VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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準備は忘れずに




摩天越えて、世界を震わせ 〜其の二〜

シャンフロからログアウトした楽郎は、対オルケストラに向けてシャワーを浴びて身体と髪を拭き清め、ライオットブラッド・アンデットを飲む前に以前斎賀 玲(己の恋人)に教わった『神経系列のズレを是正する精神統一の坐禅』で体内時計とシナプスを流れる電流の流動性を高める。

 

「…………ふぅ」

 

所謂サウナ等の蒸し風呂で起きる『整う』に近い感覚を帯び、ライオットブラッド・アンデットを一気に飲み干す。

 

生配信の為に作った『Sun(サン) Luck(ラック) Channel(チャンネル)』に別天律(ことあまつ)隕鉄鏡(いんてつきょう)との紐付けは完了済み。シャンフロ内で起動すれば何時でも生配信可能な状態であり、後は己が得てきたオルケストラへの推理と解答が正しいかを確かめるのみだ。

 

「よし、行くか」

 

灼骨砕身(シャッコツサイシン)による呪いの相殺と、月光浴で魔力を掻き集めた至高思金(オモイカネ)シリーズによるスキル再使用時間(リキャストタイム)短縮を練り合わせ、本来なら愚者込みでも数日掛かる兵威逸体(エピタフ)も再使用可能な状態まで回復した。

 

いざ、オルケストラとの決戦(リベンジ)へレッツゴー!!

 

 

 

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「サンラク、準備は出来た?」

「まぁな。そっちの様子じゃ終わったみてぇだな」

「ビィラックさんも例の物を作り終えたから、三人で協力して一気に終わらせた。本当に大変だったからね」

 

兎御殿の休憩室に備えたベッドにて覚醒からエムルを回収し、ビィラックの鍛冶場に赴けば君を待っていたとばかりに、旅兎王装を纏ったペッパー・疲労困憊のイムロン、眠気眼のビィラックと祈る様に手を合わせたサイガ-0の姿が。

 

「ペッパーさんの協力も有って、何とか時間内に間に合わせられたわよ………。いやホント、師匠のパワードスーツの出力が凄い………」

「此れがワリャが渡したモンで作った奴じゃけぇの。んで別に頼まれてた物も出来ちょる。コレに名付けるなら『混剛の合金(アダマス・インゴット)』、其奴を使うからにはオルケストラに必ず、一発ブチ噛ましてくるけぇ…………!」

 

ビィラックがサンラクに手渡すは、片手に『出来たてホヤホヤのビィラック謹製の皇金剣(アンティアレス)』に、もう一方の手には『様々な鉱物を混ぜ合わせて作った見た目の延棒』の、然しながら『凄まじき気配を宿し漂わせる超合金製の延べ棒が複数本』と、対オルケストラを見据えた決戦兵器達の様だ。

 

「サンキューな、ビィラック。イムロン。ペッパー。レイさん、頼みます」

「はい。任せて、下さい…………!」

 

鍛冶師の手に直された武器はサンラクが受け取り、皇金剣と混剛の合金をサイガ-0が受け取る。

 

おそらく此れもサンラクとサイガ-0が考えた、対オルケストラの戦略の一環…………即ち『サイガ-0が武器とアイテムを受け取る事で、皇金剣と混剛の合金の()()()()()()、オルケストラが相対者の武器・防具・アイテムを模倣(コピー)する範囲から外す』、二人なりの解答であり一種の裏技だ。

 

更に其処から考えるならば、サンラクとサイガ-0がリヴァイアサンで購入して居るインベントリアを共有状態にすれば、空間内で合流可能な特性を利用して『オルケストラと戦う前にサイナとサイガ-0が入る事で最終楽章に置ける対サンラクへの優位性を確保、並びにサイガ-0を通じた武器の受け渡しを行う』といった方法を狙っているのだろうか?

