VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

1134 / 1161


四体目は如何なる敵か




摩天越えて、世界を震わせ 〜其の六〜

皇金世代(ゴールデンエイジ)兵威逸体(エピタフ)により産まれた分霊サンラクと共にサンラクは張り倒したが、此処から先の戦いは回復不可縛りが付いたので難易度は大きく跳ね上がった。

 

其れでも早々やられてやるつもりも無いし、此のままオルケストラを回復不可縛り付きで突破出来たならば、今後のクソゲーでも同等級の理不尽が向けられようが乗り越え切れる自信が付く。

 

「さてと、エピタフ君はインベントリアに入っててくれ。いざって時は呼び出すから頼んだぞ」

 

言葉は無くともサムズアップで答え、インベントリアの中に退避した分霊サンラクをサンラクは見送る。

 

ペッパーに付いて来た分け身のノワがインベントリアに入れる点から、ポルターガイストに近い物を持つ分霊サンラクもインベントリアに入れるのでは?と予想していたが、結果的に収納出来たので良しとしていると、エリーゼの歌声が響き渡りて四体目の存在が構築され始めた。

 

『サンラクの紡いだ物語。第四楽章………【墓守への鎮魂歌(レクイエム)】』

「おっラッキー、ウェザエモンじゃん」

 

レイドモンスターにエクゾーディナリーモンスター二連戦、そして最後の四体目はサンラクにとって当たりも大当たりな、反転の夜空と星に満開に咲き誇る桜の巨樹の下に再現されるは機巧の鎧武者たる、七つの最強種(ユニークモンスター)墓守(はかもり)のウェザエモン。

 

リヴァイアサンの全盛期(ナーフ前)のウェザエモン・天津気(アマツキ)と幾度も戦った経験と、オルケストラの初戦の二体目に登場とレベル50固定化の影響と第二段階で呼び出す戦術機馬(せんじゅつきば)騏驎(きりん)】と交戦していないので関係無し。

 

更には第三段階は再現ペッパーが再現ウェザエモンの天鬼夜咆(てんきよほう)を封じたり、最後に破天光(ハテンコウ)天晴(テンセイ)と激突から鍔競り合うタイミングで横から援護、吹き飛ばす手伝いに入る事が当時オルケストラ側からの要求タスクだったので、サンラク視点でウェザエモンの題材を簡潔に言うならば『ユニークモンスター題材では最速最短クリア可能な一番の大当たりの部類』に該当するモンスターなのだ。

 

ライブラリはウェザエモンの真理書を持っていない事や、ペッパーが説明兼実演している可能性も無きにしも有らずだが、最終楽章まで時間も有るので各種準備も可能な点を鑑みた結果、此方でウェザエモンの解説を入れるのも一興と、サンラクは言葉を紡いで初手断風(タチカゼ)に備えて構える。

 

「えー、四体目。ユニークモンスターの墓守のウェザエモンっすね、再現体だけど………っと初手だ」

『断風』

「此れは初手首狙いの抜刀居合で断風。最初は必ず首狙うらしいけど、当たり前に胴や脚に腰とかも狙う。予備動作に腰に大太刀を置いて一秒後に放つんで、回避の目安は予備動作の段階で避けるのが吉。裏技としては断風を打たせる前に大太刀の柄尻をブン殴って、奴の手からスッぽ抜けさせる事かな」

 

ウェザエモンと言えばの代名詞(サンラク基準)、最速抜刀居合を身を屈んで避けつつも隕鉄鏡をオート操作で自分と再現ウェザエモンを映す位置を取らせれば、次々とサンラクに襲い掛かるは神代人類が受け継ぎ、最強の一個人に継承され、今の自分も習得した晴天流(せいてんりゅう)…………其の研鑽の果てに習得と成る奥義の数々。

 

地を裂く炎の龍に天より落ちるは灰と熱の帳、其の直後に地上へ新たに降り注ぐ雷の連打、隙間を縫いて淀む事の無い最速の掴みからの再来の抜刀居合と、其の何れもが他者から見れば少なからず死を思い浮かべる技達で。

 

「ウェザエモンの最後に繰り出すのが天晴で、今のは順番に火砕龍と火砕龍のコンボ技の灰吹雪、雷鐘と大時化で断風、んで他にも入道雲と…………天気予報?だったか。フィールド全体攻撃技が有る」

 

