VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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『自分自身(サンラク)』を超える為




摩天越えて、世界を震わせ 〜其の十四〜

深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)で空を踏んで走って、道中至高思金(オモイカネ)シリーズを脱いで兵威逸体(エピタフ)で産まれた分霊サンラクと、分霊サンラクに渡し直した覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)と共に、武器を回収してサイナが居るステージの在る場所まで戻る。

 

「契約者(マスター)、其れに半透明の契約者(マスター)」

「サイナ、手短に伝えるぞ。此れがラストオーダーだ………泣いても笑っても此の一撃で勝敗は決まる」

 

確信を以て言ったサンラクにサイナは一瞬目を丸くしたが、其れも直ぐに背筋を伸ばした後に優美なる一礼を以て答えた。

 

「………御命令を。当機(わたし)は貴方の人形。貴方に寄り添い、共に在るモノ。当機(わたし)は──────」

「手短にって言ってる、んなもんわざわざ口にする事でも無いだろ。良いか、アイツ(『俺』)に出来る事は俺にも出来る。なら彼女(エルマ・サキシマ)に出来る事はお前でも出来る、だから………『俺を摩天楼で超上空まで連れて行け』」

 

契約者から飛び出した無茶な注文(オーダー)、即ち『世界を捨てて己の想い描く象徴を歌い上げるという物』で、一瞬躊躇いそうになったサイナの心情を察したのか、サンラクは彼女に言った。

 

「エルマ・サキシマの展開した世界は今、あの無数に走るデコトラと四路線の高速道路に集約されてると言っても良い。鏡は対面した存在と何時だろうと『同じ事をする』…………ならば『お前にも出来る』。

つまりアレに力を集約出来るなら、お前も此の摩天楼を世界として集約出来る筈だ」

 

オルケストラが未だ全容が見えず理解(わか)らない中、オルケストラと同じ力を行使するという難題。

だがサンラクと共に此処まで旅をし、其の背中と勇姿を幾度も見て、Nパッチのインストールによって自身の感情を理解した彼女は、其の答えを行使する為の『歌』を導き出せていた。

 

「……………確証は、有りません。当機(わたし)の演算能力を以ってしても、どういったプロセスを経ているのか、完全な解答を出す事は現状不可能です。…………ですが。当機(わたし)は非論理的な根拠を以って、こう断言します」

 

御任せを─────そう力強く答えを発したサイナに、サンラクは煌めくマントを翻しながらもサムズアップで答え。

 

「頼んだぜ。エピタフ君、もしもん時は後詰め兼俺の救出頼むわ」

 

力強く頷いた分霊サンラクと共に前に立ち、畝り狂う大蛇の如き高速道路とデコトラの大群が爆速し、鉄の車体に乗った赤い獣の『サンラク』が夜空に浮かぶ月を背にして、急降下して降りて来る。

 

「サイナ、頼むぜ。………空へGOだ!!!」

「…………了解(ラジャー)!」

 

『スカイスクレイパー』はエルマの歌であり、エルマの憧れであり、そしてエルマの想いが込められている。

 

サイナが今から自分だけの曲を、何も無いゼロの状態からライブで生み出すといった奇跡は、予め神様(システム)が定めた様な方法で無ければ絶対に起きる事は無い。

 

ならばどうするか?其の答えをエルマ=317(サイナ)は知っている。

 

「───────遠く(近く)、遠く(近く)、在りし日の姿を夢に見た(駆けるその背をいつも見る)」

 

流れる旋律はエルマ・サキシマの『スカイスクレイパー』だが.彼女の紡ぐ言葉は其の歌詞とは異なる想いから奏で始めた。

 

今欲しいのは広い世界に非ず、エルマと己の写し身に挑む親愛なる主人(サンラク)と、彼より産まれた彼の分身の寄る辺を。

 

彼が望み、誰よりも高く、天に手が届き、そして頂さえも貫きし、威容を誇る摩天楼を。

 

