VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

1121 / 1162


一方のサンラクは




解を探して、道を得る

ペッパーが左方始源眷属(レイドモンスター)嵩増(かさま)大黒繊(だいこくせん)と接敵し、切札である始源(Primal)解帰(Revolve)を引き出させて戦い続けていた其の頃。

 

冥響のオルケストラの本体、地球産の音楽プレーヤーの持ち主達の経歴を調べたサンラクは、現在幾度目ともなる『壁』にブチ当たっていた。

 

(参ったぞコリャ………)

 

エムルを頭に乗せながら、あーでもないこーでもないとサンラクは考える。答えに至りそうで至らない、後もう少しで何かが見える所まで来ているが、其の少しが届かない………そんなもどかしさが彼の中で燻っている。

 

「あ、サンラク君………どうしました?何だが、困ってるみたいで………」

「レイさん。いやぁ、オルケストラで色々とね」

 

そんな中でログインして来たのは己の恋人であると同時に、此の世界(シャンフロ)最大瞬間火力の称号を持つサイガ-0と、エムルの妹のエクシスと彼女にテイムされたウォットホッグが居り。

 

サンラクはサイガ-0にオルケストラの音楽プレーヤーについて調べた事を話し、サイガ-0もサンラクから教わった情報と今迄の情報を合わせて考えて。

 

「やっぱり、難しいですか………」

「もう少しで答えが見えるというか………。オルケストラの本体の音楽プレイヤーに関して色々解ったんすけど、謎って名前の壁がまた出たというか………」

 

サイガ-0が考えている顔を間近で見たサンラクは、ジッと彼女の顔とうなじを見ており。

 

「…………」

「ふぇ?あ、あの……サンラク君?私の顔に何か………?」

「あ、いや、レイさんは考えてる時の顔も綺麗だなって」

「ほきゅふぉ!?」

 

ボスン!と水蒸気爆発じみたSEと、人が出して良い声では無い奇声を上げたサイガ-0を見、やっぱり玲さんは赤面した時の顔は可愛いし綺麗だと思っていれば、真っ赤っ赤に熟れて照りを帯びた林檎の様な顔で言った。

 

「うう……ちょっと身体から、私の魂が飛んでしまいそう………。そしたら私、きっと『生霊』になってサンラク君の枕元にだって飛んで行けそう、です………」

「ん?………今のって確か『源氏物語』だっけ?六畳一間すやすや所みたいな名前の………」

「えっと、はい………『六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)の事』、ですかね?」

 

最近の国語の授業で源氏物語に関する事が出ており、担当の堀川先生からも『期末テストで出すから確り押さえとけ〜』と言ったのを、サンラクもまた思い出す。

 

「そうそう。ああいう作品って、今では『オカルト扱いな物』も当たり前のように信じられてたっぽい、のが………読んでて、楽しい………───────」

「そう、ですね。六条御息所は……其の、強い想いを抱えて『生霊』になってしまう、女性で………。私だって此の『大きな感情』で生霊に………大きな、『感情』………─────」

 

生霊、オカルト、感情…………今確かに、先端が二人の『其れ』に引っ掛かった。

 

何気の無い他愛無い会話、其れが自分達の脳内の『其れ』に食い込んでおり。やるべきは釣竿の糸をリールで巻いて引っ掛かった『其れ』を手繰り、引き上げ、確かめる事のみ。

 

「………レイさん、今の六条御息所について知ってる?」

「………えっと、其の、六条御息所の想いは何方かと言えば『憤り』からなる物で…………『会話の流れとしての掛け合いの意味』が有って、後は其の女性の『強い想い』が根幹に…………」

「会話の流れ………強い想い………」

 

冥響のオルケストラ──────其の本体は『音楽プレーヤー』であり、過去の再現と現在プレイヤーの反映から成る存在であり、そしてオルケストラからプレイヤーは『何を』問い掛けられているのか?

 

其れは『過去から現在に問い掛けている』、其れ即ち『過去が未来に問い掛けている』事である。

 

(思い出せ。今迄のオルケストラに関して得た情報を…………!)