しかしサンラクにとって時の歪みを起こして来る(ラグアタック)抜刀居合や、攻撃時の技の影響と結果に現象の残留、更には複数分裂の多方面同時攻撃という無法に近い技の数々を、今戦っているウェザエモンの数倍速い挙動で繰り出された経験をしたが故に、自分が油断と慢心しなければ『何の問題も無い相手』なのだ。

 

任意の一歩を超高速移動にした挙動による回避で龍と雷の包囲網を抜け、最速の掴みは脚パリィの練習がてら弾いて、腕にブーツの足裏を設置した状態でサマーソルトキックを噛ましながらの空中一回転で避けて着地。

 

「【収着せよ(Sorptionting-up)】!【弾けよ(Poping-up)】、そんでもって【収着せよ(Sorptionting-up)】!」

『雷鐘…………入道雲』

「当たってやんねーよヴァーカ!!俺を捉えたきゃ複数体に増えたり、攻撃現象停滞させるとかくらいして来いやぁ!!」

 

空いた手首から浮き出た雲の巨腕は神代技術による鍛冶で作られたブーツで言霊を紡ぎ、足裏で集めたマナを弾いて空中にカッ飛び、再び足裏にマナを集めて踏み止まりつつ空を駆けて、再びの雲の巨腕による叩き付けすらも避けて地上に降りる。

 

「此方は回復不可縛り付けた最終楽章が控えてんだ。元が耐久ゲーだろうが、俺の最終調整のウォーミングアップ兼サンドバッグとして骨の髄まで付き合って貰うぜパチエモンさんよぉ!」

 

耐久ゲーの側面を持つ此の楽章の中、最終楽章の対『サンラク』に備えた各種準備をしつつ、晴天流の奥義達を躱すサンラクに、エリーゼの歌声とオーケストラによる演奏が再現ウェザエモンを第三段階に突入した事を報せ。

 

当時共に戦ったペッパーが演奏と共に動き出して聖女ちゃんの聖水入りの瓶を投げ付け、発動したならば即死確定の危険技:天鬼夜咆(てんきよほう)を封じ込めて進行し、ウェザエモンのパワードスーツを取り出し纏う中で空隙を埋める様に再び再現ウェザエモンにサンラクは立ち向かう。

 

そして遂にクライマックスを告げる歌詞の中、単身天晴に立ち向かうペッパーの動きに再現された京極(キョウアルティメット)と共に、大太刀バンガードの横っ腹へ渾身の一撃を以て合わせて得物を吹き飛ばした事で、第四楽章は終わりを告げたのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

*********************

*******************

*****************

 

 

 

 

*****************

*******************

*********************

 

 

 

 

 

 

第四楽章の終わり、音楽団員達のコーラスも少しずつ消え始める。

 

()また一()と、多重奏の旋律は小さく、細くなって消えている様で………だが其の実態は自分(サンラク)の輝きを観る為に、其々が手に持つ楽器を置いて観客席へ移動しただけなのだ。

 

一度ならず二度、そして三度に渡りエリーゼが言った『コレ』とは『私達』、其れ即ち『嘗ての音楽プレーヤーの所有者達』であり、同時に此の惑星に辿り着いた後に滅びた『偉大なる神代人類達の視線』、其れがあの言い知れぬ視線達の正体。

 

「此れにて第四楽章は終わったが、次が最終楽章…………此処から先が本番だ」

 

浮遊する隕鉄鏡に向けてサンラクは話し掛けつつも、己を完全に模倣(コピー)した『サンラク』を対策しなければならず、サンラクを『サンラク』が諸々のステータスが上回った状態で対策して来るという、単純な方法では勝つ事の出来ない相手との戦いに備える。

 

「偽典ルートはライブラリの話じゃフルオーケストラで戦うとか言ってたが、正典ルートは歌姫一人だけの独唱。オーケストラは一人を残して消失し、歌姫が仮面を渡す事で残った一人がプレイヤーのコピーになる。

此の時インベントリやインベントリアの中に在る装備やアクセサリーの性能含めて、一部除いて完コピするから気を付けた方が良いな………オルケストラのボスラッシュを見て解ったと思うが、プレイヤーは第一から第四楽章がランダムである以上、持っている装備を絞る行為は自身を追い詰める悪手になりかねない」

 

最終楽章までの過酷な道程、出される題材がランダムであるが故に可能性を絞り切れず、全てを持ち込む事によってオルケストラはプレイヤーの完全模倣の出力を凄まじい物に出来る。

