VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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最終楽章開幕




摩天越えて、世界を震わせ 〜其の七〜

歌姫の独奏の始まり、観客席に数多の視線がステージに立つのはサンラク・兵威逸体(エピタフ)により産まれた分霊サンラク・エルマ=サイナ・覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)、対する相対者はエリーゼ・ジッタードールと完全模倣された『サンラク』へ注がれる。

 

劇場でありオルケストラの世界其の物たる此の場所では、招かれたサンラクとサンラクと同じエピタフ、意思を持ちながらも武器である龍神楽、そしてエリーゼと『サンラク』にはスポットライトが当たれど、此の場に置いて異質で異分子なサイナに光は当てられていない。

 

「いいえ、いいえオルケストラ。此度はそうはいきません──────!」

 

が、オルケストラの最終楽章が自分と『自分』の戦いであると言うならば、歌姫に相対するは遠い日に咲き誇ったアイドルグループメンバーの似姿たる『征服人形(コンキスタ・ドール)』こそ、此の大事な一戦で鍵を握る存在だ。

 

相手が自分を仲間外れにするならば、自分が其処へ飛び込む勇気を─────────其れがサイナがサンラクと共に水晶巣崖に突撃し、死ぬ事の恐怖と生きている事の安堵を知り、サンラクと分霊サンラクの背を見て皇金世代(ゴールデンエイジ)を共に倒した先で得た『学び』。

 

其れ即ち『自らを照らす光は自らの手で作り出す事』を。

 

「認証省略、自己判断にてプロセス開始。

簡易格納機構(インスタント・インベントリ)展開(オープン)重奏支援拡声機(ハーモニクス・スピーカー)設置(セット)自律浮遊照明(スポッティングドローン)起動、光子仮想有線(ノンイグジステントケーブル)誘導開始………接続完了。

当機(エルマ=317)を中心点に半径1メートルを領域指定………偶像概念舞台(アイドライズステージ)形成(ビルドアップ)!」

「オイオイ何其の素敵機能は!?」

 

ステージと巨大な機材達が現れ、スポットライトが歌姫を照らして、サイナが立つ地に彼女が作った彼女の居場所(ステージ)が一瞬の内に出来上がり、此処に歌姫(アイドル)の生き写しと再現された歌姫(エリーゼ)が相対する。

 

当機(わたし)当機(わたし)自身の意思で此処に立つ………尚此の機能は征服人形の基本機能の一つです」

「アンドリュー君………!」

 

ペッパーが言っていた事は確かに偽りでは無かった。何せ人間という生物の精神構造は有史以来より武装展開・全身換装の変身・巨大魔法陣の出現という、三つの要素(ロマン)を前に敏感に身体が反応する様に連綿と紡がれた生物なのだ。

 

どうしようもないロマンチスト?其れで良いじゃないか。ロマンチストだろうと揶揄されようが、変態だろうと笑われようとも、其れすら突き詰めた其の果てで、神殺しを成し遂げた奴を別の世界(ゲーム)で見た事が有るのだから!

 

「こっからは俺達のステージだ!サイナ、イケるか!!」

「インストール開始:何時でもいけます」

「冥響よ、張り合うに遜色無し!こちとら星に響く華の歌だ!さぁオルケストラ………、()()()()()()()()()!!!」

 

サンラクの言葉、インベントリアから武装を抜き打ちで持てる様に備え、一瞬の空隙が流れ。

 

「『La──────」』

 

二つの歌姫による美しい歌声が最終楽章の死闘開幕を報せる号砲となって響き渡り、サンラクと分霊サンラクが走り出すや否や、『サンラク』もまた兵威逸体を使って『分霊サンラク』を作り上げる。

 

「初っ端から隙だらけだぜぇ!!!」

『……………!』

 

相手が白紫病霊針(コル・ド・ヴァラント)を『分霊サンラク』に投げ渡し、『サンラク』が槍焔剣(そうえんけん)アラドヴァルを持つならば、此方は第一から第四までの間でちょくちょく使ってゲージMAXまで仕込みを終えた碧羅(ヘキラ)&金漆(ゴンゼツ)、分霊サンラクに傑鎚との憧焉終鎚(エリサ・ドゥタール)をパスしていざ戦闘!

