二対二の異質な戦い
「サイナァァァ!!!もっとボリュームとバイブス上げてけー!!!エリーゼのヤローに歌声で負けんなああああ!!!」
「───地に頬を当てて、揺れぬ眠りに夢を見る。私は空の中でなく、空を見上げて眠りたい………!!!」
『La───、La、La───!!』
夜空と高層ビルにアスファルト、劇場と楽器にレッドカーペット、歌声と旋律同士のぶつかり合い。レッドカーペットをアスファルトが喰らって飲み込み、ビルを内側から弦楽器と管楽器が食い破る様たるや、世界と世界の境界線を塗り変わり続ける光景其の物。
「おぅりぁ!!」
『……………!』
サンラクが
分霊サンラクが
『奴の持つ武器、あのグローブらしき物にオレの波長は
マナ粒子の塊である天覇のジークヴルムの角と黄金の
例え其れが霊体で在ろうと、クリティカルを出せば貫通攻撃になるボクシンググローブで在ろうが、マナ粒子が絡むとなったならば時間は掛かれども、黄金の龍刃は世に留まる念を断ち切り、クリティカルを出す際の『タイミング』すら刃先の波長の『波其の物を』掻き乱してズラす事すら朝飯前。
何よりも意思を持って自ら思考し、己を進化と変化を続ける其の武器は、冥響のオルケストラであっても模倣不可能な代物であり、此の戦いでサンラクと分霊サンラクが幾度も『サンラク』と『分霊サンラク』との激突を経た中で進化し、自らを戦闘の中で適応し続ける『異質な存在』として、歌姫や隕鉄鏡から世界を観る者達の目には映っている。
空気を膜にして自身を反動から守る蝦蛄の突起を素材に進化したグローブと龍刃が交わり、マナ粒子によって固められたガードを切り崩した空隙を突いた分霊サンラクに、己の死の未来を垣間見た『分霊サンラク』が回避してカウンターを仕掛けるも、龍神楽と言うイレギュラーが視線を目視し己が意思で分霊サンラクの腕を、身体を引っ張って『分霊サンラク』の拳打を横から弾き押す。
『今ッ────ぬぅっ………!』
「おおっスゲェ!惜しいぞエピタフ君!ドラグマ!!」
決定的な隙、流れる廻渦白波による二の太刀と龍宮院流「打ち波の型」を彷彿とさせる攻め、そして兇嵐帝痕の回転と重力補助スキルを合わせた、分霊サンラクの『三次元回転殺法二刀流の一閃』は
だが其の当たっていたという運命は、何処からか飛んで来たクラリネットに邪魔をされて届かず、ならばと回転の勢いで投げられた龍神楽も超音速で割り込んだフルートが鋒を阻んで防がれ、分霊サンラクの空いた掌に柄が収まる。
『ヤツの飛ばす物体は直ぐに消え、あの魂を分けたサンラクとやらが持つ武器やらには適応出来れど、歌っている奴の飛ばす物体は斬っても斬っても此方が適応する前に別の物を飛ばして来る。…………厄介なヤツだ』
「いやそうでもねーぞ、ドラグマ。エピタフ君に振るわれながら劇場を見ろ」
『む?』
オルケストラに模倣させずに仮称:楽器ガード、もといエリーゼに忖度ガードを選択させる行動を取らせている時点で、サンラクからすれば『充分な成果を出している』と言っても過言では無い。
何せエリーゼが忖度ガードをする度に相手の注意が『サンラク』と『分霊サンラク』に向き、楽器を展開する程に劇場と楽器とレッドカーペットによる世界の侵食速度が、最終楽章開始時点よりも『落ちている』のだ。
即ちエリーゼが『サンラク達』を守ろうとすれば、必然的にサイナから目や意識を離す事を意味し、其の合間がサイナの展開する世界がエリーゼの展開する世界を塗り潰していく事に繋がる。
「お前がエピタフ君と一緒にあっちの『エピタフ君』を追い詰め、俺が『俺』を追い詰める度にエリーゼは楽器………いや、此の場合『納得いかない!』とか駄々捏ねて楽器をぶつけて阻む。
オマケにドラグマはオルケストラにコピー出来ないって事実と、エピタフが霊体存在で霊体関係スキルで産まれたからこそ、お前が身に付けた…………タマダチ?だったかが、向こうのエピタフ君に天敵クラスで『ブッ刺さってる』──────っと来やがった!」
サイナの展開している世界の中に聳える摩天楼の鋼鐵樹木を駆け走り、『サンラク』と『分霊サンラク』が空中機動系スキルで地の利を生かして迫って来る。
「とは言え、だ。武器の動きもあっちは対策しそうだし、そろそろ此方もギア上げてブン殴るとしますかねぇ!!」
籠手を収納から『サンラク達』の攻撃を回避、片方のインベントリアをツンツンとサンラクが指先で二回軽く叩く。
其れは此の時を見据えて恋人であるサイガ-0と決めた作戦、考察クランのライブラリが
インベントリアの空間内に顕現し、そしてサンラクが居るオルケストラとサイナの世界の主導権を争う戦場にて具現化するは、因縁の果てに討ち取った隻眼の
黄金なる針先で延棒を刺せば混剛の合金を一気に吸い尽くし、根元よりバキバキと音を立てて成長し、食らった合金と同じ様々な色彩織り成す肉厚な片端の刃が構成されて、戦場に其の威容と威光を示す。
「第二ラウンドだ『俺』、ギア上げてブッ飛ばしてやる」
バックステップから再び踏み込み、オルケストラとエリーゼに忖度ガードを引っ張り出させんと、サンラクは聖剣を構えて向き合った。
素寒貧になるまで削り潰せ