VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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答えを求め、いざ開戦




摩天越えて、世界を震わせ 〜其の三〜

リアルタイムで生配信され、其の配信がライブラリのリアル待機組によりパブリックになっている事が発覚し、てんやわんやしている事を知らないサンラクは、コンサートホールという名の劇場もとい戦場にて目を覚ます。

 

近くには別天律(ことあまつ)隕鉄鏡(いんてつきょう)が俯瞰視点で浮遊し、此方の脳波を受信したのか良い位置に付けた。

 

「あーあー、コホン。えーと、冥響のオルケストラは基本的に一対一(タイマン)で戦う事になり、御覧の通りフィールドは中世の劇場で行う」

 

インベントリア内のアイテム含めた最終確認、歩む彼の視線の先には壁に埋め込まれた音楽プレーヤーが一つ在るのみ。

 

「さぁて………。ベヒーモスで徹底的に調べて来たぜ、オルケストラ。お前が歩んで来た其の道もな」

 

ベヒーモス第十階層のデータベースで調べた、アンドリュー・ジッタードールが持っていた音楽プレーヤーは、骨董品として購入した最初の所有者から其の血縁者に受け継がれ。

 

地球から脱出する際にリヴァイアサンへと持ち込まれ、其処から幾人の手に渡って使われ、当時の所持者がリヴァイアサンからベヒーモスの艦移住の際に共に渡り、複数人に所有された後にアンドリュー・ジッタードールの元へと辿り着いたのだ。

 

「オルケストラは嘗ての。神代以前の所有者達の遺志が宿っている(モノ)であり、そして神代以前の人類との対話に近い(モノ)だ。…………じゃあ、()()()()()?」

 

電源を入れて唯一つの曲を再生すれば、歌姫エリーゼ・ジッタードールの出現を皮切りに様々な楽器を持った音楽団団員達が現れる。

 

オルケストラという存在が神代人類達の遺志の集合体であり、所持者達が紡いだバトンタッチの結晶であり、此の劇場こそがオルケストラの世界其の物だと、サンラクは此の瞬間に知覚して。

 

同時に音楽プレーヤー(オルケストラ)の所持者達を知ったからこそ、現れた存在(歌姫)の『矛盾』にも気付けている。

 

「お前の歴代の所持者達、其の中にはシュテルンブルームのメンバー達は居たが、エリーゼ・ジッタードールは居ない。じゃあ『何故お前は其処に居る』、其れじゃあ『辻褄が合わない』だろう………!」

 

オカルトパワーで無理矢理再現したならば解らなくも無いが、そうなると『何故エリーゼ・ジッタードールが歌姫として選ばれたのか?』という疑問が出て来るが、一度再生した歌は挑戦者(サンラク)が死ぬか、向こう(オルケストラ)が倒れるかの結末が出るまで終わらない。

 

音楽団員達の奏でる旋律(メロディー)歌姫(エリーゼ)の歌声が高らかに響き、口から紡ぎ流れた声は劇場に揺れて戦場へと変わって、其の歌詞が謳い示すは己がシャンフロ最速の称号を戴く事になった、始源存在の一柱たる『(むさぼ)大赤依(だいせきい)』。

 

周りに当時の討伐戦参加者達も再現される中、サンラクは隕鉄鏡に写る位置取りと全体を写しながら、ライブラリに向けたオルケストラのボスラッシュ概要を軽く説明する。

 

「一体目は貪る大赤依で、当時は廃人プレイヤー達と一緒に倒したっけな。後オルケストラのボスラッシュは、プレイヤーが此迄に戦ったモンスターやプレイヤー中から強敵難敵をランダムに抜粋、四回に分けて繰り出してくる。当時他のプレイヤーと協力してたなら、其のプレイヤーも再現するので複数回倒してる場合のヒントにはなる」

 

一度オルケストラによって再現され、R.I.Pと別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ)を使い、最大速度を獲得するスピードの連続攻撃をした記憶は残っているし、其処に至るまでの記憶はエリーゼの歌詞も朧気だが覚えているので、サンラクは忘れぬ内に攻略に挑む。

 

…………尤も此の配信がパブリック形式である為に、不特定多数の視聴者達が見ている事を、挑戦者のサンラク本人は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーーーーーーーーーにやってんですかねぇ、此の人はさぁ………」

 

情報とは何時の時代も武器として扱われる物であり、時に世界を戦火に落とす火種であり、時にたった一滴の積み重ねで巖を貫く雫でもある。

 

そして情報とは時に思わぬ場所から出てくれば、有象無象の情報の中に揉まれて消えるか、有象無象の情報をも飲み込んで巨大な情報として世界に這い出るかの二つであり、『現在進行系でシャンフロの有名人サンラクが冥響のオルケストラとの戦いを生配信している』との情報。

 

其れは今宵、一際大きな話題となって様々な人やゲーマーに配信者達が注目し、画面の中で空中を跳ねて飛んで走るサンラクの姿に打ち込まれたコメントが凄まじい勢いで表示され、次のコメントの濁流に飲み込まれて消えて行った。

 

『今の内にやっとくかぁ!変身ッ!』

 

画面の中で流れる様に青の聖杯で性転換からバニースーツに着替えるや、其の手に黒いクリスタルを握り締めて魔法少女物含めた、コッテコテの御決まりな台詞を唱えた瞬間に着たばかりのバニースーツが弾け、黒いゴスロリチックな喪服姿になったサンラクが現れる。

 

手慣れた一連の流れと光景は視聴者コメントの更なる爆増を齎し、視聴者と高評価にチャンネル登録者の数が留まる事を知らぬ状況は、来たる新王と先王の身内争いに備えて準備を進めていた天音(あまね) 永遠(とわ)にも衝撃と頭痛を与えるには十分で。

 

(サンラク君が配信者魂に目覚めたって可能性は、まぁゼロに近いかな。結構シャイボーイな訳だし………で、タイトルのオル検証はライブラリが関わってる可能性大、サンラク君なら討滅とか攻略をタイトルに付ける。…………あぁ成程、此れはサンラク君が『公開設定ミスった感じ』か)

 

動画のタイトル、サンラクというプレイヤーの人読み、シャンフロの情報と記憶から大方の事情を察した永遠は、何れ来たる戦争に対して『此の状況をどう活かすか』についてを考え始める。

 

(視聴者数は既に一万越え、同接者の数に至っては十万に迫ってる。此のペースを維持しつつ、更に盛り上がる場面が現れたら最終的に同接者は八百万、登録者は百万くらいに迫る。となると広告塔作戦は…………駄目だね、逆に足を引っ張るか…………何よりこんな一大イベント、見逃す事は損)

 

「………………はぁ。全く、やる事が山積みじゃないの」

 

眠気覚ましと夜更かしする為の珈琲を淹れる湯を沸かしながら、彼女はスマフォを弄って学生時代からの悪友と大好きな恋人にメールを打ち込んでいく。

 

画面の中では真っ赤に満ちた飛蝗の大群によって置換した、左方始源獣エレボスの血液たるレッドキメラが咆哮する中、ライオットブラッドがジワジワ効き始めて随分とハイテンションなサンラク(♀)の姿が在ったのだった………。

 

 

 






小手調べからフルスロットル


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