繭は壊すか否か
通常時や透視立体化のスキルや魔法では攻撃見破る所か見ることさえ出来ず、攻撃を認識出来るスキルや魔法系統に周辺色調を反転させる緑の聖杯でならば見える現白一色の攻撃を回避し、ペッパーは
(此処まで剣撃と銃撃に拳撃は✕、打撃は△で弓撃は◯。始源存在達に銃の
一本で二百万マーニの値を貼り、射放てば魔力を引き寄せる避雷針、突き刺されば対象を凄まじい勢いで結晶化させる、
だが金晶蠍の矢が刺さった箇所も数度の流動からの鼓動によって圧し折られ、育つ水晶達も圧倒的なまでの振動や力を前に砕け、完全に嵩増す大黒繊を止める事は叶わない。
(其れがどうしたッ!!一本や二本で止まる程度、始源達が軟な存在じゃないのは既に解ってた事だろう!!)
一本で駄目なら二本、二本でも止まらぬなら三本、三本でも出来ぬならば十や二十に百本打ち込む覚悟で掛かれ!手を休めず、敵に息付く間を与えず、自分の有りっ丈を全て賭け皿に乗せて行け!
金晶蠍の矢の取り出しに射撃、此れを回転による移動打ちと回避を両立してダメージレースを加速させ、
此方の動きが変わり、今迄以上にダメージを与えて来る状態に、嵩増す大黒繊もまた脈動による不可視の衝撃波を不規則に飛ばし、ペッパーも緑の聖杯で見抜いた衝撃波の軌道を縫い、黄金の矢の尻に黄金の矢の鏃を更に食い込ませた。
(此れ、本当に効いてるのか!?大丈夫か!?あの繭を何とか切り開くべきか!?いや迷う暇が有るなら、兎にも角にも効いている攻撃を加え続けろ!)
当時ラピスに有りっ丈作って貰い、インベントリアの中に数十ダースは入れていた金晶蠍の矢が、恐ろしい勢いで目減りしていくのを横目に、此れでもかと弦に矢を乗せ、弓を引き絞り、敵を射る。
今回の戦闘経験から弓系ないし、弩弓剣系統のスキルが生えてくれば良いなと思いながら、現実世界なら既に指の指紋が擦り切れているだろうレベルの弓撃を続け───────『其の時』は訪れた。
「!」
鼓動し流動する黒一色の繭が止まり、刺さった金蠍の結晶化毒入りの矢が可動して水晶を作る音が鳴る中、ステージを遮るカーテンという帳を開く様にして、砂塵が舞う月光の元に現れた『一体の人の姿をした嵩増す大黒繊』。
だが其の人の姿は『触手系のモンスターが寄り重なり合って人の姿を形成したとしか考えられない』、成人男性程度の背丈まで縮んだ黒の四肢と胴体に一つ目付きの頭な姿と、各部の関節の間には『黒い稲妻が迸って脈動している』。
表面上だけでも『触れたら感電による死に直結する隙を晒すの未来』と、空気圧縮によって雷が発生する科学でも証明された事象から『超高速移動による超高火力の殺意満載の攻撃』が、ペッパーの脳裏には見えており。
『O、OOLiii─────────!!!』
バチリと響いた雷音と、走った瞬間に踏み締められて舞い上がった砂が熔けて、一瞬透明な硝子になったかと思うよりも前に、拳がペッパーの眼前まで迫っていた。
嵩増す大黒繊の最終形態は、第三形態時の繭にどれだけの攻撃を与えたかによって、大黒繊の『最終的な体型』は決定される。
より多くの攻撃を与えれば与える程、大黒繊の体格はより人間に近しい姿へと変わり、各部で成長し過ぎていた贅肉が別の部位に統合・削ぎ落とされ、より凝縮された筋肉へと変貌を遂げるのだが、繭の外側からの攻撃は内部で力を凝縮する大黒繊の早過ぎる目覚めに繋がり。
身体が小さい姿で在れば在る程に、圧縮空気解放と雷速で繰り出す攻撃の反動によって、唯でさえ成長による自壊のリスクが付き纏う大黒繊は、一回の行動毎に身体が文字通り『崩壊する』絶対不変の運命を背負う。
強くなり続けるという原始的な存在意義の元、己の膂力で己の身体が崩壊する結末が定まっていたとしても、
そしてそんな嵩増す大黒繊の生き様は、唯一人対峙した勇者に『覚悟』を決めさせるのに十二分な理由となり。
「───────」
バリリ!と響いた、己と同じ雷の轟音と蒼白なる閃光が走り、直後に鳩尾に蹴りを叩き込まれた事で大きく後退、同時に身体の筋肉と筋肉を繋ぐ腱や筋繊維が耐え切れずに、次々と断裂していく痛みが大黒繊に襲い掛かる。
空気を裂く雷音の方向には単身で己に立ち塞がった小さな人間が、蒼白の雷を全身から放って纏いながら此方を見、其の手には小鎚や大鎚とも、剣と弓の一体武器とも違う、他の武器とは明らかに隔絶した黄金と純白の盾を握っている。
「お前の覚悟に、俺もまた覚悟を以て応えよう………!」
金弓宝剛剣より切り替えし武器の名は
其の一振りにして四肢砕けども己を顧みずに弱き者を守り抜く不屈の盾が、命をギリギリまで削って発動させた晴天流【雷】奥義の「
眼には眼を、雷には雷を
※此のユニバースに置ける嵩増す大黒繊の最終形態のイメージは『遊戯王』のカードの一枚、『