「過去の栄光(不屈の眼光)、天を摩する威容(決して折れぬ情熱)。旅立ちを見送り(共に旅をして)、故郷に残ったその姿を(世界を拓く貴方の姿を)」

 

サイナの目に浮かぶ『其れ』は紛れもない『涙』であり、其の涙は悲しみでも喜びでも無い物…………征服人形の容量(キャパシティ)を超える情報(感情)が温かで、透明な滴(雫)を機巧の瞳から零(溢)れさせる。

 

「N」パッチ、正式名称を「Namida(ナミダ)」パッチ…………既にサイナは感情を持った一人の存在、であれば単なる替え歌なれども、其処に込めた想いは紛れもない本物で。

 

「今は亡きその姿(どうか今こそ空へ)、私は今も夢に見る(わたしは貴方を送り出す)。憧れの中に根ざす私の(この想い声に込めて届いて)──────」

 

二人の「歌姫」が剣を振るう戦士の為だけに歌うが故に、世界が亀裂と共に夜空がガラスの様に無数の罅と音を立てて割れ、残されるは聳えし威容と四本の道と鉄騎の群。

 

歌姫(サイナ)は頬を伝う涙を拭う事すらせず、遠く離れていった戦士を眩しげに見つめ、最後のワンフレーズを呟き。そうして此処に天をも摩(こ)する其の名を紡げは、想いは遂に結実する。

 

「────摩天楼(まてんろう)」

 

そして今此処に、サンラク達と『サンラク』の。頂天と先頭による、最後の戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高く、高く、高く………天まで延びたビルの頂点。世界が砕け、壊れ、崩れていく様を見ていた。

 

「高さ、距離、時間…………シチュエーションとしちゃパーフェクトだなぁオイ」

 

崩壊し混沌に堕ちる世界の終焉(バッドエンド)を経験した事は有ったが、シャンフロのリアリティではあの時の衝撃や感覚以上の物を自分達に与えてくれる。

 

其処もシャンフロの良い所でも有って、同時に悪い所でも有るのだが…………今は其れ以上に大事な事が有る。

 

「さぁて兄貴……約束通り風を凪ぐ領域に至ったんだ。まさか此処に来ての鈍器運用、なんて怒涛の展開にしてくれないよな?」

 

サンラクがアクセサリーを切り替え、インベントリアをコツコツと二度叩き、神代製のシェルターから取り出した物品は、黒鞘とキュビズムのような捻じれた木匣によって封印され、掌に持てば先程まで己の恋人(サイガ-0)が大事に握っていたと解る温もりを感じた。

 

其れは冥響のオルケストラと同じ、七つの最強種(ユニークモンスター)に属する『不滅のヴァイスアッシュ』が鍛えた刃であり。

 

嘗ての三つの厄災を調伏した事で産まれた『災浄大業物(サイジョウオオワザモノ)』の枠組みに属する武器(モノ)であり。

 

世界に三振りしか存在しない『ユニークウェポン』に属する逸品(モノ)である。

 

回り道としてリヴァイアサンで調べた訳だが、其の遠回りの道こそが最短への道標だった訳だ。

 

「世界を滅ぼしかけた災害………殲嵐の台風が獣に貶められ、されど刀に宿る霊として祀(・)ら(・)れ(・)し(・)も(・)の(・)ッ!其の祀られし霊獣の名、其の大太刀の銘は──────覇国兇嵐(アガトレオ)!!」

 

正しき名を呼んだ瞬間、覇国兇嵐の解放条件は達成されて捻れた木匣が木片となって砕け散り、其の身を現した黒鞘が強烈な風を巻き起こし始めると共に、サンラクと分霊サンラクの兇嵐帝痕(イデア=ガトレオ)・極(スペリオル)も本(・)体(・)の登場で回転し始めた。

 

「覇国兇嵐の匣鞘は砕けた、あとは黒鞘(コイツ)だが…………まぁ当ては有る!!!」

 

見下ろせばデコトラの大群が摩天楼を駆けて来る、光に彩られた鋼鐵の大群がけたたましい騒音を立てて走りし先頭に、赤い獣の『サンラク』の姿がハッキリ見える。

 

「さぁ存分に吼えろ覇国兇嵐(アガトレオ)!世界を喰い殺せ、今在る全部を見せてみろやぁ!」

 

能力制限だろうが!閲覧制限だろうが!そんな物は関係無いッ!!今使える物を全部使って『サンラク』を叩ッ斬る!!!