 

昨夜のアンサーコード・トーカーの言及を思い返せば、あの音楽プレーヤーはアンドリューの私物だが、厳密には譲り受けた品であり、其れを渡したのはエリーゼ・ジッタードールのファンだった中年代の男。

 

其の男の家族や知り合いの手を幾度も渡り、シュテルンブルームのメンバーにも使われていた音楽プレーヤー。

 

 

 

 

『其の音楽プレーヤーは人類種が星の海に船出する()()()作られ、そして千年単位の経年劣化を防ぐ保存加工を施す()()紛失した物だ。であれば─────()()()()()()()()()()()()()?』

 

 

 

 

「あ………!」

 

アンサーコード・トーカーの言葉、其の言葉こそがサンラクに答えに至らせる為に邪魔をし続け、道を塞ぎ続けていた『最後の扉』を開ける鍵を齎したのだ。

 

「エリーゼ・ジッタードールは『ブラフ』だ…………」

「ブラフ………ミスディレクション、みたいな物………ですか?」

「あぁ。オルケストラという存在の性質を考える時、俺はエリーゼ・ジッタードールを重要視してた。でも重要視した結果はオルケストラに辛酸を舐めさせられた挙句、謎解きに相当な時間を費やされてドツボに嵌められた。全く『百点満点のクソゲートラップ』だぜ………!」

 

オルケストラの正体とは音楽プレーヤー、アンドリューにとって()()音楽プレーヤーは後世に残すべきと考えた『愛着』のある道具、其れを数千年単位で単一の存在が持ち続けて運用する事は『先ず不可能』だ。

 

何せ其れは、他ならぬアンサーコード・トーカーが言っていたのだから。

 

「あの音楽プレーヤーは最初の持ち主の手に取られ、数多の所有者達の手を渡り、幾度となく()()された果てにアンドリューに辿り着いた、言わば()()()()()()()()()()()()なんだ………!」

「…………あ!其れって、確か『テセウスの船』………ですよね!」

「そう、其れだレイさん。アレを当て嵌めて真逆の思考をするんだ」

 

『ある物体の部品を全て新しい物に入れ替えた時、其れは元の船と同じ物と言えるのか?』という、哲学的逆説(パラドックス)を題材とした漫画であり、其処から劇場ドラマになった物。

 

構成要素がすべて変わっても、機能や名称、思い出等の『アイデンティティ』が同じならば其れを『同一とみなせるか?』という、所謂『同じ事』の定義を問う物。

 

其れをオルケストラに当て嵌めれば、『生産された時のパーツが一つも残っていない程に修理され続けた音楽プレーヤーは、されど音楽プレーヤーとして其処に存在している事』こそオルケストラの最大の謎だが、今のサンラクは其の謎への答えに辿り着いている。

 

そしておそらく、ペッパーはオルケストラにまだ挑んではいないが、既に真相(其の辺り)まで気付いている可能性が高い。そうでなければ、彼が『音楽プレーヤーの持ち主達の経歴を徹底的に調べる』という思考を持った事に説明が付かない。

 

冥響のオルケストラ:正典ルート『最終楽章』。

 

消えた楽団の代わりに感じた『視線と気配』。

 

此の世界(シャンフロ)の根本原理を踏まえた上での『オカルト』。

 

今は消えてしまった、ユニークNPC・遠き日のセツナという嘗て存在した『前例』。

 

其処からサンラクが導き出した答えは。

 

 

 

 

「…………音楽プレーヤーが生産されてから、今に至るまでに関わってきた『音楽プレーヤーの歴代所持者の意志』─────いや、もっと解り易くするなら『神代人類達の遺志の集合体』って所だ。

そして其れが『エリーゼ・ジッタードール』を歌姫として展開された『楽団(オーケストラ)』の正体であり、此の惑星に来る以前の存在が展開する『劇場(オルケストラ)』の正体。………あくまでも仮説だし、此れからライブラリの所に行って俺達の仮説を話して、情報の整理と擦り合わせをする」

「わ、私も御伴します………!」

 

道は見えて答えは確かな仮説へ成った、ならば後は見えた其の道を突き進むのみ。

 

そうしてサンラク達は一度ラビッツに戻り、イムロンとビィラックに武器の修繕を依頼した後、オルケストラが居る事務所(ドールベース)に滞在するライブラリとキョージュ達に、此の仮説を示す為にファストトラベルで向かって行ったのだった………。

 

 






導かれた答え


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。