 

踏み込みからの超高速初見殺し移動で引金(トリガー)を引き、風雷のエネルギー弾が『サンラク』………を狙うと見せ掛けた『分霊サンラク』の死角を突く様に飛んで行く中、『サンラク』は射線上に割り込んで深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)の【収着せよ(Sorptionting-up)】で脚パリィを敢行。

 

「エピタフ君、あんま無茶はすんなよ!いざって時は俺が二対一を引き受け………ん!?」

 

分霊サンラクの斬打二刀流に『分霊サンラク』の双剣の激突で火花を散らし合う中、其の二人の間で変化が起きた事にサンラクは目を丸くし。

 

同時に分霊サンラクと『分霊サンラク』も其の変化を機敏に察知して、互いに距離を取った瞬間に其れがハッキリと知覚出来る物に変わった。

 

『La───、La、La───』

「───遠く、遠く、在りし日の姿を夢に見た」

 

二人の歌姫と二つの歌声、歌詞の無い純粋な歌声で世界を構築する歌姫(エリーゼ)の旋律へ対抗するが如く、想いを込めた言葉を奏でるサイナの歌声が響き渡る。

 

歌は世界を変えるとは良く言った話だが、成程確かに言い得て妙だ。何せ此の劇場が現時点を以て『真っ二つに分かれようとしている』のだから。

 

「過去の栄光、天を()する威容。旅立ちを見送り、故郷に残った其の姿を」

 

サイナの歌声をスピーカー達が支え、サイナの想いを増幅させて更に高らかに響かせる。其れはサイナの元になった人物………即ち『咲洲(サキシマ)エルマ』のソロ曲であり。

 

同時にエリーゼの世界にて敷かれたレッドカーペットを下からブチ破り、此の劇場に新たな世界が………サイナの思い描く世界が此の場所に構築されていく。

 

「今は亡き其の姿、私は今も夢に見る。憧れの中に根ざす私の───摩天楼(マテンロウ)!!!!」」

 

劇場世界を引き裂き破り、地より聳え立つ摩天の楼閣と支えるアスファルトの舗装路、そして夜空と星の全貌の何割かを隠された煌びやかな世界が其処に在る。

 

契約者(マスター)、どうか存分に」

「よっしゃあ!!!」

 

サンラクと『サンラク』、分霊サンラクと『分霊サンラク』、歌姫と歌姫の激突の再開。

 

イムロン製の剣銃(ソーデッドガン)達は既にインベントリアに収納済み、相手である『サンラク』がアラドヴァルを変えぬなら、取り出すべき武器は第一と第二楽章を通じてスローター行為により片手剣級の軽量化された別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ)

 

槍焔剣アラドヴァルの攻撃力は確かに凄まじい。だが其れは滾り燃える炎が灯る()()が有ってこそ、初めて其の真化は発揮される物で有り、そして其れが無いと言う事は即ち。

 

「今の段階じゃ武器として使えても、アラドヴァルに『エンジン』が入ってねぇんだよ!燃料(MP)加えてからエピタフ君出すべきだったなぁ『サンラク』さんよぉ!!!」

『…………!』

 

『サンラク』は数的不利を打開する為に兵威逸体を使ったが、体力と魔力(MP)を使って『分霊サンラク』を産み出す行為が、結果論だがアラドヴァルの燃料不足を招く現象を齎した。

 

此の時点で『サンラク』は、兵威逸体を使うタイミングを『完全にミスった』と断言して良い。

 

プレイヤーのトレースAIを搭載した再現『サンラク』並びに『分霊サンラク』、サイナの歌合戦は主導権の奪い合いにエリーゼのリソースを向けさせ、其の影響がプレイヤーの再現体のAIレベルが下がった事の証明となり、嘗ては勝てないと思っていたオルケストラ相手に漸く細くとも『確かな勝ちの目が生えた事』を、サンラクの脳内思考と演算に閃かせる。

 

巨人族の英傑武器の爆撃ノックバックをも歯牙にも掛けぬ重量を持ち、最終楽章時点までに片手で持てる様に備えて来た墓標の大剣が『サンラク』を押し込み。

 

状況打開に『サンラク』が繰り出すヤクザキックを半歩踏み込みで躱し、其の最中に龍宮院流剣術「引き波の型」でアラドヴァルの剣身を滑らせて『サンラク』の体勢を崩させ、神律燼風(しんりつじんふう)驚雷羅刹(きょくらいらせつ)を組み込んだ「打ち波の型」でタイムラグ無しの斬り上げに転じれば、『サンラク』も摩天縮地(まてんしゅくち)多重的円周運動(オービット・ムーブメント)雷閃超越(いなびかりこゆる)を回避に用いた。

 

アラドヴァルは相性が悪いと紅蓮海の拳帯(レガレクス・セスタス)に変えた『サンラク』と、ある程度の打ち合いを経て『サンラク』に合流する『分霊サンラク』が白紫病霊針から新たに冥王の鏡盾(ディス・パテル)深帝の覇角槍(アドヴァンスド・ディープ)を『サンラク』に与えられ。

 

サンラクもまた別離れなく死を憶ふと冥王の鏡盾を分霊サンラクに、分霊サンラクは覇刀:龍神楽と傑鎚との憧焉終鎚をサンラクへパス回しで交換から仕切り直す。

 

本来オルケストラの最終楽章は一対一(ワンオンワン)だが、兵威逸体の効力によって二対二(ツーオンツー)になった此の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。

 

 






歌え、スカイスクレイパーの下で


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