VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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止まらないから




摩天越えて、世界を震わせ 〜其の十三〜

摩天楼と高速道路が交錯し、デコトラが重力浮遊(ホバー)で爆走する中、赤と金と半透明の三つの勇士が激突する。

 

「良い加減に、くたばれやオラァ!!!」

『……………!』

 

至高思金(オモイカネ)シリーズに宿る能力には、月光に当たる事で体力(HP)と魔力(MP)の超高速リジェネを搭載しながらも、余剰分の数値を装備耐久値の回復・スキル魔法の再使用時間(リキャストタイム)短縮・全ステータスの強化の三項目を選択(チョイス)し、装備者の任意で切り替え(スイッチ)が出来る。

 

兵威逸体(エピタフ)によって回復不能の制約は、至高思金シリーズのリジェネ余剰数値を加速度的に跳ね上げると共に、其の数値をスキルの再使用時間に組み込む事で神秘(アルカナム):愚者(フール)の半減効果と相乗効果(シナジー)を発揮。

 

赤獣化した『サンラク』がステータスの暴力で殴るならば、サンラクは回転率が限界突破した機動系スキルの連打で対抗し、ステータス強化を筋力に絞り込んで紫色の毒巡るハルバートを二振りの刃で受け流し、デコトラから落ちぬ様に踏ん張れば横から分霊サンラクが赤獣の尻尾を斬り裂かんとして避けられた。

 

『ヤツも学習している様だな、サンラクよ………!』

「そうだな!厄介此の上無い、が─────『三十秒経過』だ。所でノ(・)ル(・)マ(・)は達成出来ましたかねぇえぇえええ、俺様さんよおおおおおお???」

 

当然ながら此の場にはサンラクと分霊サンラク、そして『サンラク』以外の姿は無く………暴走判定解除に必要な『三体以上のモンスター等の撃破』を満たしていない。

 

であるならば此れより起きる事は、本来ならばリュカオーンの刻傷(こくしょう)によって踏み倒している、暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)が持つ『三十秒毎に暴走判定が適応され、満たしていない場合の効果発動』だ。

 

『……………!……………!!!』

 

サンラクが勇魚(イサナ)兎月(トゲツ)を別離れなく死を憶ふ(メメント・モリ)に切り替えれば、百足式(ムカデシキ) 8-0.5(タウゼント)をデコトラに突き刺し、片膝を付いた赤獣状態の『サンラク』が変貌していく。

 

両腕はゴリラの如く肥大化して、鰐に近い曲がり方をした前脚と化し。両脚と背骨含めた骨格は纏めて捻り曲がり、ライオンやチーターの猫科の肉食獣に見られる後脚へと成り果て、深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)こそ其のままだが、其の体勢は人では無く獣に近い状態に。

 

最後には無数の目を宿した仮面の中に浮かぶ数多の目達もまた獣の瞳孔(其れ)に変化して、赤い尻尾と仮面の下に有る口はティラノサウルスに近しい形状(物)に変わった。

 

『Gorrrruuuu──────!!!』

「ッシャア!気合入れてライブ攻略だゴラァ!」

 

PVPで続けていた状況はPVMへと変わり、此処までの対『サンラク』の攻略要素をかなぐり捨てて、自分がやって来た暴血赤依骸冠使用状態の情報を記憶の沼の中から引っ張り出し、突撃を掛ける『サンラク』に対処する。

 

突風を突き抜けながらに尾と後脚でバランスを取って迫る『サンラク』は、兎にも角にもステータスの暴力を前面に押し出した『剛よく柔を叩き擦り潰すスタイル』と、仮に馬鹿正直に真っ向から克ち在った場合の結果は既に目に見えており、当然負けの顛末が待つのみだ。

 

ならばどうするか?ならばこうする!

 

「楽しさと時間は比例するし、天才だって人間だ!!」

 

例え武術を極めて先読みを使え、主人公の人気すら奪ってしまう空手家の中年だとしても。人間という生き物は初見の攻撃には、僅かながらに警戒してしまうのが『本能』である。

 

例え其れが投擲と言う名で、空いている片手でポーションをインベントリアから出し、手に取らずに深厳戟響脚の爪先で軽く前に蹴り出した結果、赤獣じみた『サンラク』の視線がポーション入りの瓶に向いて。

 

(勝機ッ!)