 

黒鞘を抱えて大太刀による居合斬りなる無茶な体勢を、残されたライオットブラッドのカフェインの残滓にテンションの炎を融合させて爆発させれば、宇宙創世の大爆発が如き力が湧き上がって、全身の血潮が沸騰する程の出力が身体を巡る。

 

「風を喰らえ!息を吸い込め!嵐の皇帝よ、捻れた無限の風!いざッ助太刀!!」

 

至高思金シリーズで機動系・重力操作系・視覚視界系スキルの再使用時間(リキャストタイム)は間に合わせた、ならば後は全力でブチ噛ますのみ!

 

宙域超速(スペース・ランウェイ)!空律歩爽(ニア・クルージング)!ディオーネーの神助(ディオーネー・アシスタンス)!重律超越(フィジクス・トランセンド)!星海飛脚(アステ・ランナー)!

 

神威光臨進(かむいこうりんしん)とリミットオーバー・アクセルにリミットオーバー・アクションと真界観測眼(クォンタムゲイズ)を使って、摩天楼の壁を地と定義して一気に駆け落ちる!!!

 

「やってやろうじゃねぇかあああああ!!!」

 

封雷(レビン)及び封星(エイセイ)の撃鉄達を起動し、黒雷と殲嵐と星明かりを纏ったサンラクが一歩踏み出し駆ける時、其の背に感じる大気の衝撃と、アガトレオと思われる偉大(おおい)なる獣の咆哮………否、叱咤激励がサンラクの背中を押す。

 

「【嵐帝の喝破(ジェット・ストライク)】!」

 

轟ッッッッッ!!!と吼えた風がサンラクを弾き出し、一秒が百秒にも引き伸ばされた世界の刹那、黒鞘が『抜け』と震えたのが両手を通じて彼は直感で解った。

 

「凪(ナギ)ッ─────────」

『───────』

 

僅か一歩で居合斬りの前動作と、抜き放った際の射程距離が近付く中で左脚足裏による踏み込み、右に頭を傾けて時計回りの回転を更に高め、神律燼風(しんりつじんふう)によるスタミナ消費で抜刀を行う腕の挙動を高速化した瞬間、黒鞘がより大きく震えて。

 

高まりに高まったテンションと、ゾーンに入ったと思う集中力が真界観測眼とマッチし、そして大太刀入りの黒鞘は始めから其処に無かったかの様に消え。

 

其れでも一秒にも満たない僅かな空隙に見えたのは、此の世に産まれ落ちてから人生を歩んだ彼の中で、最も美しいと感じた『薄緑色の乱れ刃の波紋が刻まれた太刀の姿』。

 

星明かりに道を見出し、雷と嵐を従えて、嵐の帝王の風と乗せた一閃は、晴天流の風を凪ぎし凝縮の一刀に集約されたのならば、其の一刀が斬れる存在(モノ)に限界なんぞ在りはしない!!

 

 

「─────────風(カゼ)ッッッッッ!!!」

 

 

此迄に経験した速度なぞ、最速と呼ぶには足らないと言わんばかりの回転と推進力で吹っ飛ぶサンラクだったが、其の手に握った大太刀には『斬った』という感覚と。

 

効果時間切れギリギリで見た視界には、首をスッパリと斬り落とされて、デコトラから脱落して行く赤獣の『サンラク』の姿だった。

 

 






一・刀・両・断


※尚、此の時の挙動によってサンラクは最大速度(スピードホルダー)更新に必要な速度を更に超過させました。時速は大体500キロは出てる


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