 

最初の内はどうやって勝つのかと思ったり、楽章を通じて武器や防具の特色とスキルを色々試したが、結局は自身の視野の狭まりと思考が凝り固まった事で、大事な部分を見落とし続けていた…………というのが答えだった。

 

「コピーの強さだが、体感自分と同じキャラを使う自分より強いプレイヤーと考えてくれて構わない。ステータスも二割増くらい強い気がするし、ステータス格差はどうしようもないが、最終楽章で征服人形が場に居る状態だと詳細不明だが行動パターンが乱れて、最適解を取れなくなるみたいな。

多分此の理由はオルケストラ………というより壁に埋まってる音楽プレーヤーの歴代使用者の中に『シュテルンブルームのメンバーが居て』、ベヒーモスで歴代所持者の経歴を調べたが『短期間でシュテルンブルーム全員に所有者権限が移っていた事』から、多分音楽プレーヤーを『貸し回して皆で聞いてたんだろう』。

だから征服人形(コンキスタ・ドール)………アンドリューが作ったシュテルンブルームの似姿の奴等が居ると、オルケストラ内部で貸し回していた事に由来する現象として、主導権を巡って()()が起きるんじゃないか?っていう俺の考察だ。…………多分ペッパーは既に其処まで気付いてるんだろうけど」

 

気付いてるか気付いていないかで問われたら、先ず気付いていると考えてしまうのがペッパーというプレイヤーであり、此処最近の彼は思考深度の深淵具合にペンシルゴン並みの察しの良さ、ディープスローター(ナッツクラッカー)並列思考(マルチタスク)処理技術も相俟って怪物一直線な訳だが。

 

「問題はプレイヤーの完コピヤローを普通に倒そうとすると、倒す寸前でオルケストラが楽器生産からの完全ガードをしてくる………まぁつまり『普通に倒すだけじゃない何かが必要』って訳で。当時は自力で攻略しようと躍起になって連敗してたが、一度冷静に考え直してみたら『オルケストラユニーク発生に征服人形との契約が大前提な時点で、征服人形が無関係な訳が無かった』って事実に改めて気付けた。

そんな理由も有って、俺()は失敗前提で複数回挑戦なんてかったるい真似はしないし、自分から回復不可縛りを付けた状態でシナリオクリアに全リソースを投入する」

 

 

 

─────────では登場していただこう、ウチのサイナさんとサポートのエピタフ君、そして特別(スペシャル)ゲストの覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)にな。

 

 

 

サンラクの指パッチンと同時、片方のインベントリアをトントンと叩いた後、思考誘導によるオート操作と共に隕鉄鏡が虚空を見つめ、直後に此の決戦のフィールドへと現れる『新たな人影達を映し出す』。

 

其れは此の場に置ける新たなる歌姫の登場であり、其の身に纏うは創造者の趣味全開の衣装ながら、旅立つ我が娘に贈った契約者(サンラク)が此迄見た事の無い、黒を基調とした新たな衣装を身に纏い。

 

其の決意の眼差しを湛えた一機の人形が此の世ならざる格納の世界より、皇金世代と死闘を越えた分霊サンラクのエスコートを受けて、分霊サンラクの手には黄金の龍刃にして覇刀は静かながらも力強く現世に降り立つ。

 

「好調?」

「上々かと」

「其れは重畳だ。そしてドラグマ、お前の力も貸して貰うぜ」

『成程。あやつがオルケストラであり、オマエとオマエの魂を分けた者が倒すべき存在という訳か。…………面白い、オレの刃で斬れるか確かめて見るか』

「頼むぜ。エピタフ君同様、勝つ為に龍刃だって借りてぇのさ。…………さぁいよいよ最終楽章だ、覚悟は良いかサイナ。俺とエピタフ君、そしてドラグマは既に出来てる」

「理解:此の一戦は当機(わたし)にとって決別であり、そして宣言であり………」

「深く考えてるとまたインテリジェンスがバグるぞ」

「フッ…………天が地に落ちる事に怯える姿の何と愚かな事か」

「言うじゃねーか」

 

オルケストラが独奏へと向かい、エリーゼの後ろで『サンラク』に変わるヴァイオリニストが控える中、一人と一霊に一機と一本は此の最後の戦いに改めて集中したのである。

 

 

 






眼には眼を、歌姫には歌姫を


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。