 

撃鉄は引かれて、殲嵐が渦を巻き、至高思金シリーズが間に合わせた、雷閃超越(いなびかりこゆる)・多重的円周運動(オービット・ムーブメント)・摩天縮地(まてんしゅくち)の凶悪雷速無音円周移動(疾風迅雷バージョン)がサンラクの身を『サンラク』の視界より消し去り。

 

墓標の大剣による渾身の一突きは『敢えて』わざとらしく『サンラク』の前で繰り出した事で相対的立体運動(ソリッド・マニューバー)の発動条件を満たした事で横に回避され。

 

「俺にも出来る、ならお前にだって出来る。そうだろ、エピタフ君ッ!」

 

疾風迅雷…………空中を爆速で駆け抜けて迫った分霊サンラクに呼び掛け、サンラクが大剣より手を離して煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)に切り替える中で、分霊サンラクが加速するや深厳戟響脚の足裏で墓標の大剣を横から押し込み。

 

対する『サンラク』はサキガケルミゴコロかフューチャー・ヴィジョンで、其れすらも予測していたかの様に…………否、サンラクが煌蠍の籠手の切札たる【超過機構(イクシードチャージ)】:超排撃(リジェクト)を確定で当てに来ると読んだ回避挙動を取り。

 

「……………ありがとよ、拳(・)の(・)方(・)を(・)警戒してくれて」

 

其の手に握っていた蠍の籠手はデコトラの荷台屋根に突き刺さり、サンラクの手には黄金の龍刃と煌帝の聖剣の二振りが握られ、分霊サンラクは墓標の剣を回収していた。

 

至近距離の攻防と思考の交錯、籠手武器かつ一番の御気に入りというべき逸品と其の切札をも捨札として切り、本命は疾風迅雷の行動中に分霊サンラクがそっと空中にて落として、サンラクへと渡した覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)と混剛の合金(アダマス・インゴット)により刃を作った皇金剣(アンティアレス)。

 

「ドラグマ!」

『無論ッ!!』

「『魂魄切断(タマダチ)ッ!!!』からのッ─────刃糧煌剣(イミテーションゴールド)ッッッ!!!」

 

殲嵐と黒雷の一撃。魂のみを斬り裂きて外傷を与えぬ斬撃が『サンラク』を袈裟斬りに、逆手持ちにした皇金剣が産み出した刃を砕いて灼光を持った一閃が『サンラク』の身体を薙で斬るも、後ろに下がられた事で致命傷(クリティカル)を避けら(外さ)れて。

 

ならばと駄目押しに、嵐に押された回転による加速を乗せた後ろ回し蹴りで『サンラク』の横っ面を蹴り抜き、デコトラから蹴り落とながらに、自身は撃鉄解除と籠脚の機能(チカラ)で空中に踏み留まる。

 

「此れで死………」

 

其の直後、最後尾を走るデコトラの一台が急ブレーキを掛けて『サンラク』を拾い、残るデコトラ達も目的地を変更した様に方向を変えて『サンラク』を拾ったデコトラに合流し、再び鉄騎の群れとなって道路を走って行く。

 

「───────はぁぁぁぁ……………」

 

此処まで散々手古摺らせ、最後はデコトラから蹴り落として落下死させようとしたのに、まるでシャンフロシステムが理不尽を強いるが如く、そうは問屋が卸さんとばかりに『サンラク』を助けた事で、サンラクは腹の奥から深い溜息を零し。

 

其の背中には『さっさと全力を出せ』やら『まだア(・)レ(・)を使ってないんだから使いなさい』と、RPGのプロローグでよく見るシステム側からの『此れを選択しないと先に進ませません』とルートを固められている、そんな感覚に似ていると言うべき物がベッタリとくっ付いており。

 

「───────やれやれ、俺(・)の(・)負(・)け(・)だ(・)。御望み通り…………俺の全身全霊、見せてやんよクソAIが………!」

 

サンラクは此の瞬間を、クソゲーを強いるクソの様な敵を倒してクリアする、此の感覚を誰よりも待ち望んでいたとばかりに、獰猛な笑みを浮かべて笑ったのだった。

 

 






理不尽も纏めてブッ飛ばせ


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