を。

 

深淵のクターニッドを満足させ(討伐し)て掴んだ報酬の一つ、プレイヤー用にダウングレードされた反転の力を宿す聖杯で、使用者の周辺色調を反転させる『緑の聖杯』。

 

専らフィールドギミックを見破る為に用いている此の聖杯だが、深淵の警鐘が始源存在の位置を報せる警報として機能するならば、此の緑の聖杯は始源存在が繰り出す即死級の攻撃を見破ったり、或いは『攻撃を封じ込める為の物では無いか?』と最近のペッパーは思い始め。

 

緑の輝きが灯り、夜空と黒一色の繭にペッパーが纏う装備の黒部分は真っ白に変わり、夜空の星々や月に装備の白部分は真っ黒に変わり、他の色もまた正反対の色へと反転し。

 

直後、脈動した黒繭より『真っ白い衝撃波がペッパーに向かって飛んで来た』。

 

「見えた!【収着せよ(Sorptionting-up)】ッ!【弾けよ(Poping-up)】ッ!」

 

両脚の深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)の機能で空中を踏み、速攻でカッ跳んだ足元を再び過ぎ去る突風に、今度は木の葉や羽毛の如く逆らわず、自然体に身体を流して体勢を整えて次なる攻撃に合わせて繭を狙いに行く。

 

もしあの中で何かが起きているとして、中身が完全に成熟させてしまった場合がヤバいのか、其れとも無理矢理にでも繭を破って中身を引っ張り出した場合がヤバいのか。

 

初めて嵩増す大黒繊に接敵し戦闘し、そして始源解帰を使わせた先駆者として、ペッパーは一つ一つの選択の中で何が正しく何が間違いかを確かめ、後進のプレイヤー達が接触した際に対処方法の認知を広げられる様に、一人孤独な戦いに身を投じ続けるのだ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてペッパーは知らない。

 

「園長〜〜〜。キャッツェリアは未だ何ですかねぇ………」

「シグモニア前線渓谷(フロントライン)の紅い光が近くに見えたから、かなりの距離歩きましたけどキャッツェリアは見えませんよ〜………」

「確か最近地下駐屯地が出来たらしくて、上手く交渉すれば休めるんじゃないですか?」

「そうねぇ………ボンゴロッソ熱帯浜の皆も拠点作りは順調だし、私達もスナノキ以外の中環地点を作らなきゃね」

「…………さっきから何か音だったり風だったり凄くないです?」

「「「「「確かに」」」」」

「もしや新種の動物だったり!?」

「「「「「「気になる!!!」」」」」」

「ならば班を二つに分けるわ!片方はシグモニア前線渓谷地下駐屯地を目指して、片方はさっきから聞こえる音の元を確かめましょう!」

「「「「「「「「了解!!!」」」」」」」」

 

此の場所に向かって、シャンフロ動物園として名を轟かせる動物狂いのクラン『SF-ZOO』が、Animaliaを筆頭に一部が音と風の発生源を確かめるべく動いている事を。

 

 

 

 

 






宴の気配に誘われて





膨封脈動筋黒繭(ヤクドウノタメノショウタン)

此のユニバースに置ける嵩増す大黒繊の始源解帰であり、第三形態であり、一種の要塞の様な状態たる肉達磨(繭)みたいな姿。

最大の特徴としては通常攻撃の圧縮黒色咆打(クウヲヘコマス)が此の形態では『遠距離攻撃』となり、不規則で一際大きく鳴った鼓動が『黒一色ながら不可視の状態で飛来する』という、文句無しの初見殺しを搭載している事。

第一・第二形態を通じて圧縮黒色咆打を使った回数に応じて威力が減少し、第三と最終第四形態でも威力()落ちるが厄介な事に変わり無い。

イメージは『星のカービィ ロボボプラネット』の勝ち抜きバトル最終ボス『星の夢.SoulOS』の最強最悪の初見殺し技の『ハートレス・ティアーズ』を不規則連発バージョンで、何処を狙っているか解らない為に回避は至難と言える。

…………が、此れは『自身に最も近いプレイヤーやNPCを狙う』特徴が有り、更には攻撃の波を知覚するスキルや魔法、或いは深淵のクターニッドの報酬の一つである『緑の聖杯』を用いれば、其の鼓動の軌道を知覚出来る様になる。


─────────尤も其れをノーヒントかつ初見で思考をフル稼働させながら、最適解答出してるペッパーが頭オカシイ

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