VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いの後に




一つ終わって、一つ生まれて

「ふぃ〜…………」

 

全身を走っていた呪い相殺の罅割れが塞がり、其れにより勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)のバフも断裂し、軈て成神による雷のバフも消えた後に、ペッパーの口から此の戦いで蓄積された疲労や緊張と言った要素が吐息の形で漏れ出す。

 

始源存在(レイドモンスター)単騎(ソロ)討伐、神代の頃ではウェザエモン辺りがやっていそうな気配は有るが、現代有史の視点では初と思わしき偉業の達成………此れは遅かれ早かれペンシルゴン達からの『オハナシ』は不可避になったと見て良い。

 

『ワン!』

「インベントリアから見ていたよ、契約者(マスター)。まさか始源存在の一つを単身で討ち取るとは」

「相手と自分の相性関係が良かっただけに過ぎないよ。実際此の戦い、死んでてもおかしくなかったからね」

 

第三段階時の不可視衝撃波飛ばしと、最終形態の時間制限超過で勝利確定ながら雷速攻撃を仕掛ける二つは、兎にも角にも殺意の『質』が違った上に、初見と初戦闘故に事故での脱落すら有った戦いで。

 

汎ゆる可能性を否定せず、汎ゆる状況に対処出来る様に心掛け続けた事が、今回の戦いで戦果を挙げる一番の要因だったと言える。

 

そして嵩増(かさま)大黒繊(だいこくせん)が斃れて消えた場所には、始源存在を討伐した(報酬)が砂漠の上に転がっており。一見すると黒一色の草食恐竜の卵サイズの物で、手に持った瞬間『意志を宿しているかの如く』解れ、中からは『真っ黒に焦げ付いた様な見た目の骨付き肉』が出て来た。

 

其れを見ているノワが警戒と言うべき喉の鳴らし方から、果たして討伐報酬の真っ黒焦げの漫画肉はどんな物なのか、フレーバーテキスト含めてチェックと参ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒常極色密積柔肉(ザリエヴェ・ジュネレイトミート)

 

 

此のアイテムは食べる事が出来、インベントリに入れていても腐食及び劣化せず、プレイヤーが食す事で其の食事度合い(最大100%)に応じて筋力・耐久・スタミナに倍率分の数値を加え(最大五倍)、魔力(MP)・技量・器用に倍率分の数値が減少し(最大1/5)、食後から二十四時間の経過で元の形状に再生する。

 

但し食事度合い20%毎に肉体の暴走崩壊判定が発生し、失敗した場合は食者のアバターには状態異常:暴走崩壊が付与され、十秒毎に筋力と耐久の差分が継続して体力より引かれ、体力が0になった場合に即死する。此の効果は食者の死亡まで継続し続ける。

 

暴走崩壊判定付与は食後から二十四時間継続し、暴走崩壊判定は食者の幸運値に影響され、幸運が高い程に付与される確率は減り、食者の侵蝕律が高い程に暴走崩壊の影響が緩和される。

 

また此のアイテムを所持した状態で、別の嵩増す大黒繊を討伐した場合、此のアイテムによって食者に齎される倍率が強化され、其の倍率はアイテム所持者の嵩増す大黒繊の討伐個体数に比例する。

 

 

 

 

 

黒とは深く、深きモノ、果ては見えず、届かぬモノ、其れでも果てを目指すというならば、其の身に罪過と代償と禁忌の烙印を。

 

同じ血肉を通わす同属を喰らう禁忌を犯せし罪過を、己が身体すらも崩折れ朽ちさせる程の代償を、其の身が黒へと堕ちる禁忌の道を進む以外に道は無し。

 

食らえ、喰らえ、食らえ、喰らえ、食らえ、喰らえ、食らえ、喰らえ、食らえ、喰らえ、食らえ、喰らえ、クラエ、クラエ、クラエ、クラエ、クラエ─────────クラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエクラエ─────────。

 

─────────黒に堕ちる、其の刹那(トキ)まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや怖いわ!?」

 

テキストの最後はゾンビ物のホラゲーで良くある、筆記者がゾンビになる最後辺りの文脈で、普段はゲームと割り切れるが夜真っ只中で此れを見ると、身構えていても恐怖の感情が猪一番に出て来る。

 

テキストを此のまま読み取るならば、此のアイテムを食べると特定のステータスが増減し、一定以上食べると死ぬまで身体が壊れ続ける効果が付与され、幸運によって免れる可能性は在るが其れは乱数次第であり、侵蝕律なる物が高まれば症状を緩和出来るらしい。

 

其の侵蝕律なるステータスはおそらく、高潔度や歴戦値にヴォーパル(だましい)と言った一種の『隠しステータス』に当たる物で、暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)屍肉喰らいの鉤爪(ネクロファジィ)末期(マツゴ)(ナグサ)メと同じ始源存在の討伐報酬から、始源関係のステータスであると理解出来ると同時に、暴血赤依骸冠のテキストに漏れず此れも食べ続ければ『ニンゲン ヤメマスカ?』一直線の劇物だと、ペッパーは静かに確信した。

 

「あっ居たわ!彼処よ!」

「雷の発生源は此の辺り………ってペッパーさぁん!?」

「もしかして嵩増す大黒繊の討伐者、ペッパーさんですか!?」

「ディアレちゃんにアイトゥイルちゃん、其れからノワちゃん達は居ますか!?」

「嵩増す大黒繊討伐は自分で、ノワ達は今インベントリア内に居ます」

 

そして此処でやって来たのは、動物狂いのAnimaliaと彼女と志を同じくする、動物好きの面々で纏ったクラン:SF-ZOOのメンバー達で。

 

ノワは彼等彼女等の、特にAnimaliaに撫でられた時の臭いを覚えているからか、インベントリアの中に身を隠し直して、ペッパーは武器やら黒常極色密積柔肉を仕舞った上で答える。

 

当然だがシャンフロに置いて未だ接敵報告が少なく、ましてや撃破アナウンスすら無かった完全未知のレイドモンスターを初めて討伐する栄誉を戴いたのが、シャンフロで様々な旋風を巻き起こしては爆弾情報の数々で他者の脳髄を無差別爆撃で更地にする、ペッパー・天津気(アマツキ)其の人だった事。

 

そんな彼が激闘の疲れを加味して今日のシャンフロを終えるべく、セーブとログアウトする為にキャッツェリアに戻ろうとしたのだが、彼の地を目指し長い長い旅路を進んで来たSF-ZOOの面々から引き止められた上で道案内、更には嵩増す大黒繊の生態やら特色に付いて『オハナシ』をする事になったのだった。

 

 

 

 

余談だが、嵩増す大黒繊の正体を知ったSF-ZOOの一部プレイヤーは身の毛の弥立った上で悲鳴を上げたり、ペッパーが始源存在のスレッドに大黒繊の情報を投稿しようとするのに対し、VRシステムを使った思考入力手段のレクチャーでサポートに回ったのである…………。

 

 

 






やらねばならぬ事が山積み


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