VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ペッパー 対 エクゾーディナリーモンスター




其の疾走は烈風と成り、其の激闘は魂を揺らす

ブルックスランバー、別名を悪辣ペリカン駝鳥。栄古斉衰の死火口湖を、登山ルートで攻略をしようとする開拓者を追い回し、口に含んで運送した挙げ句に湖へとポイ捨てする、製作者(産みの親)の悪意が節々から滲み出ているモンスター。

 

サードレマから旅立ったプレイヤー……余程敏捷スタミナに秀でた状態か、極論二極振りにしなくては上位勢ですら逃げられずに、落下死に持っていかれる事が、如何に凶悪かを理解出来る。

 

では、そんなブルックスランバーが突然変異か何らかの理由で、通常個体以上の『スピードとスタミナを得て』。更に落下死に持っていく悪辣さを、全て『攻撃能力に振り切った』場合、一体どうなるか?

 

━━━━━━━━━━━今に解る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どわぁぁぁぁ!?」

 

直線走覇からの鋭角ターンの切り返しで突撃してくる、此のブルックスランバー。普通の個体とは違って群れる事をせず、習性に従って突撃してくる同胞達さえ『お前等邪魔!』と言わんばかりに、大型トラックで轢き殺すが如く走り回っている。

 

「見た目は差違有れど、ビルディファイトでブシカッツォがメイクしたリーエルが、常にエクスプロージョン・チャージを使い続けてる感じか…ッとふぉ!?!」

 

首を低く下ろし、空気抵抗を減らして、全速力で走る。おまけにリュカオーンの呪い(マーキング)を見たり、感知したにも関わらず、逃走の素振りを一切見せていない。間違いなく、あのペリカン駝鳥のレベルは自分よりも『上』だ。

 

「レベル諸々含めて、アイツの方が上…か」

 

嗚呼…自分はある意味『幸運』だ。此の青駝鳥を前に、今の自分では何もかもが『劣っている』。だからこそ。此迄得てきたスキルを、習得した致命の武術を、際限無くぶつけにいける。

 

「フッ…やってやろうじゃん、青駝鳥!いや………ブルックスランバー"最速走者(トップガン)"!」

 

直線の突進攻撃を回避し、アイテムインベントリよりペッパーが武器を取り出して、其の身に装備していく。

 

「さぁ…暴れよう、レディアント・ソルレイア!そして早速の初陣だ、最速走者を斬り倒すぞ!

 

荒れ狂い暴れよ!風神刀(ふうじんとう)碧千風(そうせんふう)】!!」

 

此の世に甦りし天覇を模した遺産の一欠片と、双皇甲虫の素材を用いて造られた、翡翠の太刀が鞘より抜かれて、風雷を纏いて彼の周りを包んでいく。

 

其の風を、雷を。レディアント・ソルレイアが食らい、己の力に変換して、鳴り響くのは『エネルギー・フルチャージ!』の音声。其れが合図となり、ブルックスランバーは弾かれたパチンコ玉の様に飛び出して、ペッパーも横にホバー移動による回避を行う。

 

最速の走りを誇りとする鳥と、風雷を従える一人の開拓者の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルックスランバーが、コミュニティを構成・暮らしていく中で、極稀に『速度のみ』を馬鹿の一つ覚えであるかのように追い求める、異端児たる個体が産まれる。

 

走れ、走れ、走れ━━━━まるで何かに取り憑かれたように、唯々ひたすらに走り。コミュニティも、伴侶も、子供も、己の命すらも捨てていく。

 

そうして産まれたブルックスランバーの異端児は、大多数が走る中で己の命さえも薪とし、走覇に全てを注ぎ尽くした結果、人知れず……否鳥知らずに死んでいく。

 

 

 

だが……━━━━━━━━━━━━

 

 

 

そんな異端児の中でも、本当に極々僅かに。走覇に全てを捧げながらも、今尚も走り続けられる存在が居たとしたならば。

 

其の存在は孤高であり、異端であり、最速であり、そして不世出たる存在(エクゾーディナリー)と成る。

 

そうしてブルックスランバーの中でも、異端を極めし存在へ、彼等は彼女等は畏怖を以て、其の者をこう呼ぶのだ。

 

 

 

最速走者(トップガン)━━━と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最高速度維持と持久力特化に至った異色個体。其れがペッパーが、此のブルックスランバーとの戦いで感じた、モンスターとしての特徴だった。

 

(巨体を用いながら、スタートから一瞬で最高速度に到達しての突撃。要するにアクセルから、いきなりトップギアに入るせいで、走り回られてちゃ手が出せない!)

 

パウリングプロテクトで弾きつつ、レディアント・ソルレイアのブースターで加速し、鋭角ターンの瞬間を狙いに行くが、其れを解っているかのように、最速走者は『逆方向』に鋭角ターンを刻んで行く。

 

「だぁあ!またかよッ!?」

 

かれこれ10回目(・・・)のフェイント鋭角ターンに、ペッパーはスキルを空振りされまくった事で、怨唆の声を上げて。頭を低く下ろして突撃を敢行してくる、最速走者の攻撃を躱わしつつ、どうしたもんかと頭を悩ませる。

 

悪辣さが攻撃の為の知性に振り切られているせいで、並大抵の企みが此の駝鳥には効果が無い。攻撃を当てるならば、ターン直後に発生する僅かな減速の瞬間を狙いたいが、逆方向へのターンのせいで其れも通じない。

 

そして攻撃方法は突進オンリーと、通常種共々多様性は無いようだが、たった一つの物事を。ただ走る事を極めに究めて、窮め抜いた奴が繰り出す武器は、単純明快に恐ろしい存在である。

 

正拳突き一つを限界まで突き詰め続けて、音速を越えた飛翔正拳にしたNPC。

 

剣一本の上段唐竹割りを極め抜いた果て、一つの宇宙を両断した剣の師匠(ラスボス)

 

虚弱体質の身体ながら、鍛えて鍛えて鍛え上げ続けた筋肉で、最後の最後に主人公を救ってみせた親友。

 

自分にしかない唯一無二の武器を見付けて、研鑽と鍛練を以て磨き上げた結晶は、時に多大で多数の武器を持つ者や、全てで優れた強者すらも倒す力に成るのだから。

 

「くっ!埒が明かない…!!」

 

突撃を行う最速走者から逃れる為に、ペッパーは一度ホバー移動を切り、『クライムキック』と『ムーンジャンパー』、更には『八艘跳び』を起動させて突撃をジャンプで回避する。

 

「ちぃっ……何とかして、アイツの移動パターンを見極めないと…!このままじゃジリ貧一直線━━━━!!」

 

歯軋りしながら今、敵は今何をしてるか、今どうなっているかとペッパーが地上を見た時。山肌に刻まれた最速走者の『走った後の痕跡』を目撃した事で、彼の頭にアイデアが降りてきた。

 

「……『目に視える全てが答えに非ず。時に世界を反対より視るべし』━━━か」

 

昔の謎解きアクションゲームに在った、立方体のエネミーに対する戦い方を伝授された時、モブ教官が言っていた台詞を思い出したペッパー。

 

「漸く見えたぜ、最速走者……!お前の『攻略法』がな!」

 

高所からの落下と着地時のダメージを、レディアント・ソルレイアのホバー機能で無効化しつつ、彼は碧千風の鋒をブルックスランバー"最速走者"に向けたのである………。

 

 






天から見えた、勝利の天啓。


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