 

─────────そして何より恐ろしい事は、一連の流れを見ていたペッパーの予想は『此の時点で()()()当たっている』点で、仮に此の推理を話していた場合は二人から『懐疑的な目で見られていた』だろう。

 

「よし、じゃあ行ってくるわ」

「頑張れー」

 

生配信の形式は大丈夫かと考えるが、流石に凡ミスで無差別視聴可能にはしていないだろうと思いつつ、ペッパーはインベントリアに鍛冶用の金床を収納から自身もインベントリアに入り、旅兎王装の力で嵩増(かさま)大黒繊(だいこくせん)との戦いで消耗した武器達を一つ一つ回復させていくのだった………。

 

 

 

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インベントリアにサイナが居る事を最終確認の後、エムルとサイガ-0にエクシス達を連れて開かれたゲートを越えたサンラク一行は、何度目ともなるオルケストラ在住の事務所(ドールベース)に到着。

 

待っていたとばかりにキョージュやミレィを始めとする、新大陸前線拠点から此処まで来れたクランメンバー達がサンラク達を出迎える。

 

「さて、サンラク君。いよいよ、と言った所かね?」

「おうよ、隕鉄鏡もスイッチ入れりゃあ何時でも配信出来る。で、件の『へそくり』は?」

「無論有る。補助魔法の使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)各種に回復アイテム達だ。費用は此方で全持ちで君にとって色々得になる物を我々の主観で厳選している」

「リアル待機組も控えてますので、何時でもどうぞとの事でーす」

「うっし…………じゃあレイさん、作戦通りに。此方の待機組はエムルの事を頼む」

「は、はいっ!」

「ラジャです、ツチノコさん」

「任せて下さい!」

 

付けられた黒星の分を数百倍返しにする為、サイガ-0含めてライブラリと練りに練った作戦を完遂し、オルケストラの仮称:正典ルート完全攻略を成し遂げるべく、インベントリアにライブラリが用意した使い捨て魔術媒体に回復アイテム各種を収納。

 

隕鉄鏡のスイッチを入れれば、リアル側からも撮影開始されているとのミレィに連絡メールで来た事で、漸くオルケストラへのリベンジ戦に洒落込める。

 

「じゃ行ってくるわ」

「期待してますよ〜」

 

サイガ-0がインベントリアに入り、空間内に居る事をサイナが確認した事で、サンラクは扉の前に踏み出し。そうして四度目となる扉は開かれ、サンラクの為に歌うオルケストラ主催のコンサートへと入場して行った。

 

「……………さて我々もリアルに戻り、サンラク君とオルケストラの戦いを視聴するとしよう」

「ですね、キョージュ。いやはやとっても楽しみです、一体どんな秘密が隠されてるのか」

「一瞬たりとも目が離せない戦いになりそうだ………」

 

誰も彼もが冥響のオルケストラの正典ルートと真なるエンディングに思いを馳せて、ログアウトしようとした待機組以外のプレイヤー達だったが、ミレィに新たなメールが届き。

 

其の内容を見た彼女が「あっ」と言葉を漏らした事で、一部のメンバーが反応から問い掛ける。

 

「ミレィさん、何か有りました?」

「いや、あの………、此れに関しては私じゃなくて、リアル待機班が気付けなかったのが原因というか………」

「…………ミレィ君、要件をだね」

「…………サンラクさんの配信、形式が『パブリック配信』になってるそうです」

「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」

 

一般的に配信等はパブリックかプライベートを切り替える事が出来、プライベート配信の場合は配信者のチャンネルに登録する事で初めて視聴が可能になり、メンバーシップ限定動画を設定したりする事で、安定的な収益を稼げる。

 

其の一方でパブリック配信は余程の事が無い限りは見向きもされないが、配信者の知名度(ネームバリュー)によっては一本の動画だけで数十万人の新規登録者を獲得可能な、一昔前のアメリカンドリームにも似た夢と浪漫に溢れている物だ。

 

「いや違いますよ!本当、本当です!私が話すのを渋った訳じゃなくてですね!?今!さっき!メールが来たんですよ!本当ですよー!?」

「………日頃の行いでしょう、此れは流石に」

「貴方に言われると無性に腹立ちますよ、ケケケーラさんッ!」

 

ライブラリ達の混乱、サンラクの生配信、そしてリアルでライブラリから送られたメールから無差別に拡散されたURLリンク。

 

其れが瞬く間に拡散されて、視聴者数・同接者数が鰻上りの勢いで増え、遅れる形でチャンネル登録者が増える状況が、今宵を生きる人々の話題を産み出し、視聴者へと変えて行くのだった…………。

 

 

 

 






全 世 界 拡 散


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